模造巨人と少女   作:Su-d

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前回の投稿から時間が空いてしまった事をお詫び申し上げます。
拙い文章で初戦を綴ることをお許しください。


2.魔人 ーー ファウスト ーー

ーー淡島・上空ーー

「駄目ですよお嬢様!これ以上は近づけません!というかそんなに身を乗り出さないで下さい!危険です!」

 

「でも‼︎あそこには果南の家が!せめて果南の安全だけでも確かめさせて!」

 

炎上している淡島上空を旋回するヘリの中から金髪の少女が身を乗り出している。今にも機内から飛び出してしまいそうな勢いだ。

 

「お気持ちは分かります........ですが!もしこの機体があの化け物の標的にされたら.....お嬢様の命をお守り出来ません!」

 

「私は貴方の腕を信じています.......だからお願い........一生のお願いです!」

 

機長に無理を言っているのは自分でもよく分かってる。でも、それでも大切な友人を失うなんて絶対に嫌だ。彼女達にもう一度会って、今度こそやり遂げるって決めたんだから....‼︎

 

西洋人の様な顔立ちをした金髪の少女、小原鞠莉は強い思いを抱きつつも、自分が今見ている事しかできないことに遣る瀬無さを感じていた。

 

 

 

「うぉっ!危ねぇ!」

 

突然紫色の光球がヘリの目の前を物凄いスピードで通過した。そのままフログロスが進撃する方向に向かっていく。

 

「何...今の」

何故かその光球の正体がハッキリと見えてしまった鞠莉は声を震わせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウルトラマンって知ってる?」

 

「遠くの星からやって来て地球に現れた悪い怪獣をやっつけてくれる凄いヒーローなんだ!」

 

 

 

 

 

 

 

幼稚園にいた頃、男の子達が本を見せながら得意げにそんな事を言っていた。  その時は「そんな事信じてるなんて、まだ子供だね」って笑っていたけれど........

 

あの時、見せてくれた本と全く同じような事が目の前で起こった。

 

「ウルトラマン..........?」

 

千歌は着地して静かに蹲っている巨人に期待の眼差しを向ける。

巨人がゆっくりと顔を上げその姿が露わになった。

 

赤と黒に塗り分けられた体色は右半身と左半身で非対称になっており、胴体は細身で男性か女性かも分からない。胸には黒い光球が埋め込まれている。

 

しかし、千歌達はその顔を見た途端言葉を失った。

 

頰から顎にかけ存在する血の涙のような赤いライン。そして一切光の宿らない真っ黒な瞳には得体の知れぬ不気味さがあった。

 

 

とても正義の味方とは思えない。この世界に存在する全ての暗闇を掻き集めて出来たようなその姿はまるで....................

 

 

 

 

 

 

「悪魔.......?」

 

ダークファウスト。それは人間とは相容れることのできない存在だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【(奴との戦いからはや1万年.........遂に肉体を取り戻す事が出来た)】

 

【(やはりこの小娘に10年前から接触しておいて正解だった)】

 

【(お陰で私の事を育て親か何かと勘違いするとは.........馬鹿な奴だ)】

 

【(お前はただの操り人形に過ぎなかったというのに)】

 

元々ファウストは地球上で自由に活動するための肉体を得るために長い間少女の体内に潜伏していた。

最初から身体を奪うつもりだったのである。

 

「ーーーー!!!!!!」

重々しい動きで起き上がり怒りに満ちた唸り声を上げるフログロス

 

【(下級ビーストか。何故雑魚がここまで大きくなった?)】

 

【(戦う必要も無いが....まぁいい。前座には丁度良い.....!)】

ファウストは腕を突き出しながら構えようとした。

 

 

直後、おかしな事に気付く。

 

【(!? 体が動かない!)】

 

自分の体を1mmたりとも動かすことが出来いのだ。

自分の意思と反して両手がゆっくりと顔の近くに持ち上げられていく。まるでじっくりと観察しているような動きだ。

 

(凄い.....本当に大きくなった.....)

 

精神を食い潰し、もう存在しないはずの声が体内から聞こえる。

 

 

 

 

【(まさか..............こいつに体の主導権を奪われているのか.........⁉︎)】

 

(ファウスト、どうするの?)

 

ファウストの謀略など露知らず、少女は大きな力を得た興奮を抑えきれない様子で話しかけてくる。

一瞬殺意を覚えるファウストだったが、暫しの逡巡の後

 

【今はお前がこの肉体の主導権を握っている。後はお前次第だ。私に頼ろうとするな】

 

落ち着いた様子で言葉を返した。

 

 

(……分かった。見ていて!)

【(まだ焦る時ではない。暫くの間こいつに戦わせ死にかけたところで体を奪えば良いだけの事だ)】

時には武力で相手を圧し、時には卑劣な手段で相手を追い詰める。それがファウストのやり方だった。

 

 

ダークファウスト…もといファウストの体を纏った少女は敵を見据え腰を低く落とした。

フログロスが戦車の如く突進してくる。

 

「…フッ!」

ファウストはサイドステップで突進の軌道から素早く外れるとすれ違い様に敵の脚を勢いよく蹴り払う。

 

「ヘェアァァ!」

転倒したフログロスの顔面に間髪入れず蹴りを入れた。

 

(重ッ⁉︎)

人間が巨大なコンクリートの壁を蹴る程の衝撃。反動でよろめいてしまう。この体重を生かした体当たりを喰らえばひとたまりもないだろう。

大した抵抗も無くゴロゴロと地面を転がるフログロスにファウストは連続で光弾を発射する。

 

(死ぬまでそこに這いつくばらせてあげる!)

フログロスの背中に断続して起きる爆発。苦悶の声すら上げる事が出来ないようだ。

 

【(小型とはいえどビーストを何回も倒させてきたからか...少しは動けるようだな)】

 

型に嵌らず、相手を倒すのに手段を選ばない少女の戦闘スタイル....所謂喧嘩殺法は意外にもファウストと相性が良かった。

 

(これで終わり...!)

 

地面に突っ伏して動けずにいるフログロスにマウントを取るために跳躍するファウスト。

 

(⁉︎)

少し跳び上がるつもりが500m以上も跳躍しフログロスを跳び超えてしまった。視界がオレンジ色の夕焼けの空に覆われる。

 

(これが...ファウストの力...!)

少女は空中で、巨大化すると身体能力がどれだけ変化するかを実感する。

 

空中で体を捻り綺麗な宙返りを決め体勢を立て直すとそのまま海岸に着地するファウスト。実力の差は歴然に思えたが...

 

突如、海面から赤黒い光が放たれフログロスを直撃した。何事も無かったかのように起き上がるフログロス。

 

(え⁉︎)

 

【(アンノウンハンド⁉︎まさか...今のは...)】

 

フログロスが火球を放ってくる。これまでとは比べ物にならないほどの大きさだ。

 

ファウストは咄嗟にシールドを張った。シールド越しに強烈な衝撃を感じる。

 

(破られるのも時間の問題)

瞬時にそう悟りそこから跳び退こうとした

 

 

 

「千歌ちゃん!急いで!」

 

「分かってる!」

 

「二人共もう良いから、速くここから離れて!」

 

 

火球の射線上に三人の少女がいた。自分が避けてしまえば....

 

(私何やってるの⁉︎知らない奴らに構う暇なんて!)

 

少女(ファウスト)は構わずその場から離れようとしたがーー

 

 

「果南ちゃんごめん!私さっきまで怖くて何も出来なかった...でも!あの黒い巨人が現れて暴れ始めて...私思ったの」

 

「千歌...」

 

「怖がってる時間なんて無いんだって。何も出来ないまま訳のわからない奴らに大切な友達を奪われてたまるかって!」

 

「私は一人じゃない。曜ちゃんだっている。誰かが助けに来るかもしれない。だから!」

 

「諦めちゃダメ‼︎!!」

 

 

 

オレンジ色の夕日の様な髪をした少女の姿を見るとその場から動く事が出来なくなった。

 

 

 

「「せーのっ!!」」

 

千歌・曜二人の努力がようやく功を奏し、ようやく果南の足を挟んでいたガレキが浮き上がった。

 

「もうちょっと!」

 

千歌達が最後の力を振り絞るのと同時にファウストの張ったバリアが崩壊した。

 

「グァァァ‼︎」

 

三人の目の前に火球をまともに喰らったファウストが倒れ込む。

その衝撃で果南の足を挟んでいたガレキも吹き飛んだ。

 

「やった...!」

 

「果南ちゃん、大丈夫⁉︎」

 

「正直もうダメかと...」

奇跡的に果南の足の傷はかなり浅かった。即座に肩を貸す千歌と曜。

 

「早くここから離れよう!」

 

倒壊したダイビングショップを踏み越えてようやく戦闘区域から離れる三人はそのまま避難所に急ぐ。

 

「あれ?あんなとこに人が!」

海岸に自分達と同じくらいの年の少女が立っているのを見つける曜。

 

「ちょっと!ここは危ないから速く逃げないと...ん⁉︎音ノ木坂の制服?」

 

「すみません!私今日始めてここに来たもので避難所が何処にあるか分からなくて...」

赤紫色の長い髪をしたその少女は戸惑った様子でそう尋ねてきた。

 

「分かった!私達が案内する。でもなんで今までここに居たの?内陸の方が安全なのに」

果南が怪訝な顔で尋ねる。

 

 

「それは....」

赤紫色の髪の少女は今もなお戦闘が続いている方をじっと見つめた。

 

 

 

 

 

 

アツイ…まるで火箸を背中に押しつけられている様だ。

 

地面に倒れているファウストにフログロスは先程の鬱憤を晴らすかのように大量の火球を浴びせている。

 

(私は結局…何がしたかったの)

 

意識が遠のいていく中、頭に浮かぶのは何故かあのオレンジ色の髪の少女。

 

(私が助けたみたいになってるんだから...せめてこの襲撃からは生き延びてもらわないと...)

 

目を閉じようとする少女。死ねるのなら正直もうどうでも良かった。

 

【おい】

ファウストが呼びかけてくる。折角今まで面倒を見てくれたのに...彼にも迷惑をかけた。

 

【貴様、本当に人間なのか?】

 

(へ?)

 

【受けているダメージは深刻な筈なのに致命傷になる気配が全く無い】

 

(どういうこと....?)

 

【はぁ....もう良い。これ以上攻撃を喰らうのも癪だ。いいか、これから私の言った通りに動け】

 

急速に意識がハッキリしてくる。

 

【アレの攻撃パターンは何となく分かる。命令通りに動くことなら簡単だろう?これ以上私を失望させるな】

 

【お前がビーストを本気で殺したいと思うならな】

 

 

 

 

フログロスはファウストがもう動けない見るや否や顎を大きく開き、口から触手を伸ばしてきた。

 

【今だ】

合図と共に少女(ダークファウスト)は腕を差し出す。触手は腕にしっかりと絡み付いた。

 

【絶対に離すな】

触手を掴んだままファウストはそのまま飛び上がる。

 

1000m…2000m…3000m…どんどん地上の建造物が小さくなっていく。

 

【よし....落とせ】

雲を突き抜けた所でファウストは敵の触手を引きちぎった。

 

「ーーーー!!!!!!」

フログロスは地球の重力に従い真っ逆さまに落ちていった。

 

 

大きな衝撃と共に内浦の海岸に巨体を打ちつけられるフログロス。

 

肉体こそ原型を留めているものの、脳震盪を起こしもう立ち上がることは不可能だった。

 

ファウストは内浦の上空500mで静止し、両腕にエネルギーを集中させる。

 

【今の状態でこの技を使用すれば暫くの間活動出来なくなる。絶対に外すな】

 

何かを引き絞る様に両腕を引くと黒いエネルギーの奔流が生成され、一気にそのエネルギーを纏った左右の拳を叩きつけた。

 

刹那、空が一瞬黒く染まりダークファウスト最大火力の技・ダークレイ・ジャビロームが射出される

巨大な黒い光弾はフログロスの体を容易く貫通し、体内のガソリン袋を跡形もなく焼き払った。

 

ついにフログロスは粉々に爆発四散した。

 

 

 




ダークファウストに変身する主人公(名前はまだ明かせませんが)の容姿ですが、気になった方は「アズールレーン 能代」で調べてみて下さい。
イメージはこのキャラクターと結構近いです。裾の長い黒いジャケットと黒いレガースを着せた状態(溝呂木眞也みたいな格好)がオリキャラの姿になります。(角は無い)
今回登場したビーストはアンフィビアタイプビースト・フログロス。
ウルトラマンネクサス18話やウルトラギャラクシー大怪獣バトル7話に登場しています。
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