義経達を迎える為に俺は今、港に来ている。というのも義経達は今の今まで本島から離れた九鬼家所有の島に住んでいたので船で本島に来てもらわなければならないからだ。
(揚羽さんからはもうすぐ着くから急いで行って欲しいって言ってたけど、はてさて何処にいるのかな・・・お、いたいた。)
港について辺りを少し見回すと見知った顔が数人、船から降りてきているのが見えたのでそちらに向かう事にした。
「さてと、んん・・・皆さま無事にお着きになられたようで何よりです。」
俺は近づきながらはっきりと、しかしうるさくない程度の声でそう言った。
「あ、タケ兄!おーいタケ兄〜!」
「え?あっ本当だ!武命君ー!」
「ん?兄貴が迎えか。ならば組織の連中も手出しできないか。」
「・・・」
義経と清楚はこちらに手を振り、与一は前に見た厨二病が悪化しており、弁慶は・・・こちらを見ずにただただ手に持っている川神水を飲んでいる。
そう思いながら近づくと義経が両手を広げてこちらに抱きついてきた。
「タケ兄ー!」
「おっと・・・義経殿、年頃の女性がはしたないですよ。」
「えへへ、ごめんなさい!」
そう言うと義経は笑いながら離れた。
(全く、義経は昔から抱きついたりしてきたが、まさか今でもしてくるとは。俺や与一は慣れてるからいいが、もしこれから通う川神学園の男子学生にも無意識にやってしまったら・・・)
「・・・義経殿、くれぐれもこのような事は他の男性にはしませんようお願いします。」
「ん?もちろんだ。義経も知らない人には抱きつかないぞ。」
「ならよろしいですが。」
「 そうだよ武命君。義経ちゃんだって誰彼構わず抱きついたりしないよ。」
「清楚殿、しかし」
「私達も一緒だから大丈夫だって!」
「・・・分かりました。義経殿を信用しましょう。」
「うんうん!信用してあげて。」
「そんなことより兄貴、いつまでもここに居たら組織の奴らが嗅ぎつけてくるぞ。」
俺と清楚が話し終えると与一が髪をかきあげながらそう言ってきた。
(まぁ確かにいつまでもここに居るわけにもいかないし、与一の厨二病発言に乗ってそろそろ九鬼家に戻るか。)
「そうですね。皆さん長旅で疲れてるでしょうし、あちらに車を停めてますのでそちらに行きましょう。あ、荷物があればお持ちいたしますのでこちらに。」
そういうと俺はスッと清楚達に手を差し出した。
「えっでも・・・」
ドサッと清楚が言い終わる前に手に重みがつたわってきた。キャリーバックと大きめのバッグが俺の手に掛かっている。重さ的には50kg程度だろうか。こんな重さのバッグをヒョイっと渡してくるのは・・・あいつだな。
「弁慶!ちゃんとタケ兄によろしくお願いしますって言うんだ!」
「・・・よろしく。」
弁慶は最低限の事を言うと俺が歩いてきた方角にさっさと歩いていってしまった。
「こら弁慶!タケ兄すまない、いつもはあんなじゃ無いんだが・・・」
「大丈夫ですよ。気にしておりませんので。さて、皆さんもお荷物を」
「うう〜色々すまないタケ兄。」
「ふふ、じゃあお願いね武命君。」
「すまねぇ兄貴頼む。」
そう言い皆から荷物を受け取り俺が運転してきた車に着くと九鬼家に向かって車を走らせた。その間義経はさっきの態度について怒っていたが弁慶は九鬼家に着くまでずっと我関せずな態度で川神水を飲んでいた。
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「ふははははは!九鬼揚羽 推参である!!武士道プランの子らよ、よく来たな!今からこの九鬼家を我が家のように思って生活をしてもらいたい!何か困ったことがあればそこの武命に言えば万事大丈夫だ!気軽に頼ると良い!」
(最近揚羽さんも俺に対しての無茶振りが増えてきたなぁ〜。きっと師匠に師事してるから性格も似てきてしまったのだろう。・・・はは、数年後に過労死しなきゃいいな!)
「さて、長い話も飽きるだろう。今日のところは旅の疲れを癒すが良い。ではさらばだ!!」
「揚羽様!お待ち下さい揚羽様ーー!!!」
(小十郎さんは相変わらず小十郎さんだな。さて、俺も案内して仕事に戻るか。)
「では皆様、お部屋に案内いたしますのでついて来て下さい。」
そう言うと俺は義経達を連れて今後住む事になる部屋にそれぞれ案内した。
「・・・っと一通りこのようになっております。何か不明な点などございますか?」
「すまない兄貴、例えば何か買いたいものがあった時のお金はどうすれば?」
「基本的には我々が月毎にお小遣いとして一定額渡しますのでその範囲内であれば自由です。それ以上に使いたい場合はアルバイトなどで稼いでもらいます。もちろん緊急で必要な場合は我々が用意いたしますのでお申し付け下さい。」
「おー!アルバイト!義経はやってみたいぞ!」
「アルバイトされるのは個々の自由ですが、義経殿には世界中から集まるであろう挑戦者と戦っていただく予定ですので無理なされないようにお気をつけください。」
「そうだった!うーん、流石に厳しいか。」
「あの武命君、本を売ってるお店って何処にあるかな?」
「後ほどリストアップしておきます。」
「ありがとう♪」
「さて、他に何か質問はありますか?」
「「「「・・・・・・」」」」
「無いようですね。また何か不明な点が出てきたら気軽にお聞き下さい。・・・では、私はここで一度下がらせていただきます。」
「うん、何から何までありがとう!また後でお話ししましょう!」
「是非に。」
「うん、また後でタケ兄。」
「はい、また後で」
「兄貴、何か組織のことが分かったら俺に教えてくれ。」
「分かりましたら逐一報告いたします。」
「・・・」
「弁慶殿も何かありましたら私や近くの従者に気軽にお聞きください。」
「・・・ふん」
「弁慶ッ!」
「はは、大丈夫ですよ義経殿。それでは失礼します。」
そう言うと俺は4人に背を向け歩き出した。後ろから義経の怒鳴り声が聞こえる。
(あまり気にしなくていいんだがな。それにしても、やはり弁慶に酷く嫌われてしまっているな。何かしてしまった記憶はないが・・・いきなり居なくなって寂しい思いをさせてしまったから嫌われても仕方ないだろう。)
弁慶の態度について結論を出すと、エレベーターに乗り鍛練室がある階に向かった。
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ピーン。しばらくするとエレベーターが目当ての階に着いた。
「さてと、もう始まって「ぎゃぁぁぁ!!」・・・るみたいだな。」
叫び声で確認すると俺は鍛練室の前まで行き扉を開いた。
「がぁ!」
扉を開けると俺に向かって従者の1人が飛んできた。
「よっと」
従者の1人や2人飛んでくる事は予想していたので俺は慌てず、飛んできた従者の体を回し、直立で立たせた。
「大丈夫ですかな?」
「は、はい!ありがとうございました!」
飛ばされてきた従者A君はそう言うと、勢いよく部屋を出て行った。
「・・・今日も相変わらず激しいですね師匠。」
俺は従者A君を見送ると従者A君を放り投げた張本人を見ながらそういった。
「ふ、この程度で激しいなど随分優しいじゃないか神代。」
「皆が皆、俺みたいに師匠の鍛錬についていけるわけじゃないんですから気をつけてくださいよ。」
九鬼家の従者は定期的に師匠が戦闘指導をするのだが、相変わらず厳しいようで先ほどの従者A君のように逃げ出すものがあとを立たない。
「ふん、知ったことではないな。他に俺に挑む者はいるか!・・・いないようだな。神代、そう言うことだ準備しろ。」
「どんだけ痛めつけたんですか?めちゃくちゃ震えてるんですけど!?」
俺の他に数人この部屋にいるがその全員が目を泳がせ、小刻みに震えている。
「いつもより多少厳しくしただけだが?」
「はぁ〜、全くその多少が多少じゃない事をそろそろ自覚して下さい。」
「喋ってるようだがそろそろ準備はいいか?」
「少しはこっちの話を聞けぇぇい!」
「そう言いつつ体はほぐしているようだが?」
「師匠がいつ襲ってくるか分かったもんじゃないんでね!」
「ふ、分かっているではないか。」
「もう何年師匠と組み手やってると思ってるんですか?はぁ〜・・・よし、いつでもどうぞ」
そう言った瞬間、師匠は俺の懐に音も無く入り込み、鋭いハイキックを俺の頭部めがけて繰り出してきた。
「ぐっ!」
そのハイキックを腕で防ぐが、勢いが強く体が吹き飛ばされ、飛ばされた俺に追い打ちをかけるように師匠は俺の顔面に拳を振るってくる。
「ふッ!オラァ!」
体勢が崩れて避けられないためその拳を掌で受け流し、溝うちに回し蹴りを入れ体勢を立て直す。
「・・・最初の蹴りで体勢を崩すな。そして、崩れたなら急所に一撃を叩き込む事を意識しろ。」
「体勢をについては立て直したし、その後に溝うちに蹴りを入れたからいいでしょ?」
「結果そうなっただけだ。」
「だけど、結果が戦闘において全てでしょう?」
「・・・ふっ相変わらずの減らず口だなッ!!」
そういうと師匠は俺との距離をつめ、嵐のように激しい攻撃を仕掛けてきた。
「ちっ!」
「受け流すだけでは俺には勝てんぞ!」
「分かってますよ!」
師匠の攻撃の隙を突いて俺も師匠に攻撃を仕掛ける。
「一撃が軽い!もっと殺意を込めて攻撃してこい!」
「オラララァッ!」
俺も師匠のように無数の手数を出しつつ溝うちや人中、喉と言った人間の急所を狙った一撃を混ぜて攻撃を繰り返す。
「そうだ!そして相手の隙に叩き込め!」
「ジェノサイドッ!」
俺は攻防でガードが下がった師匠の顎に蹴りを叩き込んだ。
「ぬッ!」
師匠は俺の蹴りをもろに受けると吹き飛び壁に叩きつけられる。激しい音がなり一瞬膝についたが、すぐに立て直し不敵な笑みを浮かべている。
「・・・ふ、今のは中々だったが・・・まだまだ」
「嘘つかないでくださいよ〜今普通に吹き飛んだでしょ?てことは俺の攻撃に反応できなかったってことッばさ!」
俺がちょっと挑発じみた事をやっていると師匠が矢のように飛んできて、蹴りを入れられ逆に壁に飛ばされた。
「がっぐっ・・・いきなり何するんですか師匠!」
「気を抜いたお前が悪い。実戦ではないとは言え、今は戦闘中だ。」
「うっ師匠にまともな事を言われるとは。」
「蹴り殺すぞ貴様!」
「申し訳ありません!全て私が悪いです!」
「当然だ。さて、続きだ神代。少なくとも後3時間程は続けるぞ。」
「うげっ!いつもより長い!」
「終わった後はいつもの基礎練習を2倍しろ。」
「お、鬼だ!!」
「言っただろう神代?覚えておけと。」
「いつまでも小さい事を・・・よっしゃッ!ここで師匠を叩きのめして鍛錬中止にしてやる!」
「出来るのならやってみろ。最もお前が俺に勝つには後数十年足りんがな。」
「やってみなきゃ分からないでしょう!いきますよ師匠!」
〜3時間後〜
「はぁ、はぁ、はぁ」
「・・・今日はここまでだ。」
そう言うと師匠は鍛練室から出ていった。
「はぁ〜痛ったたたた。師匠も途中からムキになって殺す気できやがって。ちくしょー!今度やる時は確実に戦闘不能にしてやる!・・・はぁ、疲れたし、基礎練終わったらシャワー浴びて寝よ。」
とりあえず師匠に言われた基礎練を始めた。
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「運動後のシャワーは気持ち良き!そして風呂上がりの牛乳をゴクッゴクッ、くはぁ〜美味い!」
(さてさて寝るまで何をするか。読書は今新刊を買ってないから読んだ本しかないし、筋トレは今してきたばっかりだからあんまりしない方がいいし、他は・・・やばいな俺あんまり趣味らしい趣味がないぞ。はぁ〜何か新しい趣味でも見つけるか。今は仕方がないからテレビでも見るかな。)
テレビをピッとつけると報道特番が映る。番組の内容は川神市周辺の治安改善という内容だ。突然の改善には街のクリーン活動が影響していた!などの文字が書かれており九鬼家についてはあまり触れられずに番組は終了した。
「まぁ九鬼家が関わってることは情報統制されてるから当然だが、意外と面白かったな。また機会があればこういう特番を見てみるか。さて、まだ寝るには早いな。何するか・・・ん、誰か来たか?」
思いの外面白い内容だった特番が終え、やることがなくなり考えているとドアの前に人の気配を感じた。
「はいはーいどちら様ですか?」
「・・・ノックの前にドアを開けるな。」
「いや〜気づいちゃったんで」
「まぁいい。今日はとりあえず2つお前に言いたいことがあってなか。まず1つ目は個人的な礼を言いにきた。・・・あの従者について調べてもらって助かったありがとな。」
「気にしないでください。あの事については、たまたま俺も見つけただけですから。」
「だが、お前が見つけてくれたおかげで助かったのは事実だ。アタイらで処理してなければ上のジジイ共に何言われてたか分かったもんじゃねぇからな。」
「死ぬ程いじられて言われてたでしょうね。」
(師匠なら嬉々としてやりそうだしな。)
「だろうな。まぁそう言うわけだ素直に礼を受け取ってくれ。あ、奢りの話はもう少し待っててくれ。いい店連れてってやるからよ。」
「それはそれは、めっちゃ楽しみにしてますね。」
「あぁ任せろ。でだ、もう一つの話が本題なんだが・・・神代、明日の夜は義経達と一緒に行動してもらう。」
「義経達と行動と言うと、武士道プランの事で何かありましたか?」
「あぁ明日の夜、川神学園と天神館との東西交流戦が行われる。そこで急遽だが義経を乱入させて、お披露目をする事になった。そのお披露目に神代、お前には付き添いとして義経達に着いて行ってもらう。」
「・・・ついに武士道プランが本格始動ですか。」
「しかも世の中に義経達の存在を示す武士道プラン最初の行動だ。失敗は許されないぞ神代?」
「大丈夫です。俺が完璧にサポートしてみせるので任せてください。」
「・・・ったく人が心配してれば。まぁあのジジイ共に揉まれてりゃあ、そうなるわな。」
「ええ、師匠の無茶振りに比べればそんなに難しくないですし、義経なら上手くやってくれると信じてますから。」
「そういえばお前昔あいつらと一緒に島に住んでたんだっけか?」
「よく一緒に遊んだ仲です。自分は短い期間しかいられませんでしたが。」
「ほぉ〜ならお前に任せれば問題なさそうだな。じゃあ明日の事は任せたぞ。」
そう言うとあずみさんは扉を閉め帰っていった。
「ついに武士道プランが始動か・・・義経達の事もサポートしやらなきゃな。あー明日から忙しくなりそうだ!さてそうなると今日は早めに寝ておくかな。」
そう考えると布団に潜り込み秒で寝た。
次からちょっとずつ学園生活の事かけたらいいな〜と考えています。