宇宙に輝くウルトラの星   作:貴司崎

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第2章 ウルトラの星での日々
強くなるために


 ──────◇◇◇──────

 

 

 どくろ怪獣 レッドキング 登場! 

 

 

 ──────◇◇◇──────

 

 

「ギャァオォォォ──ッ!!!」

「ッ⁉︎ デェェェイ!!!」

 

 俺──宇宙警備隊士官学校訓練生アークは、目の前に居る相手の()()()()()()()()()()()から放たれた強烈なパンチをどうにか横に飛んで回避した……轟音と共に頭部のスレスレを通り過ぎたその拳の威力に背筋を寒からせながらも、俺はそのまま相手の脇を通り抜けつつその背中に反撃の手刀を見舞った。

 

「? ……ギャァァァオォォォッ!!!」

「ッ⁉︎ ……ええい! ノーダメージとか、どれだけタフなんだか!」

 

 だが、その攻撃は相手の()()()()()()()に阻まれ大したダメージにはならず、それを煩わしく思ったのか相手はその太い尻尾を振り回して来た……その攻撃を俺はバックステップで辛うじて躱しながら距離を取って、改めて現在の状況を確認していく。

 

(……周囲の地形は起伏に富んだ岩山。守るべき現地生物や建物は無いから地形を盾にする事も出来るが……ダメだな。ヤツ……()()()()()()が有する怪獣界トップクラスの怪力の前では岩山程度では盾にもならん)

 

 そう、今俺はかつてウルトラマンさんも戦った【どくろ怪獣 レッドキング】と一対一で戦っているのだ……しかし、流石は怪獣の中でもトップクラスのパワーと耐久力を持つと言われるだけあるな。こっちの格闘攻撃はまともなダメージにならないし、相手の攻撃を一発でもまともに食らえば致命傷を負いかねない。

 

(加えて今の此処の環境は地球に近い条件だからな。……あまり長時間戦えないし、使えるエネルギーにも制限があるから光線技もおいそれとは撃てない……さて、どうするか)

 

 何せレッドキングはただ力が強くてタフという単純に正面から戦うのであれば本当に隙のない相手なのだ……俺がそんな事を考えている間にも、レッドキングはやる気満々でこっちに向かってこようとしていた。

 ……と思ったのだが、何故かヤツは近くにあった巨岩を掴むとそれを持ち上げてこちらに向かって投げつけようとしたのだ……えーっと……。

 

「とりあえず隙あり! スペシウム光線!」

「ガッ? ……ギャァァァァァ────ッ⁉︎」

 

 それを隙と見た俺は即座にレッドキングが持ち上げた岩に対して低威力のスペシウム光線を撃ち放ち、それによって起こった爆発の衝撃でヤツは岩を取り落とした……そして、その岩はそのまま重力に従って落下してヤツの足に激突して悶絶させた。

 ……よっぽど痛かったのかレッドキングは叫びながら当たりを飛び跳ねている。

 

「……まさかここまでアーカイブで見たデータ通りとは……。悪いがその隙は逃さん! セェヤァッ!!!」

「ギャァァァァァオォォォ⁉︎」

 

 あまりの()()()にちょっと呆れながらも、俺は未だに飛び跳ねているレッドキングに飛び膝蹴りを叩き込む……流石にトップクラスのヘビー級ファイターだけあって態勢を崩しただけで倒れこむ事すら無かったが、俺はそこで更に接近してヘッドロックを掛けてそのまま投げ飛ばした。

 ……そして、投げ飛ばされたレッドキングは頭から地面に激突して脳を揺らされた事で悶絶した。そのまま立ち上がったものの、まだダメージが抜けていないのかフラフラと身体が揺れていた。

 

「よし! このタイミングなら! ……ヌゥゥッ、ゼヤァァァ!!!」

 

 それを好機と見た俺は両腕を交差させてから右手を斜め上、左手を斜め下伸ばしながら身体の中にあるエネルギーを圧縮・循環させてから、そのまま両腕を右手を縦、左手を横にする形でL字に組んで先程のスペシウム光線よりも遥かに高い威力の光線技を撃ち放った! 

 ……これぞ親父の『M87光線Bタイプ』を参考に編み出して、更に478回の試行と親父からのダメ出しの果てに漸く実戦で使えるレベルだと認められた俺の必殺光線(名称未定)だ!!! 

 

「ギャァァァァァ────ッ!?」

 

 俺の必殺技(仮)を食らったレッドキングは断末魔の叫びを上げながら粉々に爆発した……どうやら、流石のレッドキングも『威力だけなら私のM87光線Bタイプと変わらない』と親父に言われた俺の必殺技(名前どうしよう……)には耐えられなかったらしいな!

 まあ、親父が腕をL字に組んで撃つM87光線Bタイプは、連射性と速射性に特化した低威力バージョンの光線技であるのだが……。

 ……とりあえず、これで()()()()()は終わりだな。

 

『……よし、それまで! ……撃破までのタイムは2分37秒だ』

「フゥ、なんとか3分は切ったか……」

 

 そして俺がレッドキングを撃破した直後、()()()()()()()()()()()()()()()からカラレス教官が訓練の終了と掛かったタイムを知らせてくれた……それと同時に周囲の岩山を構成していたホログラムが消えて、元のウルトラコロセウム内部へと戻っていった。

 ……そう、先程まで戦っていたレッドキングや周囲の岩山は、この光の国にある多目的訓練場『ウルトラコロセウム』の仮想シミュレーターで作られた偽りの物だったのである。

 

『それじゃあ、アークはコロセウムから出てくれ』

「分かりました」

『では、次の……』

 

 そうして訓練を終えた俺は、次の人の邪魔にならない様にさっさとコロセウムから出て待機場に戻っていったのだった。

 

 

 ──────◇◇◇──────

 

 

 そんな感じで本日の士官学校の訓練を終えた後、俺はメビウス達いつものメンバーと一緒に訓練場での自主訓練に励んでいた……以前のバット星人襲来事件で色々と思う所のあった俺達は、最近こう言った自主訓練の頻度を増やしているのだ。

 ……流石に、訓練課程が進んできて内容が実戦に近いハードな内容になって来た士官学校の訓練に影響が出ない範囲で加減はしているがな。今もちゃんと休憩を取ってるし。

 

「それにしても、アークが戦闘シミュレーターで使ったあの光線技は初めて見るね」

「まあ、アレを人前で使ったのはさっきのが初めてだしな。……親父から実戦に使っても問題無いって言われたのも最近だったし」

「宇宙警備隊隊長お墨付きの技でしたか。どうりて凄まじい威力だと思いましたよ」

「あの戦闘シミュレーターでの訓練を初見でクリアしたのはお前だけだったからな」

 

 ちなみにさっきの戦闘シミュレーターによる訓練は『地球系の惑星に近い環境下で、アーカイブからランダムに選ばれた怪獣を制限時間である3分以内に倒す』という中々ハードなもので、仮想とは言え怪獣と戦うのは初めてという訓練生が殆どだった所為かクリア出来たのは俺一人だけだったのである。

 ……当然悪目立ちしたんだが、もうその辺りは諦めてるし。一応散々言われたからか俺は他の訓練生より頭一つ図抜けた実力を持っている事は自覚したし……。

 

「実際、仮想とは言え初めての実戦で怯んでしまいやられた者はかなり多かったですからね。……まあ、あのゼットン達と比べればプレッシャーが大した事無かったからか、私達は普通に戦えてましたがね」

「それでも戦えただけで倒す事はアーク以外出来なかったがな。……やっぱり大威力の光線技はあった方がいいのか?」

「そう言えば、アークが光線技を撃つ前にポーズを決めてたけど……あれってどう言う意味があるの? カッコイイから?」

「そんな訳ないだろメビウス。……アレは“ルーティーン”ってヤツだよ」

 

 まず、高威力の光線技を撃つ前には身体の中で大量のエネルギーを操作・圧縮、光線制御の為のウルトラ念力の準備、或いは体外のエネルギー収束などを行う必要がある……だが、当然それらの制御には相応の集中力が必要になり、戦闘中にそんな事を長々と行なっていればその隙に攻撃を受けてしまう。

 ……そこでエネルギー操作を行うと同時に特定の肉体の動作を何度も行う事でその二つを結びつけ、特定の動作をしたら自然と体内のエネルギー制御を行う様に身体に刻み込むのだ。

 つまり“ルーティーン”とは特定の動作をキーにする事で高威力の光線技を早く、正確に使用出来る様にする技術の事を言うのだ。

 

「つまり、同じ動作を何度もやっていれば精度は上がって行くだろ? それを利用して高威力の光線技の事前準備をやり易くしているんだよ。……決してカッコイイからやってるって訳じゃないぞ」

「成る程〜。……僕も、その“ルーティーン”ってヤツを練習した方がいいのかな?」

「練習以前に高威力の光線技を撃てる様になる必要があるがな。ルーティーンはあくまでそれを使い易くする技術でしかないし。……それにウルトラマンさんやジャックさんみたいに、基本のスペシウム光線を極めて必殺技に昇華させている人もいるからな」

 

 まあ、タメ時間を作ってでも威力の高い光線技を使うか、それともタメ時間を無くしてどんな状況でも瞬時に光線技を撃てる様にするかはその人の戦闘スタイルによって決まるだろうからな……それに、親父みたいに両方を状況に応じて使い分ける人も居るし。

 そういったタメ系の光線技を多用するエースさんやタロウさんも、牽制用の技を複数用意して使い分けつつ必殺技を撃てる状況を作り出しているしな。

 

「授業でもやっただろ? 基本的に光線技はエネルギー消費が大きいから、まずは格闘や牽制技で相手を弱らせてから確実に当てられる状況で使うのものだってな。……まずは自分の戦闘スタイルを確立するのが一番だと思うぞ」

「そうですね。今日の訓練でも私はゴモラ相手に決定打を出せずに時間切れになりましたし、やはり火力が必要でしょうか。……ですが私は大出力のエネルギー運用は不得手ですし」

「あー、俺はガッツ星人の分身に翻弄されてまともに格闘戦をさせて貰えなかったな。……ウルトラ念力の制御や応用とかあんまり得意じゃ無いんだよなぁ」

「僕はキングジョーにまともにダメージを与えられなかったしなー。高威力光線の練習しようかな?」

 

 ちなみにさっきのシミュレーターでフォルトは【古代怪獣 ゴモラ】と、ゴリアテは【分身宇宙人 ガッツ星人】と、メビウスは【宇宙ロボット キングジョー】とそれぞれ戦っている。

 ……と言うか、どいつもこいつもかつて地球でマンさんやセブンさんを一度は倒した強豪ばかりなんだが。一応シミュレーターの怪獣は本物と比べると弱体化しているらしいが……。

 

「……まあ、今回のお前達はくじ運が悪すぎた気もするが……。それに火力を上げるなら、高威力の光線技ではなく切断技を覚える選択肢もあるぞ。アレは光線技に使うエネルギーを圧縮している分だけ威力が高いから固い相手にも有効だ」

「僕もメビュームスラッシュとかは使えるけど、アレは少ないエネルギーを斬撃状にして飛ばしてる“牽制技”だから威力は低いんだよね」

「本来の“切断技”は光線技に使われるだけのエネルギーを斬撃状に圧縮して放つものですから、威力は非常に高いんですよね。……その分、高いウルトラ念力の技量とエネルギー制御の技術を要求されますけど」

 

 切断技はウルトラ兄弟だと今は地球に派遣されているエースさんが得意とする技術だな……エネルギーを圧縮している分だけ威力──切断力が高いから、いざという時の切り札として習得している警備隊員も多いし。

 

「それに慣れれば作った光輪を念力で遠隔操作する事も出来るから敵に当て易くもなるしな……ほら、こんな風に」

「おー、二枚の光輪がアークの周囲をクルクル回ってる」

「……今更、アークがそんな高等技術を見せられても驚きはしませんが……本当になんでも出来ますね」

 

 とりあえず、見本として低エネルギーで作った光輪を二枚程生成して適当にゆっくりと周囲を旋回させてみた……まあ、今はあくまで見本としてやってるだけで実戦では高エネルギーで作ったヤツを早く正確に動かす必要があるから、そうなると一枚動かすのが限界だろうけどね。

 

「あー、じゃあそういった念力やエネルギー制御が苦手な俺はどうすれば良いと思う?」

「ん? ゴリアテなら得意の格闘で相手を弱らせてからスペシウム光線を撃ち込めば十分だと思うが。光線技の威力が十分にあるんだし。……そうでなければ光剣とか、拳や手刀にエネルギーを集めて攻撃する技とかもあるぞ。こんな風に」

 

 ゴリアテがしたその質問に対して、俺は近接用のエネルギー制御技術を提案した……光輪を消してから見本として右手から切断技の応用で作った光の剣を展開し、左手には拳の部分にそのままエネルギーを纏わせてみた。

 これらの近接技は単純にエネルギーを肉体の指定された場所に集中させるだけで、軌道などをコントロールする必要が無い分だけ射出系の技と比べると制御がしやすいというメリットがあるのだ。

 ……逆に、攻撃の軌道が肉体の動きに追随する以上、上手く相手に当てる為には剣術や格闘術など相応の近接戦闘技術が必要になるのだが。

 

「アークって本当に色々出来るね。僕も光剣とか覚えてみようかな?」

「確かに、自分の肉体を基準にしている分だけ使いやすそうですね。……そう言えば、今後の選択授業で剣術とかの項目もあったような……」

「まあ、確かに俺には合ってそうだが……ガッツ星人みたいに搦め手を使う相手には弱いんじゃないか?」

「……うーむ、それを言われるとなぁ……。実際、搦め手に対しては手札を増やすか地力を上げて臨機応変に立ち回ろうとしか言えないんだが」

 

 ウルトラ兄弟達もなるべくそういった状況に対応出来る様に色々な小技を覚えたりしてるしな……補助にバリアとか拘束系の技や透視光線やら、或いは凍結光線やら溶解液なんて変わり種もあったりする。

 

「確かカラレス教官も『今後は選択授業と言う形で各々が習得したいと思う専門的な技術を学ぶ機会も増えてくるから、今の内に何を学びたいか自分の進路の事を含めて考えておく様に』って言ってたね」

「そうだな。……一口に宇宙警備隊って言っても色々な部署があるしな」

 

 具体的に言うと各宇宙にある支部とか、特別部隊である戦闘特化の勇士司令部、諜報や情報収集担当の宇宙情報局、パトロール担当で各地のサポートや情報収集を行う宇宙保安庁、惑星や銀河の地理調査を担当する恒点観測員、未開惑星の監視を行う文明監視員などがある。

 ……ちなみに専門的な部署としては宇宙技術開発局や銀十字軍とかもあるが、この二つは必要な技能が特殊な為に別の養成学校があったりする。

 

「しかし進路希望か……今までは漠然と宇宙警備隊を目指していたけれど、そう言う事も考えないと行けないか」

「でも、特別部隊には普通の部署で一定以上の実績を出していて、その中の志望者が選ばれるんじゃなかったっけ?」

「一応、士官学校卒業時に立候補する事も出来る様だぞ。……受託されるかは成績と向こうの判断次第だがな」

 

 親父曰く、各特別部隊は結構人材不足らしく、優秀な新人を引き抜いてその部署で育てるという動きも最近では出てきたとの事……特にあのバット星人襲来事件から宇宙全体の治安が悪化し始めているらしいし、どの部署も戦力拡充には余念がない様だ。

 ……この宇宙の秩序の象徴とも言えるウルトラの星への襲撃事件はそれだけ影響が大きいという事らしい。結果だけを見れば犠牲者ゼロで侵略者を追い返したのだが、“襲撃された”という事実が問題になっているんだとか。

 

「うん! この宇宙の平和を守る為にも僕達はより頑張らないといけないみたいだね!」

「差し当たっては色々な技術を覚えて自分の戦闘スタイルを確立することが重要ですか。……そう言えば、アークの戦闘スタイルは一体どんなもの何ですか? 参考までに教えてほしいんですが」

「俺? ……色々な技術を覚えて、それらを状況に応じて臨機応変に使い分ける感じ。所謂万能型」

「……なんかアバウト過ぎてあんまり参考にならねえな。アークならそれでも問題無いんだろうが……」

 

 まあ、俺はこの姿(シルバースタイル)の時でも光線・体術・念力と確かに出来る事は多いけど、ウルトラ兄弟みたいに一芸に秀でているってわけじゃ無いからな……これでもアーカイブでウルトラ兄弟の過去の戦闘履歴を見て知識を増やしたり、ウルトラ兄弟の技を真似して新しい技の練習をしたりしてるんだが。

 ……一応、もう一つの姿(リバーススタイル)の方の訓練も進めているが、あちらは直接戦闘能力に欠ける上に扱いも難しいからなぁ。同じ力を持つ親父に教えを請いたいんだが、最近はバット星人襲来の後始末や地球に行ったエースさんの支援で忙しいからまともに顔を合わせる機会も無いしな。

 

「とりあえず、さっきアークが言っていた応用技の練習をしてみましょうか。やっている内に自分の戦闘スタイルが見えてくるかもしれませんし」

「そうだね! ……次のシミュレーターはクリアしたいし!」

「まあそうだな、負けっぱなしってのは性に合わなえ。……つーわけでアーク、悪いが応用技について教えてほしいんだが……」

「別にいいぞ。……ただ、基本がしっかりと出来ている事が前提だからな」

 

 ……そうして一度実戦を経験した俺達四人は、次に同じ事があった時に負けない為にも訓練に励んで行くのだった。




あとがき・各種設定解説

アーク:色々な人に師事しているので技の種類は豊富
・最近の悩みは技名がなかなか思いつかない事。

メビウス達:現在修行パート
・くじ運が悪くてもちゃんと3分間戦い抜いているので、同期生の中ではトップクラスに優秀。


読了ありがとうございました。今後ともよろしくお願いします。

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