天才の高校野球   作:やってられないんだぜい

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 お久しぶりです。元気にしてますでしょうか?

 プロ野球は見てますか?現在、セリーグの格差が激しく、パリーグは少ない状況ですね。しかしまだ始まったばかり。まだまだ逆転の可能性は残ってます。だからこそ、胡座をかくなよ阪神!巨人はすぐそこまで来ているぞ!

 では本編どうぞ!


ベンチ入りメンバー

 

 部員は室内練習場に集められた。理由は夏の公式戦のベンチ入りメンバーの残り2枠を誰にするかを発表するためだ。そのため場に緊張感が走る。沢村と春市を除く1年生はそもそも練習に参加していないため、選ばれる事は無い。しかしそれ以外のメンバーはこの日の為に厳しい練習にも必死に耐えてきた。特に3年生。今年が最後の彼等に後は無いのだ。2年生も耐えてきたのは一緒だが、気の持ちようが違う。この日の為に青春を野球に捧げてきたのだ。

 

 「一軍昇格メンバーは………1年小湊春市。同じく1年沢村栄純」

 

 しかし、現実は非情である。選ばれたのは今年入学したばっかりの1年生コンビだった。しかも片方は野球素人である沢村。やるせない気持ちが残る。クリスは残念ながら選ばれなかった。恐らく実力では2人の上を行っていただろう。しかし肩に爆弾持ちである事と、実践から遠く離れていてブランクが存在するのがメンバー漏れした主な原因だろう。クリス自身も薄々分かっていた。自分より未来ある1年を入れた方がいいと。春市は好守に置いて既に高いレベルにある。意外性も持っている。沢村も最後の練習試合である強豪校の黒士館相手に堂々のピッチングをした。しかも彼の持ち味はムービング。これは一発勝負であるトーナメントで必ず役に立つ。

 

 明日からの練習に備えて今日は解散とした、選ばれなかった3年生を残して。

 

 「これまでの2年間、お前らは本当に良く頑張った。熾烈なレギュラー争いに厳しい練習……辛く悔しい想いなど、いくらでもした事だろう。だがお前らは決して挫けず、最後までこの俺についてきてくれた。これからもずっと、俺の誇りであってくれ」

 

 そう言って片岡は選手達に頭を下げた。その瞬間、必死に堪えて流すまいとしていた涙が溢れ出す。その場に泣き崩れる者も少なくはない。彼らの夏はここで終わったのだ。自分達が青春を犠牲にしてまで捧げた野球。覚悟はしていた。選ばれなかったとしても、後悔はしないと。けれど悔しく無い訳が無い。彼等の夏はここで終わったのだ。

 

 それは涙はを流していないクリスだって例外ではない。自分は長らく戦線を外れていた。練習量は彼らの半分にも満たないだろう。そんな自分が過去の栄光で選ばれるなど烏滸がましい。そうと分かっていてもやはり悔しさは残る。もし、あの時に怪我をしていなければ。怪我していたとしても、素直に申し出なかったのか。そう思う事は少なくない。それでも彼に後悔はない。最後の練習試合、自分にとっての引退試合に等しいあの試合。その試合でこれから青道を背負っていくであろうボールを受けられた事に、最後まで諦めずにプレーを続けた自分に誇りに思った。

 

 「クリス、お前にはこの先、選手としての道が必ずある。だからまず、その肩を完全に治す事だけを考えろ。その上で御幸と宮内のサポート、そして投手陣をまとめて見てもらいたい。今年は投手が多く、その半分以上が1年生だ。2人だけでは対応が難しい。頼めるか?」

 

 片岡はクリスに投手コーチを頼んだのだ。それも彼の野球知識、センスを見越してのことだろう。頼まれたクリスは小さく微笑む。

 

 「いいんですか?自分で……自分の指導は監督より厳しいかもしれませんよ」

 

 つまりそれは、肯定を意味した。そしてクリスの目は青道の正捕手であった頃と同じ目をしていた。

 

 「ああ、よろしく頼む。お前らも青道の一員として一軍メンバーをサポートしてくれるな」

 「「「「「はい!勿論です‼︎」」」」」 

 

 

 

 

 

 

 そんな光景を悔しさを噛み締めて見ていた者がいた。それは久里……ではなく、クリスとバッテリーを組んでいた沢村であった。

 

 彼はこの決断がいってない。自分のあのピッチングはクリスがいてこそだった。クリスがいなければ今日のピッチングは出来なかった。全てはクリスが自分の力を引き出してくれたからなのだと。そんな自分は一軍に入る資格無いと思った沢村は、今ここで片岡に直訴してようとその場に入ろうとする。

 

 「入ってどうする気だ?辞退でもするつもりか?」

 

 しかし彼を止める声がした。振り返るとそこには、結城、伊佐敷、倉持、増子、そして御幸と一軍メンバーがいた。

 

 「誰がなんと言おうとお前は監督に選ばれたんだ。ウチの戦力としてな……そんなお前が選ばれなかった者になんて声をかける。選ばれた者は、受け継がれた者は更に先に進まなくてはならない。俺達に出来る事は、選ばれなかったあいつらの分まで強くなる事だ」

 

 これで進むしか無くなった。彼等の分まで、クリスの分まで。

 

 だが彼の他に、ここにも片岡の決断に納得がいってない者がいた。久里である。今日の二軍の試合を久里は見ていた。そして実際にクリスの守備(主にリード)、バッティングを見て一軍入りはするだろうと思っていた。確かに肩を怪我して送球が不安定さではある。だがそれを踏まえても彼が選手でいるべきだ。雰囲気を察するとかは正直なところ、苦手であるし、嫌いな久里だがそれでも確かな事がある。3年生達のクリスへの信頼、期待は大きいと。こいつがいれば大丈夫、こいつにリードしてもらえれば安心するという気持ちが、正捕手である御幸より明らかに上だ。それはチームにとって大きなプラスになる。この人は必ず甲子園で必要になると。

 

 

 

 「やっぱり肩の状態は良くなかったんだな」

 「ああ、完全に治るまではもう少し時間がかかりそうだ」

 

 あのミーティングの翌日、クリスと丹波が廊下で話していた。クリスは後悔はないというが丹波は自分の思いが叶わなかった事に苦い思いをする。

 

 (最後の夏、俺はお前とバッテリーを組みたかったんだよ。バカヤロー)

 「何か用か?」

 

 丹波が下を向いて悔しがっているとクリスが誰かに向かって質問した。顔を上げるとそこには久里がいた。

 

 「久里……」

 「クリス先輩ですよね。こうやって面と向かって話すのは初めてになります。久里武です」

 

 久里は不器用なりにもしっかり頭を下げた。御幸から無意識に人を見下す気質があると聞いていたクリスからしたら意外であった。

 

 「知ってるさ、野球部員でお前を知らない奴はいない。それで俺達になんの用だ?」

 「無理を承知で頼みます。その怪我、甲子園までに全力で治してくれ」

 「⁈」

 

 それはクリスだけでなく丹波にとっても衝撃的であった。彼の言ってる事は無茶苦茶だ。それは分かっている。しかし彼等が驚いたのは甲子園という単語だ。そして理解した。彼が何を言おうとしてるのかを。

 

 そう、あの日に彼等の夏は終わった。そう宣言したが唯一残されている可能性がある。それはメンバー入れ替えだ。甲子園出場チームは県予選で戦った時とメンバーを入れ替える事が可能だ。

 

 「甲子園で、あいつらに勝つには必ずあんた力が必要になる」

 「……怪我持ちの俺がか?正捕手に御幸がいるんだぞ」

 「…俺はあんたの試合を見た。あの人には悪いが、俺はあんたの方が上だと思った。1年ぶりの試合であれなら流石の一言だ。素直にスゲェと思ったよ」

 「だが選手達はどうする。俺のためにメンバーから外されるんだぞ。それに決めるのは監督だ」

 「なら俺は監督に言ってやる。選手達にも聞いてやる。あんたがベンチ入りしても良いかを。だから全力で治して甲子園で一緒に戦ってくれ」

 

 久里はそう言って頭を下げた。久里は他人に頭を下げるなど初めてだった。

 

 「クリス、俺からも頼む。諦めないでくれ。俺達は必ず甲子園に行く。それまでに頑張って治してくれ。まだ2ヶ月以上ある」

 

 クリスに丹波と久里は頭を下げる。丹波は諦めかけていた。クリスとバッテリーを組む事を。しかし甲子園に行けば組める可能性がある事を知った彼は、これから死に物狂いで甲子園を狙うだろう。クリスとバッテリーを組みたいという想いは青道野球部1番強い。廊下で2人が頭を下げている状況に面白がって野次馬が集まる。中学からスター選手だった彼等は注目される事に慣れていたが、状況が状況なだけに流石に恥ずかしかった。そんな状況でも2人は頭を上げない。その姿勢を見て、2人の甲子園に行く想いはクリスに伝わった。

 

 「分かったから頭は上げてくれ。俺は怪我を全力で治す事に集中する」

 「本当か⁈」

 「だが治るかは分からないぞ。それに治ったとしても試合感覚を忘れてたら意味がない」

 「それなら二軍で紅白戦でもやればいい。それであんたはマスクを被る。だけどスローイングは絶対にやめてくれ。悪化したら意味がない。捕るまでの動作で止めろ。そして捕るだけでなく、その時に必ず何処に投げるか、ランナーの位置を頭に入れながらプレーしてくれ。バッティングは怪我に支障が出ない程度でだ」

 「……本気なんだな」

 「当たり前だ。あいつらは甲子園に必ず出てくる。負けたくせに万全で挑まないなんて馬鹿のする事だ」

 

 久里はそう言い残し、自分のクラスへ戻った。そんな久里を2人の上級生は見続けた。

 

 「あれが本当に1年生の覚悟か?」

 「全くだ。少なくとも俺らが1年の頃の何倍も凄いだろうな」

 

 久里の野球に対する気合いは常軌を逸しているのかもしれない。それこそ敗北と死が同義であるかの様だった。

 

 「先のある1年生にあそこまで言わせて、今年最後の俺らが情けない姿を見せる訳にはいかねえな。俺だって借りがある」

 「それはそうだが丹波、このままだとエースナンバー奪われかねないぞ。明訓戦もあのピッチングだと任せ辛いな」

 「うぐっ⁈」

 

 2人は途中……ではなく、ほぼ序盤からタメ口で話す久里を咎める事はしなかった。それ程、真剣だったのだろう。だが丹波に不安が残る。もしクリスが怪我を治したとしても自分はマウントに上げてもらえるのかと。客観的に自分が久里に勝っているのは身長と年齢だけしか無い。だがそれでも諦める事はしない。クリスとバッテリーを組むために。

 





 ご愛読ありがとうございました。

 現在3本同時執筆中、とても大変です笑笑。まあ趣味なんで無理ない程度にやってるんですけどね。

 最近始めたfgoでガチャを引くたびにエレナなのはどうしてでしょうか?まだ半月なのに既に宝具レベル4です。これが星5なら嬉しいんですけど、いまいちわからないんですよね。あまり強さとか詳しくないのでよかったら教えて下さいww

 では次回もお楽しみに。またね
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