「つまりこの軍団が王都に向かってたのは、製作者に命令されていたからと言う事ですか?」
「ああ。多分そうだろうな」
まあ敵は全部倒したし、後はこの機械をどうにかすれば今回のクエストは完了だろう。
…………だけど、いったいどうすればいいんだ?
機械全体に少しヒビが入ってるから、めぐみんにもう1発爆裂魔法を撃ってもらえば破壊は出来そうだが――――。
「カズマ! 何か出てきます!」
「…………え?」
突然機械がウインウインと悲鳴を上げて排出口の様な場所から下に転がっている人形と同じ形をした物の上半身が少しづつ出てきた。
機械の画面を見ると、ゲージが100%溜まっていて制作完了の文字がさんさんと輝いている。
「わ、忘れてたぁ」
…………どうする?
すぐに逃げるか、また薬草を囮にして不意打ちで倒すべきか。
考えを巡らせている俺の前に偶然ある文字が視界に入った。
「これだぁ!!!」
俺は緊急停止と書かれているレバーを下げると、プシューと音を立てながら機械はゆっくりと停止して動かなくなった。
排出中の人形は丁度上半身だけ出た状態でジタバタと動き回っている。
――――まあこいつはこのままにしといて大丈夫だろう。
「しかしコイツ、改めて見るとかなりボロボロだな」
「どうやら腐ったパーツが沢山使われているせいで、半分アンデッドみたいな感じになってますね」
もう作る部品がかなり老朽化しているからか、出来たばかりだというのにサビや塗装のムラが目立つ。
パット見だとゾンビ映画に出てきても違和感が無さそうだ。
「――――ん? アンデッド?」
俺が気付くと同時に遺跡中に散らばっている人形のパーツが一斉にカラカラと動き出した。
「やばいぞ、めぐみん! 逃げっ――――うわっ!!」
「ガズマッ!!!!」
一瞬にして俺たちは再生した人形達に飛びかかられて身動きが取れなくなった。
再生したばかりでパーツが上手く結合出来ていないせいで武器がまともに持ててない事が幸いだが、こうも一斉に襲いかかられてはそんな事関係ないかもしれない。
「そうか、こいつらアンデッドだから回復する薬草を敵だと認識して攻撃をしてたのか!?」
薬草を囮にして逃げようにもこの数だときついかもしれない。
――――てか、のしかかられてまともに動く事すら厳しい。
めぐみんも大量の人形に掴まれてまともに動けないでいる。
何か…………何かなんとか出来るのは無いのか。
手持ちのスキルとアイテムで使えそうな物を探っていくとバニルから無理やり押し付けられた魔法書の事を思いだした。
「そうだ! あれを使えば」
俺の魔力だとあまり効果は無いかもしれないが、めぐみんを逃がすくらいの隙なら作れるだろう。
俺はなんとか懐から魔法書を取り出すと、魔法が書かれている最初のページを開いて魔法を発動させようとした。
―――――よし。
―――――――もう少し。
詠唱が終わり魔法書を掲げようとした瞬間、後ろから何かに飛びかかられてその反動で魔法書がどこかに飛ばされてしまった。
「しまっ!?」
魔法書を必死に探したが目の届く範囲には確認出来ない。
こ、こうなったら俺の魔力をめぐみんに渡してもう1回爆裂魔法でこいつらをふっ飛ばしてもらうしか――――。
ドレインタッチで俺の魔力を全部搾り取ってめぐみんに渡そう。
次はこいつ等が粉々になって再起不能になるくらい強烈な爆裂魔法をやってくれたら助かるはず。
――――もうそれしかない!
俺はめぐみんへと必死に手を伸ばしてドレインタッチを使い魔力を分け与えた。
「めぐみぃいいいいいん!!!!
「カ、カズマ!? いったい何をするんですか!?」
「受けとれえええぇえええええ!!!!」
俺の全生命力を魔力に変えてめぐみんに送った後、俺の意識が少しずつ飛んで行くような感覚に陥る。
――――そして、めぐみんが詠唱を初めたのを見守った後、俺の意識は完全に消し飛んだ。
――――――数日後。
俺とめぐみんはアクセルの街にある病院のベッドで目を覚ました。
どうやらなかなか帰ってこない俺たちを心配した受付のお姉さんが他の冒険者を派遣してくれたらしい。
派遣された冒険者が俺たちを発見した時には周りに魔物は1体も見当たらなくて、魔物を生み出していた機械も完全に壊れてスクラップになっていたらしい。
ベッドから起き上がろうとしたけどまだ上手く体に力が入らなくて思うように動けない。
意識が飛んで倒れるくらい精神を削ってめぐみんに魔力を与えたのだから当然か。
医者が言うにはあと2、3日も安静にしてれば完治するらしいから、少しだけ休息するのも悪くないだろう。
――――そして、俺の前には用事が終わり倒れた俺を心配してお見舞いに来たアクアとダクネスの姿があった。
ダクネスは頬を赤くしながら荒い息遣いで、自分がアンデッドに襲われている姿を想像して興奮しながら話しかけてきた。
「おいカズマ。私がいない間にアンデッドの大軍に押し倒されるクエストを受けてただなんてずるいぞ! 何で私が帰ってくるまで待っててくれなかったんだ!」
…………俺はそんなクエストを受けた記憶は微塵もないんだが。
続いてアクアがため息をつきながら呆れた目を向けてきた。
「アンタバカぁ? 私が帰ってくるまで待ってたらそんな奴等ワンパンでやっつけてあげたのに」
…………お前を待ってたらアクセルの街が壊滅してたんだが。
…………って、おいい。2人共微塵も心配してる素振りを見せないじゃねーか。
それからもっと酷い目に会う事を妄想したり好き放題言ってくる2人の話を適当に流しながら横を見ると、ベッドですやすやと寝ているめぐみんの姿があった。
めぐみんもかなりの魔力を消費して疲れているらしい。
とりあえず今は2人共無事で帰って来られた事に喜ぶべきか。
「ちょっと、聞いてんのカズマ!」
「そうだぞカズマ。まだ私の話は終わってないぞ」
「あ~はいはい。俺はまだ疲れてるからもう少しだけ寝るわ」
今はこのやかましい声も悪くない。
再び目を閉じた俺は、今度は心地よさを感じながら意識が消えていくのを感じた。