この癒しの風に恵みを   作:てんつゆ

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第2話 食拓のカズマ

 

「思ってたより遠いな…………」

 

 太陽がサンサンと照りつける昼下がり。

 俺とめぐみんは討伐クエストの目的地へと向かって平原を歩いていた。

 軽いピクニックみたいなつもりだったのに目的地が思ったより遠いせいで遠征に向かっているような気分だ。

 

「魔物の生息地を迂回していますからね。予定より時間がかかるのは仕方ないかと」

 

 直線だと程々の距離だったのに何故かこの辺は魔物が発生している遺跡や森が無駄に多いせいで俺たちは魔物の気配を感じたら少し道をそれて進むのを繰り返していた。

 アクアやダクネスがいたらそれなりに討伐しながら進んでもよかったが、あいにく今は俺とめぐみんの2人だけなので、目的地に付く前に爆裂魔法を使う訳にもいかず慎重になるをえない状況だ。

 めぐみんの様子を確認すると少し疲れが溜まってきているのか、額から滴り落ちた汗が手に持った杖にぴしゃんと当たり弾け飛んだ。

 

 ――――ふぅ。どうやらめぐみんも疲れてるみたいだし少し休んだほうがいいかもしれないな。

 

「なぁ、めぐみん。ちょっと休憩を―――――」

 

 足を止めた瞬間、突然ぐぅと俺の腹の虫が鳴き始めた。

 そういえば朝に屋敷を出発してから何も食べてなかったっけ。

 仕方ない弁当も持ってきて無いし食べられそうな木の実でも探すとするか。

 

「すまん。ちょっと腹が減ったみたいだから少し休憩して昼食にしないか?」

「そうですね。私もちょうどお腹が空いてきたので一休みするとしましょうか」

 

 俺たちは魔物が現れてもすぐに対応出来そうな安全で見晴らしの良い場所に移動して椅子代わりになりそうな石に腰をおろした。

 そして少し休んで体力が回復した所で食べ物を探しに行く事にした。

 

「じゃあ俺は食べられそうな物を探してくるからめぐみんはちょっと待っててくれないか?」

 

 俺は立ち上がろうとすると、不意にめぐみんに呼び止められた。

 

「ちょ、ちょっと待っててください」

「ん? どうかしたのか?」

 

 途中まで上げた腰を再び石の上に戻すと、めぐみんは脇に置いてあった小さなバスケットを俺たちが座っている丁度真ん中へと差し出してきた。

 そういえば屋敷を出た時からずっと持っていたようだが、もしかしてこれは――――。

 

「こんな事もあろうかとお弁当を作ってきました」

「おお~。ナイスめぐみん」

 

 めぐみんはこう見えて以外と家事が得意なのでお弁当の中身は期待出来そうだ。

 

「うっし。じゃあ早速食べるとしようぜ」

「――――まったく。そんなに急がなくてもお弁当は逃げませんよ」

 

 めぐみんがバスケットを開くとそこには三角の形をしたおにぎりが所狭しとバスケットにぎっしりと詰まっていた。

 一瞬ファンタジーの世界で魔女っ子が和風料理を作るのはミスマッチだ思ったが、逆にそれもギャップ的な感じでありかもしれない。

 

「へ~。おにぎりか」

「なんですかそれは? これは紅魔の里に古くから伝わるおむすびと言う伝統料理です」

「まあ、そういう人もいるけどおにぎりって言うのが普通じゃね?」

「――は? カズマは私の里に伝わる料理を馬鹿にするのですか!!!」

 

 いかん、変なスイッチを入れてしまったのかもしれん。

 だがこっちも本場の日本人としてここは引くわけにもいかん。

 なんせ俺はあっちの世界で、ずっと部屋の前におにぎりを置いてもらうような生活をしてたんだしな!!!

 

「馬鹿にするも何もねーよ。じゃあなんだ、お前はコンビニ行った時におむすびコーナーを探すのか? おにぎりは売ってるけどおむすびとか売ってねーし!」

「コ、コンビニ? あ、ありましたよ! 私が紅魔の里のコンビニにはおむすびの売ってるコーナーとか沢山ありましたから!」

「嘘つけぇ! この世界にコンビニなんてあるわけ無いだろ!」

「異世界の話をされても分かるわけないじゃないですか! だいたい元居た世界で部屋から出ない引きこもりでニートだったカズマが何で外の事を知ってるんですか!」

「ひ、引きこもりでもコンビニくらい定期的に行ってたし! それにニート言うな!」

 

 本当はコンビニで予約したゲームソフトを引き取りに行った事くらいしか利用した事は無かったんだが自分の名誉のために黙っておこう。

 

「それに紅魔の里に伝わる伝承でもおむすびについて語られている話がありますから!」

「ほ~? ちなみにそれはどんな伝承なんだ?」

「お爺さんがおむすびを食べようとしたらうっかり穴に落としてしまってねずみの住処に迷い込んで宝を受け取ったと言う言い伝えです」

「ああ、それなら俺も知ってるぜ。おむすびころりんだろ?」

「あ、今おむすびって言った。確かにおむすびって言いました! ほら、やっぱりおむすびなんじゃないですか!!!」

「い、いや。さっきのは昔話のタイトルだからノーカンだから!」

「うがー。いい加減に認めたらどうですか!!」

 

 

 ――――それから数十分による激論の末。

 一生平行線をたどった不毛な会話に疲れ果てた俺たちは、別にどっちでもいいだろという結論で落ち着いた。

 ……てか無駄に騒いだせいで余計に腹が減った気がする。

 

 おにぎりの具はジャイアントトードやリザードの肉が入っているようで、どちらかと言えば昔話に出てきそうなおむすびと言うより現代のコンビニに売ってそうな感じの物だった。

 まあオカカや梅干しを期待してなかったわけではないが、アクセルの街で和風の具材を用意するのは流石に難しいか。

 

 久しぶりに故郷の料理を見たからか日本に帰りたくなった…………ようなならないような。

 そもそもよく考えたらあっちの世界もこの世界もどっちもろくでもない気がする。

 

 バスケットから適当に1個おにぎりを取って食べてみると、粒の大きめのさっぱりとした白米とジャイアントトードのジューシーな食感が絶妙なバランスで組み合わさってかなり美味しい。

 

「それにしても…………」

「どうかしましたか?」

「いや。めぐみんの料理は相変わらず美味いなって」

「な、何を言ってるんですか。おだてても私の分はあげませんよ?」

 

 めぐみんは俺に取られまいとバスケットを手に持って自分の脇に隠すように引き寄せた。

 

「おーい、それだと逆に俺の分が取れないんだが?」

「急に変なことを言うカズマが悪いです。残りは私が全部食べます」

 

 めぐみんは少しだけうつむきながら恥ずかしそうにおにぎりをバクバクと食べ始めた。

 う~む。まだ腹は減ってるから後1つか2つくらいは欲しいんだが。

 このままだとめぐみんに残りを全部食べられてしまいそうだし、…………仕方ないここは。

 

「あと1個だけもらうぜ、スティール!」

 

 俺はバスケットからおにぎりを貰うべくスティールを放つと、手の中には少しだけ温かみが残っている黒くて三角形のおにぎりが…………ってあれ? なんかこのおにぎり少しだけ薄いような?

 

「な、何をしてるんですか!!!」

「何って今からこれを食べようと思ってるんだが?」

「そ、それを食べる!?!?!?!? 変態だとは思ってましたがそれを食べるまでだったとは思わなかったです!!!!」

 

 こいつはいったい何を言ってるんだと薄いおにぎりを広げてみると、それは。

 

「あれ、どこかで見たことがあるような」

 

 俺が少し前にめぐみんにスティールを使った時に奪い取った黒いパンツだった。

 

「か、返してください!」

「ふむ。別にこれを返してもいいが俺はまだ少し腹が減っている。今手元にはこれしか無いので、このままだ俺はとこのパンツを食べる事になるんだが……」

 

 そう言って俺は口を開けたまま上を向いて手に持ったパンツを口に入れようとすると、めぐみんが涙目になりながら敗北を認めてバスケットを差し出してきたので、俺はパンツを返して代わりにおにぎりを手に入れる事に成功した。

 

 それから食事を終えた俺達はお茶を飲みながら一息ついていると、座っている石の影に見覚えのある草が生えていたのを見つけたので試しに毟ってみるとどこかで見たような草な気がした。

 

「あれ? これって薬草じゃないか? ウィズの店でこれと同じ感じの草を見た気がするんだが」

「ちょっと見せてください。――――――はい、確かにこれは薬草ですね。そう言えばここから少し行った場所に薬草が良く取れる穴場があるって聞いた事があります」

「へ~。そんな場所があったのか。じゃあついでにそこで薬草を回収してくのもいいか…………ん?」

「どうしたのですか?」

 

 そう言えばバニルの奴が薬草が取れなくなったせいで値段を上げているとか言ってたような。

 そしてこの先には魔物の大軍が発生しているとの報告がある。

 もしかして、薬草の生息地を荒らしてるのは依頼にあった魔物だったのか?

 

「大変ですカズマ!?」

 

 突然めぐみんが声を荒げながら警告を発した。

 

「めぐみん、どうかしたのか!?」

「何か変な音が聞こえます。何かが少しずつこっちに近付いて来ているような……あっ!? あそこを見てください!」

 

 俺は千里眼のスキルを使ってめぐみんが指を指した方角を見てみると、地平線の向こうから重厚そうな鎧を身に着けた骸骨戦士の大軍がこちらに向かって進軍して来ているのを発見した。

 

 

 

 

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