再生のレギオス   作:ツルギ剣

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入隊 後

 

 部室の控え室から、夢幻と重ねた訓練所の様子を眺めていると、

 

「―――やっぱりコレ、やり過ぎなんじゃ……」

 

 議論を蒸し返してしまうけど、やはりどうしても気になってしまう……。デカくて厳しい図体ながら、オロオロと戸惑っているハーレイさん。

 彼の性格上、本気で新人たちのことを心配しているのだろう。……こんな『やり過ぎ』を断行する隊長代理さんは、もちろんのことだ。

 

隊長代理殿(ニーナ)が決めたことだ。『徹底的にやって勝利する』てな」

 

 なら後は、黙って成り行きを見守ってやるだけだろ……。人生の先輩としてのアドバイス/男としての心持ち、だけど、どうしても軽々しく見えてしまう。あまり素行のよろしくないシャーニッド先輩らしい、日頃の心がけ故だろう。

 

 一般的に見ればやり過ぎだろうが、部隊長としての戦略視点では、『正しい判断』だと評価できる。武剄者としての誇りやら先輩としての気合うんぬんの精神論は、もちろん下らないわけじゃないけど、ソレを抑えての決断でもあるだろうから。

 彼と違って、まだ付き合いの短い/同部隊員でしかない自分には、ヘタなこだわりに囚われてない方がマシだ。……今までの実体験を加味すれば、、非常に助かると言ってもいい。

 

「フェリちゃんも、そこんところのガムシャラさを評価してるから、こうやって手を貸してるんだろ?」

「……私はただ、無意味な労力と無駄な時間を省きたいだけです」

 

 やるなら本気で、一瞬で終わらせる―――。ダラダラ伸ばすのは性にあわない。過程を楽しむよりも早く結果に至りたい。

 同じ部隊員。その義務は果たすも、それ以上はしない。互いにたがいを歯車だと見ている方が、気が休まる。……他人はとても鬱陶しい。

 だから―――

 

「おっと!?

 …………初っ端で仕留めにいくのか?」

「へ? それて……、ッ!? 

 フェリちゃん、ソレはさすがにやり過ぎだよ!?」

 

 『ちゃん』付けは止めてよ!? ……思わず喉元まででかかったけど、グッとこらえた。かわりにキツく睨みつけてやった。

 

「命令通り、彼女を全力でサポートするだけです。……もしも食い違ってたとしても、私の責じゃないですね」

 

 私を使うとは、こういうことだから―――。ただ言葉通りに、意を汲むなど知ったことじゃない。それ以外は全部、やりたいようにやるだけ。

 

「……そういうことなら、俺の出番は無くなりそうだな。

 あ~ぁ! せっかく今日のために、デートの約束反故にしてきてきたのになぁ~」

「コレですぐに終わりますから、新入生でもナンパしたらいいんじゃないですか?」

 

 至極どうでもいいように言うも、本人は「その手があったか!」と顔を輝かせていた。……どうせ懲りない人なので、もう何も言ってあげることは無い。

 

「さて……、これで終わり―――」

 

 念威を込めて/術を編む、タイミングを合わせると―――術を放った。

 

 絶対に避けられない。武剄者同士の近接/高速戦闘の中であっても、タイミングをほぼ確実に合わせやすい瞬間。

 まだ様子見をするしかない初撃―――での決殺だ。『まさか!』との意表を突くハメ技。……大人気ない躊躇いのなさも含めて。

 

 術は上手く発動。即座に武剄者の新人を縛り上げ、空間に固着させた。

 しかし―――

 

「おぉッ!?」

「ほわッ!?」

(なにッ!? ―――)

 

 逆に、こちらのほうが驚かされることになるとは……。

 

 

 

 

 

 ◆   ◆   ◆

 

 

 

「ならば……、本気で行くぞッ! ――― 」

 

 吼え声と共に、踏み込んできた。

 その場の床を小爆発させたかのような突進。3メートルはあっただろう彼我の距離を一足飛びで詰めてきた、剄技を使っての縮地。弾丸のような踏み込みだ。

 飛び込みながら、片方の鉄鞭を突撃槍のごとく突き刺してくる―――

 

 あまりにも単調な攻撃、避けるのがセオリーだろう。見えているのなら、全身に剄が充足もしているのなら尚の事だ。躱してのカウンターで沈める。

 ただし、彼女の持ってる鉄鞭は二本だ。当然ながら対応策はあるだろう。生半端に躱すのは危険だ。

 警戒は最大限、突き刺さる寸前に体軸を横にスライドさせた。

 

 ほぼ無拍子での躱し/体軸移動。ニーナは発生しただろう残像へと、突き刺してしまう。

 ガラ空きの側面。視界には捉えてるだろうが、意識はまだ追いつけていないはず。こちらも、突進で発生させた暴風にわずかばかり引き釣り込まれそうになるけど、体幹をブラされるほどじゃ無い。

 青眼に構えていた刀をそのまま、横薙ぎに振る。彼女を上下二つに輪切りにする斬撃。……未熟な使い手ならコレで終いだ。

 斬撃はそのまま、彼女の背中へと滑りこんでいく―――

 

 

 けど寸前/突如、全身に電撃のような痺れが走った。横薙ぎしようとした手腕は、その電撃で筋硬直/急停止させられていた。

 急激に襲いかかったその痺れは、息まで詰まらせる。うめき声まで喉で詰まらされ、全身が金縛り以上の氷漬けにあったかのような異常事態―――

 

 幸い、体の急停止の中でも、思考だけは回転しつづけれた。

 いったい元凶は何なのか? どうやって引き起こされたのか? なぜ僕の防御を突破することできたのか? ―――

 幾つも沸いてくる疑問。そこに推論と経験則を叩き込んでは、解決していった。

 そうやって、導き出された回答は―――

 

(念威術の拘束か!?)

 

 ココにはいない、けど現実には確かに存在している、彼女の相方/凄腕の念威奏者。

 初衝突に合わせて/コチラの心身の『強張り』を利用して、念威術を差し込んできた。

 

(クソっ! こんな芸当までできるのかよ……)

 

 神業……とまではいかないけど、マグレでできることでも無い。確かな技量と眼力が必要だ。特に、『試す』とか宣言しておきながら、初撃で決めようとするような胆力(腹黒さ)が。 

 文句をぶつけてやりたいも、結局はソレに至れなかった自分が悪い。……諦めるしかない。

 

 念威の拘束はさらに、体の操縦権にまで侵食していく―――……

 

 

 ……と思いきや、表面/体表の拘束に留まっていた。

 しかも、僅かな瞬間だけ。横薙ぎのカウンターを止める抑止力しか表していなかった。氷漬けにされてしまったような圧迫感も、すぐに剄が循環/充足することで吹き飛ばしている。

 

 奇妙すぎる手心に戸惑う……、暇もない。

 半回転するニーナ。もう一本の鉄鞭を袈裟斬りに、叩き込んできた―――

 

 金縛りをうけなければ、相討ちだったろう反射にまで鍛え上げた追撃。術による一時的な全身停滞は、こちらに守りを強制させてくる。

 刀を斜めに/片手も添え支えて、鉄鞭の一撃に備えた。

 

 衝突の直後、巨大なハンマーにでも殴りつけられたかの様、体から意識がズラされたような衝撃が襲う―――

 

「―――くぅッ!」

 

 呻きを漏らされながら、吹っ飛ばされた。

 衝撃をほぼ全身に散らしての受け手。それでも、鉄鞭の重量と剄による強化、その場で踏ん張りきれなかった。

 

 

 受けた刀はなんとか衝突に耐えた、けどその激震が手腕を硬直させる。足腰にも痺れが伝染し……、動けない。

 追撃をほぼ見事にたたき込めたニーナは、さらなる追撃を繰り出してくる。逆の鉄鞭をもって、フェンスを乗り越えるような捻転とともに、上段打ち下ろし――― 

 

 大波のような終撃。渾身の力を込めただろうソレは、正面からまともに受けれる重圧じゃない。

 けど……、痺れて動けない身体。避けることはできない。そもそも、もう間に合わない。

 なら―――、やれることは一つだ。

 全身の剄絡を瞬間燃焼。剄技として練り上げる工程を省く。循環している剄そのものを推進剤として、発火させた。

 

 【旋剄】―――と呼ぶには、あまりにも弱すぎる推進力。あまりにも人体を損なう未熟な剄技。けど、動かない身体を無理やりにも動かすには、十分だ。

 襲いかかるニーナの大波の根元へと、全身を飛び込ませるには―――

 叩きつけられるギリギリ、押し飛ばされるようにして、転がり逃れた。

 

 

 ゴロゴロと、上下左右がわからなくなるほどの緊急退避中。すぐ近くで破裂した爆音によって、叩き戻された。

 無理やりゆり戻された頭/意識を上げると、両脚と片手で転がりを掻き止める。そして、まだちゃんと握り締めていた愛刀を前に構え直した。

 見直した視界の先には、つい先ほど立っていた床に、小規模なクレーターをつくりあげたニーナがいた。……振り返る/見返してくるその表情には、驚きがにじみ出ていた。

 

 その隙に反撃を―――といきたいが、先の反動が全身を蝕んできた。

 全くの無防備/超近距離で幾つもの爆弾を破裂させたようなモノだ。全身が筋肉痛を泣き叫んでいる。風邪をひいたかのような悪寒にも苛まれている。……反撃の前にまず、剄の再充填が必要だ。

 痛みを隠しながらの再充填/循環。剄が浸透していくと、すぐさま悪寒は薄らいだ、痛みも徐々に消えていく。

 

 あと十数秒ほど安静にしていれば、元の状態まで回復させられる。けど……、そうはさせてもらえなかった。

 ニーナが再び、こちらへと突貫してきた―――

 

「ハアアァァァーーッ! ―――」

 

 先の初撃と同じ、片方の鉄鞭を突撃槍のごとく、真っ直ぐに激突してくる突貫。まだ本調子じゃない今では、躱しての反撃など狙えそうにない。

 かと言って、『避ける』選択は考えもの。あの突貫を繰り返されるだけ。いずれは隅にでも追い込まれて、アウトだ。……きっと試験の評価も最悪だろう。

 後の先手をとる。そのためには、意表を突かなけれながならない。

 なら―――、床についた手と両足に、剄を込めた。高速で剄技を練り上げる。

 

 衝突する寸前、全身の筋肉も撓めてたわめて畳みきっての……、跳躍。

 同時、【旋剄】&【衝剄】も噴射、一気に急上昇させた―――

 

 

 背丈の3倍ほどはある跳び上がり。真下でニーナが、僕を見失っているのが見えた。

 しかし……、それも一時のこと。

 すぐに気づかれ、跳んだ真上を見据えてきた。不発に終わった鉄鞭突貫を、もう一度構え直す、次は僕が逃げた上空へ向けて―――

 再度放たれる前、コチラも既にカウンターを用意していた。

 

 跳び上がりながら、肩に担ぐよう構え直していた愛刀。剄を流し込み/剄技も練り上げて、刃に宿した。

 剄の煌きを帯びている刀。剄技を込めたソレを虚空で一閃、袈裟斬りとともに発射した―――

 

 【閃断】___。斬撃の形にまで圧縮した衝剄の一種。斬撃武器を通して使うことが多い戦闘剄技。斬れる間合いを延長するタイプ/【鋭水】もあるけど、今回使ったのは斬撃をまっすぐ飛ばすタイプ/【烈風】。

 真下のニーナの下へ、剄の斬撃を投げ落とした。……ひとつだけではなく、三つを。

 空中で回転しながら、三つの閃断・烈風を連続発射―――

 

 

 襲いかかる閃断に、ニーナは急な方針転換。両の鉄鞭を交差させての守りの構えを取った。

 

 そして一閃―――、身体を横スライドさせて躱した。

 

 次の二閃―――、斜めへと受け流した。

 

 けど最後の三閃―――、左右どちらにも逃げ場が無く、正面から受け止めざるを得ない。

 

「ぐぅっ!? ―――」

 

 閃断の重さに呻くニーナ。腕だけでは足りず、堪えきるため両足にも力を込めた。

 押しつぶさんとする力にあがらい、負けじと押し返していく―――

 

「…ぉぉおあああーーーッ! ―――」

 

 

 コレで決まるはずはない……。閃断を終えての落下中、着地しての『次』を考えていた、もっと有効で致命的な攻撃を。

 その最中/唐突に、頭の中で通信がなった。

 

(レイとん、私を盾に使ってください!)

 

 従士契約を通しての通信―――。突然のメイシェンの切迫した声に戸惑わされる。

 けど、戦闘中における優先思考、わからないことは棚上げ/目の前の瞬間に集中すること。考えずただ脇に置いてしまうと、必要な剄の補填を急いだ。

 

 着地するやすぐ、ニーナが閃断を打ち払った。

 同時に、彼女の周囲に白い土煙が噴出。舞い上がり包み込み―――、姿が覆い隠された。

 

 

 何が起きた……。異常すぎる現象に一瞬、思考が空白になった。

 けどすぐ、脳みその奥から答えが引きずり出された。

 

 【煙霞】___。ニーナ周辺の視覚情報をジャミングし、見えづらくしてしまう念威術。

 僕の脳や神経をクラッキングしての幻影、とも考えたけど、さすがに戦闘中の武剄者の防衛機構は簡単には破れないはず。……できているのならもう、この試験自体が出来レースにしかならない。

 しかし、光学迷彩処理をするのではなく、わざわざ土煙にした……。なぜ手間のかかる方法を? 周辺一帯ごと見えづらくした理由は何なのか?

 その答えは、土煙から飛び出してきたニーナが教えてくれた、()()()()()()()が―――

 

(分身か!?)

 

 ―――に見せかけた、念威術だろう。

 夢幻の中だろうと/どれだけ凄腕だろうとも、実体をもった分身を瞬時に造り出すなどできない。直に触れたり剄をぶつければ、すぐに消える幻身でしかない。

 3人のうち誰か? 突貫してくる中央と、死角を縫いながら迫り来る左右―――

 

 答えは、よく見れば分かった。

 

()()()()()()だ――― )

 

 3人全て、本物の人間ではありえない、画像のアラが所々に生じていたから。……急造品の欠点だろう。

 では、本物はどこに? ―――ひとつしかない。

 

 

 刀を下段に構え、力と剄を溜めた。目の前まで接敵している幻影は無視。

 鉄鞭が突き刺す/叩きつけられる……を通り越して、まだ立ち籠っている土煙を見据えた。そこにまだ隠れているだろう4人目/本物へ向かって、溜め込んだ力を一気に―――振り抜いた。

 

 【閃断・烈風】―――。虚空への切り上げと同時に発射した。通常の烈風より鋭角な弧に、より遠くに/より速く/より威力を集中させた形。

 土煙に隠れたままのニーナを、叩き出せるほどの―――

 

 

 放った閃断が土煙へと衝突。高密度の剄に反応して、念威の煙幕は一気にかき消された。

 中のニーナが明らかになる/慌てて防御している姿が映るはず―――

 

 しかし……晴れ渡ったそこには、誰もいなかった。閃断は煙を晴らしたのみ。虚しく背後の壁を破砕した。

 

(ッ!? ……これもフェイクか)

 

 5人目がいたとは……。読みが外れた。

 攻めるでも守るでもなく、身を隠す選択。第一印象やら刃を交わせての感触から、正義感があって真っ直ぐな性格、そんな急転換ができるとは思えなかった。

 

 すぐに警戒を一点から視界全てへ。愛刀も青眼に/何処からの攻撃にも対応できる構えへ直し、身を潜めてるだろう彼女の襲撃に備えた。

 念威術によって隠れているのなら、剄を高濃度に練り上げる/剄技を繰り出す直前には露にならざるを得ない。僕に接近すればするほど、隠れ場から漏れる剄を察知しやすくもなる。……いくら死角からの襲撃だとしても、無強化の一撃では必殺にはならない。

 警戒しながら改めて、『隠れる』選択を取った彼女の意図を思考した。ただの時間稼ぎか、それとも別の思惑があるのか……?

 

 思考の果てに、閃いた。……戦慄した。

 その直感を信じて、警戒網をその場所へ―――彼女が立っていた()()()()へと向けた。

 

 

 高濃度の念威の網の目の奥底/背丈二体分ほどの地下に、人型大の剄の煌きがあった。一度見たら忘れそうにない色の輝き。……彼女はそこにいた。

 さらに、両の鉄鞭を前で交差しながら、一点に剄を凝縮している。高出力の剄技を練り上げて―――

 

(ッ!? やばい―――)

 

 緊急回避―――。とっさに横へと跳んだ。

 直後、立っていたその場所へ、ニーナの巨大な衝剄が炸裂―――

 

 

 まるで巨人が跪いたかのような音と爆風が、地面から天井へと突き抜けていった。

 

(…………危なかった)

 

 ほんの一瞬判断が遅れていたら、やられていた……。死の感触の冷たさに、ゾワリと肌が粟立っていた。

 このまま終われば/僕を見失えば上等。だけど、そうはいかないだろう。すぐに知らされてしまうはず。

 

 すぐ体勢を整え、足に剄を溜めては練り上げ―――連続【旋剄】。

 立ち止まらず、高速で動き回り続けた。

 

 

 地面だけに限らず、壁や天井にまで。体そのものをバウンドさせ続けるかのようにしての、立体高速移動。

 

 空間を支配している敵奏者の目を眩ませるためだ。武剄者の超人的な動きは、同じ武剄者の感覚でなければ捕捉できないもの。……少なくとも、ピンポイントで位置座標を捕捉されることはなくなる。

 捕捉されなければ、突然の金縛りにはあわない。やられることは限られてくる。―――次の一手はコチラの自由だ。

 旋剄を連続で放ちながら同時、愛刀にも剄技を練り上げていった。

 

 

 僕の居場所は分からない。相手の居所はハッキリしてる。

 地面の分厚い念威の壁は邪魔だけど、念威術/【奈落舞台】を発動させてる以上、今僕が駆けている地面の耐久力は大幅に激減している。壊して突破できないことはない。脆弱な部分を突ければ、この遠距離からでも攻撃は通る。―――特大な一発をお見舞いしてやれる。

 駆けながら、弱そうな部分を把握した。愛刀への剄技もそろそろ充填完了。予想通り僕を見失っているのか、沈黙を続けているニーナたち……。

 

(やるか―――)

 

 この一撃で、仕留める。

 見抜いた脆弱箇所へ跳ぶ。捕捉される前にそのまま、剄技を叩き込もうとした―――

 

 しかし―――寸前、いきなり()()()()()()()

 僕が踏みしめていた所のみならず、全ての地面が崩落している。

 

 

 急に足場を失って、つんのめりそうに体勢が崩れた。剄も乱れて、旋剄の発動もわずかばかり遅れた。

 その間隙、共に落ちていく崩壊した地面が、無数の青白いポリゴン状の欠片となり溶け消えていくのが見えた。そしてその奥底に……、再び僕を捕捉しなおせたニーナの姿も。

 

 

 刹那の邂逅は、旋剄をもってちぎった。ニーナの方も、鉄鞭への剄の練り込みに集中して。……双方ともに、次の激突に備えるために。

 

 旋剄の推進力をもって、一気に奈落の地面に足をつけた。

 着地と同時に、次の旋剄を噴射―――

 

 

 ニーナへの突撃をするには、距離もタイミングも悪い。

 いま練り上げた剄技では、仕留めるほどには至らない。一拍ほど用意が早かった/ドッシリと待ち構えている彼女の守りを突き破るには、出力不足だ。……先手を取るつもりが、逆に後手に回ってしまってる。

 このままでは―――。激突の後、フェリ先輩の餌食になるだけだ。

 

 どうする―――。視界の先に、『答え』が映っていた。

 同時、先に投げかけられた助言も、つながった。

 なら―――、やるべきことは一つだ。

 

(メイシェン、5秒だッ!)

 

 頼むぞ―――

 叫ぶとともに、抑えていた体内の剄の奔流を解き放った。

 

 ボワッと、体がふた回りは膨張したかのような拡張感。そのすぐ後に、焼けつくような電流が全身を駆け巡る―――。

 まるで、万能の神にでもなったかのような高揚感。全身の細胞が活性化、以上に沸騰しているのがわかった。

 剄を最高出力で創出/最高速度で循環できている状態だ。本気の戦闘時のスタイル、だけど今までは抑えるしかなかった。コレを把握されてしまったら、すぐに対処されて……切り札が減ってしまう。

 ()()()()()()()()()()()()()()―――。今が使い時だ。

 

 

 旋剄―――ではなく、応用技の【竜旋剄】。

 発動と同時、体から自重が激減。ほぼ無重力状態のような軽さに満たされた。

 一歩踏み出すだけで、視界の光景がブレた。それでも見ようとしてか、赤色に染まった視覚映像が眼球に映し出される。

 

 赤色の高速世界の中、空間中を駆け回る―――

 攻め入ることはしない、ただ上下左右に僕の姿を追わせるだけだ。高速の動きで翻弄したところで、死角に潜り込めるほど甘くは無いだろう。次の一撃必殺のための時間稼ぎだ。

 視覚の中心、ニーナにソレが把握されてるのは、直感できた。何が襲い来るかは分からないが、待ち構えて弾き飛ばすだけと、意識を完全に切り替えている。……隙など突きようがない。

 そしておそらく、何とか凌ぎきってみせるだろうことも。

 

 だからこそ―――、無理やりにも隙をこじ開けなければならない。

 胸の内でカウントしながら、必殺の剄技を高速で練り上げていった。

 そのカウントが4秒きった頃合に、目的の場所へと飛び込んでいく―――。()()()()()()()()へと。

 

 僕の姿を追いかけつづけていたニーナは、その時はじめて、メイシェンの姿を真正面から見た。ようやくハッキリと焦点があった先にいたのが、僕ではなく彼女に。

 ニーナの瞠目が、メイシェンに釘付けにされる。隠れた背後からでも分かった。―――僕から初めて、注意が外れた好機。

 その隙を見逃さず―――、跳躍した。

 

 

 中空に躍り出ると、愛刀を両手に握り直し、肩に振りかぶった。

 

 そして、練り上げた剄技を発動、高濃度に圧縮された剄の奔流が吹き震え―――爆光。

 その眩く輝く刃をそのまま―――、振り抜いた。

 

 

「ウオオオオォォォーーッ! ―――」

 

 

 【轟剣・虹重ね】―――

 雄叫びとともに放った渾身の一刀は、巨人の鉄槌のごとく、ニーナを圧殺する威力をもって叩きつけていった。

 

 

 

 

_




長々とご視聴、ありがとうございました。

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