めっちゃ大事なこの回で非常に重要な告知をさせて頂きます
以前自作でも引用させて頂いた、山形りんごをたべるんごさんの作品「RAINBOW X STORY」の86話 に高海宙が登場しています。
↓
https://syosetu.org/novel/224442/
告知が遅れ本当に申し訳ないです‼︎
現在進行形で散々な目に遭ってる宙がこの作品では非常に格好よく活躍していますので、是非ご覧下さい!
◇◇◇
曜に励まされ、自らの恐怖と向き合った千歌
フォートレスフリーダム唯一の残存兵力となったナイトレイダー
残された者たちの反攻作戦及び高海
◇◇◇
覚悟は、変わらないか?
最後の戦いに赴く前に、そう問いかけられた
生と死の狭間でぎりぎり保たれている命の灯
本来ならあの日、あの場所で消える筈だった私に、貴方は翼をくれた
…大丈夫
貴方がこれまで、沢山の命と想いを繋いできたように
今度は私が、あの子たちの命と想いを繋いでみせる
それは彼女にとって、最初で最後の贖罪だった。
ーー フォートレスフリーダム ーー
ビーストヒューマンと化したレッドトルーパー達は、見境なく基地内部の人間を襲い、際限なくその数を増やしていた。
電力設備が破損し、闇に覆われた連絡通路に無数の影が蠢く。
不意に、乾いた音と共に彼らの足元に鉄の塊が転がった。
「ギッ!?」
直後炸裂した眩い閃光と爆音が、ビーストヒューマン達の目と耳の機能を奪う。続け様に飛来した弾丸がそれらの頭部を次々と撃ち抜き絶命させる。
「今だ!走り抜けろ‼︎」
闇の中から飛び出したナイトレイダーは、眼前に蔓延るビーストヒューマンを最小限の攻撃で処理しながら疾走。
「ガァァァ!!」
目眩しから復帰したビーストヒューマンがナイトレイダーに牙を剥くが、ナイトレイダーが通路奥の闇に消えると同時にシャッターが降りて両者を完全に分断。挟み込むように追ってきたビーストヒューマン達の前にも同様にシャッターが降りて追跡を妨害される。
「クソガァァァ!!」
激昂するビーストヒューマンは眼前の防護シャッターを何度も殴り、噛みつき、銃を出鱈目に撃って破壊しようとするが、装甲を幾重にも張り巡らせた防護壁はそう易々とは砕けない。
「イラストレーター!次は⁉︎」
『D1からD3通路へ回って下さい』
「了解!」
彼らの向かう先に、その決戦兵器がある。故に、ナイトレイダーは…人間達は心折れない。
◇◇◇
"闇の力は既に我が手中にある"
"ミカエルの灯火は時期燃え尽きる"
"命惜しくば、
「これが、沼津市山中に残されていたパルスブレイカーに記されていました。おそらく、高海宙のものでしょう。ご丁寧にも、この"終焉の地"と記された場所の座標も記されています」
「あの少女の証言と併せると、高海宙もその"終焉の地"とやらに囚われているということですか?」
覚悟を決めた千歌と曜、ナイトレイダー達の前で、イラストレーター・吉良沢は作戦の概要を説明していた。
「これよりナイトレイダーはフォートレスフリーダムに潜入し、チェスター格納庫に向かって下さい」
「幸い、チェスター格納庫にはまだビーストヒューマンは確認されていません。機体も最終調整を終えていますので、直ぐに出せます」
「しかし、格納庫までの進路状に蔓延るビーストヒューマンの対処は?弾薬も残り僅か…全て対処するのは難しいですが」
ナイトレイダーAユニット隊長・和倉は顔を曇らせるが、イラストレーターは冷静に首肯する。
「今から遠隔でフォートレスフリーダムの管制システムを奪います。残された防衛設備を用いてビーストヒューマンを撹乱しつつ、格納庫までの誘導を行うので、ナイトレイダー各位は極力戦闘を避けながら格納庫に向かって下さい」
「皮肉にも、ビーストヒューマンの侵入を恐れた上層部が殆どの生存者を見捨てて全域に防護シャッターを下ろしたことで、主要な管制システムはまだ無傷で残されています。確かに、作戦自体不可能ではなさそうです…が」
依然として冷徹な表情を崩さない和倉は、モニターに映された光点——記された座標に指を沿わせる。
「記された座標自体が全くの出鱈目、罠という可能性は?座標が正確なものであるという確証も無いままに、残された部下を死地に送ることは、私にはできません」
「大丈夫。この場所で間違いないですよ」
張り詰めた空気を和らげる静かな声。皆が彼女に目を向けると同時に、驚愕する。
「私の中の"光"も、その場所を差してますから…ほら」
千歌の胸元から現れた白銀の光が、示された座標をなぞるように一直線に伸びていた。
「千歌ちゃん、それ……!?」
「黙っててごめん。宙ちゃんがいなくなってから、いつの間にかピカって光るようになってたの」
目を見開く曜に節目がちにそう告げる千歌。胸元の光に手を翳すと、それは一層強く輝いて
「急にこんな事になって、訳わかんなくて…けど今なら分かる。この光が私に応えてくれるものだって」
「正直、半信半疑ではあったが……本当に君も、適能者だったんだな」
「私も未だに信じられないです。けど、これなら皆さんと戦える。宙ちゃんを助けられますよね?」
千歌は、押し黙る和倉に勢いよく頭を下げる。
「お願いです!宙ちゃんを助けてください!私たちは……私は!家族を守りたい!もうこれ以上、家族が居なくなるのは
「私からも、お願いです!」
力強い声とは裏腹に嗚咽が混じり始める。顔を伏せる千歌の肩を抱いた曜がフォローするように言葉を続ける。
「一つ聞かせて欲しい」
そんな2人を真正面から見据え、和倉は静かに語り掛ける。
「高海宙が持つ闇の力は君たちとは全く相反するものだ。君たちの光が覚醒すると、彼女の闇の力が君たちに牙を剥く可能性は十分にある。それでも君たちは、この先も彼女と一緒に居られるか?」
「一緒にいます。この先も、ずっと」
「!!」
即答だった。狼狽する和倉に微笑みながら千歌は言葉を続ける。
「一度生き別れて、でもまた会えた。宙ちゃんがあの力で諦めずにずっと戦ってきてくれたお陰です。もう、絶対離さない。それに、喧嘩だってきっとこの先する事もあると思います」
「何もぶつかる事なくこの先一緒にいようだなんて思いません」
「そうか………そうだな」
首肯した和倉は身を翻し、後ろに控える隊員達に指示を出す。千歌には彼が纏う雰囲気が少し和らいだように見えた。
「Aユニットは私と一緒に先行し、格納庫までの退避ルートを確保。Bユニットは適能者を護衛しながら後に続け!石堀、管制システムとのデータリンクは終わったか?」
「完了済みです。フィールド突入後の通信も問題ありません」
「よし、最後に、イラストレーターと瑞緒の護衛は───」
「必要ありません」
「えっ!?」
イラストレーターは和倉の言葉を途中で遮り、瑞緒は目を見開く。
「瑞緒は作戦発動後速やかにここから退避させます。僕1人に護衛を割くより、格納庫までの人員を1人でも確保した方が効率がいい」
「何言ってるんですか⁉︎ビーストヒューマンがここに雪崩れ込んできたらどうするんです!」
別棟がビーストヒューマン延るフォートレスフリーダムから離れているとはいえ、連絡通路から侵入してくるリスクは少なからず存在する。1人籠城しながら応戦することは非常に困難であることは誰の目から見ても明らかだった。
「彼らが格納庫に到達するまでの時間は長くても15分。防衛システムを使えばそれまでの時間は稼げます。その後速やかに退避するので問題ありません」
「けど!それなら私も…!」
「君は負傷してます。足手纏いです」
「…ッ‼︎」
額に巻かれた包帯に手を当てると、赤く染まった掌。それを認めるや否や瑞緒はその場に力なく膝を突いた。
「ナイトレイダー各位は速やかに作戦行動に移って下さい。そして、残りの人員は彼女は医療施設へお願いします」
◇◇◇
ーー フォートレスフリーダム・格納庫 ーー
広大な格納庫内部に散らばる整備兵の死骸。何れもビースト化していたが、どの個体も頭を正確に破壊されているようで争った形跡が一切確認できなかった。
「Χニュートリノ反応なし。全て掃討済のようです」
「…総員、訓練通り各機体に搭乗せよ」
格納庫に到達する前に、既に戦闘が終わっていたことにナイトレイダーは困惑するが、和倉の指示を聞き即座に動き出す。
「エンジン・ジェネレーター、異常無し」
「各武装損傷無し」
「機体損傷無し」
直前までレッドトルーパーが作戦行動を取っていた為、整備が済んだ状態で捨て置かれていた機体——クロムチェスターα・同β・同γ・同δ
イラストレーターの読み通りだった。
「出撃準備良し!」
「総員傾注」
出撃直線、操縦桿を握った和倉が淡々と言葉を切り出す。
「この新鋭機の初陣が、かつて無い激戦になることは間違いない。この作戦に疑問を持つ者もいると思う」
「だが、戦おうとしているのは我々だけでは無い。適能者の片鱗を見せたあの少女達…そして、ウルティノイドとして戦い続けてくれた高海宙」
「適能者やウルティノイドである前に、彼女達はまだ子供だ。守られるべき存在が、その命を危険に冒してまで我々に力を貸してくれている」
「我々は、応えなければならない。そして、助け出さなければならない。1人の人間として、大人としてその身に刻んでおいて欲しい。最後に」
「皆、訓練通り落ち着いて行け!いつも通りだ!」
「「了解!!」」
「ナイトレイダー、クロムチェスターα・β・γ・δ…出撃‼︎」
空中に舞い上がった4つの機体、クロムチェスターα・β・γ・δは菱形を組むような飛行編隊を組んだ。
「"ハイパーストライクフォーメーション"!」
それと同時、各機体から矢継ぎ早に飛び交い始める管制通信。
「管制プログラムSD、コントロールデータⅡ,バージョン5」
最後尾を飛ぶ4つの砲門を搭載したδ機が分離、砲門同士を合体させながら2対の大型砲門を形成。
「コントロールデータⅡ,バージョン5,レベル6了解」
追従するように機体下部にキャタピラを備えたγ機がコクピット部を分離射出、コネクタを展開させる。
「セルフチェッククリア、ロード完了」
主翼にジャイロを積んだβ機、多連装ミサイルを装備するα機が縦一列になりながらγ機と合体。
「同期信号受信確認」
接続されたα・β・γ機に覆い被さるように、変形を終えたδ機が合体。
「"
4機は華麗な空中起動の後、2対の大型砲門を背負った1機の大型戦闘機へと姿を変えた。
これこそが、ナイトレイダーが誇る可変大型戦闘機・ハイパーストライクチェスターである。
ハイパーストライクチェスターはそのまま水平飛行し、送られてきた座標と同一の空域に急行する。
『和倉、Bユニット配置に着いた。適能者2人もいつでも行けるとのことだ』
ハイパーストライクチェスターに通信が入る。別働隊——適能者を護衛しつつ座標付近の地上に展開していたナイトレイダーBユニットからだ。
「よし、頼む」
地上から座標の空域を観測していたBユニット隊長・斎藤はハイパーストライクチェスターの機影を視認すると、千歌と曜に向かって手を挙げて合図を送る。
「曜ちゃん、行くよ」
「うん…!」
2人は互いの手を取ると、目を閉じて意識を集中させる。
やがて、2人に呼応するように胸元から現れた光が瞬いて閃光が走る。
「これは…!」
「凄い……!」
周囲を取り囲むBユニットの戦闘員たちは、2人が起こす奇跡に一瞬目を奪われる。
まるで示し合わせた様に、千歌と曜は同時に叫んだ。
「「開け、闇の扉!!」」
刹那、迸った白銀の光が空に向かって伸び、空間のある一点を穿つ。
まるで歪み、捻れるように空が蠢いて青黒い孔が現れた。
「ゲートが…」
「開いた……!」
ハイパーストライクチェスターの機内からは、その異様な光景がよりはっきりと確認できる。
「突入せよ!」
和倉の号令と共に、ゲート突入軌道に乗ったハイパーストライクチェスターはそのまま増速。青黒い孔の中に飛び込んだ。
青黒い光がオーロラのように揺らめく特殊位相空間。コックピット内は小刻みに揺れ始めるが、飛行に支障はない。
「重力波抵抗、30!」
「11時の方向、位相エネルギー収束ポイント探知!」
「分かった。左5度旋回」
やがて距離概念が存在しない筈の空間の向こうに、白く光るゲートが現れる。
「出口だ……ッ!?」
白い光を抜けた先に広がる光景。
黒く濁った海
草木の一切生えていない真っ黒な孤島
島の中心部に聳えるのは、巨大な珊瑚礁のような何か
まるで死んでいるように真っ白なそれは、崩れることなく空に向かって伸びている。
「これが、終焉の地……?」
「隊長、レーダーに感あり!10時の方向、アンノウン多数接近!」
ゲートを越えたハイパーストライクチェスターに群がろうとする無数の影。これまで交戦してきた大型ビーストに比べればかなり小さいが、空自の戦闘機並みの大きさのそれはストライクチェスターからすれば十分な脅威だった。
ーー インセクトタイプビースト
・ビーセクタ ーー
「やはり、すぐに仕掛けてくるか…総員、戦闘準備」
「これより空戦に入る」
ーー フォートレスフリーダム ーー
「何とか出せましたね」
ハイパーストライクチェスターが出撃する様子をモニター越しに確認したイラストレーター。本来ならば自らCICで指揮を執るべきところではあるが
「……そうも言ってはいられないな」
別モニターの画面を覆い尽くすビーストヒューマンの生き残り———明らかに自分が今いる別棟に押し寄せてきている。
ディバイトシューターを手に取り素早く管制室から離れると、薄暗い廊下を駆ける。ナイトレイダーが出撃した時点で別棟の扉は全て閉鎖してある。直ぐに突破されるとは考えにくい。
「…筈だったんだけど」
天井が弾け飛び、異形と化したレッドトルーパーが姿を現した。
「脱出口を逆に利用してきたのか」
自嘲気味に笑いながら呟く。装備も、携行する弾数も到底今いるビーストヒューマンの数に見合っていない。
「……無駄か」
構えていた銃を降ろした。
「なに、勝手に諦めてんですか……!」
「…!」
連鎖する発砲音と共に、イラストレーターに襲いかかろうとしていたビーストヒューマンが血を撒き散らしながら倒れていく。
崩れ落ちるビーストヒューマンの向こう側から覚束無い足取りで1人の女性が姿を現した。
「瑞緒…」
「〜〜〜ッバカバカバカ‼︎やっぱり死に急ごうとしてるじゃないですか‼︎」
「何故戻ってきた?…その身体で」
「死に急ぎのおバカさんを助ける為です。存外、タフなんですよ私」
困惑するイラストレーターに向かって瑞緒は手を伸ばす。
「自分のやっている事に負い目を感じるのなら、尚更簡単に生きることを諦めないで下さい。皆んなが無事に帰ってくるところを見届けて、その先も生き続けビーストから人々を守り続ける——それが、私達の責任であり罪滅ぼしです、ね?」
「組織の腐敗を煮詰めたようなこのTLTで… 」
「本当に、君は変わった奴だ」
イラストレーターは苦笑しながらその手を取った。
「まだビーストヒューマンはここに来る。やれるか?」
「どこまでも、お供しますよ!」
◇◇◇
「本当にゲートが開くとはな…本当に、感謝に絶えない」
Aユニットの空間突入を見届けた後、Bユニット隊長・斎藤は千歌と曜に向かって頭を下げる。
「後は我々に任せてくれ。おい、お前ら!彼女達を自宅まで護衛し「あ、あの!」
斎藤の言葉を遮るように千歌は声を上げる。
「皆さんも、あの穴の向こう側に行くんですか?」
「ん?ああ、そうだが…」
決意の宿った瞳で詰め寄る千歌と曜を見て、彼はその思惑を悟り首を横に振る。
「その若さで見上げた根性だが…駄目だ。君たちを連れてはいけない」
「でも、今見せたみたいに私達にだって力はあるんですよ⁉︎皆さんのお役にだって立てるかもしれません!」
曜も千歌と考えは同じだった。
「訓練も積んでいない君たちが、高G起動を前提としたこの機体に乗れると思うか?」
「そ、それは……!」
押し黙る曜の肩を斎藤は優しく叩いた。
「気持ちは嬉しいが、君達をこれ以上危険な目に遭わせる訳にはいかない。安全な場所で、あいつの帰る場所に———!?」
突如として頭上の青黒い穴が広がり、青黒い光が彼らを包み込む。
「た、隊長!?」
「どういう事だ!?俺達はまだゲートを超えていない筈…何故向こう側にいる……!?」
一瞬で彼らの周囲はドス黒い異形の空間に変わっていた。
曜が悲痛な声で叫ぶ。
「ち、千歌ちゃん!?千歌ちゃんがいません!!」
「何だと!?」
同時刻、千歌は異形の海の中心部で1人の男と対峙していた。
「ようこそお越し下さいました、
「貴方は…?」
「お会いするのは初めてでしたね。僕は、ウルティノイドの為に彼方の星で作られた人工生命体ラファエル……は言っても解らないかもしれませんので、姉さん——高海宙の弟分という事にしておきましょうか」
「宙ちゃんの…弟…?」
「あ、それと貴方のお友達の桜内梨子を手に掛けたのは僕です」
「……ッ‼︎」
「お、良い反応…自己紹介するにはこちらのエピソードの方が良かった様みたいです」
「宙ちゃんは!?宙ちゃんは何処にいるの!?」
これ以上無駄な話はしたくないと言わんばかりに、話を遮り声を荒げる千歌。
ラファエルは飄々とした態度でその怒りを受け流す。
「言われずとも、お見せしますよ。よく見える場所で」
暗雲に向かって指を鳴らすラファエル。
暗雲の切れ目から現れたのは、死に絶えた珊瑚礁をそのまま切り出した様な奇怪な浮遊物。
まるで十字架が如く、その浮遊物から四方に伸びる4つの突起。
「ああ、ああああ……!」
顔面蒼白になり、吐き気と共に脚ががくがくと震えて立つこともままならなくなる千歌。
浮遊物の中心部に、ボロ雑巾のような何かが——誰かが貼り付けられている。
十字架から伸びた触手によって四肢と胴体を厳重に拘束され、唯一自由なままの頭は項垂れたまま時折揺れる。
靡く長い黒髪は所々赤黒く染まっている。
ボロボロに千切れたセーラー服は最早衣類としての機能を成しておらず、所々露出した肌に刻まれた無数の打撲痕と凄惨な裂傷が、大凡何をされたかを理解させられる。
「嫌あああああぁぁぁぁァァァァ‼︎」
掛け替えの無い存在が、見るも無惨な姿で磔にされていた。
「丁寧に何度も聞いてあげたのですが、一切君達のことは話してくれませんでした」
「まあ、君達が適能者であることは知っていましたがね」
「どうして…どうしてこんな酷いことをするの?」
「貴方は何なの…!?」
失笑するラファエルに、震えながらも千歌は非難の言葉を浴びせる。
「どうしても何も、姉さんは僕に負けたんですよ?戦いに負けた時点で敗者は勝者にその生殺与奪を握られますから、何をしようが僕の自由です」
「大丈夫、利用価値がある内は殺しませんよ。苦しんではもらいますが」
ラファエルは千歌に歩み寄りながらダークエボルバーを翳し、一閃させると同時、闇が溢れ出しその身を包み込む。
「ハアァァァ……!」
闇の中でその瞳が妖しく光り、纏った闇が薙ぎ払われるとその姿は魔人へと変貌していた。
赤と黒のツートンカラー。鋭い2本の角。四肢から伸びた鋭い爪。
そして、瞳は血走った様に真紅に染まっていた。
ーー ダークファウスト・ツヴァイ ーー
「……クハッ…ハハハハハハハハ‼︎」
魔人態への愛おしさと湧き上がる高揚感を堪え切れず、自分の体を抱きながら高笑いするラファエル。
「う……!」
もう、どこにも無かった。
自分達を守ってくれていた宙の姿は、今や底無しの悪意と殺意に塗り潰されてしまっている。
あまりの悍ましさに、ラファエル——ダークファウストツヴァイが距離を詰める程千歌は後退ってしまう。
「さあ、貴方の力を示して下さい」
「高海宙を助けたいのでしょう?戦わなければお仲間は皆死にますよ?」
「殺し合いましょう…今!ここで‼︎さあ……さァ!!」
怖い…怖い
でも——
◇◇◇
「私に、やらせて下さい」
「今度は、私達が宙ちゃんを助けます」
◇◇◇
「お願い…応えて‼︎」
千歌は胸元に手を伸ばし、顕現した短剣型の光を掴んで眼前に掲げる。
「ーーーー!!!!!!」
「うあっ…‼︎」
数秒の沈黙の後、不意に襲いかかってきた黒い塊に撥ね飛ばされた。
ーー ブロブタイプビースト
・ペドレオン(クライン) ーー
「どうして…!?何で何も——!?」
数秒前まで手元にあった光が、跡形も無く消え失せている。
血相を変えて叫ぶ千歌を他所に、ラファエルは蔑み混じりに呟いた。
「やっぱり、無駄でしたか」
「半覚醒の適能者崩れがどれだけ張り切ろうが、恐怖には抗えないようですね……興醒めです」
獲物を捉え這い寄ってきたペドレオン十数体に向かって片手を翳し、立てた親指で首を切る様なジェスチャーを取った後、取り残された千歌に目もくれず歩き去るラファエル。
「さて…皆殺しといきましょうか」
その体躯を50m近くまで巨大化させ、頭上で激しい空中戦を繰り広げるハイパーストライクチェスターを標的に捉える。
「駄目!待って!ぐうッ…!?」
手を伸ばして止めようとする千歌を、伸びてきたペドレオンの触手が捕らえる。
「うわああああ!?」
そのまま引き摺り回され、激痛を堪えながら必死に岩肌を掴む。
だが、もう数分の猶予も無いことは分かっていた。
「嫌…!誰か…助けて……!」
ペドレオンは胴体を縦に割って捕食口を開くと、ゆっくりと力をかけながら触手を引き寄せる。
まるで、捕らえた獲物を弄ぶように。
力負けし、遂に掴んでいた手を離してしまう。
「きゃあああァァァァァァ!!」
刹那、物凄い力で引き寄せられ視界いっぱいに真っ黒な捕食口が広がる。
千歌は恐怖から逃れるように目を固く閉じた。
轟音。
目の前が真っ白になった
体がふわふわする
これが……天国?
そっか……
私、死んじゃったんだ
眩しくて、何も見えないくらいに真っ白な世界
死ぬって、こんなにもあっけなくて————
—————あれ?
白一面だった視界が徐々に開けてくる。
さっきまで懸命にしがみついていた岩肌。
鬱血した手の平から伝わってくる確かな痛み。
「生きてる……?」
そして何より、視界一杯に壁のように広がる白銀の光
その場にいる誰もが、その光景に言葉を失っていた。
異形の海の中心部に突如として顕現した眩い一条の光。
光は収束し、やがて一つの形を成していく。
「あの光……まさか」
「千歌ちゃん……!」
「え……⁉︎」
すぐ側にいた千歌はそれが何かを理解し、目を大きく見開いた。
光が、轟音と共にゆっくりと動き始める。
違った。
それは壁ではない。
千歌に群がろうとしていたペドレオンを打ち砕いた巨大な拳が、ゆっくりと引き戻される。
その動きを追うままに、視界に映り込んでくるのは白銀の体。胸に刻まれたY字型の光球。
白銀の瞳。
「うそ……でしょ…」
銀色の巨人が、そこにはいた。
視線が交錯する。
千歌と巨人、互いの瞳にそれぞれの姿が大きく映し出される。
ほんの一瞬が、悠久の刻を巡るような不思議な感覚。
———これは、贖罪だ
(……あれ?)
何故だ。
初めての筈なのに、胸の奥底から懐かしさを孕んだ万感の想いが込み上げてくる。
巨人は右手を千歌に向かって翳し、光と共に千歌を掌に収める。
「シュアッ‼︎」
直後、右手から鞭状の光波・セービングビュートを投射して千歌を戦場から離れた場所———ナイトレイダーと曜の元に転送させた。
「千歌ちゃん‼︎」
「怪我は無いか?」
「良かった……!けど、それじゃああれは……?」
突如として現れた銀色の巨人に一瞬圧倒されていた曜とナイトレイダーは、弾かれた様に千歌に駆け寄る。
一方の千歌は、まだ巨人を凝視し続けたままだった。
「何故です!?覚醒した
「フッ…!」
銀色の巨人は身を翻し、宙返りを交えた跳躍でツヴァイの前に降り立った。
これは、贖罪だ
取り残されたあの子たちへの
世界から隔絶され、ずっと孤独な思いをさせてしまったあの子への
私は結局、親としての責務を全く果たせなかった
それでも———
私にまだ、戦う力があるのなら
今度こそ救い出してみせる
愛する我が子達の未来を、守るために
「————シェアァッ‼︎」
銀色の巨人———ウルトラマンネクサスは、裂帛の気合と共にダークファウストツヴァイ————その奥に囚われた宙に向かって吶喊する。
「ウルトラマン……いや」
その光景を見る千歌の目から、一筋の涙が流れる。
「……お母さんなの…?」
もう会えない貴方たちを、守る。
次回「魔人 ーー メフィスト ーー 」