模造巨人と少女   作:Su-d

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「楽しいの天才」 素晴らしい曲です 


10.守りたいもの

新宿大災害。

 

今から丁度12年前の12月8日・午後2時15分、新宿に突如巨大隕石が落下。670名もの犠牲者を出した。新宿一帯は壊滅状態となり復興には5年の歳月が費やされたが、何故か詳細な記録は何処にも残っていないという。報道関係者は政府が何らかの隠蔽工作を行ったと––––––– 

 

 

 

宙はそこまで読むとスマホの画面を閉じる。千歌から話を聞いた後、自分なりに調べてみたがめぼしい情報を得ることが出来ず、何処を調べても新宿大災害が起きた日付・時間・犠牲者の数しか出てこなかった。

 

大きく息を吐くとベッドに寝っ転がる。

この部屋には宙一人しかいない。いつまでも二人で寝るのではなく、プライベートな空間を確保する事も必要だということで空いている部屋を一つ貸して貰ったのだ。

 

「千歌さん……」

浴室での出来事を思い出す。千歌は儚げな表情をしながら笑っていた。

 

 

 

 

「私ね、昔は東京に住んでたみたいなんだけど…新宿大災害で家が無くなってからはおじいちゃんとおばあちゃんが経営してた十千万に引っ越してきたんだ。それからずっとこっちで過ごしてきたから東京にいた時の記憶が殆ど無いの。だからお母さんがどんな人だったか全然思い出せなくて…酷いよね。親の顔すら思い出せないなんて」

 

「………ごめんなさい」

 

「謝るのは私の方だよ。ごめんね。いきなり重い空気にさせちゃって。でも大丈夫。私はお母さんの分まで精一杯生きていくって決めたから。寂しくなんてないよ。………よし!そろそろ上がろっか。明日も朝早くからランニングがあるしね!」

 

 

 

私は彼女にかける言葉が何も見つからなかった。安易な同情はかえって彼女の心を傷つけてしまうだけだろう。そもそも私も少し前まで闇の巨人としか(・・・・・・・)会話出来ない存在だった。彼女を励ませるような立場であるはずも無い。

 

(そもそも私の親は何で何処にも居ないのよ…)

 

あれこれ考えているうちに瞼が重くなってくる。瞳を閉じると数分たたずに宙は規則正しい寝息を立て始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー翌朝・淡島神社ーー

四人の少女が淡島神社に続く長い階段を駆け上っていた。

「無理よ流石に…」

梨子は息も絶え絶えになりながらそう呟く。運動能力が千歌、梨子に比べかなり高い曜でさえ疲労で今にも膝を折りそうになっている。

 

「でも…μ'sだって階段登って鍛えてたって!」

 

「こんなに長かったの⁉︎」

 

「こんなの毎日登ってたら体が保たないわ…」

3人は踊り場に差し掛かるとヘナヘナと座り込んだ。近くには看板が立ててあり、「がんばって」と書かれてある。

 

「頑張ってる人達に向かって『頑張れ』って何か少し違いません?そこは労いの言葉でしょう普通」

その看板と睨めっこをしている宙。

 

「宙ちゃんは疲れてないの?」

梨子が訪ねてくる。

 

「はい!私は大丈夫です。皆さん、もししんどかったら私を遠慮無く頼って下さい。三人くらいならおんぶか抱っこしながら降りる事が出来ますから!」

 

「はは…やっぱりウルトラマンの力は凄いや…」

ガッツポーズする宙を見て三人は力無く笑う。

 

「あ!皆さん水分補給されますか?タオルも持ってきましたよ。」

背負っている鞄からテキパキと物を出すその姿は完全にマネージャーの姿だった。

 

「ありがとう!」

千歌達はそれを受け取る。

 

「ここまでして貰えるなんて…まさに良妻賢母だよ!」

 

「何かちょっと違う…」

梨子は曜の言葉をやんわりと否定する。

 

「脱ぎ癖さえ無ければ……宙ちゃん、まさか外で裸になったりなんてしてないよね?」

千歌の言葉に宙はボトルを取り落としそうになりながら慌てて首を横に振った。

 

「まさか!千歌さんに一度注意されてるんですよ。そんな事するわけ無いじゃないですか。」

 

「あれ?千歌!」

突然上の方から声がかかる。青髪のポニーテールの少女がこちらに向かって駆け下りてきた。

 

「果南ちゃん!」

 

「お知り合いですか?」

 

「うん。私達の幼馴染だよ。果南ちゃん、こちらは高海宙ちゃ–––––––––どうしたの?」

 

果南は宙をまじまじと見つめ唸っている。

 

「どっかで会った事あるような…あーーー‼︎‼︎思い出した!」

突然大声をあげ宙を指差す果南に千歌達はビクリと身を震わせる。

 

 

「あの時の………露出狂だぁぁぁ!」

 

 

 

 

「補導されちゃうからやめてって家であれ程言ったのに…どうして!どうしてなの宙ちゃん!」

 

「ひ、人違いです!私にはこれっぽっちの心当たりもグエッ」

必死に弁解しようとするが肩を掴まれ揺さぶられる所為で上手く言葉を話す事が出来ない。

 

「千歌、その子から離れて!」

そう言うと果南は千歌達を自分の後ろへと隠し宙を睨みつける。

 

「その子は宇宙人なんだから!」

 

「あ、うん。えーと」

宙がダークファウストに変身する事を既に知っている千歌達は反応に困っている。

 

宙が弱々しく手を上げた。

「あの…せめて弁解の余地を。貴方はいつ何処で私と会ったんですか?私は貴方の顔に全く見覚えがありませんが」

 

「それは…」

果南は話し始めた。その話によるとフログロスの襲撃があった翌日、近くの湖で宙が全裸で水浴びをし、UFOのような物体を呼び寄せていたと言う。

 

(うわ…よりによって一番見られたくないところ見られた)

 

 

千歌が小声で話しかけてくる。

(宙ちゃん私達と会う前は冷たい水で体洗ってたの⁉︎)

 

(しょうがないじゃないですか。お風呂なんてありませんでしたから。結構気持ち良いんですよあれ…)

そこまで言って宙はある事に気がつく。

 

(ちょっと待って。何で果南さんっていう人もビーストに襲われた記憶が残ってるの⁉︎)

 

千歌、曜、梨子、果南。TLTの記憶忘却装置(レーテ)の影響を受けない人間はこれで4人目だ。吉良沢はレーテの影響を受けない人間もごく稀に存在すると言っていたから故障しているわけでは無さそうだ。それでも周りにこれ程ホイホイといるものなのか。

 

(何か因果関係がありそうね………って今はそうじゃなくて!)

 

 

とにかく何とかして誤魔化さなければ。既にTLTとの規約を破っているのだ。千歌達以外にダークファウストの事を知られるのは非常に不味い。

水浴びは百歩譲って良いとしてダークストーンフリューゲルの件は要らぬ勘違いを産みかねない。

宙は声を震わせながら必死に喋り始めた。

 

「えっとですね……違うんです!あ、あれはその……そう!ドローンです!遊んでたんですよ!」

 

「エェ!?あれで自分の体を撮影してたの?どんな趣味よそれ⁉︎」

話せば話す程どんどん話がおかしな方向に進んでいく。宙が頭を抱えそうになったその時–––––

 

「果南ちゃん!」

千歌が果南と宙の間に割って入った。

 

「宙ちゃんを疑うのは辞めて。確かに宙ちゃんはちょっっっっと変な所もあるけどとっても優しい女の子なの。」

 

「そうだよ果南ちゃん。朝から夜まで私達の練習に付き合って一緒に頑張ってくれるんだよ?」

 

「今も私達の為に色々準備してくれてたんです。」

曜や梨子も宙をフォローする。

 

「ここで練習?何の練習してたの?」

 

「鍛えなくちゃって。ほら!スクールアイドルで!」

 

「ふぅん………」

突然宙の目の前に手が差し出される。

 

「そっか。分かったよ。疑ってごめんね。私の名前は松浦果南。千歌達の幼馴染で一つ年上なの。宜しくね、宙ちゃん。」

宙は胸を撫で下ろしながらその手を握る。

 

「よ、宜しくお願いします。」

 

「うん。あ、私は店開けないといけないからこれで。千歌達も、頑張りなよ。」

果南はニコッと微笑むと凄いスピードで階段を駆け下りていった。それを見て思い出したように曜が驚く。

 

「もしかして果南ちゃん上まで走って行ったの⁉︎」

 

「息ひとつ切れてないなんて… 」

梨子も茫然と果南の姿を見つめたままでいる。

 

「上には上が居るって事なんだね。」

 

「私達も、行くよ〜」

千歌は弱々しく拳を振り上げた。

 

(あれでごまかせるのね…)

宙は果南が機械音痴だということが分かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー浦の星女学院・1年生教室ーー

「えぇっ!?スクールアイドルに?」

 

「うん。」

出会い頭に花丸にスクールアイドルに入ってみたいと告げられルビィは仰天する。

 

「どうして?」

 

「どうしてって…やってみたいからだけど…駄目?」

 

「全然!でも花丸ちゃんあんまりそう言うの興味なさそうだったから…」

 

「いやあ、ルビィちゃんと見ているうちにいいなぁって… ルビィちゃんも一緒にやらない?やってみたいんでしょう?」

花丸は俯いているルビィの顔をゆっくりと覗き込む。

 

「でもルビィ…人前で話すの苦手だし…お姉ちゃんが駄目って言うかもだし…」

 

「そっか…じゃあこうしない?」

そう言うと花丸はルビィにそっと耳打ちする。ルビィは大きく目を見開いた。

 

「体験…入部?」

 

 

 

 

ーースクールアイドル部 部室ーー

「本当⁉︎ 」

千歌が目を輝かせながら花丸とルビィに詰め寄る。

 

「はい。」

「宜しくお願いします!」

花丸は大きく頷きルビィは背筋を伸ばした。

 

「やったあ………やったーーー!!!!」

喜びで目に涙を浮かべながら千歌は驚異的な跳躍で部室の外に飛び出す。千歌が入学式の時からずっと誘っていた二人が遂に体験入部ではあるがスクールアイドル部の部屋を訪れてくれたのだ。

千歌は着地する瞬間踵を素早く返し、梨子、曜、宙の3人に飛びついた。

 

「わぷっ」

 

「これでラブライブ優勝だよ!レジェンドだよ!」

 

「千歌ちゃん待って。体験入部だよ?」

 

「体験入部?」

首を傾げる千歌に梨子が優しく説明する。

 

「そう。要するに仮入部って言うか…お試しって事。良さそうだったら入るし、合わなかったらやめるって事。」

 

「そうなの?」

 

「いや、まぁ色々あって… 」

花丸、ルビィの二人は気まずそうに笑う。

 

「もしかして生徒会長の事?」

曜の言葉に花丸は神妙な面持ちで首肯する。誰も笑顔で教室のポスターに向かって歩いていく千歌に気付かない。

 

「はい。だからルビィちゃんの事はダイヤさんには内緒で…」

ルビィが悲しそうな顔をする。宙はその様子をいたたまれない様子で見つめていた。

 

(ルビィさんの姉は生徒会長・黒澤ダイヤさんで…スクールアイドル部は認めないと言っていたみたいですね。そう言えば音ノ木坂の生徒会長さんも最初μ'sの活動を快く思っていなかった…生徒会長はスクールアイドルが嫌いでなければならないみたいな決まりでもあるんでしょうか?)

 

宙の横で千歌が元気良く叫ぶ。

「出来た!」

ポスターには既に二人の名前が新入部員として書き込まれていた。

 

「何やってるんですか⁉︎」

宙が絶叫しながら千歌からマジックを奪い取る。

 

「千歌ちゃん…人の話は聞こうね。」

 

 

ーーー

 

 

「じゃあ取り敢えず、練習やって貰うのが一番ね。」

梨子はそう言うと大きな紙を広げると、そこには練習スケジュールが綿密に書き込まれていた。

 

「わぁぁ…」

全員が息を飲む様子を見て梨子は得意げに胸を張る。

 

「色々なスクールアイドルのブログ見て作ってみたの。」

 

「本物のスクールアイドルの練習…」

ルビィで胸の前で手を組み喜びを露わにする姿を見て花丸は優しく笑った。

 

 

ーー校庭ーー

練習スケジュールは確立できたものの、Aqoursには重大な問題があった。

 

「練習どこでやるの?」

練習する場所が確保できていないのだ。

 

「中庭もグラウンドも一杯だね。部室もそんなに広くないし… 砂浜は駄目なの?」

梨子は首を横に振る。

「移動の時間を考えると…出来たら学校内で練習場所は確保したいわ。」

 

そんな三人を見てルビィが手を上げた。

「あの!屋上!μ'sはいつも屋上で練習してたって!」

 

「そっか屋上か… 」

 

「行ってみよう!」

 

ーー屋上ーー

「うわあぁぁぁぁぁ!すっごーい!」

屋上からの眺めは想像を絶する程美しかった。視界一杯に海が開けており、幾重にも繰り出される波の間を縫うように航行する船は太陽の光を反射し時折キラキラと輝いている。

 

「富士山クッキリ見えてる!」

 

「でも日差しは結構強いかも… 」

花丸は片手を額の上に乗せ日差しを避けようとする。室内で過ごすことが多かった彼女にとって照りつける太陽の光はかなり刺激が強かった。

 

「それが良いんだよ!太陽の光を一杯浴びて…海の空気を胸いっぱいに吸い込んで…あったかい!」

千歌が地面手をつけると他の皆もそれに倣う為に彼女の元に駆け寄っていく。

 

「え⁉︎」

その光景を少し距離を置いて見守っていた宙は息を飲む。千歌、曜、梨子–––––5人が集まろうとした時に脳裏に何かが浮かび上がった。

 

太陽を背に、大地に雄々しく立つ銀色の巨人。胸には翼のような形状の巨大なクリスタルのようなものが埋め込まれている。

 

途端に宙の体の内に潜むダークファウストの力が強く反応した。

 

「ぐぅ⁉︎」

鼓動が早まり、視界が望遠レンズを逆側から覗いたように遠くなる。体の内から込み上げてくるドス黒い感情。

–––––それは憎悪だった。

宙はその感情に飲み込まれないように頭を必死に抑える。

 

「大丈夫ですか?」

気がつくと花丸が心配そうにこちらを覗き込んでいた。途端に先程の黒い波動はなりを潜めていく。

 

「宙ちゃん、大丈夫?調子悪いの?」

千歌の言葉に宙は首を横に振る。

 

「…いえ、大丈夫です。それより!練習始めましょう?」

 

 

 

「ワンツースリーフォー、ワンツースリーフォー」

曜の合図に合わせて千歌とルビィがステップを踏む。

 

(凄い……ほんの数分の練習で振り付けをほぼ完璧に身につけている)

ルビィの動きを見て宙は感心していた。

 

「出来ました!千歌先輩!」

ルビィは笑顔で千歌の方を向くと何故か千歌はハニワのようなポーズをとっていた。

 

「あはは…私はどうかな?」

 

「千歌さんは…もう一度最初からやった方が良いですね。」

 

休憩していると千歌と梨子が歌詞の言葉で話し合いを始めた。音楽の知識をあまり持ち合わせていない宙は休んでいる1年生二人に声を掛ける。

 

「二人共、お疲れ様です。楽しそうにして貰えて何よりです。」

 

「ありがとうございます!」

ルビィが元気良く答え、花丸はおずおすと宙に向かって話しかける。

 

「あの…宙先輩は一緒に練習しないんですか?」

 

「私はマネージャーですから。皆さんのサポートが仕事です。」

それを聞いた花丸とルビィは仰天する。

 

「そうなんですか⁉︎凄く綺麗だからてっきりスクールアイドルなのかと」

 

「良いんですか本当に⁉︎」

その言葉を聞き宙は苦笑する。

 

「まぁ…私は」

その瞬間宙の携帯がけたたましい音で鳴り始めた。瑞緒からだ。

 

「もしもし。」

 

「もしもし⁉︎あぁ!宙さん!良かった…アパートに居ないからてっきり夜逃げしたのかと思ってましたよ!」

その言葉で宙は漸く気がついた。千歌の家に居候させてもらっているのを報告し忘れていた事を。

 

「すみません!私住む場所を暫く変えた事すっかり伝え忘れてました!」

 

「住む場所を暫く変える⁉︎一体何が何だか…と、とにかく!今何処にいるんですか?」

 

「今は学校です。友達と部活動を…」

 

「友達⁉︎部活動⁉︎やったぁぁぁ!ねえ聞きましたイラストレーター?宙さんに友達ですって!」

あまりのテンションの高さに圧倒され宙は携帯から耳を遠ざける。

 

「…すみません。取り乱しました。取り敢えず、最近の事を色々と聞きたいんです。良いですか?」

瑞緒は宙の周囲の人間に情報を秘匿する為敢えて主語を濁らせる。宙は出来れば今すぐにフォートレスフリーダムに来て欲しい、という意思を素早く汲み取った。

 

「分かりました。すぐ向かいます。私も聞きたい事があるんです。」

 

「え?いやあの車を向かわせますy」

言い終わらない内に宙は携帯を切り、宙は千歌達に頭を下げる。

 

「すみません!ちょっと用事ができたので帰らせて頂きます。何かあったら連絡下さい!」

言い終わると同時に凄いスピードで部室を飛び出した。千歌達が慌てて宙の姿を捉えようとするが彼女の姿はもう何処にも無かった。

 

 

 

 

 

 

ーーTLT・フォートレスフリーダムーー

基地周辺を警戒する隊員に瑞緒から貰った通行許可書を見せ、宙はダム内部の巨大要塞に入る。

 

 

 

 

「…すみません。誰ですか?」

瑞緒に会い、住んでる場所の報告をしなかった謝罪を即敢行すると開口一番にそう言われた。

 

「え?いや誰って…貴方達に呼ばれてきたんですけど。覚えてませんか?」

宙は困惑しながら首を傾げる。

 

「あ、それと吉良沢さん、あの時はいきなり蹴ってしまってすみません。お詫びと言ってはなんですが…これ、もし良かったら」

そう言って宙はいつ持ち出したのか、鞄の中から十千万の温泉まんじゅうを取り出す。

それを見て瑞緒は後ろを向いた。

「イラストレーター、このただただ可愛い少女は一体誰ですか?」

 

「彼女にそうなって欲しいと願っていたのは君だろう…」

 

「いや、にしても変わりすぎでしょ⁉︎何ですかこれは?イラストレーターを蹴り飛ばそうとしてた時のあのギラギラした目は何処に行ったんですか⁉︎」

 

(驚いた…まさか実際に同じ年頃の人間と触れ合わせる事がここまで彼女に影響を与えるとは……)

イラストレーターこと吉良沢も彼女の変わり様を見て驚いている。

 

「取り敢えず、何があったのか話してくれませんか?お茶でも飲んで」

瑞緒はいきなりとんでも無いほど変化してしまった宙を少し警戒しながらそう言った。

 

室内一体が驚くほど真っ白な部屋で宙は瑞緒、そしてイラストレーターのホログラムと向かい合っていた。周囲に武装した隊員達が控えている気配を感じるが、宙が最初に基地内でしでかした事を踏まえればしょうがないだろう。

 

別の部屋で監視カメラと計器を用いて研究員達がその様子を観察している。

 

「…驚いたな」

一人の研究員が計測結果を確認しながらそう呟いた。

 

「ウルティノイドとの融合係数に先程から全く変化が見られない。他の計測値もそうだ。…彼女から一切の敵意を感じられない。前回の数値が嘘のようだ。」

 

「となると本当にただ話をする為だけに来たのか……」

 

 

 

 

宙は瑞緒とイラストレーターの二人に初めて千歌達と出会った時の事、その優しさに触れた事…仲を深める事ができ、彼女たちが立ち上げた部活動・スクールアイドルに入部した事を話した。…ダークファウストやTLTの事が3人にばれてしまったのを隠しながらではあるが。

 

瑞緒は嬉しそうに何度も頷いている。

 

「成る程成る程。本当に素晴らしい学生生活を送れてるわけですね。」

 

「と言ってもまだ2日しか経っていませんけどね。」

 

「でもでも、宙さんがその千歌さんや曜さん、梨子さんって言う方の事が大好きだって事はよく伝わりましたよ。特に千歌さんの事とかね」

 

「そっそれは……大好きです。友達として」

顔を真っ赤にしながら宙はそう答える。

 

「あぁ…ちょっといじってみても怒らずしおらしい反応をするだけなんて…前までだったら私今頃首チョンパですよ!」

そう言って瑞緒はわははと笑う。

 

イラストレーターはそんな彼女を見ないようにしながら宙に問いかける。

 

「君の中に宿る巨人…ダークファウストとはどうなっているんですか?」

 

「……!」

 

「あまり上手くいっていないみたいだね。」

 

「………はい。」

 

「まぁそれもしょうがないのかもしれない。彼は闇の巨人。光の巨人とは対をなす存在だからね。」

宙の頭に「光の巨人」のワードが引っ掛かった。

 

「光の巨人……ですか?」

 

「かつて幾つもの宇宙の危機を救ったと言われる銀色の巨人。光を具現化したようなその姿を見てそう呼ばれていたと来訪者から聞いています。」

 

「私…その『光の巨人』の姿を知っているかもしれません。」

 

突然イラストレーターが身を乗り出してきた。

「いつ見たんですか⁉︎詳しく聞かせて下さい。」

 

宙は話し始めた。今日学校の屋上で起きた出来事を話した。–––––脳裏に浮かんだ銀色の巨人、そしてAqoursの何人かがスペースビーストに襲われた記憶が残っている事を。

 

「……何と言う事だ」

イラストレーターも瑞緒もその話を聞いて唖然としている。

 

「どうかしたんですか?」

宙は怪訝そうな顔をする。

 

「光の巨人は1つの星に降りたった際、その星の知的生命体に力を与え自分の力を使わせる事が出来る。光の巨人に憑依され得る力を持つ生命体は『適能者』と呼ばれるんだ。」

 

「『適能者』は本来光の巨人に選ばれる前から周りとは違い特別な能力を持っている。我々が使用する記憶忘却装置『レーテ』の影響を受けないのもその特別な能力の内の一つだ。」

 

「じゃあまさか千歌さん達も……」

 

「ええ。」

イラストレーターは大きく首肯する。

 

「『適能者』となり、光の巨人と化して戦う事が出来る可能性を間違い無く秘めているでしょう。」

 

宙は見開いた目を閉じる事が出来なかった。

 





次の回でようやく戦闘です

あと5話以降出番が無かったオリ敵を出す予定なのでどうか忘れてあげないで下さい
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