さぁ本筋に巻き込まれに行くよ!
天吹たちとマテリアル達が結界内で戦っている中、その外では第三――管理局の面々が突入の準備を終えていた。
「よし。指定したポイントに局員の配置と準備が終わった。なのは、後はきみの魔法で結界を破壊するだけだ」
「うん、わかった」
そして結界が特によく見えるビルの屋上になのは、ユーノ、クロノの3人がいた。
「でもクロノがこんな強行策に出るとは思わなかったけどね」
「残念だが侵入や解除、あらゆる手を使って無理だったからこの方法になっただけだ。とは言えここでチャンスを逃すほどのんびりは出来ない」
「そうだよねっ。はやてちゃんやリインフォースさんだって会いたがってるしね」
「・・・・・・まぁそういう事にしておこう。―――それじゃあ始めてくれ」
「うん。レイジングハート、お願い」
【All right, Master. Buster Mode】
なのはが愛機レイジングハートに声を掛け、そのまま形態を変える。それを見届けた他の2人は万が一のバックアップのために距離を取る。
そしてレイジングハートを構えたなのは。その足下からミッドチルダ式の魔法陣が展開され、続けてレイジングハートの切っ先に魔力が集まり始める。
「スターライト――」
魔力が球体を形成した頃になのはの口からその名前が紡がれる。彼女が得意とする砲撃魔法の、その集大成とも言える魔法を。
「ブレイカ―――ッ!!」
声を高らかに叫び、溜めた魔力を解放した砲撃魔法が放たれた。
十二分の魔力を込めた魔法は一切の障害に遮られることなく、目の前で聳える結界に命中する。そして一時の抵抗の後、結界に穴を開ける。
作戦通り。ここまでは、そうだった。
「――んんっ!?」
唐突になのはが驚愕に声を出した。
「どうしたのなのは?」
「えっと、初めてなんだけど多分」
混乱しながらもなのはは己の感触をそのままに答えた。
「結界の中で、
「「・・・・・・はぁっ!?」」
結界すら破るスターライトブレイカーを防いだ事実は、それだけに驚愕する事だった。
結界内で、外からの砲撃をいち早く察知した天吹は、それが阪奈に命中する軌道に向かっていると知って素早く戦闘を離脱。そして彼女を守るように障壁を展開した。
カットされた宝石を思い浮かばせる盾はヒビ1つ見せず、目の前の砲撃を裂くように佇む。そのせいで所々の結界の壁が貫通していた。
「・・・・・・重い」
しかし天吹も『攻撃を防ぐ』ことを願っていた為に足場の固定までは願っておらず、力の押し合いになっている。なはとのバックアップがあったので吹き飛ばされていないが、おそらく砲撃が終われば体勢を崩し隙となり、終わらなくても結界が崩壊するのが早いだろう。
つまり、判断は素早く。
『天吹っ! キミを中継にマテリアルの3人に念話を繋げなさい!』
『ん? うん、わかった』
念話から阪奈の声を受け取った天吹は砲撃の対処をヴェヌスとなはとに任せて『マテリアルの子達と話したい』と願う。
『――この声、聞こえているでござるか?』
『うぉっ!? ニンジャの声だ!』
『なぜお前が我らに対して念話が出来る!?』
『察するでござる。まず提案でござる。
天吹が中継点になっている事からその会話が筒抜けだが気にはしない。
『・・・・・・貴女がたも管理局には捕まりたくないようですね』
『付け加えるなら戦闘も回避したいのでござる。天吹殿の力を考慮するならば最終的に管理局に組み込まれる事になるでござるが、拙者達が求めるのは陸の配属でござる』
『なるほど、我らも管理局の内情は詳しくないが海と陸の仲の悪さぐらいは知っている。もしここにいる管理局員に捕まれば海に取り込まれるな』
『天吹殿を使わせない、のは不可能でござる。ならば内部の勢力に対し牽制し合える場所に置くだけでござる』
『ごめーん。そろそろ結界の外から何人か入ってきそーう』
自分の頭に響く会話に水を差すように、しかし重要な情報を告げた。
『・・・・・・天吹殿の力なら追跡も振り切れてるでござる! しかし拙者やアリシアは出来る限り顔を見せたくない。故にお主達には逃げる為の時間稼ぎをして貰いたいのでござる。返答を!?』
時間がないと知って阪奈は用件を伝え、マテリアル達に伸るか反るか問いかけた。
『・・・・・・受けましょう』
『そうか』
『えっ、いいの!?』
『天吹の確保はリスク承知でした。しかし一時とは言え協力するとあれば今後は話し合いやすくなります。貴女もそれを理解して提案しているのでしょう?』
『ご名答でござる。こちらの対価は天吹殿の限定的な協力を認めることでござる』
『では構いません。それではどうか見付からぬように』
『感謝するでござる。天吹殿、もういいでござるよ』
『わかった。じゃあね』
話が終わり天吹の中継もここで終わる。次に6人を転移する――と言うわけにはいかないようで、近づく気配を感じる。
「・・・・・・もう終わって」
未だに受け続けていた砲撃魔法に向かって呟くと弾けるように霧散した。ようやく防御の体勢から解放された天吹は近づいてきた相手を迎えた。
「・・・・・・はじましてだな。僕は時空管理局執務官クロノ・ハラオウンだ」
「はじめまして。でもボクは言いつけられて自己紹介ができません」
天吹の目の前に現れたクロノに対し、天吹は挨拶をしても名前は告げなかった。曰く、名前で居場所を特定されるのを避けるためらしい。
「それにしても、なのはのスターライトブレイカーを防ぎ、無効化するなんて本当に規格外だな。詳しい話を聞きたいんだが、同行してくれないか?」
「任意同行ならお断わりします」
この返事も言われたとおりに答える。阪奈曰く、日本は逮捕状か現行犯出なければ警察は強引に連れ出せないと言う事らしい。
「・・・・・・どうしてもダメか?」
「ダメ。あと、ハラウンさん? あっちから来るよ」
「何? ――っ!?」
会話中に天吹が指さす方向から、クロノに向かって突撃する青い閃光。しかし天吹が知らせてくれたお陰でクロノはシールドの展開が間に合った。そして青い閃光の正体は、マテリアルの1人、レヴィであった。
「ごめんね。ボクたちもあの子を連れて行きたいんだ。だから今回は、譲ってね!」
「くっ!」
バルニフィカスを力に任せて振り、クロノをシールドごと弾く。その為、2人は天吹の目の前から遠ざかる。
「・・・・・・天吹殿」
「あれ、はんちゃん?」
「わたしもいるよ」
「シアちゃんもいるんだね」
その直後、天吹の所に他の2人が合流した。ただし声が聞こえるだけで姿は見えない。しかしそれが阪奈の魔法であることは知っていた。
姿の見えない2人だったが側にいる事は確かである。だから気にはしなかった。
「まずは移動でござる。ただ天吹殿はそのまま姿を見せたままになるでござる」
「なんで?」
「移動しながら話すでござる」
そう言われて(おそらく)阪奈に腕を引っ張られると素直に従う。ふと周囲を確認するとマテリアル達は管理局員をあしらいながらも自分達に近づけないようにしていた。が、数も戦力も差があるためそう時間もなさそうであった。
「まず天吹殿は結界の中心で転移の準備。行き先は『誰も追い付けない場所』でござる」
「わかった。はんちゃんとシアちゃんは?」
「最良は拙者達は姿を見られないことでござる。しかし、その最良は
「?」
「とにかく、急ぐでござる」
最後の意味を理解出来なかったが急ぎと言われて天吹は転移する事に意識を向ける。ただしこれは2人の姿が見えなかったから。阪奈が最後の言葉を告げるとき、その視線はもう1人に向けられていた。
マテリアルは3人。大して管理局は十数人がこの場所に集っていた。数の理を持って天吹を含め、捕縛を目的としていた。
しかし、それは見誤っていた。
「沈めぇ!!」
「そこです」
「ハーッハッハッハー!!」
ディアーチェの広範囲により多くが墜とされ。シュテルの駆け引きで戦闘不能に。レヴィの機動戦闘で撃破され続けた。その間、なのはたちもカバーしようとしたがコンビネーションはマテリアル達に分が上がり、せいぜい時間稼ぎとしかならなかった。
その中で行き起こったのは3人。なのは、ユーノ、クロノだけだった。
『他の局員はさっきで最後だ。残りは僕らだけになった』
『ここまでコンビネーションが上手いなんて。いままで1対1だったのは寧ろ幸運だったね』
「うん、そうだね」
ユーノとクロノからの念話を聞きながらなのははレヴィの相手をしていた、と言えば良いのか。今の彼女は接近戦に持ち込むのではなく距離を取ってなのはの魔法を細やかに避けている。しかし砲撃魔法を撃とうとすれば一気に距離を詰められて阻止される。
やりづらい。しかしなのははその
「ねぇユーノ君。あれって時間稼ぎじゃないの」
『なんだって?』
「私、レヴィと戦ったことがないけどフェイトちゃんから聞いた話と違う気がするの」
『そう――ってわぁ!? ごめん、こっちはディアーチェが物量で攻めてるからちょっと集中できそうにない』
『こちらクロノ。シュテルを相手にしているがこっちも本気で戦っている感じがしない』
『だからぁ! こっち集中できないんだってば!!』
1人、とんでもない状況のようだがはのはの言うとおり時間稼ぎをしているのであれば自分達は
『例の子供はそっちにいるか!?』
『ごめん! こっちは探せなぁい!』
「え? えっと・・・・・・。あ、いた!」
そう見えた直後、静かに魔法陣が展開されていた。
「ねぇ! なんだか魔法陣を展開してるよ!」
『遠目だがこっちでも確認出来た! 状況から推測するに転移魔法だ! この場から逃げようとしている! ユーノ!』
『無理無理! さっきより物量が増えてる!!』
クロノとユーノの慌てぶりになのはどうにか止められないかと考える。しかし時間をかけては逃がしてしまう。そう思った時だった。
『今レヴィがシュテルを連れて行ったぞ!』
「え?」
『こっちもさっき魔法を撃ってきたディアーチェも離れていった』
『そうか、彼女らもあの子供を逃がすつもりがない。だが逃げるのを予想してその転移に巻き込まれるつもりで今のタイミングで戦闘を止めたんだ!』
それを聞いてシュテルが考えた事だと思うなのは。思わずマテリアルの姿を探すとすでに合流し、あの子供の所へ飛んでいる。
本当に時間がない。そんな焦りが行動に移させた。
(間に合うか一かバチ。犯罪者じゃないから真っ直ぐ狙うのもダメ。だから、足場!)
それは、転移の強制的なキャンセルだった。
「レイジングハート!」
愛機の名前を叫び、連続のリロードを鳴らす。これで必要な魔力は十分に注がれ、魔法を発動ができる。
「ディバイーン……」
狙う先は天吹――ではなく彼がいるビル。ビルに魔法を当てて転移魔法の集中をとぎらせる。故に本来の威力は抑えているし、衝撃でビルが破壊されないよう加減もしている。
(お願い、行かないで……!!)
そして友達の恩人をここで逃したくない祈りを、思いを込めた。
「バスタ―――――――――――ッッッ!!!」
その思いを込めた叫びと共に砲撃が放たれた。マテリアル達は合流するために回った事でなのはから離れた場所に。天吹も気付きはしたが対処するにはその反応は遅い。あとは上手く転移魔法の妨害になることを祈るだけだった。
だが残念な事だ。その祈りは――――。
「満塁2アウトからの―――――ッッ!!」
「……え?」
よく知るもどこか違う
「大・逆・転、ディバインバスタ―――、ホ―――ムランッッ!!」
なのはの魔法を天高く弾き返したのだった。その直後、天吹が展開した魔法陣が光球となって更に広がり、
一瞬にして包み込んだ者たちと共に消え去った。
………………………
………………
………
「っきゃっ!」
「おう」
「とぅ」
「おっとと」
「せいやっ!」
「おぶっ!!」
無事に別の次元世界に転移した天吹たちとマテリアルたち。しかし転移と共に飛行魔法もキャンセルされた為、低い位置にいた順に地面に落ちる。順に言えば、アリシアは尻餅をつき、天吹は背中からぶつかり、阪奈は静かに降り立ち、シュテルは跳びながら勢いを相殺し、レヴィは勢いそのまま宙返り、ディアーチェは体勢が悪く顔面から突っ込んだ。
「無事逃げられたー」
「我が無事ではないぞ!!」
「アハハハハハハッ!!」
「レヴィ笑うな回るな止まれっ!!」
のんきな天吹にディアーチェが怒鳴るがそれ以上にバク転を繰り返しているレヴィが怒鳴られていた。
「落ち着いてください。―――そして改めて共に転移していただきありがとうございます久保田天吹」
「別にいいよー。あとフルネームじゃなくていいよ」
「わかりました」
「挨拶もはしゃぐのもここまでにするでござる。では転移の為に時間を稼いでくれた礼として話といくでござる」
「なんだ、気が早いな」
「逃げ切れたとは言え、拙者たちはこの渦の中に巻き込まれたのでござる。であれば情報はいち早く知りたいのでござる」
「そうですね。ディアーチェ、彼らとの縁を切らないためにここは話をしましょう」
「むぅ……。シュテルがそう言うのなら最善なのだろう。レヴィ、そろそろ本当に止めよ」
「はーい」
「なはと武装解除―。ヴェヌスも出てきて」
「はい」
「(ッン)」
マテリアルたちが話し合いする姿勢を見せた後で天吹が片腕のナハトヴァールをなはとに戻し、体の中からヴェヌスを出現させる。
「アリシアもこっちに来るでござる」
「ん――……」
「……アリシア」
「……はーい」
阪奈が離れていたアリシアを呼んだが生返事。もう一度呼んでみんなの所に移動してくる。しかし駄々をこねたような態度に反して笑顔だった。
それもそのはず。彼女は待ちに待った縁が巡ってきたのだ。あの瞬間、阪奈の言った『最良は出来る限りで問題ない』の許容外と判断――いや違う。もしかしたら阪奈もここが関わる場面と裏では考えていたのかもしれない。
アリシアがフェイトに会える舞台が巡ってきた。
ただそれ以上に言えるのは、これで天吹が本格的にマークされた。
まさに、賽は投げられたのだ。
ここで初日、0日目が終わります。
この後から原作キャラがオリキャラたちに注目し始めます。
なんと言うか、振り回すような展開にしたいよねぇ!!