前の日に早く寝たおかげで目覚めも早く、いつもより手が空いてしまったため、普段はあまり手伝わない厨房の手伝いなんかもしながら時間を過ごした。そして時間は過ぎ、武士道プラン本格始動まであと1時間。
「・・・それでは義経殿、本番前に少し体をほぐしておきましょうか。」
「了解だタケ兄!」
そう言うと義経は刀を抜き構えをとった。
「あくまでアップのようなものですが、何か目標がなくては張り合いもないでしょうから・・・そうですね、私に一撃有効打を当てる事を目標として下さい。」
「それでいいのか?」
「はい、当てるだけでしたら可能でしょうが有効打なるとなると難しいと思いますので。」
「むっ!義経もタケ兄と会わない間に強くなったんだぞ!」
「それを考慮してです。」
「むー!!分かったその条件でやろう!絶対タケ兄にギャフンと言わせてやるぞ!」
「何処で覚えたんですかそんな言葉。」
俺がそう言い終わると義経は目を閉じ、息を大きく吸い吐き出す。そして閉じていた目を開くと先ほどの文句を言っていた義経ではなく、源義経という1人の武人が立っていた。
(並みのものが見ただけで戦意損失するであろう鋭い眼、隙がほとんど無い構え、全てを叩き斬るかと思わせる雰囲気。・・・成長したな義経。前に会った時とは比べものにならないくらいに立ち住まいが洗練されてる。)
義経の成長を喜びつつ、俺も構えをとり義経に相対した。
「・・・行くぞタケ兄!」
ザッ!義経はそう言うと地面を強く踏み込み、こちらの懐に飛び込み上段から斬り込んできた。
サッ、ブン!
斬り上げてきた刀を手の甲で弾き、カウンター気味に手刀を脇腹に叩き込んだ。
「ぐっ!」
手刀の威力はかなり抑えたが、義経の体重の軽さもあり鍛錬室の端まで滑っていき壁に当たり止まった。
「鋭く良い一撃でしたが、実力差がある相手に胴体がガラ空きになる上段は危険ですのであまりなさらない方が宜しいかと」
「・・・ふっ!」
義経は俺にそう言われると一呼吸おき、俺の喉にめがけて突きを繰り出してくる
それを俺は払おうと手を出すと、義経は体を捻り刀の軌道を無理やり変え俺の脇腹に振ってきた。
(突きは囮か。単純だが技量の高さゆえに見事な技になってるな。だが!)
バシッ!
「なっ!」
「動きは止めない!」
俺はそう言いながら義経の手首を掴み、振り回すように地面に投げ捨てた。
「ぐっまだ!」
「いえ、もうお終いですよ。」
俺は立ち上がろうとする義経の首元に貫手を突きつけた。
「・・・むぅー!悔しいぞ!」
そう言いバタバタと手足を動かしながら義経は唸っている。どうやら負けを認めたようだ。
「ですが前に会った時とは比べものにならない程良くなってますよ。」
「こんな完敗した後に言われても嫌味にしか聞こえないぞ!」
「ふふ、それは失礼しました。」
「むぅー!もう一回だタケ兄!今度は一撃入れてやる!」
「程々にして下さいね。本番でフラフラになったなんて言ったら目も当てられませんから。」
「わかってる!さあ構えてタケ兄!」
「ふふ、承知しました」
そう言うと俺達はまた組み手を行い始め、ヘリに乗り込む時間ギリギリまで組み手をしてあずみさんに小言を言われたのでした。
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「やぁぁぁぁぁ!!!!」
「ぬっ!」
スパーンッ、ドゴッ、バギッ
目の前では2人の武人、いや生徒達が一騎討ちの決闘をしている。片方は相手校である天神館にして西方十勇士の1人の島右近(しま うこん)。そしてもう1人が川神学園の2年F組にして我らが風間ファミリーのマスコット、ワンコこと川神一子(かわかみ かずこ)だ。
「せぇい!」
ドゴッと一子が振るった薙刀が右近に当たり始めた。
「やりおる!だが儂も負ける訳にはいかんっ!うぉおおお!!」
「ぐぅっ!」
さっきまで一子が押していたが右近が気合を入れるように叫ぶと、一子を押し返し始めた。
「一子!」
「負け・・・ないわ!皆で勝つって決めたもの!」
「勝つのは儂らだ!」
ブンと大きく武器を振り上げた右近。勝負を決めようと今宵一番の攻撃を繰り出してくる事は目に見えている。直撃すればひとたまりもなく一子は負けるだろう。だが、だからこそ隙が生まれる。
「ッ!今よ!」
右近が武器を振り上げたその瞬間、一子は右近の懐に潜り込んだ。
「ぬッ!甘いわ!」
突然の事に一瞬驚くがそこは流石は名の知れた武人。すぐに状況を理解し、武器を懐にいる一子へと振り下げた。不意を突いたというのに一瞬の停滞のみで対応したのは見事としか言うしかない。・・・だがその一瞬が武人同士の戦闘では致命的になる。
「今だ!やっちまえワンコ!」
「川神流""蠍撃ち"ッッ!!!!」
ドンッ!一子が右近の胴体に一撃撃ち込んだ。
大気が一瞬揺れ、しばらくすると決着がついた。
「・・・ぐっ」
バタンと右近が倒れた。
「はぁはぁ」
「やったよ大和!一子が勝ったよ!」
「あぁそうだなモロ。・・・石田!後はお前だけだ!諦めて降参したらどうだ?」
俺はモロの言葉を受けて現在の戦況を頭の中で整理すると、右近と一子の闘いを見ていた敵大将、石田三郎(いしだ さぶろう)に対し、挑発気味にそう言った。
(現状、石田以外の十勇士は全員俺達が倒した。数的にもこっち側が圧倒的に有利だが・・・さてどうする。)
「・・・ふふ、ふはははははッッ!!」
「何がおかしいんだ石田。」
「これを笑わずにいられるか!他の十勇士を倒したごときで俺を追い詰めた気になっているんだからな!」
「・・今の戦況が分からない程馬鹿じゃ無いだろう?右近は今俺達の仲間の一子が倒して、他の十勇士も俺の仲間達が全員倒した。今はこの場で闘えるのは一子ぐらいだが、すぐに他の仲間も帰ってくる。そうすればお前は人数的に圧倒的に不利・・・この状況でお前が勝つ事は不可能に近いだろう?」
「その考えがまず間違っている。他の十勇士など俺に比べればそこらの雑兵と変わらん。つまりいてもいなくても変わらんという事だ。まぁ、島をやった事は褒めてやらん事もないがな。」
「ボロクソに言ってるがお前ら仲間じゃ無いのか?」
「あいつらは俺の臣下だ。俺が出世街道を行くための駒にすぎん。」
「仲間を駒呼ばわりなんて、あなた最低ね!」
そう言うと一子は息を整えつつ構えをとった。
「ふんっ!仲間などと言って馴れ合ってるからお前達は出世街道を歩めないんだよ。」
石田は俺達を見下した目で見ながらシュンっと刀を抜いた。
「島を倒した褒美だ。俺の本気を見せてやろう。」
そう言うと石田は目を瞑った。
「あいつ一体何をする気なんだ!?」
「落ち着けモロ。・・・けどこの感じ、まずいな。一子!」
「分かったわ!」
俺の言葉を受け一子が石田に近づき、武器を振り下ろそうとしたその瞬間、
「はぁぁっっ!!」
「きゃぁぁ!」
石田の体から金色の光が溢れ出し、一子が吹き飛ばされた。
「一子っ!ちっ遅かったか!」
「えっえ、大和どういう事!?」
「あいつが目を閉じた時から、姉さんが気を溜めてる時と同じ感覚がしてやな予感がしたんだ。だからあいつが何かを終わらせる前に片をつけたかったんだが。」
(それは失敗してしまった。それに)
「ふはははは!俺のこの技『光龍覚醒』が終わる前に討ち取ろうとした事は褒めてやる。だがこの技を使わせてしまったからには、もうお前達には勝ち目はなくなったぞ!」
石田を見ると体から金色の気が溢れ出し、髪が金色に輝きながら逆立っている。
(まずい、不味い不味い不味いぞ!あれは駄目だ!気の大きさが壁越えと言われてる人達に近いぐらい大きい!)
「・・・なんだなんだ!今から仮装パーティーでも始まるのか!?はっそんな仮装じゃあ通りすがりの一般人にも鼻で笑われるぞ?」
頭をフル回転させつつ、少しでも突破口が開けるようにそう言った。
「ふん、見えすいた挑発だ。俺を怒らせ冷静さを失わせて隙を突こうと考えていたのだろうが、この技を発動させた時点でお前達に勝ち目はない。諦める事だな。」
(思ったより冷静だ。高飛車な態度からもっと短絡的な思考だと思ったんだが、こっちの意図まで読んでくるなんて・・・伊達に西方十勇士の総大将はやってないって事か。」
「さて、そろそろいいか?どうやらお前自慢の仲間達は全員近くに来たようだからな。」
(確かに散り散りになってた京やクリス、そして他のみんなも近くで隠れている事はメールで知らせてきたから近くにいる事は分かっていたが・・・気の探知ってやつか。)
「何だ、俺達が集まってくるのを待っててくれたのか?案外優しいところがあるじゃ無いか。」
「はっ!お前達が何人束になろうと俺に勝てぬ事は目に見えているからな!俺を倒したければ川神百代でもここに連れてくる事だ!」
ブォンッと石田が刀を振るうと離れた位置にいる俺たちにも届く程強い風圧が吹き荒れた。
(一々尺に触る事を言ってくるな。・・・さてどうするか。京にはいつでも打てるようにメールしてあるし、クリスにも石田の裏を取るようにメールしてある。一子も立ち直ってるし攻め手は多くある。だが今の石田を正面から倒すのは難しいだろう。搦め手、もしくは裏をかくような策で倒すしか無い。まずは京に一射打ってもらって様子を見るか。)
そう思い京にメールで指示を出そうとしたその時
「ッ!なんだ!?」
石田が空を見上げながらそう言い放った。それにつられ俺も空を見上げる。するとそこには・・・
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「おい義経!予定の場所に着いたぞ!準備は万全だろうな!?」
「勿論だ!義経はいつでもいいぞ!」
(・・・とは言ったもののやっぱりちょっと緊張してきた。ここでもし義経がミスをしてしまったら武士道プランも失敗してしまうかもしれない。)
緊張感に強いことに自負はあるが、弁慶や与一、清楚先輩、それにタケ兄にも迷惑がかかると思うとほんの少しだが手先が震えてしまう。
(大丈夫だ。さっきも手加減してもらってるとはいえタケ兄相手に打ち合うことが出来ていた。きっと大丈夫!)
自分に言い聞かせながら立ち上がるとヘリの搭乗口で立ち止まり、降下への心の準備を進める。その間も震えはおさまらず、このまま飛び降りようとした時、
「義経殿、手が震えておりますが大丈夫ですか?」
タケ兄に声をかけられてしまった。
「だ、大丈夫だぞタケ兄!これは、そう!武者振るいというやつだ!義経は武士だったからな!」
「・・・義経殿。」
「む!そろそろ行かなくちゃいけないな!よし、タケ兄義経は行ってくるぞ!」
そういい飛び降りようと歩き出すが、進むことが出来ない。タケ兄が義経の手を掴んだからだ。
「タケ兄?」
「・・・はぁ、仕事中はこういう事あんまりやらない事にしようって決めたんだけどな。」
ぽんっと頭に温かいタケ兄の手が乗ってきた。
「・・・義経」
「へ?」
「いいか義経、お前達武士道プラン組はまだ世間に出てきて日が浅いひよっこだ。そんなお前達に今回の武士道プランでの責任を全部押し付けるわけないだろ?ひよっこが一人前の大人になるまで守ってやるのが俺達大人の仕事だ。・・・だから安心して行ってこい。駄目だった時は九鬼家や俺が何とかしてやるよ。」
そう言いながら義経の頭を撫でてくれた。
「・・・タケ兄は子供じゃないか。」
「そこは社会人の先輩ってことで許してくれ。」
(懐かしいな。昔タケ兄はよくこうして頭を撫でてくれたっけ。)
それは懐かしい記憶。まだ自分達が何も知らない小学生くらいの歳の頃義経達が一緒に生活していたタケ兄の後ろを着いていた時の事。タケ兄は義経達が勉強を頑張ったりするとこうやってよく撫でてくれた。それが嬉しくってあの面倒くさがりの弁慶ですら勉強を頑張っていた。
(もう一度島に来た時には今みたいに他人行儀な感じになっていて頭を撫でてもらえなかったけど・・・また撫でてもらえて嬉しい!)
「へへ、タケ兄に頭を撫でてもらうなんて久しぶりだ!」
「・・・そうだな。俺も人の頭を撫でたのは久しぶりな気がする。」
「つまり義経がタケ兄の初めての久しぶりを奪ったということだな!」
「難しいこと言おうとして何言ってるか分からなくなってるぞ。・・・さてともう大丈夫そうだな。行ってこい義経。」
「え、・・・あっ」
そう言われ震えが無くなってることに気がついた。
「・・・うん、行ってくるぞタケ兄!」
そう言うとヘリの搭乗口から下を見る。すると金色の光が天に向かって立ち上っているのが見える。それは今から義経が倒す敵が出している気であることが感じられ、もしかしたら負けるかもしれない相手だということが分かる。・・・だけどさっきまであった緊張も不安も無くなった。義経は義経の出来ることをすればいいんだから。
そう考えるとヘリから飛び降りた。
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「いきなり来てもらって悪かったな。」
「いえ、むしろ俺が感謝したいです。義経に励ましの言葉を送る事ができましたので。・・・本当にありがとうございました、あずみさん。」
俺はそう言うとあずみさんに頭を下げた。
「構わねぇよ。実際手を借りたかったのは本当だからな。義経との組手なんてお前レベルじゃないとガチになっちまうからな。」
「たしかに軽くですが手合わせしてみて、昔よりレベルが高くなってるのは分かりました。」
「あぁ、義経のやつ短期間でかなりレベルを上げてやがる。あんまりうかうかしてると抜かれちまうぞ〜?」
「ふふ、まだまだ抜かれないですよ。」
「ちっ相変わらず生意気だな。」
「事実を言っただけなので。・・・どうやら決着がついたようですね。」
「ん、もうついたのか?流石に早すぎるだろ。」
「いえ、義経殿の相手である石田三郎はかなりの実力者です。いくら義経でも簡単には勝てない相手でしょう。故に取る対策は飛び降りた際に放つ不意の一撃で決めるか、相手が油断しているうちに超短期決戦で決めるのが最も勝ち筋がある手です。実際石田三郎は大層な自信家らしいので義経ならば問題なく短期で決着がつけられるでしょうから。」
過去の石田三郎の戦いを調べたが全てが相手に攻撃させてから勝負を決めていた。よほど自分の力に自信があるのだろう。
「ほー義経の相手のことをそこまで調べてたのか〜」
「・・・なんですかニヤニヤして。」
「別に〜なんでもねぇよ」
そう言いながらもまだニヤニヤしていた。尊敬する先輩だが一撃決めてしまおうか。
「そんなことよりも義経を迎えに行ってやらねぇとな。おい!ヘリの高度を下げてくれ!」
あずみさんがヘリの操縦士に向かってそう言った。
「駄目です!降下予定地に予想以上に生徒が集まってるので、このままヘリが降りると風にあおられてしまう可能性があります!」
「川神学園の生徒がその程度のことで怪我するとは思えねぇが・・・万が一があるか。しょうがねぇ、格好はつかねぇが拡声器で下の奴らを追い払うしかねぇな。おい神代そこら辺に拡声器がないか?」
「拡声器はありますが・・・俺が行ってきましょうか?」
「ん、降りるのは問題ねぇだろうが、この高さを義経担いで帰って来れるか?じゃなきゃ結局ヘリが降りることになるぞ。」
下を見ると人が米粒以下に見える。大体だが高度500程度だろう。この距離を義経を抱えてこのヘリまで戻ってくるか・・・余裕だな。
「問題なく戻ってこれます。」
「分かった。じゃあちゃっちゃと行ってきてくれ。」
「了解しました。では行ってまいりますッ!」
あずみさんにそう言うと俺はヘリから飛び降りた。自由落下の速度に身を任せていると数秒で地上にいる義経の姿が見えてきた。
(どうやら質問責めにあっているようだ。正式なお披露目は後日だから早めに連れ戻した方がいいな。)
そんな事を考えていると地表が迫ってきたので生徒のいなそうな隙間に目掛けて着地をした。
ズドーンッッ着地の勢いを特に殺さなかったので音が鳴り響いてしまった。
「しまったな。もう少し静かに着地すればよかったか?・・・まぁ良いか。さてと義経はあっちだな。よっ!」
着地した位置から義経がいる場所にジャンプした。
「あっタケ兄!」
着地すると義経がこちらを向きながらそう言った。それに釣られるように周りにいる生徒達と思われる面々もこちらを向いてきた。
「誰あの人!?」
「あれは・・・」
「・・・え?」
「おぉ!その顔は我が兄弟、武命ではないか!久しぶりだな!」
ガヤガヤと色々と言ってる中で俺が使える主人達の1人がこちらに話しかけてきた。
「お久しぶりです英雄様。歩きながらの挨拶お許しください。現在あのプランの情報秘匿の為に行動中のためこのまま失礼させていただきます。」
俺は英雄様にそう言いながら義経に向かって足を進めた。
「むっそうか。ならば仕方なし!ふはははは!また後ほど語り合おうぞ!」
「謹んでお受けいたします。それでは・・・義経殿失礼します。」
「わっ!」
そう言うと俺は義経を所謂お姫様抱っこの状態で担ぎ上げた。
「た、タケ兄!?」
「しっ、お静かに。舌を噛みますよ。」
義経に忠告をすると足に力を込め上空に高くジャンプした。そのまま上空に上がりヘリのヘリのソリ部分を掴むとヘリができる限り揺れないように内部に入った。
「無事回収完了だな。」
「はい。・・・それとすみませんあずみさん。今日はあずみさんも参加するはずだったのに。」
「ま、上からの命令じゃ仕方ないしな。それに英雄様にも腕利きの護衛が影から見守ってるから安心だしな。」
「・・・この後の処理は俺がやっときますので、あずみさんは英雄様のところに戻って下さい。」
「頼むわ。・・・それよりそいつに言ってやることがあるんじゃないか?」
あずみさんが義経を指差しながらそう言った。そう言われ義経を見ると目をパチクリしながら俺をみている。
(確かに。ちゃんと役割をこなしたもんな。)
「・・・お疲れ様、義経。」
「っ!・・・うん!」
義経は満面の笑みを浮かべながら俺にそう言った。
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あれから九鬼家に戻り自室に帰るとマスコミ関係への情報規制及び必要な情報の拡散。義経達の住民票の獲得。川神学園への転入準備など様々な案件をこなし、気がつくと夜が明けていた。
「んーとりあえず1段落っと。だけどこれから武士道プランが本格始動だから俺も忙しくなりそうだな。」
(義経達だけではなく紋白様も転入するらしいからな。確か紋白様には専属の従者がまだいなかったから誰がつくんだろうか?実力で考えるとやっぱり師匠か?それとも執事力でクラウディオさん?まぁどっちがついても大丈夫か。)
眠気覚まし用のコーヒーを淹れながらそんな事を考えていた。すると部屋の入り口からノックがした。
(ん?気配はしなかったけど誰だ?・・・候補は数人いるけど最有力は)
そう考えながらドアを開けると、いきなり足が飛んできた。
「やっぱりーー!」
俺はその足に吹き飛ばされながらそう言った。
「ふ、この程度止められぬとは一から修行し直しだな。」
「・・・朝っぱらからやめてもらえます師匠?部屋が汚れますし片付けめんどくさいんですよ?」
「そんなことは些事だな。」
「俺は些事ではないんですが!?・・・んで何のようですか?もうやるべき事は終わらせた筈なんですか?」
「何、要件簡単だ。武命、お前は紋白様達と共に川神学園に入学してもらう。」
「・・・えっ俺も?あっ、もしかして紋白様の護衛役ですか?」
「いや、その役目は私一人で十分だ。」
「やっぱり師匠が紋白様の専属従者になるんですか。あれ、じゃあ俺は何の為に?」
「それは・・・当日説明する準備だけしておけ。ではな。」
「ちょっまっ」
俺が言い終える前に師匠はドアを閉めた。
「・・・準備って何すればいいんだ?」
とりあえずあずみさんなどに必要なものを聞きながら必死に準備をし、紋白様達が入学する当日を迎えた。
ご覧いただきありがとうございました。