もしよければ暇な時に見て頂けると幸いです
どうぞ
どうして…
どうして皆私のことを忘れてしまうの?
何でいつも一人にならなければいけないの?
大切なものを奪われる悲しみはいつしかそれをもたらす者に対する復讐心へと変わっていく.....
見上げると赤い流星が真っ黒な空を切り裂くように飛んでいた
浦の星女学院。それは内浦湾の西に張り出した岬に所在する田舎の小さな私立女子高校である。
入学式を終え新入生を迎えた浦女では部員獲得のための部活動勧誘が行われていた。
「青春を謳歌したいそこの貴方!入るなら是非ウチのソフトボール部に!」
「背が高いわね!バレー部の即戦力確実だわ!」
「お客さん、ちょっと良い話が…」
手頃な新入生を捕まえ連行するその様子は勧誘というよりキャッチセールスの所業である。
そんな賑わいの中、メガホンを片手に元気良く叫ぶ少女がいた。
「スクールアイドル部でぇぇぇぇぇぇす‼︎春から始まる!スクールアイドルぶぅぅぅぅ!宜しくお願いします!」
全身全霊、一語一語に魂を込めるようなその叫びは他のキャッチセールス、もとい部活動勧誘とは一線を画す程の迫力がある。
「貴方も!貴方も!スクールアイドルやってみませんか!?輝けるアイドル!スクールアイドル‼︎」
その声に誰もがハッとそちらを見やりーーーーーー
ーーーーーー逃げるように立ち去っていた。
新入生にとって浦女の部活動勧誘は精神的にかなり応えたようだった。
「スクールアイドル部です…」
何てこった。本当ならこの勧誘で沢山部員を獲得して浦の星女学院スクールアイドル部を結成する一歩手前まで来ていたところなのに。 だってあのスクールアイドルだよ!今色んな所ですっごく話題になってテレビにも出てるあの!
‥‥‥‥やっぱり誘い方が良くなかったのかなぁ 。
だいたい!うちの学校の部活動、勧誘のやり方をもうちょっと自重するべきだと思うんだけど。私が最後まで言い終わらないうちに皆んな逃げちゃったじゃん!
「千歌ちゃん......?」
隣にいる曜ちゃんが気まずそうに声をかけてきた。渡辺曜ちゃん。
浦の星女学院の高校2年生でウェーブの入ったボブカットがよく似合う運動神経抜群の女の子。私が私が幼い頃内浦に越してきてからいつも一緒。かけがえのない私の大切な友達。今もこうして私がやっている活動に付き合ってもらってます。
「うぅ.......今大人気の!スクールアイドルでぇぇぇぇす‼︎」
今思いの丈を思いっきり叫んでいる私の名前は高海千歌。曜ちゃんと同じ浦の星女学院の高校2年生で.......他は特に無いかな?私は曜ちゃんと違って普通だし。 ………ってそんな事はどうでも良くて!
私は今とっても夢中になっていることがあります。 あの日、秋葉原の巨大スクリーンで見たあの光景.....,9人の女の子たちが綺麗な声で歌いながら美しく、どこか悲しそうな様子で踊っているあの姿を見た時から。
私と同じ高校生が画面越しに放つその輝きは何に対してもあまり興味が無かった私の心にも火を灯してくれた。 私もあの9人、μ'sみたいにスクールアイドルをやりたい。輝きたい!
今はまだ前途多難だけど.......それでも胸の高まりが止まらないの!
今度こそ、本当に夢中になれるものを見つけたんだから。
決意を新たにした私はちょうど目の前を通りかかった二人のすっごく可愛い一年生に声をかけるべく飛び出した。
……私に背中を預けもたれかかっていた曜ちゃんが転んでしまったことに気づかずに。
ーーーー
人間たちは生きている。平和な日々をごく当たり前のものとして。その平和が積み木細工のように瓦解しかけていることも知らずに。もしくは目を背けているだけなのだろうか?
いずれにせよそんな中で光だの希望だの口にしている奴を見ると反吐が出る。存在するかも分からないものに縋り付くのは弱者の考えだ。
私は違う。 ……そもそもそんな心の余裕が保てる環境に身を置いたことが無いのだから。
ーー富士山・山中ーー
霧がかった樹海の中で二つの影が交錯する。その内の一方が霧の中から飛び出してきた。昆虫のような体に鋭い手足の爪。その姿は地球上に存在するはずのない異形の怪物を想起させる。
異形の怪物はその体躯からは想像も出来ないほどのスピードでもう一方の影に飛びかかった。
グシャッ
刹那、樹海の中に吸い込まれていく肉の塊を刺し貫いた衝撃音。
ギャアアアアアア
断末魔が響き渡った。
霧が晴れると先程の怪物が腹部を刺し貫かれていた。背中から棒状の何かが突き出ている。 その巨体が崩れ落ちると同時にもう一つの影の姿も露わとなる。
黒髪の少女がそこには立っていた。
「………」
少女は先程怪物を葬った黒い棒状の武器のようなものを手の中でくるくると数回回転させ付着していた白く濁った体液を振り払った。
かなり扱い慣れた様子でそれを懐にしまうと、今起きた状況にさして興味もない様子でその場を離れーーー
「待ってくれ!」
ーーその場にへたり込んでいた若い男が声をかけた。少女がいなければ人知れず山中で異形に喰われていたところである。
「危ない所を助けてくれて本当にありがとう。あの、さっきのあの化け物は一体ーー」
「スペースビースト」
「え?」
「覚える必要も無いですよ。すぐ忘れるから」
そう言い残し立ち去っていく少女。生気の感じられない冷たい声と光の宿らない双眸から放たれる視線に男は言葉を失った。
刹那、山中に白い光が降り注いだ。光が消滅すると化け物の死骸は消え男がただ一人取り残されていた。
「孤門君!」
自分の名を呼ぶ声に我に帰る。一緒に登山していた彼女が安堵した様子でこちらに駆け寄って来た。
「リコ!」
「良かった....気付いたら居なくなっちゃって......もう!こんな所で何してたの?」
「ご、ごめん!..........それより!大変なんだ!さっきまでここで....,」
「ここで?」
怪訝そうな顔をしながらその続きを促すリコ。
「ここで........................................あれ?」
「何してたんだっけ?」
辺りを覆っていた霧はいつの間にか消えていた。
ーー内浦・ダイビングショップーー
「着いたーー‼︎」
学校を終えた千歌と曜の二人は小型ボートで内浦湾を渡った先にある淡島のこじんまりとしたダイビングショップを訪れていた。
「遅かったね。今日は入学式だけでしょ?」
青髪のポニーテールを腰辺りまで伸ばした少女、松浦果南が柔らかな微笑みを浮かべながら二人を出迎えた。
松浦果南。浦の星女学院の高校三年生だが怪我のある父親に代わりダイビングショップの経営をしており現在休学中。そんな気苦労が多い中、不安や悩みを一切感じさせず明るく、生き生きと振るまう彼女の姿に果南の幼なじみである千歌と曜はいつも元気を貰っていた。
「うん、それが色々と.....」
「はい!回覧板と志満姉から!」
何か含むような言い方をする曜に構わず回覧板と袋一杯に詰め込まれた橙色の果実を渡す千歌。
「どうせまたみかんでしょ?」
「文句なら志満姉に言ってよ」
果南のからかう様な言い方に口を尖らせる千歌。
思った通りの反応に満足したのか果南はまた小さく笑った。
「それで、果南ちゃんは新学期から学校来れそう?」
ダイビングショップのテラスに設けられたベンチに腰掛けながら曜がここに来て一番聞きたかったことを尋ねる。
「うーん。まだ家の手伝いも結構あってね。お父さんの骨折ももうちょっとかかりそうだし.....」
よっと声を上げながら重さ20kgはありそうな酸素ボンベを軽々と運んでいく果南は華奢な体格にも関わらずかなりの力持ちだ。日頃行うトレーニングと肉体労働の賜物である。
「そっかぁ、果南ちゃんも誘いたかったなぁ..........」
「誘う?何を?」
「うん!私ね、スクールアイドルやるんだ」
「っ!」
僅かに果南の動きが止まったことに二人が気付くことは無かった。
「ふうん.........でも私は千歌たちと違って三年生だしね」
「知ってる?凄いんだよ〜〜〜スkむぎゅっ」
スクールアイドルの素晴らしさを滔々《とうとう》と語り始めようとする千歌の口に果南が持ってきた干物を押し付けた。
「はい、お返し♪」
「また干物〜?」
「文句ならお母さんに言ってよ」
先程と全く同じやり取りに思わず声を上げて笑う曜。それにつられて千歌と果南も笑い出した。
代わり映えこそしないものの、何物にも替え難い平和な日常がそこにはあった。
三人はいつまでもこんな日々が続くものだと思っていた。
暖かな春の日差しに潮の満ち引き。夕日に照らされ海はユラユラと輝いている。
そして、内浦の海から吹いていた暖かな風がピタリと止んだ
ーーー刹那
「ーーーー!!!!!!」
大地を揺るがし、空気を震撼させる野獣の様な咆哮が内浦にこだました
「きゃああああああああ‼︎!」
「千歌、曜、大丈夫⁉︎」
「いたたた.....何、今の....................ッ!?」
先程の衝撃で転んでしまった曜が頭を抑えながら立ち上がり、ふと海を見やるとその異様な光景に絶句した。
「どうしたの?曜ちゃん?一体何が見え..........た...........の...」
沖合に赤黒い巨大な渦潮の様なものが出現していた。
そしてその中から体長40mを超える巨大な怪物が這い出してくる。
ーーーアンフィビアタイプビースト
・フログロスBーーー
「ーーーー!!!!!!」
カエルの様な姿をしたビースト・フログロスは、産声を上げるようにもう一度咆哮すると、その首を淡島の沿岸部にむけーー緑色の火球を放った
たちまち火の海と化した沿岸部一体。
辺り一体に充満する油のような匂い
火傷を負い、火ダルマになりながら逃げ惑う人々
絶えず響き渡る悲鳴
殺戮が、始まった。
「今度のは随分大きいね」
黒髪の少女は近隣の高台からフログロスが街を蹂躙する様子を眺めていた。
【来たか.....】
「ファウスト、あれもビーストなの?」
【当然だ。今までお前が倒していたのはあくまで小型のビースト。本来スペースビーストは40mを凌駕する個体が殆どを占めている】
目に見えない何者かと会話する少女。もちろんその場には少女一人しか居ない。少女は昂ぶる感情を抑えるように拳を握り締める。
【無駄だ。今のお前では奴を倒すことは不可能だ】
「馬鹿言わないで。あいつらを皆殺しにしないと私は永遠にこの苦しみから逃れられないんでしょ⁉︎」
【黙って続きを聞け】
「!」
少女の体の中から聞こえる声は得体の知れない威圧感と冷淡さを孕んでいる。
【安心しろ。この時のために私が居る】
【お前に与えているダークエボルバーは本来振り回して扱うような物では無い】
【私と
「適能者....?何を言ってるの?」
【私に体を貸せと言っている。そうすればお前は私の姿となり戦うことが出来る】
「............」
【どうした?私の持つ闇の力がそんなに怖いか?】
先程の威圧感はなりを潜め、穏やかな様子で少女に話しかける声の主ーーファウスト
【恐れることは無い。お前は特別だ。そこらの有象無象の雑魚とは違い力がある。憎しみがある。絶望を知っている】
【そんなお前なら私の闇の力を使いこなす事ができる。何故私がお前にここまでの事が言えるか分かるか?】
無言で俯いている少女になお言葉を続ける
【私がお前の唯一の理解者だからだ】
「ふっ」
初めて微笑みを見せる少女。
【何が可笑しい?】
「確かにそうだよね。貴方だけだった。私を見てくれたのは.....」
自虐するように少女は呟いた。
「貴方とはこれまでずっと一緒だった。だから、今度は貴方と共にあれを..........殺す‼︎」
【それで良い.........さぁ、楽しませてくれ】
【
ーーー刹那、少女の持つダークエボルバーが紫色に輝き、辺り一体がドス黒い瘴気に包まれた
「果南ちゃん!大丈夫⁉︎すぐ退かしてあげるから!」
「や....いやぁ.....」
先程フログロスが放った火球の一つがダイビングショップの近くに着弾し、その爆風でダイビングショップが倒壊してしまった。果南はそのガレキに片足を挟まれ、動く事が出来ないでいる。
曜は必死にガレキを退かそうとしているが千歌はショックで全く動けずにいた。
「千歌、曜.....早く逃げて.........」
「逃げたいよ私たちだって‼︎お願いだから、早く抜けてよぉ....」
涙を流しながら懸命にガレキをに手を突っ込む曜の手からは血が滲んでいる。
「でも!このままじゃ三人共....」
フログロスは小島を破壊しながら突き進み、3人のいる陸地まで上陸しようとしていた。
ブクブクと太った様なその体から油の様な体液を撒き散らしている。
「ひっ.....」
そのおぞましい姿に三人共腰を抜かし、動く事が出来なくなった。
その瞬間
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ァァァ!!!!!!」
フログロスの頭上から無数の紫色の光弾が降り注ぐ
「ーーーー!!!!!!」
突然奇襲を受け絶叫しながらその場に倒れるフルグロス。
「え?」
訳が分からない三人は突然光弾が降り注いだ上空を見上げる。
上空より舞い降りた禍々しい光。
灼熱の炎が暴威を持って払われると、やがてそれは巨大な人型へと姿を変えていく。
「巨人……?」
平和な日々が終わりを告げたその日、内浦の海に黒い巨人が降り立った。
というわけでネクサスよりも先に登場してしまったダークファウストさん
ネクサスに出てくるウルティノイドってとても魅力的ですよね
次回はダークファウストvsフログロスの戦闘がメインになります