天才の高校野球   作:やってられないんだぜい

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 お久しぶりです!皆さんお元気してましたか?

 とうとう今回で明訓戦決着です。いやぁ長かったなぁ。え?お前の投稿が遅い?それに関しては申し訳ありません。

 では本編どうぞ!


明訓戦 決着!

 その音は球場全体に響き渡る。そしてゆっくり走り出した土井垣は高々と腕を上げた。一斉に歓声が湧く。誰もが土井垣を称えた。それに対して青道側は打球が飛んだ方向を眺めることしか出来なかった。

 

 (嘘だろ⁉︎今日の丹波さんの調子は決して悪くない。それどころか1番のボールが来てた。そしてコントロールミスも無かった。あのボールをここまで持って行くのか⁉︎スイングスピードも速い。これが、これがドラ1確実と言われる土井垣将!!)

 

 土井垣がダイヤモンドを一周すると御幸はタイムを取り内野陣をマウンドに集まらせる。

 

 「すいません丹波さん。俺の配球ミスです」

 「いや、あれは御幸が悪いんじゃない。相手が上手だっただけだ。気にするな」ポンッ

 「丹波さん」

 「気にするな丹波。こんな時にこそ平常心だ」

 「心配するな。もとより相手が上なのは見てて分かっていた。今更動揺する事じゃない」

 「丹波…よし。丹波はいつもみたいに動揺してない!」

 「なっ⁉︎そう言う事言うか普通?」

 「しょうがないよ。日頃の行いだよ」

 「うがっ!」

 「お前らなぁ!…まぁしょうがねぇけどさ。俺はこの回全力で抑えに行く。でも相手はあの久里の球を打ち返すような連中だ。打たれるかもしれない。だからその時は頼む」

 「ああ任せろ。必ず逆転してやる」

 

 丹波は成長している。平静を装ってる訳では無かった。今までなら一度打たれたら止まらないノミの心臓である丹波だが今の丹波はそんな様子はかけらもない。これならエースと呼ばれてもおかしくない。

 

 

 しかし相手が悪かった。並の高校ではない。続く5番、6番に連続ホームランを打たれて三者連続ホームランとなる。7番の石毛にも流し打ちを決められる。そして北は送りバントをきっちり決めやっと1アウト。里中にもセンター前に運ばれてこの回5点目。この流れを切ることが出来ない。ベンチも急いで川上と降谷に肩を作らしているがまだ肩が出来上がってない。1番の岩鬼は三振を取るも2番、3番に連打をくらい2アウト満塁というところで土井垣に回る。

 

 「監督!やばいです!交代しましょう!川上を!川上をぉ!」

 

 片岡は迷っていた。今までとは違い丹波は動揺して打たれてるわけではない。逃げてもなく、いいボールを投げている。しかしそれでも打たれてしまう。悩んだ末に片岡はベンチを出る。

 

 「主審!ピッチャー交代だ!」

 

 丹波はそれを聞いて何処か安心してしまった。それに自ら気付いたときに思ってしまう。

 

 (そうか、俺は自分でも精一杯に闘っていると思っていた。ボールも走っている。それでも既に気持ちで負けていたと言うことか)

 

 マウンドに選手達が集まる。

 

 「丹波さん、すいません。俺の不甲斐ないリードだったばっかりに」

 「何言ってるんだ。お前はいいリードをしていた。それに俺が応えられなかっただけだ」

 「いえ、丹波さんは過去1番のボールを投げてくれました」

 「確かにボールは俺も今日は走ってると思った。けどさっき代えられた事に安心しちまった。俺は心のどこかで変えてもらう事を待っていたんだ。俺もまだまだだな」

 「丹波さん」

 「丹波」

 「哲」

 「まだまだだが大きな一歩前進したじゃないか」

 「前進?」

 「そうだ。今までと違い崩れなかったじゃないか」

 「だが打たれた」

 「だが四球で崩れたりはしなかったしボールもピンチで走るようになった。これに気持ちさえ付けば今回の様にはならない。自信を持て」

 「…ありがとう。必ず本番までにはできる様にする!」

 

 話が終わる頃にようやく川上がマウンドに来た。話を切らない様空気を読んだのだ。丹波はボールを川上に託す際に一言伝える。

 

 「川上。相手は俺らより一回りも二回りも格上だ。だからと言って怖気ずく必要はない。これは公式戦だが俺らの目指す本番じゃないんだ。だからと言って気楽になるな。緊張感を持て。どんなに打たれようと気持ちで負けるな。そしてそれを次に繋ぐんだ。分かったか」

 「はいっ!」

 「よしっ!しまって行くぞっ!」

 「おう!!」

 

 内野手達が散っていくなか、御幸が川上に近寄りグローブで肩を叩く。

 

 「川上、これは丹波さんの言った通り本番じゃない。夏に繋がるピッチングをしようぜ。俺も必死にリードするからよ」

 「ああ。分かった」

 

 川上深呼吸をしてバッターを見る。先程ポール直撃のホームランを打った土井垣。その他にも久里からもヒットを打っている。自分より格上の存在だがここで止めるのがリリーフとしてマウンドに上がった俺の役目と思いキャッチャーのミットに投げるだけだった。

 

 初球アウトコースのクロスファイヤーから入る。この場面でボールから入っても逃げ腰になりカウントが悪くなったところで甘く入った球を持っていかれる。なら最初から強気でいく。それに今日の川上は球威はイマイチだがコントロールは良いとこ付けてる。

 1ストライクからの2球目、アウトコースギリギリのスライダー。土井垣はこれを打ちに行くもファールになる。これで2ナッシング。

 

 (バックネット裏のファール。タイミング合っているが単に当てただけになってる。ここは一つ上体を起こすか)

 

 3球目はストレートでインハイのボールを要求。これを土井垣は仰反る。川上のボールが聞いてるみたいだ。今までは久里や丹波といったオーソドックスの投手だったがサイドが入ったことにより左右に揺さぶれてる。

 4球目。ここで決めたら儲けもんと外のスライダーを要求。それに川上は要求通りアウトコースへ投げる。御幸は横目で土井垣の動きを見ると打ちにいっていた。

 

 キーン

 

 良い音が鳴る。打球はライト線ギリギリにボールが上がる。御幸はマスクをとり打球の行方を追う。打たれた川上は肩をがっくし落とす。

 

 「馬鹿なっ!今の球が入る訳ない。絶対に切れる!」

 

 その言葉に川上は打球を見る。ライトの白洲が懸命に追っていたが打球はそれを無視するかの様にゆっくりとスタンドに吸い込まれた。だか切れたか巻いたか微妙なところ。皆の視線が一塁審に集まる。

 

 ファール!

 

 御幸は息を漏らす。マウンドの川上は一安心する。すると御幸が声を掛けてきた。

 

 「川上!大丈夫だ!ファールはどんなに飛ばしてもファール。ここで決めようぜ!」

 

 川上は本当にいい捕手を持ってよかったと思った。御幸だって打たれたときのショックはある。それは人一倍捕手というポジションを真剣にやっている分人より大きいはずだ。そしてこの試合では自分のリードが通じない程に打ち込まれている。些細なコントロールミスはあっても大きなミスはない。つまり御幸のリードの上を行かれているという事だ。しかしそれでも必死に頑張ってる姿に川上は勇気を貰う。

 

 2ストライク1ボールからの5球目。御幸は川上の1番自信があるボールを要求する。それに頷くと一呼吸起きゆっくりモーションに入る。この一球で全てが決まると気持ちを込めた一球。ボールが低めに放たれた。

 

 (さっきの当たりからスライダーはないだろうからストレート一本に絞る!)

 

 土井垣も力を入れて振ってくる。しかしボールは思ったより来ていない。それどころか内に落ちてくる。ここでようやく川上がシンカーを投げてきたことに気づいた。土井垣はなんとか左手一本でボールに当ててファールで逃げた。

 

 観客から見れば川上が土井垣を追い込んでいる様に見えた。しかしバッテリーからしたら違った。

 

 (不味いな。本当は今ので決めたかった。これで手持ちは全て見られた。どうする)

 

 御幸は次に出すサインに迷う。今日のストレートではスタンドに持っていかれそう。かと言ってスライダーは先程ファールとはいえスタンドまで飛ばされている。それにシンカーは今見た事で軌道も見極められた筈だ。御幸は苦しまぎれにスライダーに賭けようとする。しかし川上は首を振った。ストレートを要求するも首を振る。つまり先程投げたシンカーで勝負しようとしているのだ。

 

 (シンカーだと?先程バッターに見られてるんだぞ!危険だ!)

 (だからと言って今日の俺のボールではそれ以外に方法はない。ストレートも対して走ってないしスライダーも合わされてる。だとしたらシンカーしかない)

 (川上……分かった。信じるぜお前のボールを!)

 

 御幸は川上の意思を尊重しシンカーを投げる。たしかに今日の球の中で1番良いのはシンカーだ。それに打たれるなら自分の1番自信のあるボールを投げたいと。川上はインコースに全力のシンカーを投げ込む。

 

 (何⁉︎またシンカーだと⁉︎続けられたら俺は打つぞ!)

 

 土井垣はインコースギリギリのシンカーを引っ張るが詰まる。しかし打球はいい感じにレフト線に落ちる。2アウトのため3塁の里中だけでなく2塁の殿馬まで突っ込んできた。

 

 「レフト‼︎バックホーム!!!!」

 

 レフトの久里は持ち前の足で素早くチャージしボールを取る。そして遠投120m超えの肩を生かして全力送球する。ボールは唸りを上げて御幸のミットにドンピシャの収まりブロックに行く。タイミングはクロスプレーになり、煙が立ち込める。煙が止んで審判はゆっくりコールする。

 

 アウト!!!!!

 

 またもスーパープレーが生み出た。シンカーを意地で持ってく土井垣のバッティング。それになんのミスもない殿馬の走塁。そして高速チャージからのレーザービーム。どれをとっても紙一重のプレーだった。このプレーに球場から拍手が送られる。

 

 川上!惜しかったぞ!つまらせていたし後ちょっとだ!

 土井垣ナイスバッティング!

 殿馬いい走塁だったぞ!惜しかったな!

 久里のレーザービーム痺れるぜぇ!

 

 明訓vs青道 8回表終了 8対1

 

 点差はついてしまっているが選手達の表情は悪くない。この試合を楽しんでいる様子だ。

 

 「ナイスだぜ久里!」

 「サンキュー。助かった」

 「先輩だって良いボールだったぜ。紙一重だ」

 「ははっ。お前に言ってもらえるなんて嬉しいなぁ」

 「川上。さっきのボール良かったぜ。本当に惜しかった」

 「しょうがない。あれが今の俺の実力だ。だが今度は必ず抑えてやる」

 

 川上もこの試合で一皮負けそうだ。これはチームにとっても嬉しい事だ。そんなメンバーに監督である片岡が声を掛ける。

 

 「お前ら。楽しいか?」

 「「「「「「「「「ハイっ!」」」」」」」」

 「なら最後の最後で逆転して見せろ!」

 「「「「「「「「「ハイっ!」」」」」」」」

 「川上!次も行くぞ!用意しとけ!」

 「ハイっ!」

 

 青道メンバーはこのままの勢いで逆転してやろうと意気込む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しかし現実はそんなに甘く無かった。コールドになるという事で息を引き返した里中のボールと山田のリードに手も足も出なかった。9.1.2と三者凡退に終わりコールド負け。青道がコールド負けするのは実に10年振りだった。

 

 

 

 「あれ?久里は?」

 「さぁ?トイレじゃ無いっすか?」

 「しょうがねぇなあいつ」

 

 

 「良し!帰るぞ!」

 「おい!」

 

 明訓メンバーが帰ろうとした時に呼び止める声がした。振り返るとそこには久里が立っていた。目元は赤く腫らしており誰がどう見ても泣いた後と分かる感じだった。

 

 「お前は久里か?なんの様だ」

 「夏!夏に必ず甲子園に出てこい!俺、いや俺達も甲子園出るからそれまで負けんじゃねぇぞ!」

 

 そう言って久里は去っていく。その後ろ姿を明訓メンバーは静かに眺める。

 

 「どうします?次に当たる時はもっと手強くなってますよ」

 「だろうな。全く。それでも俺達だって強くなる。そして今度こそあいつを打ち崩してやる!」

 「またホームランをお見舞いしてやる!」

 「悪球が来れば良いズラな」

 「なんか野生児みたいなやつだな」

 「俺もあいつに負けないように頑張んなくちゃな」

 「じゃあ学校に帰ったら特打ちだ!」 

 「「「「「「「「「「「「よっしゃ!」」」」」」」」」」

 

 




 ご愛読ありがとうございました。

 どうでしたか?今回は。久里は初めての公式戦で負けて悔しかった。この悔しさをバネにさらに成長してほしいです。
 ちなみに察してると思いますが久里に教育係的な人はつきません。何故なら沢村達と違いすでに野球を熟知しているからです。つける必要のない人には付けないでしょ。

 ではまたね

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