さて、色々()あったが俺達は無事にカラータイマーの移植を終えて、士官学校では本格的な宇宙での訓練に入っていた……そして、今日はウルトラの星から少し離れた所にあるデブリ帯での機動訓練と、宇宙空間で多数障害物がある場所での戦闘訓練を行っていた所だ。
「あークソ、デブリ帯を念力などを使わずに一切デブリに当たらず高速機動で通り抜けるとか、普通に難しいんだが」
「……ただ飛ぶだけならウルトラ族は誰でも出来ますが、上手く飛ぶには相応の訓練がいるとはカラレス教官の弁でしたね」
「宇宙空間での戦闘も重力下でのそれとはまた別のやり方が必要になってくるしね」
「宇宙空間では周囲に配慮する必要があまりない分だけ光線技が使いやすいけど、地面がない以上は全方位を警戒する必要があるから難しいな」
親父達との訓練は殆どが重力下でのものだったから、俺も今回の訓練では結構手間取った……カラータイマーを付けた訓練生はウルトラの星近辺の宙域でなら無許可で宇宙に出る事が出来るし、これからは宇宙空間での自主訓練とかやった方がいいかな。
……まあそんな感じで、今日も無事に一通りの訓練を終えた俺達は、そのままウルトラの星に戻る為に宇宙を飛んでいたのだが……。
「お、ウルトラの星が見えてきたぞ。……今日はなんか随分と早く着いたな」
「訓練のお陰で飛行速度が上がった……訳じゃないよね」
「飛行速度は普通に教官に合わせて巡航速度ですから……え? いやちょっと待ってください⁉︎」
「……俺の見間違いでなければ、ウルトラの星が
「全員! 急速旋回!!! この場から離脱しろ!!!」
要約見えてきたウルトラの星に俺達訓練生が違和感を感じた直後、普段の授業どころか以前の襲撃事件の時でさえ決して見られない程に焦った様子のカラレス教官が大声でその場からの離脱を俺達に命令した。
嫌な予感がしていた俺達は即座にその命令に従い、飛行速度を限界まで上昇させて急速旋回してカラレス教官の後を追ってその場からどうにか離脱する事が出来た。
……その直後、向こうに見えていたウルトラの星が急激に加速して先程まで俺達が居た場所を通り過ぎていき、そのまま
「…………って! ウルトラの星がどっかいってしまったんだけど⁉︎」
「一体どうなってるんだってばよ⁉︎」
「お、落ち着け……ま、まだ焦るような時間じゃない……」
「あばばばばばばばばば」
「どういう……ことだ……」
うん、いきなりのウルトラの星の大暴走とか言う急展開にみんな大混乱しているな……以前のバット星人の侵略の時は、少なくとも
……実際、そういう俺だって物凄く混乱しているから、何をどうすればいいのか分からず呆然としてしまってるし……。
「……む! お前達、一旦落ち着け! ……そして、あのウルトラサインを見ろ!」
「え?」
「……アレは!」
そこで、唯一冷静に状況を把握していたカラレス教官が俺達にとある一点を見るように大声で命令した……その教官の声に最早条件反射で従うレベルで鍛えられた俺達は、すぐさま彼が指を指した方向にあったウルトラサインを見たのだった。
……そして、そのサインには『ウルトラキーが盗まれ、現在ウルトラの星が本来の軌道を外れて暴走している。奪われたキーの奪還にはウルトラ兄弟と本星に居た警備隊員が向かった。他の警備隊員は直ちにウルトラの星から振り落とされた施設や人員の救助を行え! 宇宙警備隊隊長ゾフィー』と書かれていた。
「よし、お前達。あのサインを見たから状況は理解出来たな。……ウルトラの星が大きく移動したせいで宇宙空間に投げ出された者や、余波で破壊された高層施設や衛星軌道の施設が多く発生している。よって、これから我々は投げ出された者やそれら施設に取り残された者の救助を行う。……返事は!!!」
「「「「「は、はいっ!!!」」」」」
そうして、宇宙警備隊隊長直々のウルトラサインとカラレス教官の明確な指示のお陰でどうにか混乱から立ち直った俺達は、すぐさま教官の指揮の元でウルトラの星があった場所近くでの救助活動を行う事になったのだった。
……不覚にも俺はこの非常事態に動揺してまともに動けなかったからな。これ以上、親父の顔に泥を塗る訳にはいかん。汚名返上と人命救助の為にも頑張ろう。
──────◇◇◇──────
「……よーし、これでこの辺りの救助者は全員避難地点に送り終わったな」
「ええ、そうですね。……念の為に周辺を索敵しておきましょう」
そんな訳で、俺達士官学校訓練生はカラレス教官の指揮の下で数個のグループに別れてウルトラの星から放り出された者を探し出して救出し、その彼等を即興の避難場所に仕立てたウルトラの星の近くにある居住可能な惑星に送る作業を行っていた……幸い、ウルトラ族は種族的に頑丈であり宇宙空間でも普通に活動可能なので怪我がある者は居ても、今の所だと死者は出ていない様だ。
……とはいえ、先も言った通り宇宙空間での活動にはそれなりの訓練が必要だし、この余の異常事態に普通の住民は混乱しているのでまともに動く事は出来ていない様なのでこうして救助する者が必要になる。
ちなみに破壊された施設への救出作業は瓦礫の除去などに一定以上の技能を要求されるので正規の宇宙警備隊員が向かっており、俺達訓練生は放り出された人員の救助のみを行えと言われている。
「……でも、どうしてウルトラの星がいきなり暴走したんだろう?」
「ウルトラキーが何者かに盗まれたとゾフィー様のサインには書かれていましたが、それだけで惑星一つがあんなにも動くものなのでしょうか……?」
「それは……おそらく奪われたウルトラキーを使ったんだろうな。アレを使えば惑星一つをワープ航法させる事も不可能ではないだろうし」
ある程度時間が経って冷静になったからか同じチームだったメビウスとアムールがそんな風に疑問を口に出していたので、俺は自分の知っている限りの情報から推測出来た事を口に出してしまった。
……うむむ、やっぱり俺もまだ動揺しているかな。こんな状況でわざわざ話す必要も無かったか? ……しかし、周りの視線がめっちゃ説明を求めているし、途中で止める方が士気とかに影響が出るか……。
「……あー、ウルトラキーってのはウルトラの星の運行を司っている秘宝なんだが、アレの本来の能力は『時空間を含むあらゆるエネルギーの増幅・操作』らしいからな。……それを悪用すれば惑星一つをワープ航法させられるレベルの」
親父から聞いた話だと今から26万年前にあったM78星系の太陽爆発、その時にウルトラの星が滅びの危機を迎えたのだがプラズマスパークの完成でその危機を乗り越えて、ついでになんかウルトラ族が今みたいな超人に進化した事はみんな知っていると思う。
……実はその際にウルトラの星の運行が乱れる事態になったらしく、その際に惑星の運行に必要な様々なエネルギーを制御する為の『万能エネルギー操作装置』として作られたのがウルトラキーなのである。
「ちなみに万能エネルギー制御装置だから、武器として使った場合には所有者のエネルギーを増幅・制御して大規模な破壊光線を撃つ事も出来るし、その対象を破壊した時に齎されるエネルギーを周辺に影響が出ない様に制御・消滅させる事も出来たりする。……昔、ウルトラの父が
「……逆にそれだけ万能で高エネルギーを操作出来るなら、相応の知識さえあれば惑星規模の物体をワープ航法させる事も出来てしまうと……」
まあ、今回の事件はフォルトの言った通りにウルトラキーを奪ったヤツがソレを使って行った事である可能性が高いのだろう……前から思っていたがウルトラの星ってセキュリティザル過ぎでは? 数十万年も犯罪が(とある一例を除き)起きなかったから、ウルトラ族には治安維持とかの考えが希薄だからかねぇ?
……ちなみに惑星の運行を司る様な重要アイテムなら予備ぐらい作っておけよと思うのだが、ウルトラキーはプラズマスパークを作り上げた『ウルトラの長老』と呼ばれていた科学者達が作り上げた物の一つであり、彼等自身や彼等の作った物の情報が当時の混乱で大分散逸している所為で一種のロストテクノロジーとなっているので現在の技術では複製困難らしい。
「……まあ、ウルトラキーに関しては隊長やウルトラ兄弟が奪還に向かったし、ぶっちゃけそっちで俺達が出来る事は無いから今は救出作業を頑張るしか無いさ」
「……それしか無いですかね」
「うん! 今は自分に出来る事をやろうよ!」
そうして、俺達は無駄話をさっさと切り上げて放り出された者の捜索と救出作業を続行して行くのだった。
──────◇◇◇──────
そんなこんなで他の宇宙警備隊員と協力して救出作業をただひたすらに行なっている俺達訓練生……正直、何か作業をしていないと余計な事を考えてしまい動揺してしまいそうだからね。
……また、事件の情報も色々と錯綜しており『ウルトラの星が地球に衝突しようとしている』だとか『今は亡きL77星の生き残りの王子アストラがキーを奪った』みたいな話が
「しかし、“地球に衝突する”だの“L77星の王子がキーを奪った”だの……どこまで本当なのかね」
「地球に衝突する可能性はゼロじゃないってとこかな。さっきのウルトラの星の進行方向は地球がある太陽系だったし。……まあ、その辺りは
とりあえずゴリアテが発したその疑問に俺は当たり障りの無い感じで答えていく……本当は救出作業中にこんな話をするのは良くないんだけど、どうやら俺の(適当な)解説でもみんなの精神を安定させる事が出来るみたいなんだよな。
まあ、状況が全く分からないままよりも(本当かどうかはともかく)ある程度状況が理解出来ている方が冷静になれるって事かな。
「……だが、もう一つのL77星王子の方は怪しいかな。……故郷の星が無くなって漸くウルトラの星に移住出来たのに、ワザワザそれをぶっ壊す理由は無いだろうしね。……ウルトラの星の乗っ取りとかならともかく」
「確かにそうですよね。……やはり、混乱の所為で誤情報が錯綜している様ですね」
……とはいえ、確か今はL77星の王子であるレオさんって人が負傷したセブンさんの代わりに地球を守る任務に着いていると聞いているし、ウルトラの星が地球に向かっている事も含めてそのアストラって人が無関係って訳では無さそうだけど。
……まあ、状況が錯綜している今の段階でそこまで言うのは逆効果だし、そもそも犯人が何処の誰であろうととりあえずブチのめしてウルトラキーを奪還すれば問題は解決するし大丈夫だろう。
「……おーい! アーク〜!」
「なんだ、メビウス?」
そんな事を考えていると、突然向こうに居たメビウスが俺の事を呼んで来た……一体なんの様だと思いそちらに振り返ってみると……。
「あのね!
「……久しいな、息子よ」
そこには何故か妙に興奮した様子のメビウスが、これまた何故かうちの親父である“宇宙警備隊隊長ゾフィー”を連れて来て居たのだ……いやいや、メビウスが興奮しているのは憧れのウルトラ兄弟に会えたからだと分かるんだが、なんで奪われたウルトラキーを追って行った親父がここに居るんだよ。
……それに、この“親父”にはなんか物凄〜く
「……で、“親父”がどうしてこんな所に居るんだ? 奪われたウルトラキーを追ってたんだろ?」
「この事件に巻き込まれたお前の事が心配でな。……それに奪われたウルトラキーについて気になる事があって少し調べていたんだ」
……ふーん、“息子”である俺の事が心配でねー……へー? ……正直、この親父()は色々と露骨に怪しすぎる所為で逆にどう対応していいのか分からなくなって来たな。
つーか、そもそも宇宙警備隊隊長である親父がこんな大事件の最中に単独で持ち場を離れる訳がないんだよなぁ。それにさっき聞いた『ウルトラキーを奪ったアストラ』の話を考えると……。
さーて、俺の勘だとこれはかなり面倒くさい状況になって来ている気がするんだが、本当にどうしようかな……。
あとがき・各種設定解説
アーク:勘はいい方
・流石に今回の事件では結構動揺しており、どう行動すれば良いのか迷いが生じている。
ウルトラキー:本作独自設定
・普段は第2ウルトラタワーでウルトラの星の公転・自転運動を制御している。
・定期的な惑星運行の確認作業が行われたり、万が一の時に使用する事がある所為で、第2ウルトラタワーのセキュリティは第1ウルトラタワーと比べると緩い。
何故か訓練生のところに現れたゾフィー:一体何ルウ星人なんだ……!
読了ありがとうございました。
あからさま過ぎるぐらいに怪しいゾフィー()に対してアークはどうするのか! 次回をお楽しみに。