完全にオリジナルの回って作るの難しいなと改めて感じました。
明日のZ楽しみ ってもうその明日だった
フォートレスフリーダム。それは地球解放機構TLT日本支部の一角を担う関東第三支部基地である。
TLTは北米本部、オーストラリア支部、ヨーロッパ支部等世界各地に存在しているが、現状ビースト災害の約4割が日本で起こっている事態に対処するため、このフォートレスフリーダムは幾度も改修が施されており現在では世界で最も充実した施設と装備を誇っている。
最大4000人を収容できるこの巨大要塞にはナイトレイダー専用のブリーフィングスペースとブレイクスペースを有するコマンドルーム、CIC(戦闘指揮所)、中央コントロールルーム、射撃訓練場、トレニーングルーム、留置場、実験室、居住スペースといった複数の施設が存在する。ここで勤務する515人のスタッフは時に厳格に時に柔軟に、来る日も来る日も研鑽に励んでいた。
ーートレーニングルームーー
そこでは非番を返上してナイトレイダーBユニットの3人がトレーニングを行っていた。
「よし、俺が合図するから回数を正確に数えろ。絶対に数を飛ばすなよ」
「た、隊長、本当に大丈夫ですか?この重量……流石に腰折れちゃいますよ?」
「はんっ!出来るからやるんだろうが」
彼はそう言うと左右に何個も25kgの重りが取り付けられたシャフトに手を掛ける。足を力強く踏みしめ、全身の筋肉に力を込めた瞬間……その重量からは想像もつかない程のスピードでスナッチを開始した。
「いつにも増して張り切ってるなぁ……何かあったの?」
「覚えてるだろ?この前食堂で異星獣研究機関の主任と揉めて締め落とされかけて……相手はモヤシみてーな女だったからな。大分ショックを受けたらしい」
「あぁ…あれか。にわかに信じ難い光景だった」
小声で会話しながら片方が「20回です!」と器用にカウントをとる。
「にしてもスゲエよ隊長は。死ぬ程キツい訓練やった次の日に筋トレとか普通無理だろ」
「『どんな訓練も実直にやり続ければいつか必ず役に立つ時が来る』……隊長の口癖だもんな」
「いつか必ず、ねぇ……その時には俺死んでるかもな」
「止めろよ縁起でも無い」
「だってそうだろ?ここ最近出現するのは大型ビーストばっか。ファウストって奴いなきゃ俺達全然太刀打ち出来ねえじゃん。実際人死も出てるし。こんな状態がずっと続けば……そりゃ俺だって相手が小型ビーストだけだった時は今より幾分かマシだったよ。何ならこのままいけばすぐに戦い終わらせられるって一時期有頂天だった」
「………」
その会話を隊長は黙って聞いていた。叱責すべきではあるがどうしても出来なかった。
出来る事ならそう言ってやりたかった。だが、曲がりなりにも部隊の指揮を任せられた身である自分がそんな無責任な事を口に出来るわけがない。
屈強な肉体を持つその男はシャフトを握る手に更に力を込め、訓練を続ける。
「100回!……隊長!流石にそろそろ休みませんか?」
「多分まだ止めないと思う。あそこにいる奴が懸垂やめない限り休憩しないって言ってたし」
指差す方を見ると、タンクトップにナイトレイダーのレガースを履いた髪の長い少女が鉄棒にぶら下がりながら懸垂を繰り返している。腕を真っ直ぐ伸ばした後、素早く肘を曲げ顎が鉄棒を追い越す–––––まさに理想的なフォームだった。
「隊長本当に負けず嫌いなんだから……やってる事違うからあんまり関係無いでしょ」
シャフトを持ち上げながら背中越しにジロッと睨みつけられ、会話を全て聞かれていた事を悟った2人は慌てて口をつぐむ。もうかなり遅かったが。
(ん?そういやあんな女性隊員ナイトレイダーの中にいたっけ?……ってそんな事より)
(あの人、俺達が来る前からずっと懸垂してないか?)
(何か向こうから視線を感じるけど、私が部外者だってバレてないよね?)
内心ヒヤヒヤしながら宙はペースを乱す事無く懸垂を続ける。Aqoursと接触する事で起きる拒絶反応のせいで暫く学校に行けなくなった彼女は可能な限り鍛錬を重ね自身の肉体を追い込んでいた。
瑞緒やその他の研究員が自分の為に昼夜問わず解決策を模索してくれているのに、何もせず居住スペースに篭っているわけにはいかなかった。もっと強くなる為にできる限りの事をやらなければならない。
彼女の存在を基地内に安易に広めるべきでは無いと考えていた瑞緒は宙を止めようとしたが、宙の揺るぎない意志に折れ、バレないように・目立たないようにという条件付きで渋々トレーニング場の使用を許可した。入隊したわけでも無いのに彼女がナイトレイダーのスーツを着ているのはその為である。
片手を離して時計を確認すると、既に1時間が過ぎていた。
(……?)
トレーニングルームに来てからひと時も休む事なく懸垂を繰り返しているのに全く疲労が訪れない。寧ろ身体中の筋肉が次第に熱を帯び、まるでエンジンの回転が未だ上昇する最中にある感覚すら覚える。
試しに片手を離したまま懸垂してみると、数回もたついたもののすぐに難なくこなせるようになった。まるで上がる負荷に比例して自分の筋肉も迅速に対応、強化されているような………
(やり方が悪いのかしら?)
横目で視線を感じる方に目をやると、そこにいる2人がこちらを見てあんぐりと大きく口を開けていた…のと同時に奥の人が持ち上げているシャフトに目が入る。
(あ、あれ私もやりたい)
懸垂なんかよりよっぽど良い運動になると感じた宙はやり方を教えて貰う為に3人の元に駆け寄ろうとする。
(–––––––ッ⁉︎)
両手を離し地面に足を付けた瞬間、背筋に冷たいものが走る。背中を刃物で撫でられたような感覚。平穏な時間が壊され始めた合図だった。
「ビースト……!」
断片的にではあるが脳裏に奴らが出現する場所の様子が流れ込んでくる。暗闇の中に水音……窮屈な空間から解放された異形の生物が這い出したその場所は–––––見間違う筈もない。
「私のマンションの近くだ…!」
咄嗟に隣人の姿が思い浮かぶ。トイレで吐いた私を心配し、保健室まで運んでくれた心優しい少女。千歌からもどれだけ素晴らしい子か電話で聞いていたから忘れる筈も無い。
「善子さん!」
勝手に基地から出ることは許可されていないが知ったことでは無い。
「宙さん!貴方は休んでて下さい!今回はナイトレイダーで対処出来ますから」
トレーニングルームを出たところで瑞緒が駆け寄ってきた。
「ごめんなさい。無理です」
即答すると瑞緒から通行許可証を掠め取る。服を替えた時に自分に渡された分は置いてきてしまったのだ。
「ちょっと⁉︎返してくださいよ〜〜〜!」
「すぐ返します!」
ナイトレイダーにスクランブル要請がかかったのは宙がビーストの気配を察知した数十秒後だった。
ーー沼津ーー
霧がかりはじめた小さな街の中でビーストの進行は既に始まっていた。
「あ、ああ…」
「ギュオオオ……!」
尻餅をついた警官に近づく2mを超える巨大。必死に拳銃で応戦するが熊のような体毛が生えた皮膚は鉛玉を容易く弾き飛ばしてしまう。怪物は獲物に向かって鋏のついた腕を振り下ろした。
「うわぁぁぁグエッ⁉︎」
脳天をかち割られる寸前で誰かに首根っこを掴まれ後ろに引き戻される。その瞬間目の前の怪物はいきなり爆散した。
「怪我は無いですか?」
振り返るとそこには中高生くらいの見た目の少女が立っていた。パニック寸前だったがそれでも何度も首を縦に振る。
「ならすぐに建物の中に隠れて外には出ないで。出来るならここ一体に住む人全員に今言った事を電話か何かで伝えて下さい。これだけの数……全員助けられる保証は出来ませんから」
少女ーーー宙はダークエボルバーを握りしめると霧の中に消えていった。
ーーー
ーー20分後ーー
「CIC、本当にビースト振動波が観測されているのは此処なのか?索敵しているが全くターゲットを確認出来ない」
『間違いありません。街一帯から無数の反応が確認出来ます。現に彼女ーー『ファウスト』も大群と戦っている最中だと』
ナイトレイダーは作戦行動区域に現着したものの、敵を全く発見することが出来ないでいた。スペースビーストが発するビースト振動波=χ(カイ)ニュートリノは大まかな場所は特定できるものの、現場に到達した後は目視で発見するしか無いのだ。
「隊長、どうします?上空から索敵しようにも霧のせいで殆ど何も見えません。部隊を分割して索敵範囲を更に拡大すべきかと」
「……駄目だ。視界が悪い中3人未満で行動するのは危険すぎる。B ユニットにもこれ以上分隊を離散させるなと伝達しろ」
(何故ファウストに発見できて俺達には出来ない……?)
慎重に行動するAユニットに事態を急変する一報が入る。
『Bユニットの加藤です!敵から襲撃を受けています!至急救援を–––––』
雑音が混じってしまい最後まで聞くことは出来なかった。
「すぐ向かう。一体何があった?」
『我が隊は––––を拡大させるために当初組んでいた隊を更に分割させ––––––––た瞬間敵が待ち伏–––––––まるで俺達の行動が読まれ』
「? おい、聞こえるか?応答しろ‼︎」
Aユニット隊長、和倉は舌打ちすると即座に指示を出す。
「作戦変更だ。すぐに救援に向かう。バイザーゴーグルの死角を補い合いながら移動しろ。此方もいつ襲われるか分からん」
ーーー
「クソッ!うじゃうじゃと……」
数の多さに毒づきながらもダークエボルバーの刃先から射出される真空衝撃波動弾でアラクネアを薙ぎ払っていく。宙は既に30体以上のアラクネアと交戦・撃破していた。と言ってもマンホールの蓋をブチ破って地上に這い出してきたところを撃ち殺すという単純作業だが、いかんせん数が多すぎる。無数の敵が街中の至る所から出現する為街中を縦横無尽に高速で駆け回らなければならなかった。
(まだ私と善子さんのマンションには一体も近づいていない…けどいつ来てもおかしくない)
ダークファウストに変身出来る恩恵かは分からないが、宙はビースト振動波を感知する器機を使わずとも敵の位置を正確に割り出し、把握する事が出来る。彼女はもしアラクネアが一体でも善子に近づいたら目の前の戦闘を放棄してでもそちらに向かうつもりでいた。
(命に優先順位なんてつけたくない……けど一体どうしたら良いの⁉︎)
迷いながらも目の前の敵を一掃した瞬間、また別の場所からアラクネアの大群の反応を感知。アラクネアを誰かが指揮しておりまるで自分を弄んでいるようだった。
(何かがおかしい……)
宙は唇を噛みながらも次の戦場へ向かうべく地面を蹴った。
ーーー
「隊長!通信機が壊れました!ど、どうしましょう?」
「救援は送ったか?」
「はい!ちゃんと送りました!」
「なら目の前の敵を殺すことだけに集中しろ!絶対に間隙を作るな!」
「はぃぃ…!」
Bユニットは襲撃を受けながらも見事な連携でアラクネアの大群を掃討していく。例え腐っても、精鋭部隊の一翼を担う人間として簡単に死ぬわけにはいかなかった。
(俺が安易に分隊を離散させなければこんな事にはならなかった……!)
自分が十分な戦力で戦えない状況を作ってしまったとBユニット隊長・斎藤は自分を殴りたくなる衝動に駆られていた。「見掛け倒しの脳筋ゴリラ」……瑞緒とか言う女にシメられてから密かに誰かからつけられた。侮蔑の意味が込められたこの渾名が今になって自分に突き刺さる。
(しかもその相手がよりにもよってアラクネア……皮肉なもんだ)
「」カチカチッ
唐突にディバイトランチャーの銃口から頼りない音が響く。弾切れだった。
「ギュオオオ……!」
その隙を見逃さなかったアラクネアが真っ直ぐに突っ込んでくる。
「隊長ォーーーー‼︎」
あぁ、何で悪い事はこうも連鎖して起こるのか。斎藤は大きく息を吐き出した。その瞬間––––
「クソがあぁぁぁぁ‼︎」
ディバイトランチャーをバットの如く振り回して飛びかかってきたアラクネアを殴り飛ばした。
「俺は大型ビースト倒すまで絶対に死なんと決めてんだ。お前らみたいな噛ませ相手に死ねるかぁぁぁぁ!」
ロボコンパンチよろしく両腕を振り回し始めると自分達を包囲していたアラクネアの集団は粉々に吹き飛んだ。
「た、隊長……!」
加藤は感嘆の声を漏らす。そこにはナイトレイダーのスーツを纏った少女が立っていた。
「さっきの台詞、格好良かったですよ。隊長さん」
「お前あの時の……懸垂のバケモンか?」
救援が到着したのはその直後だった。
Aユニットの支援もあり、Bユニットの構成員は誰一人欠ける事なく再び合流することができた。斎藤は離散させたもう片方のメンバーを抱き寄せる。
「お前ら無事だったか!………すまねえ、俺の安易な判断で危険に晒してしまって」
「気落ちしないで下さい。俺達が生き残れたのも隊長が俺らに強いた訓練のおかげですから」
「くっ………」
『皆さん!お待たせしてすみません!ようやく何が起きているのか分かりました』
AユニットとBユニットが合流したところでCICから新たに報告が入った。声の主はーーー瑞緒だ。
『インセクティボラタイプビースト……コードネーム『アラクネア』。以前にも何回か交戦していると思いますが今回の個体は完全にそれまでとは別物です。これを見て下さい』
パルスブレイカーに沼津一帯のマップが表示される。そこには電波の周波数が細かに記されていた。
『電波の受信数が多い所にビースト振動波が集中しています。このビーストは電波を感じ取りながら行動しているようです。皆さんが敵を捕捉出来なかったり行動が筒抜けだったのもそれが原因です』
「どういう事だ?傍受されていたとでも言うのか?」
『そういう事です。敵はナイトレイダーの通信と通常の電波を分類出来るようで、ナイトレイダーと接触する事無く人間を襲う事が出来る……こう見て良いでしょう』
拘束移動している内に何処かにぶつけ、自分のパルスブレイカーを破損させてしまった宙は他の隊員のものを借り瑞緒に話しかける。
「つまりどうすれば良いんですか?私一人じゃ残りを対処しきれません。時間も無いんです。早く結論を言って下さい」
いきりたつ宙を見てナイトレイダーの1人が声をかける。
「さっきから思ってたんだが、お前は誰だ?見たところメットも装備してないし、一人じゃどうこうとか…ナイトレイダーの正規隊員じゃ無いよな?」
「私は高海宙……ダークファウストの変身者です。この姿で会うのは初めてでしたね」
その言葉に一同はざわつく。初めて見るファウストの人間態。聞いていた通り本当に高校生くらいの子供……それも女性だったのだ。動揺しないわけが無い。
その状況を見かねて和倉がすかさずその場を諫める。
「今は彼女の事よりアラクネアを全て掃討することが先決だ。彼女の言う通り我々にはもたもたしている暇は無い。今この瞬間も、どこで犠牲者が出るか分からない状況だからな」
『一般の電波を大量に受信出来る環境があればアラクネアをその場に誘導して待ち伏せする事が出来るはずです。これなら各個撃破する必要も、無線も使わずに敵を一掃できます』
「電波を大量に受信?有名人がネット配信でもしない限りそんな事そう上手くはいかないぞ?」
「配信」というワードを聞いた瞬間、宙の頭の中に1つ考えが思い浮かんだ。取りたい手段では無いが……時間も無く他に誰からも策が出ない今はこれに賭けるしか無い。彼女は180cm以上の大柄な人間が多い中で、注目して貰える為に手を上げながらピョンピョンと跳ねる。
「皆さん!私に考えがあります!聞いて頂けませんか……」
ーーー
「以上が私の考えです。自分でもおかしいとは思います。でも、これしか他に方法は無いと思うんです…お願いします!力を貸して下さい‼︎皆さんの協力が必要なんです」
宙はナイトレイダーの隊員達に向かって大きく頭を下げる。
「よし分かった!お前ら、すぐに準備するぞ!和倉さんも、それで良いですよね?」
宙の姿を見て斎藤が即座に賛同した。彼の指示を聞いてBユニットの隊員達もすぐに同意する。
「え?良いんですか本当に?」
「良いも何もビーストを掃討するのが俺達の仕事だ。……俺だって気の利いた考えなんて持ってねぇ。でも課された命令ならどんなに困難なものでも遂行してみせる。そういうもんだ。」
「……」
それは自分で考えるのが大分苦手なのでは、と言いたくなるが黙っておく事にした。
「あと俺はお前の事を誤解してたみたいだ。俺達の力が必要だって言聞いて……嬉しかった。ありがとう」
「は、はい……?」
首を傾げる宙を見て何故か斎藤はニカっと笑う。
「これが最善策だ。私も君の意見を尊重する。君にはペドレオン戦で助けられたから借りを返せるようにしっかり働かないとな。なあ石掘?」
「え?えぇ…」
正面に向き直った和倉は声を張り上げた。
「これより最終行動に入る!総員戦闘用意!」
その号令を合図に行動を開始するナイトレイダー。宙は彼らにお辞儀すると、向かうべき場所に走り出した。
「津島善子さん!」
「あ、あなたあの時の!てか何その格好⁉︎」
いきなり家の前に現れて仰天している善子に構わず宙は続ける。
「貴方の堕天使の力を貸して下さい!」
13話でちょこっと出したナイトレイダーのオリジナルのモブを何故かめちゃくちゃ登場させてしまった……絶対ネクサス本編じゃこう上手くいかないとは思いますがそこはご了承頂きたいです。
次回で霧出してる敵の正体が分かります。