宇宙に輝くウルトラの星   作:貴司崎

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今回は日記形式でお送りします。


アークの日記

 ◯月◯日

 

 先日、ウルトラの星が大暴走した所為で光の国にある建造物などが多大な被害を受けたので、俺が通っている士官学校もしばらくの間休校になった。

 その間は復興作業の手伝いとかもあったが、訓練をする様な場所の確保なども出来ない所為で少し暇も出来たから、ちょっと日々の活動を日記として書いてみようと思い立って今書いている所だ……三日坊主にならない事を未来の俺に祈っておこう。

 

 さて、今日はさっきも書いた通り光の国の復興作業を行ったのだが、倒壊した建物は数あれど中枢機関の被害や人的被害は予想以上に少なかった。どうやらこれはウルトラの星にはウルトラキーを使った惑星規模ワープ機能を行える事が前提の保護システムがあったかららしい。

 偶々会った技術局の人が言うには、元々ウルトラキーは大昔の太陽爆発の際にウルトラの星を惑星規模の宇宙船にして別の星系に避難する為に作られたシステムが元になっているのだと言う。そのシステム自体はプラズマスパークの完成とウルトラ族の超人化によって必要無くなったが、その後ウルトラの星の運行が乱れた為にそのシステムを改造してウルトラキーを作り星の運行を調整したという事だ。

 

 そう言う訳でウルトラの星が惑星規模のワープ航法が出来るので、その名残でいくつかの重要建造物はワープ航法前提で作られており、更にワープ航法時の住民の安全確保の為のバリアシステムとかも作られていた様だ。そして今回人的被害が少なく死人も出ていないのは、それらのシステムが不完全とはいえ機能していたからと言う訳である。

 ……これらの備えが無ければ幾らウルトラ族が超人とはいえ惑星規模のワープの余波で大量の死人が出ていただろう。そう考えるとぞっとする話である。

 

 

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 ◯月△日

 

 今日で漸くウルトラの星復興作業がひと段落ついた。まだ残っている部分も有るには有るがこれ以上は専門家の仕事になるので、俺達ボランティアの訓練生がやる事は無くなった感じだな。

 ……しかし、流石はウルトラの星の超絶科学技術、惑星規模のワープ航法なんてのがあった後でも割とあっさり復興完了しちまったい。とは言え、士官学校の再開にはまだもう少しかかるという事で俺達訓練生はしばらくの間休暇を取る事になった。

 

 そう言う訳で、俺達は復興が出来ていて士官学校の休校で使われていないウルトラコロセウムで自主訓練を行う事にした。なんでも、士官学校が休校している間は俺達みたいに訓練したい人達が使える様に解放したとの事。

 それでメンバーは何時ものメビウス・ゴリアテ・フォルトの三人……と思ったら、アムールや他の同期生も一緒に訓練をやりたいと言ってきたのだ。どうやら先日のババルウ星人との戦いで自分達の力不足を実感したらしく、もっと強くなる為にあの戦闘でまともに行動出来た俺達と一緒に訓練をしたいとの事。

 

 まあ、特に断る理由も無いし色々な人との訓練もいい経験になるだろうと思って、今日は彼等と一緒に訓練をしたんだが……何故か俺は他の訓練生に色々な技を教える羽目になってしまった。どうやら何時もの三人が『アークに技を教わったから俺達はここまで強くなれたんだよ』的な事を言った所為みたいだな。

 ……別に自主訓練である以上は技を教えるぐらいは別に良いんだけど、俺は一人しか居ないんだから一度に沢山来られても教えられないんだが。俺はマックス先輩みたいに分身とか出来ないんだから。

 

 しょうがないので同期生達に覚えたい技を聞いて、それで多くの人が覚えたいと答えた技を俺が可能な限り実演する感じでどうにか訓練を進めていく事が出来た。……うむ、これでもう誰にも俺の事をボッチのコミュ障とか言わせないぞ! 

 

 

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 □月◯日

 

 とりあえず士官学校も再開し、ウルトラの星にこれまで通りの生活が戻ってきたとある日の事。地球での任務で重傷を負ってウルトラの星で療養していたセブンさんが、L77星の王子二人──レオさんとアストラさんの兄弟を連れて俺の下を訪れたのだ。

 一体なんの様なのかと言うと、どうやら以前のババルウ星人によるウルトラの星暴走事件の時に俺の出したウルトラサインがアストラさんに変身していたババルウ星人の正体を見破る一助になった事についてお礼を言いたかったとの事。

 

 別に俺は『宇宙警備隊として当たり前の事をしただけですし礼を言われる程の事はしていませんよ』と言ったのだが、レオさん曰く危うく偽物に騙されて地球とウルトラの星を激突させてしまう所だったのだから一度ちゃんと礼を言っておきたかったんだ、と言われてしまった。

 とりあえずレオさんは何か頑固そうな気がするし、これ以上遠慮すると話がややこしくなりそうだからさっさと礼は受け取っておく事にした……王子二人にいつまでも頭を下げられると小市民な俺の精神力が削られるしね……。

 

 まあ、俺がババルウ星人の変身を見破った事を『変身自体は本物と区別が付かないレベルでしたけど、演技の方は大した事無く身内なら見分けられるぐらいでしたから、そんな礼を言われる程凄い事をした訳では無いですよ!』とか言ってしまったので、レオ兄弟がorzの体勢になり『いや、今思うとレオ兄さん連呼はおかしいと思うんだ……』『兄さんに化けた相手に騙されて氷漬けに……』などと呟くハプニングがあったりしたが。

 ……尚、あの事件の事をセブンさんに詳しく聞いた所ウルトラの星と地球の激突を防ごうと焦っていたウルトラ兄弟と、窮地の弟(偽)を見て冷静でいられなかったレオさんとの間にすれ違いがあって戦闘になってしまったとの事。お互いに殆ど初対面だった事なども理由らしいが、これを計算に入れていたのなら地球のババルウ星人は俺が戦ったヤツと違って相当な策士だったみたいだな。

 

 最終的には伝説の超人であるウルトラマンキングが現れた事と、俺のウルトラサインで誤解は解けてババルウ星人を倒したらしい……ていうかウルトラマンキングが来ていたのなら俺のサインは多分必要じゃなかったよね。親父からちょっと聞いた話だと『キーなど問題では無い!』と言ってウルトラキーをぶっ壊した(後にレオ兄弟が修復)らしいし。

 ……まあ、話に聞く限りのあの方の力なら惑星の軌道ぐらいは簡単に変えられるのだろうから、確かに(キング様視点では)ウルトラキーなど問題では無いんだろうな。

 

 その後はレオさんとセブンさんが地球にいた頃の話などを少し聞いたりもした……あの後、ウルトラの星が復興作業で動く事が出来ない間に地球に集落した円盤生物と呼ばれる者達とレオさんは激しい戦いを繰り広げたのだとか。

 何でも、その円盤生物によって地球人の防衛チームも壊滅してセブンさんも生死不明の状態でレオさんは単騎で地球を守る為に戦ったのだとか。そして長い戦いの末に円盤生物の母星を破壊して決着をつけて地球を離れたという話だそうだ。

 

 今後、彼等はウルトラの星の宇宙警備隊の一員として働きつつ、L77星が破壊された時に散り散りになって宇宙に脱出した同胞達を探していくらしい。色々と大変な事に会い続けてきた彼等が同胞と再開出来る事を祈るばかりである。

 

 

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 □月◉日

 

 今日は久しぶりに宇宙科学技術局でリバーススタイルの訓練及び研究を行った……と言っても、訓練室を借りてオートで動く計測機械がデータを取るだけという簡単なものだったが。

 ……フレアさん曰く、ウルトラの星暴走事件を受けてウルトラキーを管理する第2ウルトラタワーのセキリュティ強化とウルトラの星の運行制御及び保護システムの見直しと再開発が決定したので、技術者達はそちらに掛り切りになっているとの事。

 

 それなら事が落ち着くまで、俺は技術局を利用しない方が良いのでは? と聞いたのだが『暇は無いがそれはそれとしてデータは欲しい』というマッド達の意見でこういう形式になったのだと言う。

 ……色々言いたい事もあるが、せっかく施設を用意してくれたので使わせて貰おうと思う。途中からタロウロスが漸く治ったトレギアさんが来てくれたお陰で、データ計測もどうにかなったし。

 

 その後に少しだけトレギアさんと話をしたのだが、彼は今異なる宇宙での活動のためのアストラル粒子転化システム──現地の生命体のインナースペースにウルトラ戦士をアストラル体で定着させるデバイスを開発しているのだが、それがあまり上手くいっておらずちょっとナーバスになっていたらしい……別にタロウさんが戻ってこなかっただけで落ち込んでいた訳では無いとの事。

 何でもバット星人襲来から始まり、ヒカリさんの休職やウルトラの星の暴走事件によるゴタゴタで技術局もいっぱいいっぱいらしくトレギアさんの研究に使う予算の認可が降りなかった様だ。

 更に研究に必要な人間とウルトラマンの融合に関するデータを持っているウルトラ兄弟はウルトラの星で起きた数々の事件から派生した宇宙での事件解決で忙しく、彼の研究の為にデータを利用する許可が降りなかった事も認可が降りない理由になっているんだとか。

 

 俺の訓練に付き合ってくれているのも、リバーススタイルの環境適応能力が自分の研究に応用出来ないか期待しているからでもあるようだ……まあ、これまでのデータからだと彼の研究のそれとは方向性が違う能力の様だが。

 それでも訓練に付き合ってくれている事には感謝しているので、愚痴を聞くぐらいは別に構わないだろう……例えタロウさんが地球から帰って来ない事への文句を5時間に渡って語り続ける事でも。

 

 

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 △月◯日

 

 ウルトラの星の復興も完全に終わり元通りの生活が戻って来て暫く経った頃。今日の士官学校でメビウスが地球に派遣される事になった一期上の80先輩について何か詳しい話を知らないかと聞いて来た。

 ついでにその話を聞きつけた同期生達も話を聞く態勢になった……どうも彼等の間では俺に聞けば何か知ってるだろう的な雰囲気になってるんだよな。まあ知ってるんだけど。

 

 事の発端は宇宙科学技術局で開発された『マイナスエネルギー探知装置』によって地球圏に大量のマイナスエネルギーが存在しているのが分かった事である……うん、また地球かよって俺も思った。

 まあ、あれだけの怪獣出現・宇宙人襲来による事件や戦闘が起きたんだから、それ相応のマイナスエネルギーが溜まっていたとしても別におかしくは無いだろうけどさぁ。

 

 ……とは言え、今はウルトラの星暴走事件をチャンスと見て犯罪を起こそうとしている者達が宇宙中にいる為、ウルトラ兄弟などの精鋭達はそれらの対処で忙しく地球に行く事が出来ない状況。それ故に手の空いている若手の中でもトップクラスの腕前を持つ80先輩が選ばれたそうだ。

 尚、他に若手のエースとしてはマックス先輩やゼノン先輩などもいるのだが、二人は文明監視員志望だった事と80先輩は独自にマイナスエネルギーについての研究をしていた事などから彼が地球派遣要員に選ばれた理由の様だな。

 更に地球での任務を無事にこなせば、新たにウルトラ兄弟の一員として認められるという話もあるらしい。まあ、宇宙でもトップクラスの魔境である地球で長期間の任務が出来るようになればそれだけの能力があると認められるんだろうな。

 

 ……と、そんな感じの話をしたら、周りはメビウスを中心に『地球に派遣されればウルトラ兄弟の一員になれる』という話で持ちきりだった。

 しかし、地球に派遣されるからウルトラ兄弟に認められるんじゃ無くて、魔境である地球での任務に選ばれるだけの実力があり実際に地球で任務を達成するからこそウルトラ兄弟に選ばれるんだと俺は思うがな。

 

 

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 △月◇日

 

 今日はワープ移動を行う為の技術である『トゥウィンクルウェイ』の訓練を行った。この技はワームホールを開いてその中を移動するワープ航法技術の一つで俺達ウルトラ族が惑星間の長距離移動を行う際に使用する最もポピュラーな方法である為、ウルトラの星では宇宙警備隊など惑星間の移動が必要な職種では必須技術とされているのだ。

 まあ、他にもテレポーテーションとかでも移動出来ない事は無いが、これは難易度が高く使い慣れない者が使えば寿命を縮める事もあるのであまり推奨されていない。

 

 そういった汎用的な技術だけあって習得自体は簡単ではあるし、実際ブラックゲートとかで空間に穴を開ける事に慣れている俺はあっさりと習得出来たのだが、むしろ大変だったのは宇宙地理などの知識面の方だったりする。

 ……まあ、コンピュータ制御すれば良い宇宙船での移動とは違い、自力でやる必要がある俺達のワープ移動は移動先の知識とかその他諸々の知識を覚えなければならないからな。一応、体系化されてるから覚えやすいし、それらを補助するデバイスとかもあるからワープ移動を行うだけなら(ウルトラ族的には)特に問題にはならないんだが。

 

 なら宇宙船使った方がいいんじゃね? とも思うかもしれないが、ウルトラ族が自力でのワープ移動が出来る所為でウルトラの星の宇宙船技術は殆ど廃れているんだよね。ウルトラ族の巨体で使えるヤツを作るとコストが掛かるし、人化や縮小化の技術を使うにもある程度の修行が必要だしな。

 宇宙船の技術を応用してエネルギー状の球体で自分を包んで省エネ移動を行うシステムとかもあるし、そういった諸々で宇宙船技術完全に廃れているのである。これが種族的に生身での惑星間航行が出来ない所ではワープ移動用の足として宇宙船技術が必要になってくるし、生身で宇宙空間に出られない種族なら言うまでもなく必要なのだが、ウルトラ族は両方を十分以上に満たしていたので廃れていったそうな。

 

 実際にウルトラの星で作られた最後の大型宇宙船とか、プラズマスパークが作られる前に死の星に成りかけていたウルトラの星からの脱出・移民用に作られた宇宙船まで遡る必要があるしな。当時は太陽爆発によってウルトラの星は滅びる寸前だったから、それをどうにか覆す為に星全体でプラズマスパーク開発を始めとしたいくつもの計画が並行して進められていたらしいからな。

 だが結局、その宇宙船はプラズマスパーク完成とウルトラ族の超人化によって使われる事が無くなり、今は宇宙科学技術局の一角にある古物の資料館に保管されているのだとか……名前は確か『ヱクセリオン』とか言ったっけな、もっと長い正式名称があった気もするが俺も詳しくは知らん。




あとがき・各種設定解説

アーク:日記を書き始める事にした

レオ兄弟:肉親の偽者を普通に見破っている人がいて大ショック
・尚、ショックを受けたのはウルトラ兄弟も同じ模様で、現在任務に明け暮れているのは自分達を鍛え直す意味もあるとか。
・この作品ではL77星崩壊時に脱出出来たのは彼等だけでは無い設定で、脱出出来た少数のL77星人は現在宇宙中に散り散りになって連絡不可能な状態。

トレギア:タロウロスからどうにか立ち上がった
・だが、自分の研究に中々認可が下りない事に燻っている。
・ちなみにマッド達は能力自体は優秀な事と長い時間技術局に勤めているので世渡りや伝手が多く、それによって予算を都合したりしている。
・トレギアの場合は性格的にそう言った事に向いていないのも認可が下りない理由の一つ。


読了ありがとうございました。
日記形式は如何でしたでしょうか、意見・感想をお待ちしております。

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