模造巨人と少女   作:Su-d

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前々回に登場した小型のビースト、アラクネアはウルトラマンネクサス本編では18話の回想シーンにのみ登場しています。下水道の様な場所出来ナイトレイダーと交戦していた為、前々回の話では沼津の下水道から出現して貰いました。 あれも巨大化したら結構強そうなんですよね。ネクサスと戦う所を見たかった……

長い間期間を空けていて申し訳ありません。


20.再び

ーー今より1万年程前ーー

「ガッ……フ」

 

「グアア……」

 

2人の黒い巨人が小惑星の岩盤に体を横たえていた。彼らを中心として形成された巨大なクレーター……それは彼らを彼らを死の間際まで追い詰めた者の力がどれ程のものであるかを想起させる。

 

「シュアァ………」

彼らの眼前に降り立つ2枚の銀翼を携えた銀色の巨人。眩い白銀の光を身に纏うそれは神にも等しき出立ちだった。

しかし、その光で救える命はもうこの宇宙には無い。彼の来訪は遅すぎたのである。

 

銀色の巨人は自責と後悔の念に駆られながら左手の拳を握りしめ、静かにその拳を右手首に打ちつけた。

 

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

 

私は一度奴に肉体を消滅させられた。圧倒的な力……銀色の光波熱線が肉体を焼き尽くす中、私は理解した。ザギにとって我々は少しでも奴を消耗させる為だけに造られた捨て駒だったらしい。

………このまま何も成し遂げられず自らの存在理由を見出せないまま死ぬわけにはいかない。肉体が無くなったとしても触媒さえあれば再び体を生成する事が出来る。再び肉体を取り戻したその時に奴を殺しザギを出し抜く。私は復讐と野望を抱き、触媒となる肉体を求め宇宙を彷徨い続けた。

 

しかし、気の遠くなる程の時間を費やしても見つからなかった。宇宙に存在する比較的優れた生命体も融合するとその肉体はいとも容易く崩壊してしまう。死体と融合すれば少々活動する事は出来るが、やがて腐り果て使い物にならなくなる。……それでもやる事は変わらない。私はより優れた生命体を求め続けた。

 

 

 

 

そんな時だった。あの人間と接触したのは

 

「……おねがい。わたしのことがわかるならそばにいて。ひとりにしないで。ごはんも何も、いらないから………」

 

今にも死にそうな痩せこけた身体に反して脅威的な生命力を持つ人間ーーーこの人間の体に憑依したのが全ての失敗の始まりだった

 

 

 

 

 

 

 

ーーフォートレスフリーダム

     ・ブリーフィングルームーー

 

U字形に並べられた机と向かい合うように巨大なスクリーンが立てられた一室。そのだだっ広い空間で聞こえるのは投影された映像に伴う音声だけだ。

 

ダークレイ・ジャビロームで爆発四散するフログロス

 

頭部を斬り飛ばされ轟音と共に崩れ落ちるバグバズン

 

赤黒い剛熱光流、ダークレイ・ジェネレードの直撃を受け跡形も無く消滅するペドレオン

 

最後にそれらの異星獣を手に掛けた黒い巨人の姿が映し出された所で映像は停止する。

 

「ーーーーー以上の戦闘データを鑑みるに、ウルティノイド–––もとい『ミカエル』は我々の予想以上のスピードで戦闘技能を向上させています。彼女に我々が今開発している新兵器の戦力が伴えば、異星獣撃滅はより強固なものになるでしょう」

 

「成程。確かに12年前の『光の巨人』に勝るとも劣らない素晴らしい戦闘力のようだ。それでだ、作戦参謀(イラストレーター)…『ミカエル』と我々とは適切な信頼関係が築けているのか?」

 

「伝えられる情報は殆ど彼女に開示しました。当初彼女とはかなり険悪でしたが…それでも今は我々の事を信用してくれています。研究員の1人ーーー七瀬瑞緒が彼女と日々コミュニケーションを取っていました。我々との対立を和らげる事が出来たのは彼女の奮闘あってのものです」

 

「しかし、いくらなんでも自由にさせ過ぎでは無いか?『ミカエル』を普通の人間と何の制限も無しに関わらせているのだろう?もう手懐ける事は出来たんだ。いつでも出撃出来るように基地内に常駐させるべきではないか?」

 

「報告によれば死んだとされていた『ラファエル』も『ミカエル』に宿るウルティノイドの力を奪うべく接触してきたそうじゃないか。こんな状況で『ミカエル』を野放しにさせるのはあまりにもリスクが大きすぎる」

 

「我々が6年前に犯した失態をお忘れですか?彼女にとって今何物にも変え難い日常を奪いこの基地内に拘束するような事をすればそれこそ『ラファエル』の二の舞になりかねません。……我々に彼女の生活にまで立ち入る権利は無い」

 

「ではこれまで『ミカエル』を人間の生活圏に留めたせいで生じた人的被害についてご説明頂きたい」

 

「いや、流石に束縛するのは無理があり過ぎる。………今はこの状態でもう暫く様子を見よう」

 

「ですが!」

 

「作戦参謀、君は『ミカエル』との信頼関係維持向上とナイトレイダーの戦力増強に努めたまえ」

 

「………了解しました」

イラストレーターが眼前に座っている3人に向かって頭を下げると彼のホログラムは薄暗い室内に溶け込むように消失した。

 

 

「良いのですか?」

 

「彼女が1番力を発揮できる場所で戦わせれば良い。何よりビーストの出現場所をあの小さな街に絞る事が出来るのは我々にとっても都合が良いだろう。………が、楽観視して新たな脅威となってしまっては元も子もないな」

 

「我々は早急にウルティノイドに対する見解を深めなければなりません。作戦参謀殿は些か悠長過ぎる」

 

「そういう事だ。フォートレスフリーダム内に滞在している内に彼女の体を詳しく調べ上げろ。データを取る事が出来れば兵器開発の役に立つかもしれない」

 

 

 

ーー程なくして上層部直属の部隊に秘密裏にとある作戦が言い渡された

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー沼津ーー

 

バンピーラが掃討された事により街一帯はようやく落ち着きを取り戻そうとしていた。ビーストの破片をホワイトスイーパーが全て回収し、処理を済ませるまではまだ封鎖を解く訳にはいかないが、明日になればこの街は元通りになる。失われてしまった人命以外は全て。

……とにかく今は他の隊と合流しなければ

 

 

石堀は背を預けていた壁から離れ体を起こそうとする。

 

「ッ‼︎」

直後に全身を駆け巡る鋭い痛み。立ち上がる事すらままならなかった。またその場にへたり込んでしまう。

 

「大丈夫ですか⁉︎」

軽快な足音と共に誰かが近づいて来る。

 

「酷い怪我…手当てしますから動かないで下さい。何か止血するものがあれば…」

 

「いや……1人で出来るよ」

 

「駄目です。私がやります!」

 

石堀の横で膝を付いて手当てを始めようとする少女。ナイトレイダーのスーツを着ているが、その髪の毛の長さは明らかに規定から逸脱していた。見間違う筈も無い………が

 

「ここをこうして………」

 

「………」

 

「……………あれ?」

 

「………」

 

「…………………ぇぇ?」

その手つきはあまりにもお粗末過ぎるものだった。

 

「ふふっ…やっぱり俺がやるよ」

石堀は少女に笑いかけると彼女の手から応急キットを取る。

 

「………すみません」

宙は綿菓子の様に膨らんだ布の塊をいそいそと外し始めた。思えばAqoursのマネージャーを名乗りながら怪我の手当てなんてやった事が無かった。

 

 

 

 

ーー

 

 

 

 

「先程は助けて頂いてありがとうございます」

暫くの間正座しながら石堀が包帯を巻く様子をぼんやりと見つめていた宙だったが、やがて意を決した様にぽつりと呟いた。

石堀は患部の方に目を向けたまま薄く笑う。

 

「君達が展開していた場所の近くを警戒してるといきなり黒い障壁に包まれた少女が吹っ飛んで行くのか見えたもんだから驚いたよ。……ま、とにかく間に合って良かった」

 

「……聞きたいことがあります」

 

石堀は再度傷の状態を確認すべく体を小さく動かす。包帯を巻き始めてから彼女に目を向けない様にしてはいたが、こちらの真意を伺うような真っ直ぐな視線は流石に無視出来いものになっていた。

 

「貴方はあの少年の事を『ラファエル』って言ってましたよね?ラファエルって何ですか?何故あの少年は私の事を『姉さん』って呼んでたんですか?………それと」

 

 

バンピーラが発生させた霧は消えかけようとしていた。少し離れた作業を行うホワイトスイーパー達の輪郭が鮮明になり、聞こえる喧騒が段々とはっきりしていく。更にこちらを呼び掛ける大きな声。

 

「おい!そこにいるのは……石堀と宙か!お前ら怪我無いか⁉︎」

ナイトレイダーの誰かが遠くからこちらに走り寄って来る。

 

 

「彼の言う『人間の肉体に馴染みすぎた』ってどういう意味なんですか?」

 

石堀はゆっくりと立ち上がると向かってくる人影に答える様に片手を上げる。

 

「あの時は気が動転してたんだ。混乱して変な事を言ってしまった。俺みたいな下っ端に詳しい事はよく分からないよ」

 

「あの少年は貴方の事を知ってるみたいでした。貴方が何も知らないなんてどうしても考えられない」

 

「………」

 

「何か知ってるなら教えて下さい」

 

「……………2つほど良いかな」

宙に背を向け頑なに振り向こうとしないまま石堀は喋り出す。

 

「あんたにとって大切な物は何だ?」

 

「Aqoursの皆さんと内浦に住む方達です」

 

「……なら、あんたが彼らの近くにいる限り彼らは常に危険に晒され続けるということを覚えておけ。それでも彼女達の側に居続けるか距離を置くか……決めるのはあんた次第だ」

 

「言っている意味がよく分かりません。どういう事ですか?」

 

「それともう一つは……」

 

石堀は振り返ると宙の目の前に携帯のような機械を突き出す。

 

「俺の事は忘れてくれ」

目の前が真っ白な光に包まれ––––何も見えなくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーフォートレスフリーダムーー

 

「じゃあ、準備は良いですか?」

 

「ええ……お願いします」

瑞緒に促されるまま、宙はヘッドギアの様な機械を頭に取り付ける。

ここを訪れた本来の目的、自分の体に異常を来たすファウストの鎮静化を図る為の治療がようやく始まろうとしていた。

 

「緊張しなくても大丈夫ですよ。宙さんはただ横になっているだけで良いですから。歯医者さんみたいなものですよ」

 

「……痛そうですね」

3日間の内に対策を考え出してくれた瑞緒には感謝しか無い。何が起きるのか想像も付かないし不安はあるが、いつもの生活に戻れる望みがあるのなら……藁にもすがる思いだった。

 

「3日前、宙さんの体調が一瞬悪化して嘔吐するまでに至った原因がやっと分かりましたよ!宙さんの体からビーストの体から発せられる物質が分泌されていたんです」

 

「私の体から……異星獣の物質⁉︎」

 

「えぇ。宙さんの体からはウルティノイドが原因と思われるΧ(カイ)ニュートリノが発せられていました。いきなりそんな物が体の中に発生したら拒絶反応だって起きますよ。ウルティノイドもビーストに少し近い存在ですからね。でも命に関わる事は無いので安心してください。その数値も今は非常に低いですし……特に問題無く処置を進められると思います」

説明によると今の自分には脳生が2つ存在しその内の一つがファウストのもので、その脳波を宙の脳波に同調させる事でファウストが宙の肉体に干渉出来ないようにするらしい。

体を横たえるために設けられたベッドの周りにはヘッドギアと照明灯のような機械以外に何も無い。非常に殺風景な空間だった。

 

「じゃあ、もうそろそろ始めるので照明は落としますね。宙さんも横になって貰って……?どうしました?」

瑞緒が踵を返そうとすると引き止めるように彼女の服の裾を宙が掴む。

 

「…彼の声を長い間聞いていません」

 

「宙さん……?」

 

「ここに来るまで私は1人だったと言っていましたが、厳密に言うと少し違うんです。彼が……ファウストが私に話しかけてくれました。生き方や戦い方を教えてくれたんです。まあ彼の目的は私の体を奪う事だったんですが、それでも私がこれまで生きてこられたのは彼のお陰なんです。……そのファウストの声が全く聞こえなくなりました。本当にこれで良かったんでしょうか」

 

ファウストの傀儡にされそうになった過去があり、それでも尚彼の事を気にかける宙。利用する側とされる側の関係ではあるが、それでも彼らの間には育まれた何かがあるのかもしれない。

 

「私達が今からやろうとしている事も、結局ファウストが宙さんにやろうとしていた事と変わらないのかもしれませんね」

宙の話を黙って聞いていた瑞緒は儚げな表情を浮かべ笑う。

 

「…っ‼︎ごめんなさい。そんな事を言いたかったわけじゃないんです」

 

「ふふっ分かってますよ。でもごめんなさい。宙さんに危害を与え続ける限りウルティノイド…ダークファウストは私達にとっての敵なんです。彼の力こそ宙さんのお陰で私達を守る盾となってくれていますが、彼自身を受け入れる事はどうしても出来ません。……分かって下さい」

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

 

瑞緒が部屋から出ていくと照明は落とされ、白く明るかった空間があっという間に黒に塗りつぶされてしまう。機械の駆動音が響いてくると同時に宙は目を閉じた。

 

(ファウスト……貴方が今何を思っているのか、結局私には分からないままだった………………)

 

昨日の戦いの疲れからか、ベッドに横になると無条件で眠気が襲ってくる。宙は首元をくすぐる様に掛かった自分の髪を軽く払うとすぐに眠りにつき始めた。

 

 

 

「主任、宙さんのバイタル、脳波共に異常ありません」

 

「分かりました。引き続き処置を続けて下さい。もし何か異常があれば作業はすぐに中断します。くれぐれも慎重に」

(……安心して下さい宙さん。私達がもうすぐ元の生活に戻れるようにしますから)

 

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

 

 

???

 

「……眠りましたね」

 

「よし、あれを起動させて奴の体にビースト振動波を照射しろ」

 

「了解」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………ん……んぅ?」

目が覚めるとそこは薄暗い空間

(私、いつの間にか寝てたの?)

 

辺りを見回すと薄暗いせいで周囲がよく見えない。しかし、この場所がさっきまでの治療室ではない事はすぐに理解できた。

 

(……何…ここ?)

ドス黒い瘴気が身の回りを覆い尽くし辺りを漂っている。瘴気以外に何も無いせいで距離感が掴めず一歩踏み出す事が出来なかった。

 

(………嫌な夢…早く覚めて)

宙は四つん這いになると手探りで周囲の状況を確認しようとする。見渡す限りの一面が闇に覆われた荒地。いくら前に進んでも周囲の薄暗い景色は変わり映えしなかった。

 

(嫌だ……怖い)

胸の奥から湧き上がってくる恐怖に視界が滲んでしまいそうになるのを必死に堪え、ぐっと飲み込む。辺りを漂う瘴気は次第に体に纏わりついてくる様で気持ちが悪い。少しでもその嫌悪感から逃れる為に目を瞑りながら進もうとしたその瞬間、何かにぶつかった。

 

と思った瞬間、後方に大きく吹き飛ばされる。蹴飛ばされた様な感覚ーーー何かが私の目の前にいる

薄暗い前方に向き直り目をすがめると、暗闇の中に微かな紫の光が漏れている。

 

「………嘘……あぐっ⁉︎」

大きく見開かれた瞳の中に人型の輪郭が映し出され、首を掴まれる。

 

 

 

ーーフォートレスフリーダムーー

 

「ア⁉︎ ……ガァァァ⁉︎」

ベッドの上で静かに横たわっていた少女の体が激しく暴れ出す。周囲の機械を巻き込みながら部屋の中を転げ回っていた。

 

 

 

「宙さん⁉︎ …すぐに処置を中止して‼︎」

瑞緒の悲痛な叫びが響く中、研究員達が慌ただしく動き始める。

 

「主任‼︎これを……」

 

モニターに映し出された状況を確認し、瑞緒は絶句する。

 

「誰だ‼︎ビースト振動波を照射したのは⁉︎」

 

 

 

 

 

       

 

【長かった】

 

【自らの体を矮小な人間に支配される屈辱………私の力を下らぬ正義の為に利用される苦しみ………漸く解放される】

 

【私を潰すつもりだったらしいがわざわざビースト振動波を照射し逆に力を送り込むとは………貴様らは相当な馬鹿だ】

 

【この空間で貴様の精神を破壊し、肉体を奪ってやる……光を飲み込む無限の闇ーーダークフィールドが貴様の墓標だ】

 

 

刹那、周囲を覆っていた瘴気が弧を描くように収束、彼の左手の中に収まると上空に打ち上げられた。空間が融解する様に崩れ始め、赤黒いオーラが周囲を蝕んでいく。

 

 

宙は渾身の力を振り絞って彼の腹を蹴り、拘束から脱出する。

 

「ゲホッ‼︎………何で……何で貴方がここに⁉︎」

 

宙の前に立っているのは、巨人としての宙のもう一つの姿……

 

「ファウスト…‼︎」

 

黒い魔人–––––––––––ダークファウストの黒く濁った瞳には明確な殺意が宿っていた。

 

 




7話以降あまり言及してませんでしたが、ダークファウストは自分の肉体で好き勝手にビーストと戦っている宙の事を快く思っていません。

彼ともきちんと話し合いをしないといけませんね


あ、それからZは本当に素晴らしい作品でした。Zで勢いに乗ったウルトラシリーズが今後も末長く続いてくれる事を心より願っています。続けて
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