久里は高島と一緒に青道高校の寮に来ていた。高島にほは先輩だから敬いなさいと言われたがグラウンド外ならともかくプレーでは実力優先だからなぁ。そして部屋に案内されると180は超えてるであろう人物が出てきた。一応礼儀として挨拶しておく久里。
「こんばんは!今日から入部する久里武です!よろしくお願いします」ニコニコ
「……作り笑いが下手だな。ここでは人が見てないし楽にして良いぞ」
丹波は久里が作り笑いしてることを見抜き久里は本当の笑みに変わる。
「へぇ、なら遠慮は要らねーな。あんたが青道高校のエースの丹波さんか。最初に言っとくが俺は先輩だからエースってのが大っ嫌いなんだ。実力で奪い取ってやるよ」
「やれるもんならやってみろ」
久里はいきなり先輩である丹波にエース奪う宣言をする。丹波も先輩の意地もあり、上からいう。数秒の間2人は睨み合ったのち笑顔になった。
「いやー先輩ならそんくらい言ってくれないとね」(笑)
「お前みたいに生が良いのは面白そうだ。」(笑)
その後部屋に帰ってきた2年生の先輩と交えて会話をしたのち、朝が早いということで眠りに入る。
翌日久里は寝坊せずに起きた。久里は小学生の時から朝早くランニングなどをしていた甲斐もあり朝は強かった。ユニフォームに着替え丹波達とグラウンドに出るとすでに何人かはグラウンドに出てた。
数分後には時間になり新入生の自己紹介に入いるため、新入生は2列に並ぶ。久里は2列目の1番右で自己紹介は左からということで最後になった。そして1列目が終わり2列目に入ろうとした時、
「あ〜〜こいつ遅刻したのに列に紛れ込もうとしてるぞ〜〜」
全員の視線が1人の男に注目する。久里は面白くて危うく吹きそうになった。
(あいつ、初日から遅刻するとかやばーなっ!)
その後遅刻した奴のその同室である先輩達は走らされた。そして自己紹介も最後になり久里の番がやってきた。
「次!」
「はい!久里武○○中学出身!ポジションはピッチャー!目標は4番でエースになり甲子園優勝することです!」
その瞬間先輩の顔が一瞬にして強張る。
(ああっ!舐めてんのかこの一年棒!)
(1年には4番は渡さん!)
(ここまでいう奴だったとはな。だがエースは渡さん)
3年の目が1年を受け入れる目から一瞬にして敵対する目に変わった。片岡は顔はいつもと変わらなかったが内心は違った。ここまででかく出たのは監督生活初めてだろう。口だけの男か、はたまた大物か。
「やれるもんならやってみるが良い。うちは実力さえあればどんどん使うぞ!ここのメンバーは仲間であると同時に最大のライバルだ!それは1年だろうと3年だろうと関係ない!頭に入れておけ!」
「「「「「「「「「「はい!」」」」」」」」」」
その後、午前は1年は永遠と走り続けていた。鍛えぬいてきた久里にとったら余裕であった。そして昼、1年が走り続けてたせいで食事が喉を通らず、しかも三杯以上食べなければいけないという地獄のような時間であっても久里には関係なかった。幼い頃から体を大きくするため沢山食べていたこともあり、余裕とまではいかなくても食べきることに成功した。なお身長はそこまで伸びなかった。
そして午後になると上級生のバッティング練習が始まり1年がそれを見学していると、
「1年生集合ー!これより希望のポジションに分かれての能力テストを行う。スパイクに履き替えてBグラウンドに集まれ!」
(よっしゃぁー、やっとプレーできる!)
久里が喜んでいると誰かが急に大声を出していた。見てみると今朝遅刻した奴だった。
「俺はエースになるためにここへ来たんだ!その気持ちだけは誰にも負けるつもりねーっすから‼︎」
「ふん、くだらんな」
「くだらんってなんだよ!こっちは真剣に…」
沢村がタメ口を片岡に吐くと片岡は急に振りかぶり沢村に向かって腕を振る。沢村は殴られると思い防御姿勢を取るが、片岡はそれを無視しボールをレフトフェンスまで投げた。
「ここからあそこのフェンスまで約90m、届いたら練習に参加させてやろう。ただし!届かなかったら即刻投手をやめてもらうぞ」
周りが驚いてる中、久里は吹いてしまった。
「ぷっ!」
皆の視線が久里に注目する。
「貴様はさっきのか、何がおかしい」
「あっ、覚えててくれたんですね。何がおかしいかと言うと90mで良いんだと思いまして。それなら俺も参加させてください」
ここにいる全員が驚いた。何もやらかしてないのにそんな賭けをする意味がない。周りの奴らも辞めるよう言うが久里は全く相手にしない。普通の人ならこんな賭けしないのだが、久里は普通とは違っていた。
「いいだろう」
「あっ、でも条件少し変えて下さい」
「なんだと?」
「監督より投げたら一軍に合流させて下さい」
周りの上級生の顔が一気に怒りへと変わる。
「ふざけんじゃねぇ!」
「そんな簡単に行けるわけねぇだろ!」
「舐めてんのか!」
周りの上級生達は一気に久里へ罵声を浴びせるが久里はいともせず、片岡を見る。片岡はまず上級生達を黙らす。
「黙れ!」
一瞬にして空気が静まり返る。それほど影響力が強いのだろう。しかし上級生達も黙ってるわけにはいかない。
「しかし監督!そんな簡単に」
「お前らの中で俺より遠くに投げれる奴はいるのか?」
「そ、それは…」
片岡にそう言われると黙るしかない。片岡より投げられる上級生はいないのだ。
「久里だったな?」
「はい!」
「俺より投げれたら許してやる。しかし一軍はそんな簡単に手に入る場所じゃない。そうだな、」
片岡は少し考えるがすぐに答えを出す。
「能力テストの全種目、遠投、50m走、最長飛距離、合計飛距離、3000m走、投手総合の全てで最高になったなら入れてやる」
周りは自分の聞き間違いではないかと疑った。上級生達もだ。確かにそれだけの逸材であれば一軍にいてもおかしくない。ただ1年に求めるものかと言われたら有り得なかった。逆に言えばこれを達成したなら一軍入りも納得せざるを得ない。皆は久里の反応を見る。するとそこには笑顔があった。
「いいね、交渉成立だ!」
沢村との話し合いの結果沢村が先に投げることに決まった。そして投げる前にに一言言い、沢村は叫びながら投げた。
「いっけーーー!」
最初は良かったものの途中から曲がってしまいフェンスには届かなかった。周りは遠投でカーブ投げんなよとか言ってるが片岡と久里は違った。
(へぇ、ムービングボールか。でもまだ扱いきれてないな。俺の敵じゃねぇ)
沢村は宣告通り片岡に投手失格を言い渡される。そして久里の番になった。周りはカーブ投げるんじゃねーぞなどとヤジを飛ばしているが久里は無視していた。緊張感が走る中久里は思いっきり投げる。素の勢いに片岡を含め全員が驚愕することになる。
「いっけーーー!」 スゥ
なんと片岡の投げた球を越えるどころかネットすら越えてしまったのだ。推定飛距離は120m超え。圧倒的だった。誰にも文句を言わせない姿があった。
その後も試験は続き、50m走は5秒7とトップになり、3000m走を8分台で走りこれまたトップ。打撃の飛距離は全て柵越えと言うこともあり合計、最長共にトップ。ここまでの成績でも怪物なのだが、肝心の投手能力に入る。
「久里!まずはストレートだ」
1年のキャッチャーのテストも兼ねてるので1年生が受けていたのだが、久里の140キロ超えの速球にキャッチャーは突き指してしまう。そこで片岡は御幸に受けさせることにする。まずは様子見のストレートを受ける。これも140キロ超えでミットを全く動かさないコントロールで投げるのだが御幸は気づいてしまった。
(こいつ本気で投げてねーな、別悪い球じゃねーが覇気がない。それにしても超重いなこいつの球)
そうこの時久里は本気で投げてなかった。御幸は一流の捕手で受けていたこともあり気付いてしまった。御幸はこの時、後で詳しく聞くことを決めた。
そして、変化球を次々投げていく久里、それをキャッチしてく御幸。スライダー、カーブ、シュートと全てのキレがすでに一級品であり一軍の投手陣を超えてると御幸は思う。
「最後はフォークで」
「了解」
久里は力感のないフォームから球を繰り出す。しかし、御幸はここで戸惑ってしまう。
(あのやろう!落ちねーじゃねーか!しかもはええ、ストレート投げやがったな!)
御幸はフォークと言われたのにストレートが来たことにびっくりし、慌ててカバーしようとした。しかし次の瞬間球が消えていた。そして腹にくる衝撃が襲った。
(ばかな!見えなかった。どんだけキレがいいんだよ)
結局久里は全ての項目で1位を取ってしまった。その日の夕方御幸は片岡に呼ばれていた。
「失礼します。なんでしょうか監督」
「久里の実力はどうだった」
「…全てが一級品でした。コントロールも変化球もスピードも」
「そうか」
「監督、久里を一軍に上げるんですか?」
「…最初はそんなつもりはなかった。しかし見て考え方を直されたよ。奴は紛れもなく天才だ。稲実の成宮と同等かそれ以上の」
「では」
「ああ、奴は明日から一軍だ」
久里は化け物、これ一般常識!
いまだにストレートを投げない久里からがストレート投げるのはいつになるのやら