願いを叶えてあげたら   作:Celtmyth

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春になっても昼夜の寒暖差が激しかったこの頃。私も衣替えの時期を誤って寝起きに熱中症を起こしました。皆様のお気を付けて。


 そんな中、野外生活中の天吹たちは苦労なく日を跨いでます。デウス・エクス・マキナ並の便利さですので。


1日目②≠『あっちこっちで遭遇する』

 

「グッ、アァ……!」

 

 苦しそうに唸るのは烈火の将シグナム。しかしすぐにその体は光となって崩れていく。彼女は本人ではなく闇の欠片のシグナムであった。そんな彼女と対峙していたのは天吹であった。

 

「お疲れ様ですマスター。これで5人目です」

「そっかー」

 

 今回はマテリアル達と戦った時と違ってヴェヌスが傍に控えていた。戦う時に離れたりしそうだが彼女の本体は天吹と一体化しているので物理的な距離はない。そもそもこのヴェヌスは分身体であるので消失して再構築すればいいのである。天吹の魔力量ならその程度、軽いものだった。

 

「はんちゃんとシアちゃんは?」

「阪奈は変わらず潜んでいます。アリシアの方はもう少し掛かりそうですね」

 

 ヴェヌスが指さす先にはアリシアとヴィータ(闇の欠片)が戦っている最中だった。お互い宮中を飛び回り、忙しない動きをしている。

 しばらく眺めているとアリシアの方が射撃魔法で牽制し、隙を見て砲撃魔法を放った。それがトドメとなり、闇の欠片のヴィータも光となって消滅した。

 

「終わったー!!」

 

 勝者のアリシアは元気に歓声を上げた。ただしどこかヤケクソ気味に、だ。

 

「シアちゃんは何人目だっけ?」

「8人目です。ダブりは2回ですが」

「多いねー。でもなんでこう多いんだろ?」

 

 天吹が首を傾げるように、闇の欠片との接触が思った以上に多かった。まだ日も昇りきっていないうちに13回も戦闘を繰り返していた。前回との接触が3回だったと顧みるなら多すぎる。まるで引き寄せられているかのように―――。

 

「あ」

「どうしたのヴェヌス?」

「もしかしたらなはとに引き寄せられているかもしれません」

「あー」

 

 ヴェヌスの考えに天吹は納得した。

 考えてみればなはとは元々闇の書の闇そのもの。本体とも言ってもいい。そして闇の欠片はそこから産まれたもの。引き寄せられるというのは当然のことだった。

 

「なはと、引き寄せられないように出来る?」

「(シュポ、シュポ)」

『阪奈、貴女なはとが闇の欠片を引き寄せるとこは気付いていましたか?』

『ああ、やはりそうでござったか。数が多いと思っていたでござる』

『言いなさい』

「ただいまー。あれ、何かあったの?」

「おかえりシアちゃん。なんかなはとが闇の欠片を集めてたみたい」

「…………確かにその可能性があったか!」

 

 原因がわかったがどこか抜けた空気であった。もっとも天吹以上に取り扱い注意な存在がいないのでなはとの事はそう大きな問題と捉えていないようだった。

 

『しかし、なはとが闇の欠片を呼び寄せるのであれば見付かるのは時間の問題でござるな』

『なんで阪奈?』

『闇の欠片がなはとを目指すように移動しているのであれば、それを追跡して拙者たちに追いつくでござる。寄ってくる闇の欠片から逃げてもいいでござるが、それだと芋づるで集まった分だけ戦う事になるでござろう』

『逆にやって来た闇の欠片を相手するだけ足止めを受け、最後は管理局に追いつかれる、と』

『ござるな。ただ例外があるとすれば――ちょうど近づいている存在でござるな』

『『ん?』』

『はい?』

 

 阪奈の言葉に思わず返すと天吹とアリシアの前にそれは現れた。

 

「なんだぁ? 闇の欠片を追ってきてみればフェイトと、片方は新顔か?」

「でもバリアジャケットは違うし、いつものフェイトより幼くない?」

 

 2人組の女性、いやよく似た顔なので双子の姉妹か。加えて猫耳と猫の尻尾で使い魔である事は一目瞭然。

 彼女達はリーゼロッテ、リーゼアリアと言う。

 

 

 

 

 

 あらゆる思惑が混ざり合っているだろうこの事件。しかし第一に闇の欠片の対処は変わらない。シグナムも先ほど闇の欠片を撃破した所であった。

 

(……見付からないな)

 

 マテリアル達、来訪者に例の子供とアリシア・テスタロッサ。どれも見逃せないがシグナム自身、まず見付けたいのは例の子供だ。自身が最も縁がありながら繋ぎ損なった事もあるが、何より親友を救ってくれた恩がある。その感謝の言葉一つ伝えられていないのは納得できなかった。主のはやても同じ気持ちだ。騎士であればその憂いを取り除くとなれば一層に再会を願わずにはいられなかった。

 しかし現状、手がかりはない。地球に住んでいるのは確実らしく、別の次元世界に転移したとしても地球という故郷から遠く離れないというのがクロノの見解だった。つまり自分達が蒐集活動を行った範囲であり、闇の欠片が出現する範囲内にいる可能性が高かった。とは言えその範囲が広大、という言葉では足らないだろう。手がかりがない以上はこうして虱潰しになった。

 そして今も魔力反応を頼りに次の目的地を探す。

 

「……ん?」

 

 索敵をしてみれば闇の欠片でもなく、管理局の仲間でもない。ましてや探している者たちでもない魔力反応を察知した。しかしこの世界に魔導師が在住しているとは聞いていないシグナムはすぐにこれは未確認の魔導師だと考える。

 

「……事件に巻き込まれた者かもしれん。向かってみるか」

 

幸いにもそう遠くない位置だった。すぐにその方向に向かって飛ぶ。

遮る物のない空をシグナムは真っ直ぐに、最短距離で進んでいく。距離も遠く離れていなかったお陰がその目が目的の人物を捉えた。相手もシグナムに気付いて空中で静止する。

 

(話し合いに応じる、が警戒を解いていないな)

 

 もしかしたら気が抜けない相手の可能性を置きつつ、シグナムもその人物と対話するために静止した。

 

「時空管理局、シグナムと言う。貴殿は次元渡航者か?」

「……いいえ。唐突にこの世界に放り出されました。着の身着のままだったので身分を証明する物はありません」

「そうか。なら安全な場所まで案内しよう」

「それも必要ありません。人を探しているので」

「ん? 他にも巻き込まれた者がいるのか?」

「いいえ、初対面です。私が一方的に知っている相手です」

 

 質問をして回答を貰っているシグナムだったがどうも要領を得なかった。そこで改めてその人物の姿を確認する。

 薄桃色のバリアジャケットを纏っている事から魔導師であることは間違いないがデバイスらしき武器は身の丈に匹敵するほど大きな剣を握っている。近接戦闘、と初見は思ったが形状が三日月、ブーメラン状であるから投擲にも使う中距離戦闘のタイプと予想した。しかしシグナムは一番に気になっているのは相手の警戒心だった。まるで敵対者と相対しているようなものだった。

 

「ならば協力できるかもしれん。やはり同行して貰えないだろうか?」

「いいえ。問題ありません」

「しかし身元を証明して貰わなくては」

「いいえ。問題ありません」

 

 とりつく暇もない、と思えたシグナムはふと小さな可能性を考えた。縁というものはあるのかという可能性を。

 

「………誰を探しているんだ?」

「ある子供です。おそらく地球を離れて次元世界を彷徨っている筈です」

「それは目元を前髪で隠した少年か?」

 

 その可能性を具体的に告げると()()の警戒が消えた。代わりに好戦的な敵意を放つ。

 

「彼を探しているのでしたら、なおさら同行できません」

「あの少年を知っているのだな?」

「身内です。もっともまだ彼はまだ私を知らないですが」

「親戚か?」

「いえ。しかし()()()()()()()を頂きました。そして私は合流しなければなりません。申し訳ありませんがここは押し切ります」

「……正直、私もあの少年を探している。貴殿がその情報を持っているのなら見逃すことは出来ない。その申し出、受けよう」

 

 シグナムが抜刀すると彼女もブーメランの剣を構えた。

 

 

 

 彼女はシグナムとの戦いは()()()()()()で何度か経験があるが、この時代のシグナムはどうだろうかと考えていた。ベルカの戦乱を戦った守護騎士ヴォルケンリッターなのだから強いだろう。しかし数年の未来の経験はどの程度の差なのか判断に悩む。強いだろうが、数年後と比べて同等か数年分の若さがあるのか。

 久保田七緒(セッテだった少女)は戦うまでそんな事を考えていた。

 

 

 

 

 別の次元世界でシグナムと七緒が戦い始めた頃、彼女達が探す天吹たちも戦闘の火蓋が切れる間近だった。

 

「……いや、匂いが違う。お前はフェイトじゃないな」

「まぁ、フェイトじゃないのは確かなんだけど」

 

 会ってすぐフェイトと勘違いされたがまたすぐにリーゼロッテが別人だと見抜き、流石のアリシアも困惑していた。

天吹たちはリーゼ姉妹とは初対面。地球にいたから阪奈でさえその情報は手に入れておらず、唯一の機会だった闇の書が完成したクリスマスの日さえその姿は確認していなかった。

 

「私たちが探している相手でもなさそうね」

「でもこんな場所に子供がいるのも―――オイ、そっちのちびっ子」

「僕?」

「ああ。その腕の武器だ。ちょっと掲げてみろ」

「わかった」

 

 リーゼロッテに言われたとおり天吹は片腕を掲げた。彼が素直すぎて、そして腕に装着されたなはとがリーゼ姉妹にある情報を与えた。

 

「ロッテ、アレって」

「間違いないよ。闇の書の闇、ナハトヴァールの武装形態。んでそれを持ってるって事はクロ助が言ってたちびっ子だ」

 

 闇の書についての資料に目を通していた二人はナハトヴァール武装形態の事も知っていた。そしてクロノから天吹の事も聞いていたのでその結論に至った。

 

『……その素直さは自覚するでござる』

『ごめん』

 

 しかし隠せば誤魔化せた事でもある。隠れている阪奈に注意を受けて返事をする天吹だった。

 

「目的とは違うけど見逃す訳にはいかないわね」

「ああ。アタシも色々と聞きたいことがあるからな」

 

 戦闘態勢に入る二人に対し、天吹達もここで捕まるわけにはいかないのですぐに戦えるようにする。阪奈もいざとなればここで割り込む事も考える。

 しかし、両者は戦わなかった。

 

『マスター左上に魔法攻撃っ!!』

「ん? んっ」

 

 ヴェヌスが念話で伝え、天吹が反射的に言われた方向へ防御壁を展開する。しかし加減を忘れてリーゼ姉妹まで覆う程の巨大さ。それが彼女達にも向かっていた魔力弾から守った。

 

「うわっ!?」

「攻撃っ!? 誰の仕業!?」

「あそこ!」

 

 突然の襲撃に混乱が起きるがそれでも下手人を目視した。誰もがその人物に注目する。

 その人は杖型のデバイスをこちらに向けていた。コート姿で体部分の装備はわからないが頭部は露わであり、装着したゴーグルが日の光を反射していた。背丈から少年と青年の間、子供と大人の境くらいの年齢の男性。

 

「嘘、だろ……。アイツまで出てきてるのかよ!!」

 

 そしてリーゼロッテは()を知っていた。なぜなら何度も対峙し、何度か共闘した人物だからだ。そして彼は彼の闇の欠片だと見抜いていた。それもそのはず。彼女の目の前にいる彼は若い頃の姿だ。闇の欠片は()()()()の姿で彼を構築したのだ。

 その姿に―――。

 

 

 

 

「………おじさん?」

 

 

 

 

 天吹は彼が久保田忠(ミドル・バート)だと気付いた。

 





 シグナムと遭遇したキャラ=未来で天吹の身内に元ナンバーズのセッテさん。オリキャラと言ったが半分嘘です。原作の道筋からズレたキャラでした。多分、原作の更正組より新たな人生を歩んでます。


 そして天吹達の現れたミドル・バート(闇の欠片)=若き頃の久保田忠さん。このために登場人物にデバイスとバリアジャケットの紹介をした。装備が変わってないのは万能型だからこれ以上の改良が難しいだけ。
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