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「―――僕は、ツェルニを破壊する」
「―――私は、ツェルニを守る」
二人の決断、決して混じり合わない/会えない。
もう、言葉が届くことはない。……すでに答えは、決まっているから。
「終わらせないとならないんだ。このまま続ければ、ただ腐って摩耗し続けて……悲しみが増えるだけだ」
「ならば、改めてみせるッ! 直せばいいだけだ。
悲しみはいつか消えるものだ。消せるだけの力が、ここにはあるッ!」
力強い宣言、いつも通りの真っ直ぐさ。……目を背けたくなるほどの眩しさ。
だけど僕には、悲壮な強がりにしか聞こえなかった。
僕らが譲り合える一線は、とうの昔に超えてしまった。
事ここに至っても、僕にとって彼女の言葉は、『夢想』を超えることができず。彼女にとって僕の言葉は、『怠惰』として弾かれ続けた。
だから―――ぶつかり合うしかない。
それでも分かり合えないと知っていながらも、そうする以外の方法がわからない。
僕も/彼女も、ソレを/全てを承知してここにいる。―――刃を向け合っている。
「……誰もが終りを望んでいる、このツェルニ自身も。
だから、
「ならばッ! ……私はここにはいなかっただろう」
返す言葉はやはり、平行線。……どこまで行っても/こんな場所でも/たった二人だけでも、ソレだけは変わらない。
恨みや憎しみなんてない。怖れであるわけがない。
そうであったら良かったのに、然るべきだったのに、ソレで討たれるのなら納得もできたのに……できなかった。
彼女は高潔すぎて、超えてしまった。……僕は卑劣すぎて、立ち止まり続けてしまった。
だから、今の僕らにあるのはただ、義務感だけだった。
かつてそうだったように、これからもそうであり続けるために、今この時を選んだ。その結果―――僕と彼女の道が分たれた。
「……あなたが今、ここにいるのは、生き延びて欲しいからです。繰り返すためなんかじゃない!」
「私だけ生き延びて何になる? 皆を見殺しにしてまで、生きながらえて――― 」
それでもまだ、繋がれる強さが、彼女にはあった。
傷つくと/裏切られるとわかっても、請われた手は掴んでしまう。拒絶の揺り篭に閉じこもることができない。……そんな彼女を利用する浅ましさが、僕にはあった。
僕にあるのは、潰すか潰されるかの二者択一、孤絶だけだ。
すれ違い続ける、擦り切られ続ける、痛くて痛くて堪らない……。
もうとっくに感じないと思っていたのに、彼女と向き合うと痛みを思い出す。痛かったのだと突きつけられる。
忘れてなければ息ができない。それなのに、何度も抉り出してくる。……彼女はただそこにいるだけで、僕を潰してくる。
僕と彼女は、こんな関わり合いしかできなかった。気づかれないよう/悟られないよう、意気を/息をひそめつづけた。ずっとずっとずっと―――そうだったように。
でも、今この時からは違う。……もう、偽らなくていい。
(……それでも――― )
変えられる/変わってもらえると、信じていたのか?
僕にそんな権利があったとでも?
最後に浮かんできたのは、いつもの後悔。ため息混じりの、なにも成せなかった徒労感だった。
黄金色に輝く彼女が、逃げ場のない過去を背負って、真っ直ぐに剛刃を振りかざしてきた。
漆黒に沈みつづける僕は、どん詰まりの未来へ向けて、幾筋もの細刃を繰り出した。
一触即発の緊迫、互いに向け合うのは殺意のみ。
けど、たぶんコレが、最初で最後の……分かり会えた瞬間だ。
そして、火蓋は今―――。ツェルニの断末魔によって、切られた。
亀裂が走る大地を蹴り出し/駆け出し、僕らは―――殺し合いを始めた。
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