宇宙に輝くウルトラの星   作:貴司崎

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戦え! ウルトラ戦士達! (後編)

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 触角宇宙人 バット星人

 宇宙恐竜 ゼットン量産型

 宇宙恐竜 ゼットン試作型 登場! 

 

 

 ──────◇◇◇──────

 

 

 カラレスとゴライアンが格闘型ゼットンを倒したのと丁度同じ時、残り二体の試作型ゼットンとウルトラ戦士達の戦いにも援軍が到着した事により転機を迎えていた、

 ……まず、ゼットンシャッター特化型の方には宇宙科学技術局所属のフレアが加勢に来ていた。

 

「よう、加勢に来たぜ」

「フレアじゃないか! 宇宙科学技術局に移籍した御主が何故?」

 

 その意外な人物の登場に、フレアが宇宙警備隊に所属していた頃に面識のあった教官の一人が思わず問いかけた。

 

「ゾフィーに頼まれたんだよ『光の国を守る為に今一度だけ前線に出てくれ』ってな。……それに、俺の同僚が開発した技術をあそこまで好き勝手言ってくれた連中にはちと思うところがあるしな」

「ゼェェェットォォン!」

「さて! 俺があいつのバリアをどうにかするからその隙に叩いてくれよ!」

「分かった! ヤツにもう一度攻撃を集中させるんじゃ!」

 

 そうして、再びシャッター特化型ゼットンとウルトラ戦士達との戦いが始まった……最も、先程までと同じ様に教官達の波状攻撃が全て相手のゼットンシャッターに防がれるだけで……。

 

「ほい、捕まえたっと」

「ッ⁉︎ ゼェェェェェッ!!!」

 

 否、そのゼットンシャッターの内側に突如として現れた()()によって光の網が張り巡らされ、中に居たゼットンの動きを拘束したのだ……その両腕の正体はフレアがゼットンがシャッターを展開する直前に自分の腕を粒子化させてその内側に忍ばせたものであり、その両腕を介して得意の『光子ネット』を展開してゼットンの動きを封じているのだ。

 ……そして、動きを封じられたゼットンはシャッターを維持する事が出来ずにそれを解除してしまった。

 

「今だ! 俺が動きを抑えて置くから光線を吸収される事は無い!」

「よし! 合体光線じゃ! スペシウム光線!」

「「スペシウム光線!」」

 

 そうして出来た隙に三人の教官はゼットンに向けて同時にスペシウム光線を放った……放たれた光線は途中で交わり三重の螺旋状になり、そのままゼットンに向かって突き進んでいった。

 これぞ複数人の光線技のエネルギーとウルトラ念力を融合させて超威力の光線とする『合体光線』の技術である。無論、各々に高い光線の制御技術が必要な上で互いの息を合わせる必要があるので技の難易度は高く、教官達も使う技を最も基本的なスペシウム光線に統一するなどして技の精度と威力を更に上げて使用している。

 

「それじゃ光子ネット解除……じゃ、さよならだ」

「ゼェェェェェェェェ────ットォォォォ……!」

 

 その合体光線が当たる直前にフレアは光子ネットを解除して腕を粒子化したのでゼットンは自由を取り戻したが、既にシャッターの再展開は吸収が間に合うタイミングではなく、そのまま三重螺旋の奔流に飲み込まれて爆砕されたのだった。

 

「よっしゃ! 一体撃破だな……お! ゴライアン。カラレスの方は大丈夫だったのか?」

「ああ、こっちのゼットンも倒したぜ。……カラレスのヤツはエネルギーを消耗し過ぎたみたいだったから休ませて来たがな」

 

 そこに格闘型ゼットンを倒したゴライアンがやって来た……その報告からゼットンの残りが一体になったと知ったウルトラ戦士達は喜びの声を露わにした。

 

「ふむ、ならば後はテレポート型だけじゃな」

「そっちにはチャック、スコット、ベスの『チームUSA』が援軍に行ってた筈だ」

「では、我々も加勢に行きましょう」

 

 そうして、二体のゼットンを倒した彼等はまだ残っている最後のゼットンと戦いに加勢する為に空へと飛び出していった。

 

 

 ──────◇◇◇──────

 

 

 そして同じ頃、別の場所で行われていたテレポート型ゼットンとの戦いも、援軍である『チームUSA』が加わった事で佳境を迎えようとしていた。

 

「ゼェェット!」

「セヤァ! ……またテレポートしたぞ!」

「……スコット! そっちに行ったわ!」

 

 テレポート特化型ゼットンに対してまずウルトラマンチャックが殴り掛かったが、その拳はテレポートによって一瞬で別の場所に移動したゼットンには当たらず……そうして移動したゼットンを周りを警戒していたウルトラウーマンベスが見つけて、直ぐにウルトラマンスコットに教えた

 

「分かった! そこだ! ウルトラ・スライサー!」

「ゼェェットン⁉︎」

 

 その指示を受けたスコットは現れたゼットンに対して、()()()準備していた複数の光輪を即座に投げつけた……その光輪はテレポート直後で動きが取れなかったゼットンに命中してダメージを与えた。

 ……彼等三人は『チームUSA』と称される様にウルトラの星の宇宙警備隊の中でも珍しく三人での連携戦闘を得意としており、その連携戦術をお互いの死角を完全にカバーし合う事でテレポートを連発してくるゼットンに対応していたのだ。

 

「よし! ようやくヤツにダメージを与えられたぞ!」

「我々も彼等チームUSAに続くぞ! 常に声を掛け合い、互いの死角を補うんだ!」

「ヤツがどこにテレポートしても良い様に陣形を組むんだ!」

「ゼェェットォォン!!!」

 

 そのチームUSAの奮戦に士気が上がった教官達も、彼等に習いお互いをフォローしながらゼットンのテレポートに対応していった……単純な理屈として、如何に点と点による移動が可能なテレポートでも対応できる手と目が増えれば転移出来る範囲は当然狭くなるのだ。

 ……更に本来なら撤退するのが最善なのだが制作者(グライス)によって『ウルトラ戦士と戦え』と命じられていたゼットンはその選択を取る事が出来ず、そのまま徐々に追い詰められていき……。

 

「そこだ! ウルトラ・バブル・シュート!」

「ゼットォォォォン⁉︎」

 

 そうして度重なるダメージによって動きが鈍った所に、チャックが球体状のエネルギーによってゼットンをその内側に閉じ込めた。更にその泡の内側には特殊なエネルギーによって干渉されており、それによってゼットンのテレポートを封じているのだ。

 ……その待ちに待ったチャンスを見逃すものはこの場にはおらず、すぐさま全員が各々が得意とする光線技の構えを取った。

 

「今だ! みんな! 光線を撃て!」

「よし! グラニウム光線!」

「グラニウム光線!」

「「「シェアッ!」」」

 

 そして、拘束されたゼットンに向けて四方からスコットとベス、そして教官達がそれぞれの光線を浴びせ掛けた……それらの光線はチャックが()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ウルトラ・バブル・シュートを貫通し、そのまま全方位からゼットンに突き刺さってその身体を跡形も無く吹き飛ばしたのだった。

 

「よし! ここのゼットンはどうにか倒せたな」

「手強い相手だった……」

「……じゃあ、他の所に「なんだ、こっちも終わってるじゃねえか」! 貴方達は!」

 

 戦闘を終えて他の場所へと援軍に行こうとしていた彼等の元にゴライアン達が飛んで来たのだ。

 

「ふむ、そっちはもう終わったようじゃな」

「貴方達がここに来たという事はそちらも?」

「ああ、他の二体のゼットンも既に撃破済みだ。これでゼットンは全て撃破したしゾフィーに報告するか」

「それじゃあ、大隊長にはこちらから報告しておきます」

 

 合流した事で避難シェルターを襲ったゼットンを全て撃破したと分かった彼等は、まずシェルターの安全が確保された事を報告する事にした。

 ……とりあえずフレアがゾフィーに、後方で指揮を執っている宇宙警備隊大隊長ウルトラの父には教官の一人がテレパシーによる報告する事となった。

 

「……こちらフレア、ゾフィーか? 避難シェルターを襲撃したゼットンは全て撃破。シェルターには多少の被害が出たが人的被害は無しだ。…………分かった。……とりあえず、俺たちにはこのまま避難シェルターの警護を続けて欲しいってさ。スペースポートの戦闘もそろそろ決着が付きそうらしいし」

「成る程のう、それでは警護を続行するかの。……ああ、訓練生の中にあのゼットンどもと戦った者達がいる様だし、其奴らの様子も見たほうが良いかの」

「確かに、初陣にしては強過ぎる相手ですからね。……確かカラレスの担当している訓練生だったから、既に彼が向かっているでしょうが」

「それじゃあ、俺も久しぶりに甥っ子の様子を見に行きましょうかね」

 

 そうして、自分達の戦いを終えた彼等は再び避難シェルターの警護と教官としての自分達の本来の職務に戻っていったのだった。

 

 

 ──────◇◇◇──────

 

 

 光の国の戦闘に於ける最前線であるスペースポート、そこは既にかつて宇宙との玄関口としての美しい光景は残っておらず、建物を構成するクリスタルは軒並み破壊され、周囲には無人戦闘機の残骸が飛散しているという酷い有り様であった。

 ……だが、そこは先程までと比べてもだいぶ静かになっており、最早戦闘と言えるものは僅かに残った量産型ゼットンが複数のウルトラ戦士の攻撃を受けて次々と撃破されて行くぐらいであった。

 

「……そうか、よくやってくれた。……助かった、礼を言うぞフレア。こちらもそろそろ決着が着く、そのままシェルターを守ってくれ……。どうやら避難シェルターに現れたゼットンは全て倒して、シェルターにいる民間人にも被害は無いようだ」

「そうか! それは良かった。……では、こちらもそろそろ決着を付けなければな」

 

 その一角では宇宙警備隊隊長ゾフィーがフレアからのゼットン撃破報告を受けており、彼は直ぐに近くにいたウルトラマンにそれを伝えた……彼等は被害ゼロというその報告に安堵した後、未だに戦い続けていたバット星人の前線指揮官に向き直った。

 

「……そういう事だバット星人、既にここの戦場の趨勢は決して避難シェルターの安全も確保された。更に宇宙にいるお前達の本隊も外宇宙から帰還した宇宙警備隊員によって倒されつつある。……もう一度言おう、降伏しろ。今ならば命は助かる」

「……ク、クククッ……。自分の星を侵略しに来た敵に随分とお優しい事だな……」

 

 そう言ったバット星人前線指揮官は手に持った剣はヘシ折れ、身体中に纏っていた武器はほぼ全て破壊、更に身体にはダメージを負った箇所は無いという見るも無残な有り様であった。

 ……それもその筈、彼はここに至るまでゾフィー、ウルトラマン、セブンのウルトラ兄弟三人を殆どたった一人で相手にし続けていたのだから。

 

「……どの道、このダメージでは長くは俺は持たん。……それとも、散々出し渋っていた『命の固形化技術』を俺に使うか? 我が恩師である司令の奥方を治すためには使わせず、辺境の蛮族である地球人を治すためには使ったその技術を」

「それは……ッ!」

「助かるのはお前の命ではない。……まだ、戦っているお前の部下の命だ」

 

 バット星人のその発言に対して言い募ろうとしたウルトラマンを諌めながら、前に出たゾフィーはそう言った……彼の言う通り、この戦場にはまだ少数ではあるが負傷したバット星人兵士の姿があった。

 ……周りを見て何か考えるような素振りをした指揮官に対して、ゾフィーは更に言葉を続けた。

 

「我々ウルトラマンは神ではない。……だから、救える命もこの手が届く範囲だけで、宇宙のバランスを乱すと分かっていて侵略者に技術を渡す事はせず、自分達の星に侵略して来た者達に容赦をする事も無い。……だが、これ以上戦闘を行う気が無い者まで殺すつもりは無いだけだ」

「…………クク、甘いな。……自らの星への侵略者など問答無用で滅ぼして仕舞えばいいものを……」

 

 数瞬黙り込んだ後、そう皮肉げな笑みを浮かべながら言った指揮官はそのまま自身の胸部を叩き、そこに付いていた()()()()()を起動した。

 

「だが、()()()()最後までバット星人前線指揮官としての務めを果たさせてもらう! ……この胸に付いているのは自爆用の超大威力爆弾だ! 爆発してしまえば宇宙港は愚かここら一帯を吹き飛ばす程のなぁ!!! 残存全無人戦闘機自爆モード! ゼットンどもも全力で暴れて可能な限りウルトラ戦士を道連れにしてやれ!」

「バット星人! 貴様……ッ!」

「クソッ!」

「……マン、セブン、お前達は残りの無人戦闘機を破壊しろ。……彼とは私が決着を付ける」

 

 バット星人前線指揮官のその発言にマンとセブンは動揺して突っ込もうとしたが、それをゾフィーが抑えて無人戦闘機を相手にする様指示を出し、代わりに自らが指揮官と向き合った。

 ……そして、ゾフィーは胸の前で腕を水平にしたまま手の先を合わせて、その部分に莫大なエネルギーを収束させ始めた。

 

「ゾフィー……。分かった、ここは任せる」

「頼んだぞ!」

 

 その()()を見たマンとセブンは何かを察したのか、その場をゾフィーに任せて暴走を始めた無人戦闘機とゼットンの撃破に向かっていった。

 ……そして、その場には折れた剣を構えたバット星人前線指揮官と、宇宙警備隊隊長ゾフィーの姿だけがあった。

 

「……行くゾォ! ゾフィィィィィ!!!」

「……来い!」

 

 その叫び声と共にバット星人指揮官は身体に走る痛みを無視しながら折れた剣を構えて突撃した……それに対してゾフィーは静かに莫大なエネルギーが集まって所為で光り輝く右腕を手の先を前に向けながら後ろに下げた。

 ……そして、その右腕を向かってくるバット星人指揮官に対して力強く前に出した。

 

「M87光線!!!」

「⁉︎ ァァァ────……」

 

 伸ばされた右腕から放たれた莫大な光の本流は向かって来たバット星人指揮官を胸の爆弾ごと消滅させ、そのままゾフィーの意思で軌道を上方向に捻じ曲げられ地上には一切の破壊を齎さずに上空へと消えて行った……これこそ、絶望だけを撃ち抜くと言われるウルトラ戦士最強光線『M87光線』である。

 ……だが、M87光線が消えたウルトラの星の空に超スピードで上昇して行く1つの影があった。それはよく見るとバット星人がゼットンを収納していたカプセルに酷似した宇宙船だった。

 

「ゾフィー! どうやら今の戦いの隙に、バット星人の生き残りが残っていた宇宙船を使ってこの星を脱出したようだ」

「どうする? 追撃するか?」

「……いや、逃げる相手まで無理に追う必要は無いし、こちらにもそんな余裕は無い。……それよりも怪我人の救助と宇宙で戦っている警備隊員への援軍が優先だ」

 

 そう、バット星人指揮官はたいして威力の無い爆弾をブラフに使い自分を囮にする事で、残存していた兵達を緊急離脱用に準備してあった宇宙船を使って戦線から離脱させていたのだった……マンとセブンに言われるまでもなくゾフィーもその事には気が付いたが、これ以上味方に無意味な犠牲を出さない為に見逃すように指示を出した。

 ……こうして、スペースポートでの戦いは終わった。怪我人はまだ動ける者が銀十字軍まで運び、ゾフィー達ウルトラ兄弟を含むまだ戦える者達は宇宙で戦っている者達の下に飛び立って行った。

 そうして、ひとまずウルトラの星の地上に於けるバット星人との戦闘は終了したのだった。




あとがき・各種設定解説

対ゼットンの援軍:ゾフィーが光の国各地からかき集めた
・チームUSAは他の重要拠点を守っていたのだが、避難シェルターにゼットンが現れると言う緊急事態に対して急遽呼び出した模様。

試作型ゼットン:総合性能は初代ゼットンと互角ぐらい
・実は性能を特化させる代償に格闘型はバリアとシャッターが、シャッター型はテレポートと光線吸収能力が、テレポート型はシャッターと光線吸収能力がそれぞれオミットされていた。
・更に、その性能を活かす為の判断力や頭脳にも欠陥がある。
・だが、得られた戦闘データは内部に埋め込んでいた機械で製作者にしっかりと送信していた。

バット星人前線指揮官:最後まで自分の役割を果たした
・司令官であるデルザムには恩義があり絶対の忠誠を誓っていた。


読了ありがとうございました。
(何故か)長くなったバット星人襲来編も次回で(多分)最後になります。

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