模造巨人と少女   作:Su-d

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強化形態に憧れる今日この頃 

ウルティノイドには……ありませんね
いつか自分で考えて出すかもしれません


16.ヨハネ堕天

空が爆ぜ、大地が揺れる。堅牢な作りをした高層ビルは砕け散り、猛烈な業火がアスファルトを削りながら爆進する。

 

「お母さぁぁぁぁぁぁぁん!」

ガレキの中で、5歳にも満たない小さな子供が地面にへたり込みながら泣き叫んでいた。

 

 

 

「美しい……!」

 

その光景が投影されたモニターを食い入る様に見つめていた少年は感嘆の吐息を漏らす。

使命……義務……平和。何て陳腐な言葉だろう。聞いているだけで耳が腐りそうだ。こんな物が自らの心と体を縛っていたと思うと虫唾が走る。

それに比べてこの方はどうだろう。何にも縛られず感情の赴くままに全てを破壊し、踏み潰し、蹂躙する。僕を見下していた人間を殺して、殺して、殺して、殺して、殺して、殺して、殺して、殺して、殺して、殺して、殺して、殺して、殺して、殺して、殺して、殺して、殺して、殺して、殺して、殺して、殺して……………まるで粉塵のように蹴散らされていく。神にも等しき力とはこの事だろう。

 

不思議とこの方が言っている事が分かる気がする。楽しそうな声が頭に響いてくる。

 

 

 

「燃エロ……人間ドモヲ焼キ払エ………‼︎ハハハハハハ‼︎」

 

 

 

いつの間にか少年は滂沱の涙を流していた。画面の中にいる者の姿、声、体を駆け巡る黒い激動………その全てに魅入られていた。

 

一瞬彼と目が合った気がした少年は即座に地面に手を付き、平伏した。

 

「僕、貴方という存在に深く感銘を受けました………!あのクラゲ擬きが言っていた奴なんかとは比べ物にならないくらい」

モニターに向かって愛おしそうに手を伸ばす。

 

「ここに誓わせて下さい。僕が貴方を必ず…………取り戻すと」

 

モニターに映し出されているのは巨大な黒い翼を持つ悪魔。太陽を背に据え燃え盛る新宿を睥睨するその姿は見る者にある種の美しささえも抱かせる。この怪物がもたらした惨劇が地球での長い戦いの嚆矢となった。

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マネージャーの嘔吐騒動があった翌日。

頭にシニョンを作った1人の少女が通学路を堂々たる足取りで歩いていた。見慣れない顔なのか、はたまたその綺麗な顔立ちに圧倒されたのか、道行く生徒達は皆足を止め少女の方を凝視している。その少女、津島善子はたおやかな微笑みを浮かべながら立ち止まっている生徒たちの横を通過した。チラリと横目で反応を確認。

 

(ふふっ見てる見てる。花丸の言った通り前の事は覚えていないようね)

 

途中、既に入学式の時に同じ教室にいた生徒達とも顔を合わせていたのだが、誰も堕天使キャラを解放していた時の事を覚えている素振りを見せなかった。今追い越した生徒達も自分と同じクラス………これはいけると確信する善子。

 

(よし!)

彼女は微笑みを浮かべながらクラスメートに向かって振り返った。

 

「おはよう。」

その表情は昨日まで不登校だったとは思えない程晴れ晴れとしたものだった。

 

「お、おはよう…」

 

 

 

ーー浦の星女学院・一年生教室ーー

早速善子の席の周りには沢山の生徒が集まり、人だかりができていた。

 

「雰囲気変わってたからびっくりしちゃった。」

「皆んな心配してたんだよ。どうして休んでるんだろうって。」

皆口々に学校に復帰した善子を労う言葉を掛けている。

 

「ごめんね。でも今日からちゃんと来るから、宜しく。」

善子は口元に手を当てながら優雅に振る舞い対応する。元々明るく物怖じしない性格であるため、彼女は数ヶ月のブランクをものの見事に挽回していた。

 

「こちらこそ。津島さんって…名前、何だっけ?」

「酷いなあ。あれだよ、あの…」

「何だっけ?よ…ヨハ」

 

刹那、善子は椅子を倒しそうになりながら勢い良く立ち上がる。

「善子!私は津島善子だよ!」 

 

 

 

 

 

 

その様子をルビィと花丸は嬉しそうに見つめていた。

「津島さん、今日はちゃんと学校来たね。」

 

「ずらっ。マルがお願い聞いたずら。」

 

「お願い……昨日の事だよね?」

 

 

 

 

◇◇◇

 

「監視?」 

 

「そう。私気が緩むとどうしても堕天使が顔を出すの。だからお願い!」

 

◇◇◇

 

「『危なくなったら止めて』っと!」 

 

「堕天使が顔を出す……?どうゆう事なんだろ」

クラスメートと何処となく苦しげに談笑する善子を見てルビィは首を傾げる。

 

「津島さんって趣味とか無いの?」

不意に1人のクラスメートがそう尋ねてくる。

 

「趣味?と、特に何も…」

無い、と言い切ろうとする直前、善子に電流が走る。

(いやこれは!クラスに溶け込むチャンス⁉︎ここで上手く好感度を上げて…)

 

「う、占いをちょっと…」

 

「本当?私占ってくれる?」

「私も私も!」

 

「良いよ!えっと…じゃあ…今、占ってあげる…っね?」

 

その言葉に沸き立つクラスメート達。そんな中、善子は魔法陣が描かれた黒い布を取り出す。黒いフード付きの服を見に纏い、シニョンに黒い羽を取り付け……

 

「え?」

いきなり奇抜な格好をし始めた善子を見て何かがおかしいと困惑し始めるクラス一同。

 

「これで、よし!じゃあ、これに火を付けてくれる?」

クラスメートの1人は目の前に差し出された蝋燭に戸惑いながらも火をつけ、

 

『天界と魔界に蔓延る遍く精霊…煉獄に堕ちたる全ての眷属に告げます……』

 

 

突如猛威を奮い始めた彼女の堕天使は花丸が蝋燭の火を消すまで止まる事はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーースクールアイドル部・部室ーー

 

「どうして止めてくれなかったの⁉︎折角うまくいきそうだったのにぃ〜〜⁉︎」

善子は部室の机の下で膝を抱え込み、すっかり意気消沈していた。机の上には先程彼女が使用していた蝋燭、衣装、八芒星の描かれた黒い布、シニョンに取り付ける黒い羽が申し訳無さそうに身を寄せ合っている。

 

「まさか学校にあんな物持ってきてるとは思わなかったずら……」

 

「どういう事?」

 

ルビィは事情が分からない二年生に説明する。

「ルビィもさっき聞いたんですけど、善子ちゃん中学時代自分が堕天使だったと思い込んでたらしくて……まだその頃の癖が抜け切って無いって」

 

不意に善子はすくっと立ち上がる。

「分かってるの。自分が堕天使のはずなんてないって。そもそもそんな物いないんだし」

 

「じゃあどうしてそんな物持ってきたの?」

 

「それは、まぁヨハネのアイデンティティみたいな物で…あれがなかったら私は私でいられないっていうか!………ハッ‼︎」

左手を顔の前に構え……無意識に堕天使のポーズをとってしまった善子を見て梨子は若干引き気味になっている。

 

「何か……心が複雑な状態にあるということはよく分かった気がするわ」

 

「ですね。実際今でもネットで占いやってるみたいですし……」

 

「えがお動画」のコメント付き生配信には3日前……丁度千歌・曜・梨子の3人が宙の家に泊まりに行った時に配信されていたものが映っていた。

 

『またヨハネと堕天しましょ……』

慌てて善子はパソコンの画面を閉じる。

 

「わーーー‼︎とにかく私は普通の(・・・)高校生になりたいの!ねぇお願い!何とかして!」

目に涙を浮かべながら善子は花丸に向かって必死に懇願する。

 

「可愛い……」

いつの間にか再び画面を開き善子の生配信を視聴していた千歌が唐突にそう呟く。

 

「へ?」

 

「これだよ!津島善子ちゃん!いや、堕天使ヨハネちゃん!スクールアイドルやりませんか?」

 

「…………何?」

話がいきなり変な方向に進み善子は千歌から目を逸らして呟いた。

 

 

 

 

 

 

ーー十千万旅館ーー

 

「これで歌うの⁉︎こ、この前より短い……これでダンスしたら流石に見えるわ」

 

「ダイジョブーー!」

 

「そういう事しないの!」

体操ズボンを履き遠慮なくスカートをたくし上げる千歌を見た梨子は慌てて元に戻す。

 

「良いのかなあ本当に……」

 

「調べたら堕天使アイドルなんていなくて、結構インパクトあると思うんだよね」

 

「確かに、昨日までこうだったのが……」

曜はベッドに置いてある以前のライブで着ていた衣装を見た後、千歌達を見やる。そこにはゴスロリを身に纏ったAqoursの面々。

 

「こう変わる」

 

「うぅ……何か恥ずかしい」

 

「落ち着かないずら……」

慣れない格好にルビィも花丸も顔を赤らめ恥ずかしがっている。

 

「ねぇ、本当に大丈夫なの?こんな格好で歌って」

 

「可愛いね〜!宙ちゃんにも見せてあげたいよ!」

 

「そう言う問題じゃない」

 

善子も梨子に同調する。

「そうよ。本当に良いの?」

 

「これで良いんだよ!ステージ上て堕天使の魅力を皆んなに思いっきり振り撒くの!」

 

「堕天使の魅力?………大人気……フフッ…ウフフ………」

善子の頭の中では既にその光景がハッキリと映し出されているのだろう。隅で蹲りながら笑い声を上げている。その様子を見てルビィ

が小さく呟いた。

「協力……してくれるみたいですね」

 

「じゃあ決まり!早速準備しよう!……っとその前に皆んなちょっと集まって。折角だし写真撮ろうよ!宙ちゃんにも見て貰いたいでしょ?」

即座に携帯と自撮り棒を取り出す千歌。そんな彼女を他所にルビィは不安げに尋ねる。

 

「宙先輩……大丈夫なんでしょうか?」

 

「病気(フォートレスフリーダム)で少し体の様子をみるそうよ」

 

「それって………入院するって事ですか⁉︎」

 

「大丈夫。別に大した事無かったから3日後には戻ってくるって」

目を見開くルビィの肩に曜が優しく手を置いた。

 

◇◇◇

 

「皆さん……ごめんなさい…… 私、もう皆さんと一緒に練習する事が出来ないかもッ……しれません」

 

◇◇◇

 

宙の事情を知っている千歌達が本当は一番不安ではあるが、昨日宙と連絡を取って元気そうな様子だった事を確認出来た千歌達は彼女を信じて待つ事にしたのだ。

 

「はい!じゃあ皆んな笑って!」

 

 

 

 

 

 

 

ーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー夜ーー

 

「で、皆んなで写真撮った後早速準備に取り掛かろうと思ったんだけどちょっとトラブルがあって」

 

『何かあったんですか?』

 

「トイレに行こうとした梨子ちゃんにしいたけがじゃれつこうとして梨子ちゃんがパニックになっちゃたの」

 

『どうしてです?しいたけ可愛いのに』

 

「あ、宙ちゃん知らないんだっけ?梨子ちゃん犬苦手なの。小っちゃい犬も駄目らしくて」

 

『そうなんですか⁉︎意外です………あの梨子さんが』

 

「でしょ?しいたけ大きいからもう大変。追っかけっこが始まって襖と障子が1枚ずつ吹き飛んじゃった」

 

『まあ!』

 

「最後は梨子ちゃんが自分の家に逃げ帰って何とか落ち着いたんだけど、凄かったんだよ!梨子ちゃんがファウストさんみたいに宙返りしながら自分の家のベランダに飛び移って…人って追い詰められたらあんな動き出来るんだね。皆んな拍手喝采だったよ」

電話越しにくすくすと楽しそうな笑い声が聞こえてくる。

 

「どうしたの?」

 

『いえ、皆さん楽しそうだなって。聞いてる私も何だか元気になります』

 

「宙ちゃんも帰ってきた時多分びっくりするよ!私達前とは全く違うスクールアイドルになってるかもしれないから」

 

『………そうですね!楽しみにしてます!』

 

「あ、後で皆んなと撮った写真送るね。善子ちゃん流堕天使コスチューム!」

 

『ふふっありがとうございます。じゃあ、そろそろ……』

 

「あ、そうだね。ごめんね、長電話しちゃって」

 

『大丈夫ですよ。じゃあ、おやすみなさい…』

 

「うん!おやすみ!」

電話を切ると同時に千歌はため息をつく。

 

 

「やっぱり、『何があったの?』なんて言えるわけないよね…」

口に出した瞬間、千歌は首をぶんぶんと横に振る。

 

(駄目駄目!すぐに帰ってくるんだから!)

千歌は言い聞かせるように胸の中で反芻すると布団を被った。

 

翌日、千歌は珍しくきちんと起きる事が出来た。

 

 

 

ーー翌日・生徒会室ーー

 

Aqoursの一同は生徒会会長に呼び出されていた。

『ハァイ。伊豆のビーチから登場した待望のニューカマー、ヨハネよ。皆んな一緒にーーー堕天しない?』

 

『『『『『しない?』』』』』

 

『ヨハネ様のリトルデーモン第4号、く、黒澤ルビィです。一番小さい悪魔……可愛がってね!』

 

「Oh!pretty !」

 

「ぷ、ぷりてぃ………⁉︎どこがですの?こういうのは……破廉恥というのですわ‼︎」

 

可愛いと評価する鞠莉に対し、ダイヤはワナワナと身を震わせている。

 

「そもそも!私がルビィのスクールアイドル活動を許可したのは節度を持ってやりたいと言ったからです!こんな格好をさせて注目を浴びようなどと……」

自分の妹がインターネット上に破廉恥な格好を晒されている事に怒りを露わにするダイヤ。

 

「ルビィちゃんと一緒に堕天する!」

「ルビィちゃん最高!」

「ルビィちゃんのミニスカートがとても良い!」

「ルビィちゃんの笑顔が……」

 

ルビィの元にこんなコメントが多数寄せられている事を知れば彼女は卒倒してしまうだろう。

 

「ごめんなさい、お姉ちゃん……」

ルビィが謝るとダイヤは口を噤む。

 

「とにかく!キャラが立ってないとか、個性が無いと人気が出ないとかそういう狙いでこんな事するのは頂けませんわ」

 

曜は申し訳無さそうに呟く。

「でも一応順位は上がったし……」

 

実際、堕天使のPVを投稿してからというもの、Aqoursの順位は953位にまで上がっていた。あれが功を奏した事は誰の目から見ても…皆そう思っていたがダイヤはその考えを両断する。

 

「そんなの一瞬に決まっているでしょう?試しに今ランキングを見てみると良いですわ!」

 

机の上をスピンしながら寄越されたノートパソコンをキャッチした曜がランキングを確認すると、1526位にまで落ちていた。

 

「本気で目指すのならどうするか、もう一度考える事ですね!」

その言葉を聞き悲しそうな表情をする善子。

肩を落としたAqours一同が部屋を退出しようとした時、そっぽを向いていたダイヤは不意に先頭の千歌に尋ねる。

 

「そういえば、高海さんはいませんの?」

 

「?……ここにいますけど」

 

「貴方では無くて!もう1人の高海さんです!2年生にもう1人いるでしょう?」

 

「ああ、宙ちゃんの事ですよね?今学校を休んでます」

 

「………そうですか。分かりました。引き止めて悪かったですね」

 

 

 

ーー

 

 

 

生徒会室が3年生2人だけになるのを見計らい、鞠莉はダイヤに話しかける。

「ダイヤ、宙って子に何か用があったの?」

 

「大した事ではありませんわ。ただ、ルビィの事について少し問いただそうと思っただけです」

 

「問いただす?」

 

「最近ルビィが妙に親しげに高海さん……宙さんの事を話すんです。人見知りのルビィに友達が出来ることは勿論喜ばしい事ですが、どうもおかしい。帰っている途中にお姫様抱っこしたり、頭を撫でたり……友達にしてはスキンシップが過ぎるというか…あろう事か一回ルビィが宙さんの事を『お姉ちゃん』と!あの子を誑かそうとしているのではないかと心配で……」

 

「ふぅん………つまり妹が捕られそうになってヤキモチ妬いてるんだ?」

 

「違います!人付き合いが少し苦手なルビィにつけ込んで何かしでかすのではないかと心配なだけです!妹が安心して生活出来るかを気に掛けるのは姉として当然の事でしょう?それに初対面で私に見せたあの表情!既に良からぬ事を企んでいる可能性がありますわ!」

 

「OK OK……でも、高海宙ちゃんねぇ……確かに浦女(ここ)に転校してくるまでの事全然分からないし、少し私も気になるわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー桟橋ーー

 

「失敗したなぁ…….確かにダイヤさんの言う通りだね。こんな事でμ'sみたいになりたいなんて失礼だよね」

 

「千歌さんが悪いわけじゃないです」

 

ルビィが千歌を励ますと、善子が静かに言った。

「そうよ。いけなかったのは堕天使。やっぱり、高校生にもなって通じないよ。」

 

「そんな事……」

 

「何か、スッキリした。明日から今度こそ普通の高校生になれそう。」

両手を広げ空を仰ぎ見る善子。皆から顔を背けている為その表情を窺うことは出来ない。

 

「じゃあ、スクールアイドルは?」

 

「う〜〜ん…やめとく。迷惑掛けそうだし。じゃあ。」

言い切ると善子は1人、バス停の方に向かって歩いていった。

 

「少しの間だけど堕天使に付き合ってくれてありがとね。楽しかったよ」

一度振り返り、きちんと礼を述べると善子は今度こそ去っていく。

 

「どうして堕天使なんだろう?」

 

「マル、分かる気がします。ずっと、普通だったんだと思うんです。私達と同じで、あまり目立たなくて…そういう時、思いませんか?これが本当の自分なのかなって。元々は天使みたいにキラキラしてて、何かの弾みでこうなっちゃってるんじゃないかって」

 

「普通」………かなり曖昧な定義ではあるが、周りに比べて特に抜きん出ている物が無い、目立たない……と考えるとそれを地味で嫌だと捉える事もあるかもしれない。今の善子がまさにそうなんじゃないか、と花丸はそう考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日。

善子は堕天使になるために必要な道具を全て片付け、一つの箱に纏めた。

 

「これで良し」

 

何の気なしにマンションの外に出ると、そこには千歌達が昨日のPV撮影時に使用したゴスロリを着て立っていた。

 

「堕天使ヨハネちゃん!」

 

「「「「「スクールアイドルに入りませんか?」」」」」

 

「………はあ?」

突然そう問いかけられ善子は呆気に取られる。

 

「ううん!入って下さい!Aqoursに!堕天使ヨハネとして」

 

「何言ってるの?昨日話したでしょ?もう…」

 

「良いんだよ堕天使で!自分がそれを好きならそれで良いんだよ!」

 

「……駄目よ」

善子は踵を返して走り出す。

 

「生徒会長にも怒られたでしょ!」

 

「うん!それは私達が悪かったんだよ!善子ちゃんは良いんだよ!そのまんまで!」

 

「どういう意味〜〜⁉︎」

 

マンションからかなり離れた所に来ても尚走り続ける善子に向かって千歌は必死に呼びかける。

「私ね!μ'sがどうして伝説を作れたのか!どうしてスクールアイドルがそこまで繋がってきたのか!考えてみてわかったんだ!」

 

「もう!いい加減にして〜〜‼︎」

曲がり角をまがろうとしたところで善子は遂に立ち止まり、手を膝につく。

 

「ステージの上で自分の『好き』を迷わずに伝える事なんだよ!」

息を整えながら振り返るとそこには千歌だけでなく、Aqoursの全員がついて来ていた。自分より小さくて、体力の無さそうな花丸とルビィも。

 

「お客さんにどう思われるとか、人気がどうとかじゃない。自分が一番好きな姿を、輝いてる姿を見せることなんだよ!だから善子ちゃんは捨てちゃダメなんだよ!自分が堕天使を好きな限り‼︎」

 

「……いいの?変な事言うわよ」

 

「良いよ」

曜がニコリと笑う。

 

「時々、儀式とかするかも」

 

「そのくらい我慢するわ」

梨子が頷く。

 

「リトルデーモンになれって言うかも!」

 

「それは……でも、やだったらやだって言う!だから!」

苦笑しながらも千歌はそう言い切る。彼女は善子に近付き、昨日海に向かって捨てた筈の黒い羽を差し出した。

 

善子はその羽に手を合わせーー

 

「「くすっ」」

 

顔を見合わせて笑い合った。曜、梨子、花丸、ルビィがそれを取り囲む。

この日、Aqoursは6人になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暗闇の中を無数の赤い光が蠢いている。その周囲には先程捕食したとみられる人間の一部が散らばっていた。彼らはもっと多くの餌を催促するように唸り声を上げる。

 

「駄目駄目。まだ静かにしてて。皆んなまだ忙しいんだから。君達が動いて良いのは夜になってから。それまでは我慢して」

口に人差し指を当てながら少年は自分より二回り以上大きい異星獣達を宥める。

 

「動かせるのがこれだけしか無いって聞いた時はどうなるもんかと思ったけど………なるほど。これはこれで面白いかも。それに、僕が久しぶりに作ったやつも試してみたいし……霧を噴射ってちょっと地味かもだけど結構格好良いの作れたし良いか。………さて」

 

 

「姉さんの住処は丁度この真上あたりかな?」

 

 




千歌ちゃん達となら監視付きで電話することも出来る宙。ネクサス本編に比べてかなりTLTがホワイトになってますが、TLTもナイトレイダーも本編通りにしちゃうとダークファウストと協力関係を組むなんてまずあり得ないのでちょっと設定を変更させて貰いました。

そして序盤に登場した謎の異星獣。
多分もう千歌ちゃんのお母さんを手に掛けた犯人の正体バレてますよね……
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