宇宙に輝くウルトラの星   作:貴司崎

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ウルトラマンゼット開始&ニュージェネクライマックス公開決定記念に書いてみました。

本格連載するかは未定。


第1章 光の国の士官学校
士官学校とスペシウム光線(前編)


 ここは、人間達が住む地球から300万光年離れた“M78星雲”にある『ウルトラの星』と呼ばれる惑星。通称“光の国”とも呼ばれるそこには300の都市があり、約180億人のウルトラ族と呼ばれる者達が住んでいる。

 そして俺は今、その光の国にある一つの施設──宇宙規模の平和維持機構『宇宙警備隊』の士官学校(40年制)の屋上で寝そべりながら空を眺めていた。

 

「いやー、今日はいい天気で過ごしやすい日だなー! ……まあ、この星の天候は完全に制御されているし、プラズマスパークの恩恵で年がら年中温暖で過ごしやすい気候になってるんだが」

 

 そんな、身もふたもない事を言いながら寝そべっている俺の名前は『アーク』、この光の国に住むごく普通のウルトラ族だ。そして、士官学校の屋上にいる事から分かる通り今は宇宙警備隊の訓練生をやっている……別にサボっている訳じゃないぞ、休憩時間に少し寛いでいるだけだからな。

 ……と、そこでこちらに近づいて来る一つの足音が俺のウルトラ族として無駄に高性能な耳に入ってきた。

 

「あ! やっぱり此処に居たんだねアーク。そろそろ次の授業が始まるよ」

「ん? ああメビウスか……って、もうこんな時間か。確か次の授業は光線技の実技だったか」

 

 こいつの名前はメビウス、俺と同じ士官学校の同級生で幼年学校の頃からよくつるんでいる腐れ縁の友人である……こいつは物凄く真面目な性格をしているので、こんな風によく一人で寛ぐ事の多い俺が授業に遅刻しない様に毎回こんな風に声をかけて来るのだ。

 ……これでコイツの性別が女なら美味しいシチュエーションなのかもしれないが、残念な事にメビウスは男である。しかも性格の良いイケメン(ウルトラ族基準)なのでかなりモテる(本人は天然気味なのでかけらも気づいていない)のだ。

 

「うん、早く行かないとカラレス教官に怒られるよ」

「はいはい、あの人怒ると怖いからな。……じゃ、遅刻しないようさっさと訓練場近くの教室に行きますか」

 

 そう言って立ち上がった俺は大きく伸びをしてから訓練校の中へと入って行き、それを見たメビウスも続いていった。そして、俺達は並んで話しながら廊下を歩いて次の授業がある光線技用の訓練場に向かって行く。

 

「訓練校に入学して最初の方は殆どが座学だったけど、最近になってから実技もやる様になって来たからようやく宇宙警備隊の見習いって感じになって来たよね!」

「俺としては座学の方が楽でいいんだけどな。実技とかしんどいし」

 

 怪獣退治の専門家と言われる宇宙警備隊の士官学校としては意外かもしれないが、実はここで行われる授業の七割ぐらいは怪獣生態学、ロボット工学、宇宙地理、宇宙気象学、宇宙古代文学史などの座学である……宇宙警備隊が広大な宇宙での活動を余儀無くされる以上、最低限覚えなければならない知識だけでも大量にあるからな。

 尚、40年という士官学校の時間の大半を使っても最低限の基礎知識しか教えられない為、各種応用知識や宇宙各地のローカルな知識や常識とかは赴任してから必要に応じて学ばなければならなかったりもする。

 ……まあ、それでも俺としては座学の方がまだ気が楽なんだがな。

 

「そんな事言って、アークって今のところ実技成績同期の中でトップじゃないか」

「……そりゃあ、俺は()()に小さい頃から散々扱かれて来たからな」

 

 実のところ、俺の親父は宇宙警備隊の()()()()()()お偉いさんで、その所為もあって俺は幼い頃からその親父に各種戦闘技術を叩き込まれているのだ……ここだけ聞くと、事前の特訓のお陰で訓練校なんて楽勝だぜ! とか俺がやっている様に聞こえるだろうが、その親父の超絶体育会系スパルタ式スーパーハードメニューな特訓によって毎回ズタボロにされている俺としては正直微妙な気分である。

 更に、時折親父の友人達まで参加してくるものだから特訓内容が倍率ドンで強化される事すらザラにあったりするし……落石、ジープ……ウッ! 頭が……ッ! 

 

「士官学校の実技はあそこまで非道いモノではないと頭では分かっているのに、かつてのトラウマの所為で気分が超滅入るんだよ……」

「でもやっぱり()()()()に特訓を付けてもらえるのは羨ましいよ」

 

 実際やらされている身としては代われるものなら代わって欲しいんだがな……まあ、ウチの親父達は光の国では有名人だからそう言う意見が出るのも分かるんだが。コッチの身としてはその所為で悪目立ちする上、プレッシャーも掛かるから更に実技で気が滅入る原因だったりするんだがな。

 …………まあ、自分の意志で士官学校に入学しておいて実技訓練でやる気を出さないとかは流石に論外だから、多少気分が滅入ろうがその辺りはちゃんとするけどさ。

 

「実技自体はそこまでキツくはないし今日も頑張りますか……ハァ……」

「うーん、士官学校の実技もかなりキツイ筈なんだけどね。……でも、流石はアーク! あの人達の弟子だけはあるね!」

 

 やれやれ、相変わらずメビウスは純真ポジティブ天然な性格してんなぁ……後、アレは弟子とかじゃなくてちょっと変わったサンドバッグみたいなもんだから。

 

 

 ──────◇◇◇──────

 

 

 そんなこんなで俺とメビウスが光線技用訓練場の前の教室に付いた時には、俺達以外の同期の訓練生達は全員揃って席に座っており、各々談話したり自習したりしていた……何だかんだ言ってこの士官学校は倍率が高く、更に宇宙警備隊という職種の人気もあってそこに通う訓練生のモチベーションは非常に高いのだ。

 ……そんな中、俺達は赤と青の二人のウルトラ族が並んで座っている席の隣に腰掛けた。

 

「ようアーク、相変わらずの重役出勤だな」

「ようゴリアテ、別に遅刻はしてないんだから良いだろ」

「まあ、今日はメビウスのお陰で時間ギリギリという訳でもない様ですから」

「これでも遅刻だけはしない様に注意しているんだがな、フォルト」

 

 俺に声を掛けて来た片方の巨漢のレッド族の名前はゴリアテ、もう片方のスマートなブルー族の名前はフォルトと言う同期の訓練生だ。この二人とは高等学校の頃に知り合って以来、メビウスと男四人でよくつるむ様になったんだ。

 ちなみにこれまで俺は授業開始ギリギリに訓練室に来る事はあっても、授業そのものには遅刻した事は無いのだ……と、その辺りの事をフォルトに説明したんだが……。

 

「そう言うならもう少しやる気を出したらどうですか? そんな態度な上に実技成績が圧倒的にトップな所為で、貴方他の同期からはかなり避けられていますよ?」

「……え⁉︎ そうなの?」

「気付いて無かったのかよ……今のオマエって側から見ると『やる気無さそうに訓練している割に座学も実技もトップクラス、しかも終始その態度が変わらない』って感じだからな。付き合いの長い俺達ならともかく、そりゃあ他のヤツは話しかけ難いだろうが」

「うぐぐ……せ、成績に関しては実技の格闘訓練ではゴリアテと互角ぐらいだし、座学に関してはフォルトには負けてるし……」

 

 何せゴリアテは“光の国ジュニア格闘大会”のチャンピオンだし、フォルトは筆記試験において士官学校始まって以来の成績で合格した天才で座学の成績も常に一位だからな! この二人と比べれば成績云々に関してそこまで悪目立ちする事も無いと思うんだが……。

 

「いや、オマエ格闘訓練でそのチャンピオン相手に6:4ぐらいで勝ち越してるじゃねえか」

「座学の成績も第二位をキープしてますしね。……と言うか、成績よりも態度が浮いているのが問題なんですよ?」

「アークって意外と天然で抜けてる所があるからね〜」

 

 ムムム、これからはもう少し態度を真面目にするかなぁ……後、天然云々はお前にだけは言われたくないぞメビウスゥ! 

 ……と、言い返そうとした丁度その時、訓練時間の始まりを告げるチャイムが鳴り響き、それとほぼ同時に教室へ一人の男性が入って来た。

 

「おはよう、全員揃っているな」

「「「おはようございます! カラレス教官!」」」

 

 そうやって入って来た人がした挨拶に対して、俺達士官学校訓練生は一糸乱れぬ形で挨拶を返した…………彼が俺達の教官であるカラレスさんである。

 何でも元々は宇宙警備隊に所属していたのだが、怪我で一線を退き今は士官学校の教官をしているらしい。温和で優しい性格なので訓練生達からも慕われているが、怒る時にはキッチリ怒るタイプでもあるので彼の授業でふざけたりする様なヤツはいない。

 

「さて、今日の訓練内容は先日教えたスペシウム光線の訓練になる。……まず一人ずつ光線用訓練場へと入り室内の指定した範囲内で待機、そこから十分間の制限時間の間スペシウム光線()()を使って室内に次々と出て来る的を破壊してもらう」

 

 ふむ、今日の訓練はスペシウム光線での的当てか。これでも光線技の制御は特に集中して扱かれた所だからそれなりに自信があるし、ここでやる気に溢れる所を見せれば周りからの評価を変わる筈!

 ……俺がそんな事を考えている間にもカラレス教官の説明は続いていた。

 

「ただし、一つ注意して貰いたいのは出て来る的は黒と赤の二種類があり、黒い的を破壊した時の得点は10点、赤い的を破壊した時には()()()()1()0()0()()になる。そして一つの的が展開される時間は10秒間だ」

 

 ……成る程、マイナス点が大きいと言う事は()()()()()()()の訓練か。これは気を付けないと行けないな。

 

「説明は以上だ。何か質問はあるか?」

「はい、先程一人ずつと言いましたがその様子はここのモニターに映されるのでしょうか? そして、その場合は後の者の方が有利になるのでは?」

 

 説明を終えたカラレス教官に対して、手を挙げたフォルトが席から立ち上がってその様な質問をした……この教室はそこにあるモニターを使って光線用訓練場内部の様子を見る事が主な使い道だからな。もし見れるなら後のヤツはそこから対策を立てられるだろうし。

 

「ふむ、まず訓練の様子は教室のモニターに映す。他人の訓練を見るのもまた訓練になるからな。そして後の者が有利であると言う話だが、そもそも的当ての得点自体は成績には関係無い。今回の評価は“情報が少ない中でどれだけ対応出来るか”や“先に得た情報からどれだけ有効な手段を使えるか”などの要素も含めて私が判断する。……これでいいか?」

「はい、よく分かりました。余計な手間を取って頂きありがとうございます」

 

 そう言って納得したフォルトは腰を90度曲げてお辞儀をしてから席に座った…………まあ、これは訓練であって的当て競技じゃないからな。宇宙警備隊的には初見の状況に対応出来るかや、事前情報から有効な手段を構築する事も必要な能力なんだろう。

 

「他に質問はあるか? ……無い様だな。では呼ばれた者は訓練場へと入ってくれ。……ゴリアテ!」

「はい! ……よっしゃ、一番手だぜ」

 

 そうして、カラレス教官に呼ばれたゴリアテは訓練場に入って行き、その訓練場内部の様子が教室のモニターの中に映し出された。その訓練場は光線技を内部で使用する為に非常に広く作られており、更に壁や床には強力なバリアフィールドを展開出来る様になっている。

 ……そして、今回は訓練場の壁際の床にそこそこの大きさがある長方形のラインが引かれていた。

 

「その長方形のライン内部が指定された範囲になる。訓練中はそこから出ない様に」

『分かりました』

 

 訓練場に入ったゴリアテに対してカラレス教官は教室にあるマイクを使って指定範囲の説明を行い、ゴリアテもその指示通りに範囲内で待機した。

 そしてカラレス教官が手元にある機材を操作して訓練場の設定を変更し、再び通信でゴリアテに準備が出来たかどうかを確認した。

 

「ゴリアテ、準備はいいか?」

『いつでも大丈夫ですよ!』

「うむ……それでは訓練開始だ」

 

 カラレス教官のその言葉と同時に訓練場内の空間に黒い的と赤い的が次々と展開されていき、それを見たゴリアテは即座に右手を手のひらまで真っ直ぐ伸ばし縦にして身体側に、左手も同じく伸ばし横にして外側に置く形で胸の前に腕で十字を組んだ。

 ……これこそが、光の国のウルトラ戦士が使う最も基本的な光線技『スペシウム光線』の構えである。

 

『ゼァァ!』

 

 そんな構えを取ったゴリアテが気合いを入れて叫ぶと共に、縦にした右手のひらの側面から光線が放たれて宙に浮く黒い的の一つを破壊した。

 更に、ゴリアテはその場に留まり次々と光線技を連射して黒い的のみを正確に撃ち抜いて行く……アイツは見かけ通りスタミナが高い上に、意外とウルトラ念力や光線技、後座学の成績も良い方だからな。

 

「流石ゴリアテ、黒い的を次々と撃ち抜いているよ!」

「彼はスタミナが有りますからね、あれだけ連射し続けるのは大したものです」

「でも光線技の威力が少し高すぎるかな。あの的の強度ならあそこまでの威力は要らないだろう」

 

 友人のそんな姿を見て素直な賞賛の言葉を発するメビウスとフォルトに対し、俺は空気を読まずにダメ出しをした……そんなんだから同期生に避けられるんじゃないかだと? うるさいほっとけ! 

 そうしている間にも黒い的は次々と破壊されていき、それに変わって新しい的が訓練場に展開されていった。

 

「ですが、ゴリアテの体力なら十分間ぐらいなら今のペースでも持つのでは?」

「いや、体力じゃなくて光線技の制御の問題。……それに、その場から動かずにスペシウム光線と黒い的だけに集中してるから、多分そろそろ……」

『ッ⁉︎ チィッ!』

 

 順調に黒い的のみを破壊していたゴリアテだが、一つの黒い的を破壊したスペシウム光線がその射線上にあった赤い的に当たってしまったのだ……やっぱり、時間が経つ毎に的の配置がかなり嫌らしくなってるな。

 黒い的のすぐ隣に赤があるのは序の口で、さっきの様に光線の射線上になる様に配置されていたり、酷い時には黒い的と赤い的が重なって配置される事すらある。

 

「……重なって配置されているのではどうしようもないのでは?」

「その場合は“撃たない”が正解だろうな。それにあれだけ光線を連発していれば、後半になる程体力や判断力も削られる」

「……ゴリアテ、さっきからミスが増えているね」

 

 まあ、ゴリアテも途中でそれに気づいたのか光線技の威力を落として、更にラインの範囲内を移動して赤い的を射線上に入れない様にしている…………だが、それによって時間切れで消える的も多くなり、その焦りに体力の減少による疲労もあってミスが多くなっているんだろう。

 …………いくらプラズマスパークがあってディファレーター光線が豊富なこの星の中でも、エネルギーの消耗が大きい光線技を連射すれば当然疲労は溜まるしな。

 

「……よし! そこまで! 教室に戻っていいぞ」

『ハァ、ハァ、ハァ……あ、ありがとうございました!』

 

 そして、カラレス教官が訓練終了の指示を出した時にはゴリアテは肩から息をして疲労困憊の様子であり、ややふらつきながら教室に戻って来た。

 ……体力に関しては同期の中でもトップなゴリアテのそんな様子に、他のメビウスやフォルトを始めとする同期生達もこの訓練が一筋縄ではいかないと思ったのか教室内は真剣な空気に包まれた。

 

「ゴリアテの結果は黒い的157枚、赤い的9枚だから670点だ……では次の……」

 

 教室がそんな空気になった事にカラレス教官は少しだけ笑みを浮かべると共に、次の訓練生の名前を呼んだ。




後書き・各種設定解説

アーク:この物語の主人公で見習い宇宙警備隊員
・最近の悩みは友人以外の同期生との距離感が掴めずボッチ気味な事。
・詳しくは後編で。

メビウス:主人公の友人その1
・基本的にはテレビ版と同じだが訓練生時代なので性格はやや若い感じ。
・尚、本編現在の時系列はセブンは既にウルトラの星に帰還しており、ジャックが地球に派遣される少し前ぐらい。

ゴリアテ:主人公の友人その2
・パワーキャラだが士官学校に合格するぐらいには座学や光線、念力などの能力も高い。

フォルト:主人公の友人その3
・頭脳系のブルー族としては珍しく宇宙警備隊を目指しており、実際に士官学校の試験に合格する程度には身体能力も高い秀才。

カラレス教官:出展『ウルトラマンStory0』
・原典と違いこの物語(マルチバース)では生存しているが、かつて“とある事件”で重傷を負い左のウルトラホーンを失った為宇宙警備隊を辞めて教官の道へ進んだ。

スペシウム光線:おそらく日本で最も有名な必殺技の一つ
・ウルトラの星で一番最初に教えられる全ての光線技の原点(公式設定)。
腕をX字にしたり(ザナディウム光線)腕を前後逆にしたり(ナイトシュート)左手を縦に右手を横にしたり(スペシュッシュラ光線)すると別の光線技になるので注意。
・本作においても士官学校で一番最初に習った光線技という設定で同期生は全員使えるが、この技を極めて必殺技に昇華させたウルトラマンやウルトラマンジャックなどと比べれば威力・制度などは及ぶべくもない。


読了ありがとうございました、後編は出来るだけ早く投稿するつもりです。
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