模造巨人と少女   作:Su-d

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明けましておめでとうございます。
今年こそはこの陰鬱な展開を終わらせたい‼︎という一心で頑張ります。今年も宜しくお願いします。

かしこ


34.切り札

 

 

掛け替えのない人を失う絶望

心に穴どころか心の拠り所を根刮ぎ抉り取られたような喪失感

まただ…またこの感覚だ

二度と味わいたくなかったのに

それなのに

涙すら出なかった

今はただひたすらに

 

 

「死ね」

 

 

「その表情(かお)…それだよ」

吹き飛ばされた右目を抑えながらも、獰猛な笑みを浮かべるラファエル。

「我を忘れ感情は歪み、殺戮衝動以外の全てが消えたその表情(かお)こそお前の本性——闇の巨人(ウルティノイド)の在るべき姿だ!愛だの正義だの下らない偽善者面で生きたこれまでをお前自身で否定したんだ」

 

憎い 絶対、楽には死なせない

 

「どんな気分だ?」

 

 

「苦しんで、死ね」

 

 

首を傾けせせら笑うラファエルの眼前で、紫電が爆発。一瞬で闇の巨躯が顕現する。

四肢・各関節からは鋭い爪が伸び、肩部には一際大きな二対の突起。宙の激情をそのまま形にしたような禍々しい姿だった。

 

 

———"ダークフィールド"

 

 

ダークファウストの周囲一帯に闇が渦巻き、一息にあらゆる物を飲み込んでいく。

 

(ダークファウスト——その暴走態と言ったところかな?変身と同時にフィールド展開とか)

「死に体が出来る業じゃ無いだろ…まあいい。そうでなくては潰し甲斐がないですからね‼︎」

 

ラファエルは右手を頭上に掲げ、指を鳴らす。

 

「ノスフェル‼︎」

 

「–––––雜̶シ̶溘̶縺̶セ̶縺̶翫̶

 

地響きと共にラファエルの周囲の地盤が崩落し、地の底から現れた巨大な(アギト)。トラバサミが如き勢いで閉じ切り彼を一瞬で飲み込んだ。

 

「これは雪辱戦です」

「今までの舐めさせられた辛酸と地獄、兆倍にしてお返ししますから」

 

ラファエルと融合したことでノスフェルから響く流暢な発語。

闇が深まると同時にノスフェルの外見も鈍い音を放ちながら更なる変化を遂げていく。

 

「楽しませて下さいね、姉さん」

 

ーー フィンデッシュタイプビースト

         ・ノスフェルグローラー ーー

 

 

形勢される暗黒不連続時空間の中心で、両者は相対する。

 

 

 

ーーフォートレスフリーダム・別棟(拘置所)ーー

 

「さっきから何が…何が起きているんだ⁉︎」

堅牢な壁越から聞こえた轟音と爆発音。如何に数多くの実戦で鍛え上げられてきたナイトレイダーとはいえ、武装や通信機器の全てを奪われた状態で隔離されていては対処のしようがない。

 

「傾注‼︎」

 

冷静を保っているものの困惑と動揺を隠せないでいるナイトレイダー達にナイトレイダー隊長——和倉は指示を出す。

 

「まず基地内で非常事態が起きているのは間違いない。総員、直ぐに出られる準備をしておけ」

そこまで言うと口元を緩め、落ち着かせる様に砕けた態度を取る。

「まあ身一つでする準備も無いかもしれんがな。一先ず落ち着いて待て」

 

「しかし、ここの錠は我々だけで外す事は不可能です!一体どうやって」

 

「"有事"だからな…彼自ら動いてくれる筈だ」

「遅くなりすみません」

和倉が言い終わる前に固く閉ざされていた扉が開く。

 

「イラストレーター⁉︎」

普段はCIC内の司令塔に1人鎮座しているイラストレーター——吉良沢がホログラムを用いず姿を見せた事に和倉以外の全員が驚く。

 

「この施設の電気系統が悉く破損していたので直接解除に来ました。取り急ぎ通信機(パルスブレイカー)は全員分揃えてきたので装備して下さい」

 

「現在の状況は?」

和倉の問いにイラストレーターは僅かに表情を曇らせる。

 

「敵からの襲撃を受けました。指揮系統もレッドトルーパーも当てにならない。正直、かなり不味いです」

 

「…!」

あまりに深刻な状況に、絶句する一同。考え得る上で最悪の事態なのは間違いない。

 

「詳しい事はもう一つの隔離棟で。僕を含めごく少数の人間しかアクセス権限が無いので安全な筈です。直ぐ移動します…それと」

イラストレーターが半歩踏み出すと、彼に抱えられたもう1人の姿が顕になる。

 

「彼女に肩を貸してあげて下さい。正直、僕には厳しい」

 

「瑞緒!?その怪我は!?」

頭から流血しぐったりしている瑞緒の姿に、血相を変え和倉は駆け寄る。

 

「…ださい」

 

「は?」

和倉の胸に縋りながら瑞緒は叫ぶ。

 

「宙さんを助けて下さい‼︎」

 

 

ーー

 

 

「–––––雜̶シ̶溘̶縺̶セ̶縺̶翫̶

炸裂する剛拳を敢えて躱さず、ラファエル(ノスフェル)は片腕で受ける。

 

(——へえ)

ガードを突き破らんばかりに加速する打撃と殺意。胴体に着弾する直前にノスフェルは驚異的なバックステップで距離を取った。

 

(もう体はボロボロの筈なのにこの威力…侮れない)

 

無言でその分距離を詰めてくる(ファウスト)

 

「なら——手数を増やします」

轟音と共にファウストの眼前から土塊と粉塵か噴き上がり、漆黒の外骨格が姿を現した。

 

 ーー インセクトタイプビースト・

         バグバズングローラー ーー

 

「ーーーー!!!!!!」

 

その背後から、もう一体。

「ーーーー!!!!!!」

 

 

「ダークフィールドが強化できるのはウルティノイドだけでは無い。当然、同質の闇を持つビーストもその範疇だ」

ノスフェルの口角が歪に歪む。

 

「今の貴方に、これを捌けるかな?」

言うや否や、ラファエル(ノスフェル)が振りかぶる様な動作で左腕を後ろに引くと、鋭い爪の生え揃った掌に赤黒い稲妻が収束。

 

(ファウスト)は、ノスフェルの目前まで肉薄したところで2体のバグバズングローラーから同時に体当たりを喰らい、押し戻されてしまう。

 

「ーーーー!!!!!!」

バグバズンは、2体分の腕力でファウストをその場に押さえながら鎌状の爪で何度も打撃を加える。

 

「隙だらけだ‼︎」

ファウストの動きを停滞させたタイミングでノスフェルの左腕から放たれたのは赤黒い稲妻状の光波熱戦。

 

敵の攻勢に

 

「–––––雜̶シ̶溘̶縺̶セ̶縺̶翫̶

 

飲まれようとしていた。

 

 

 

うるさい

 

「ーーーー!!!!!!」

「ーーーー!!!!!!」

 

うるさい

 

「–––––雜̶シ̶溘̶縺̶セ̶縺̶翫̶

 

ゴミどもが

 

 

刹那、ノスフェルの放った光波熱戦がファウストに着弾。

中空に打ち上げられたのは

 

「ーーーー!?!?!?」

2体のバグバズンだった。

 

「…へぇ やっぱり凄いなあ。ウルティノイドは」

空中に乱舞するのは2本の蔦。ラフレイアのものだ。それが今、ダークファウストの背中から伸びている。

 

「ーーーー!?!?!?」

「ーーーー!!!!!!」

新たな脅威を即座に認識したバグバズンが咆哮しながら再び突っ込んでくる。

しかし、宙の脳内を駆け巡っているのは梨子……喪ってしまった掛け替えのない存在だった。

 

◇◇◇

 

「宙ちゃん」

 

◇◇◇

 

今になって、彼女の笑顔が頭から離れない

 

「ゔ あ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!!」

 

(ファウスト)の口から吐き出された叫びは、ビースト達の咆哮を容易く掻き消した。

刹那、放たれた蔦がバグバズンの片方を拘束。一瞬で宙に浮き上がらせて頭から地面に叩き付ける。もう一方のバグバズンは背中の翼を広げ飛び上がるが、ダークファウストは既にその背後を取っていた。

 

「ガアアア!?!?!?」

勢い良く振り下ろされた両腕。その腕に備えられた爪が敵の翼を血飛沫と共に両断する。絶叫と共に地に堕ちたバグバズンに繰り出されたのは全体重を乗せたヤクザキック。

背中に——それも先程できた裂傷に凶悪な一撃を受けたバグバズンはうつ伏せの格好で激しく転倒した。

 

「ギャアァァァ!?!?!?」

倒れた敵に馬乗りになったファウストは、その顎を掴み海老反り状に思い切り引き上げ、キャメルクラッチを喰らわせる。

 

「カ…カカ…」

異様なまでにバグバズンの体が反り返り、口からは泡を吹き出すが、ファウストは無言で力を加え続ける。 ゴキン‼︎と外骨格ごとその体が砕け折れる音が鳴り響くと、ファウストは動かなくなった敵の頭蓋を踏み砕いた。

そして即座に身を翻し、その間延々と蔦で拘束し地面に叩き付けていたもう1体のバグバズン目掛けて跳び膝蹴りを叩き込む。転倒させられた敵に待ち受けるのは、グラウンド状態での連続打撃——パウンド地獄だ。

 

「ゴ…ガァ…」

ハンマーの様に何度も拳を撃ち下ろす内に、荒馬が如く必死に暴れ狂っていたバグバズンは動かなくなる。ファウストは、先程と同様に敵の頭を踏み抜いて絶命させた。

 

一瞬で2体のバグバズングローラーを葬ったものの、(ファウスト)は火砕流の様に留まることを知らない殺意と憎悪で荒い呼吸を繰り返す。

 

「余所見は良くないなあ」

「–––––雜̶シ̶溘̶縺̶セ̶縺̶翫̶

直後繰り出されのは、高速移動で距離を詰めてきたノスフェルの強烈な蹴り——辛うじて両腕を交差させてガードするが、ファウストの体は滑走するように大きく後退。勢いを殺しきれず体勢が後ろに流れてしまう。

後転して素早く立て直そうとするファウストの眼前に、再び一瞬で迫るはノスフェルの巨影。

 

「撃ち込んでおいたラフレイアの死の楔を逆利用するとは驚かされましたが…本当の戦いはここからですよ」

 

「殺してやる」

がくん、と起立する為に立てた膝が折れた。

再び体勢を崩した事で、今度こそノスフェルの斬撃をまともに受けてしまう。

 

「…ッ!?」

息を吐く間も無く凶爪の連撃がファウストの全身を襲い、蹴飛ばされて岩壁に叩き付けられる。直後、全身に襲い来るのは激痛以上の虚脱感。腕一本動かす事すら困難な状況だ。

 

(ああ、そういうこと…)

 

ピコン……ピコン……ピコン……

 

これまで一切光を宿していなかったコアゲージが、警告を示すように赤く点滅し、繰り返し甲高い音を立てていた。

 

(こんなとこだけ、似ないでよ…)

 

「何をへたばっているんです?」

それを敵が見逃すはずもなく。

 

「まだ前戯が終わっただけなのに…もっと気合いを見せてくださいよッ‼︎」

弄ぶように超近距離から熱戦を放ち、力無く吹っ飛んで地を転がるファウストを鞠のように蹴飛ばし続ける。失望の言葉とは裏腹に、上擦った声音はラファエルが思い描く状態に陥っている事を否が応でも理解させられる。

出来る限り力を引き出させてガス欠に追い込み、無抵抗になった(ファウスト)を痛ぶり殺す算段だった。

 

「"苦しんで死ね"でしたっけ?そっくりそのまま返してあげますよ‼︎」

ファウストの頭を掴み、何度も殴り付けるラファエル。

 

「幾ら力を使おうがどうでも良い。どのみち限界なのに変わりは無いんだ。こちらの手札で全て踏み躙り、嬲り殺しにしてくれる!さぁ、続けましょうか‼︎」

地面に転がしたファウストに跨り、何度も斬撃を喰らわせるノスフェル。ファウストはもう防御姿勢すら取らなかった。

 

◇◇◇

 

「宙ちゃん」

「私、死んだの」

「もう皆んなと一緒に過ごす事が出来ないの」

 

◇◇◇

 

(梨子、さん…)

 

「無様ですね。抵抗の一つも出来ないとは…僕を殺すんじゃ無かったんですか?ほら」

「せめて良い声で啼いて下さいよ‼︎」

 

「抵抗出来ないんじゃない…しないのよ」

 

「ん?」

 

「彼女の苦しみの万分の1でも味合わないと」

 

地に沈んでいた頭が爆発的な勢いで躍ね、ノスフェルを捉える。

 

「私は自分を許せない‼︎」

 

「そうですか。なら———」

「地獄を味わいながら死んで下さい」

ラファエル(ノスフェル)は顎を開き、鋭利な牙を一気に振り下ろす。それまでの痛ぶる攻撃ではなく、間違い無く致命の一撃。それを確認した(ファウスト)は———

 

「馬鹿が」

口角を上げた。

 

その瞬間、ノスフェルの視界が真っ黄色に染まる。眼前のファウストすら一瞬見えなくなる程の濃密な何か。

直ぐにラファエルはその正体を理解して青ざめる。

 

「まさか…ラフレイアの毒花粉!?」

拡散性と可燃性の高さを踏まえれば、(ファウスト)が何を狙っているかは容易に想像がつく。

 

(自分諸共この空間を誘爆で吹き飛ばす気か!?)

直ぐに離脱しなければ回避は間に合わない。ラファエル(ノスフェル)は一瞬で攻撃から退避に思考を切り替えた。

切り替えてしまった。

 

「捉えた」

ほんの一瞬、敵の意識が自分から逸れたのを(ファウスト)は見逃さなかった。ノスフェルの組み伏せを一瞬でエスケープし、バックチョークの体勢を取るように敵の背後に組み着く。

 

刹那、ノスフェルの体から赤黒い奔流が漏れ出してファウストに取り込まれていく。

 

「–––––縺弱c縺ゅ=縺√=縺?シ?シ!?!?

初めて、ノスフェルから明確な苦痛を伴った絶叫が放たれる。

 

(こいつ、僕のを直接奪って…!?)

もとより(ファウスト)に光波熱戦を撃つ力は残っていない。

エネルギー吸収。それがこの土壇場で彼女が繰り出した力だった。どれだけノスフェルが暴れようと、ファウストは背後から首を絞めた体勢のまま離さない。

 

ファウストがその拘束を解いた時、コアゲージの点滅と警告音は消え、ノスフェルは地に伏していた。

 

【潮時か…この体はもう使い物にならないな】

宙の中で、ダークファウストはそう言い放つ。

 

だが、宙は意に介さずラファエル(ノスフェル)に歩み寄る。

 

「戻せ」

「彼女を元に戻せ」

 

「化け物、がぁ…」

そう答えるや否や、ラファエル(ノスフェル)の頭蓋を思い切り蹴飛ばし、踏みつける。

 

「なら死ね」

「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね」

 

何度も、何度も。

だが、怒りと悲しみが晴れる事は無かった。敵の命を刈り取るまで、この殺戮が止まる事は無い。

 

 

(本当に、驚かされる…だが!!)

 

「最後まで取っておくのは、切り札なんだよなぁァァァ‼︎

ラファエル(ノスフェル)の絶叫と共に、その額から紫色の怪光が放たれる。ダークフィールドを突き抜け、領域外にある"それ"を捕捉すると同時にそれは額の肉壁の隙間に収められた。

 

「ッ⁉︎」

 

「そうかそうか、そんなに友達が大事か」

突如硬直したファウストを尻目に、悠々と立ち上がるノスフェル。

 

「ならその友達ごと、僕を殺してみせろよ」

ノスフェルの額に収められているのは、動かなくなった梨子。

 

「貴様ぁぁぁァァァァァァ!!!!!」

 

「ギャハハハハハハハハハハハ!!!!」

笑いながら突進してくるラファエル(ノスフェル)に、咄嗟に拳を引き絞る。

 

◇◇◇

 

「宙ちゃん」

 

◇◇◇

 

「ぐッう…ぅぅぅぅぅぅぅ!!」

その拳は、ノスフェルではなく地面を撃ち抜いた。

 

「馬鹿が」

ノスフェルの爪が腹に深々と突き刺さり、ファウストの身を貫く。一気に袈裟に斬り上げると、裂傷からは大量の闇のエネルギーが血飛沫のように飛び出した。

 

「があぁぁぁぁぁぁ!?」

 

直ぐに変身は解除され、宙は地面に投げ出される。立ちあがろうとするが、駄目だった。

 

「ぐッ…ガハッ‼︎ゴホッ‼︎」

胸や腹を抉られた事で口からは鮮血がとめどなく溢れ、激痛が全身を駆け巡る。視界は殆ど何も見えず、手も足も動かない。最早生きているのが不思議な程だった。

 

「僕達は個体としては最高峰の存在だというのに」

変身を解除し、ノスフェルの中から現れたラファエルは嘆息する。

 

「わざわざこんな弱点を作るだなんて」

すぐ側に梨子が転がった。

 

「本当に愚かだ…そうは思いませんか?ファウスト?」

「死にかけの壊れた器と僕……どちらが有効かは貴方が1番良く分かる筈です」

 

「……え?」

そう言うとラファエルは宙の懐に手を突っ込み、ダークエボルバーを奪い取る。

 

「…かえ、せ…」

 

「いや、もう貴方にこれは必要ない」

宙の胸から闇色の光球が現れ、ラファエルの胸元へと吸い込まれる。

 

【これが貴様の行末か…呆気ないものだ】

「はい、契約完了♪」

 

「あ、ああ…なんで…うそ…」

 

「嘘じゃねえよッ‼︎」

起立しようと必死に体を震わせる宙目掛けて、ラファエルの蹴りが放たれる。

 

「散ッ々手間掛けさせやがって‼︎この時をずっと、ずっと待ち望んでいたんだよ‼︎」

「言いましたよね?これまでの地獄を兆倍にして返してやるって」

ラファエルは醜悪な笑みを作ると、宙の髪の毛を掴んで無理矢理顔を上げさせる。

 

「今がその時だ」

 

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

 

 

仄かに温かな光が頬に触れる。

誰かが、私を呼んでいる。

 

「千歌…ちゃん…?」

 

一瞬脳裏に過ったその人は、友人の顔によく似ていた。

 

 

「…はッ!?」

目を開くと、そこは赤黒い闇に覆われていた。

 

「私、今まで何して…⁉︎」

困惑するまま梨子は顔を上げると、目の前に飛び込んできた光景に絶句する。

 

「こうして見るとただの小娘か…無様なもんだ」

 

「あ……ぐ…」

青黒い、異形の穴から伸びる無数の触手に全身を拘束され、吊り下げられた宙を見てラファエルは嘲笑う。

 

「ほら、どうした⁉︎苦しませて殺してみろよ‼︎あの時の威勢は何処に行ったんだ⁉︎」

無抵抗の宙を殴り飛ばした。

 

「いやあぁぁぁぁ!?やめて!!」

梨子の悲鳴に、心底興味が無いと言った表情で振り返るラファエル。

 

「まだ生きてたんですか?」

 

「やめて‼︎宙ちゃんを離して‼︎」

梨子はパニックで涙を流しながらもラファエルに懇願する。それを見たラファエルは

 

「やめなーーーい!!!!」

梨子を払い除け宙を殴り続けた。

 

「あああああああ!?うわあぁぁぁぁぁ!?」

 

「五月蝿いな……あ、そうだ」

泣き崩れる梨子を見て、ラファエルは彼女の前に膝をついて声を掛けた。

 

「少し面白い事を思い付きました。どうせ消える命でしょうし、貴方は見逃してあげます」

「その代わりお友達と、それを追っかけてくる奴らに伝言をお願いしますね」

梨子に宙のパルスブレイカーを渡すと、身を翻して宙に向き直る。

 

 

「さあ、行きましょうか姉さん。"異形の海"へ……今の貴方が道具程度の価値でも、ちゃんと使い切ってあげます。有効に————残酷にね」

無数の触手は、拘束した宙を青黒い穴へと引き摺り込み、ラファエルもそれに続く。一瞬、梨子を振り返って。

 

「それじゃあ、宜しくお願いしますね」

 

「いやぁ……宙ちゃん……誰か、誰か助けて………」

ただ1人取り残された梨子は、嘆き悲しむ事しかできなかった。

 





今更ですが、敵味方関係無くビーストの呼称が一致しているのはもう、そういうもんだと思って下さい。
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