宇宙に輝くウルトラの星   作:貴司崎

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※この話ではウルトラシリーズでも問題のある有名な話について主人公が独自の意見を言います。不快に思われる方もいるかもしれませんがご了承下さい。


アーカイブでの問答(前編)

 今日は士官学校が休みで宇宙科学技術局の方も忙しいそうなので、久しぶりにアーカイブに行って資料を漁る事にした……ちなみに『アーカイブ』とはウルトラの星が入手した様々な情報が集積されている施設の事で、まあ分かりやすく言うと図書館とかそんな感じの施設である。

 ……俺が毎回色んな事を解説出来ているのは親父達から話を聞いただけでなく、ここで色々な情報を検索しているからでもあるんだよな。

 

「しかし、ここに来るのも随分と久しぶりだな。……昔は暇つぶしに通ってたんだが、最近は事件と訓練ばかりだったしな……」

 

 俺はこの手の歴史資料とか設定集を読むのが好きな方なので、昔から暇な時にはこのアーカイブに通っていたのである……ここで知識を身につける為とか言っておけば親父も訓練を休みにしてくれる事もあったし。

 ……いや別に修行ばかりで遊びすらさせて貰えなかったとかじゃ無いんだがな、昔はメビウスと一緒に遊んだ事もあったし。ただウルトラの星ってあんまり娯楽に関しては発達してないから、俺の食指には合わなかったんだよ。

 同じM78星雲にあって娯楽文化が発達している『TOY一番星』から輸入したゲームやオモチャは面白かったんだが値段が高いし、光の国製の娯楽は安いんだけど出来がちょっとな。娯楽に関しては技術レベルが高ければ良いってものじゃないし、どっちかというと開発者のセンスが重要なんだよ。

 

「やっぱりウルトラ族の情動が薄めなのが原因なのかね? 光さえあれば食事・睡眠は余り必要無いし、寿命も長くて死ぬ事も少ないから性欲の方も……んん?」

 

 そんな考え事をしながら歩いていると向こうの角から聞き覚えのある声が聞こえて来た……気になったのでそちらに向かってみると、そこでは俺にとっても馴染み深い()()()()()が何か話し込んでいるところだった。

 

「……トレギア、地球は良いところだぞ。彼等地球人はこのウルトラの星に無くなってしまったモノを思い出させてくれる」

「タロウ、その話は何度も聞いたが、未だに同族同士で争いを続けている様な惑星の住民に一体何を……ん?」

 

 そう、何か話し込んでいたのは先日から士官学校の教官に就任して俺達を(スパルタ的な指導で)鍛えてくれているタロウさんと、宇宙科学技術局でお世話になっているトレギアさんだったのだ……実はトレギアさんもよくアーカイブを利用しているので、ここで俺と顔を合わせたり少し話をしたりする事もあったりする。

 ……そして、どうやらトレギアさんの方が近づいてきて俺に気が付いた様なので、俺はとりあえず近づいて挨拶をする事にした。

 

「トレギアさん、タロウさんこんにちは。お二人もアーカイブを利用しているんですか?」

「ああ、アーク君久しぶりだね。……今日は以前から研究していた発明がようやく完成してちょっと時間が空いたからね、久しぶりにここへ来てみたんだよ。……タロウはそれを聞いて興味を持ったからついて来た形だね」

「久しいなアーク。休日にもアーカイブに来て知識を深めようとするとは感心だな。……まあ、私もトレギアがここに来ると聞いて、教官としてもっと知識を得ようと思って付いて来た訳だが」

 

 ほーん、成る程そういう理由があったのか……まあ、この二人は親友同士らしいし休日を一緒に過ごしている事もあるよね。

 

「そう言えばトレギアさん、なんか発明が完成したって言ってましたけど、それって以前に聞いた『アストラル粒子変換技術』の事ですか?」

「ああ、そうだよ。……タロウが協力してくれたお陰で外宇宙で活動した経験のある戦士のデータはどうにかなったからね。ようやく研究に必要な予算を下ろす許可とかも上層部から降りて、ようやく完成に漕ぎ着けたのさ」

「うむ、トレギアが開発したアイテム──『タイガスパーク』はウルトラ戦士と地球人の絆を象徴する様な実に素晴らしい物だったからな。これは是非協力しなければならないと思ったのだ」

「それは良かったですね」

 

 トレギアさんが最近ちょっとナーバスになっていたみたいだから心配だったんだけど、親友のタロウさんが帰って来たのだし研究も軌道に乗ったみたいだから大丈夫そうかな……と思ったら、トレギアさんは何故かちょっと不満そうな顔をしていた。

 ふむ、さっきこの二人は地球の話をしていたみたいだし……ははん、さてはトレギアさんタロウさんが中々地球から帰って来なかった事をまだ拗ねているな(推測)

 ……とか考えていたら、何を思ったのかトレギアさんが顔を上げて俺の方を見ながらこう言った。

 

「そうだアーク君……君は地球と地球人についてどう思う?」

「地球と地球人……ですか? 何故そんな質問を?」

「ああ……君も聞いていたかもしれないが、さっき私とタロウは地球の事について話していてね。それでちょっと考えが食い違っていたから第三者の意見も聞いてみたいと思ったのさ」

 

 彼等に詳しく聞くとタロウさんは何を壊され何度倒れても立ち上がる地球人の素晴らしさを語り、それに対してトレギアさんはアーカイブで知った戦争や犯罪を繰り返す地球人の愚かさをを語ったので、その事で軽い言い合いみたいになっていたらしい。

 ……だが、俺に話しかけられた事でヒートアップ仕掛けていた言い合いも収まったので、互いに頭を冷やす意味もあって俺の話を聞いてみたくなったとの事。

 

「……しかし、俺は地球の事を伝聞でしか知らないですよ」

「いや、それで良いんだ。……出来る限り客観的な意見を聞いて頭を冷やしたいのさ」

「俺もトレギアも、良くも悪くも地球や地球人について……こう言ってはなんだが“偏見”の様な物を持ってしまっている様だからな。それで少し言い争いになってしまったし、折角の研究が始まる前に仲違いはしたくない。……頼めるだろうか?」

 

 ……まあ、この二人には色々と世話になっているし、色々なにわか知識をひけらかすのは割と何時もの事だから構わないんだけどね。

 

「……ですがさっきも言った通り俺の地球や地球人に対しての知識は伝聞によるものですし、俺の意見である以上は俺の主観と偏見が入りますけど」

「そのくらいは私もタロウも理解しているよ。要は第三者の意見をちょっと聞いてみようって提案だからね。余り肩苦しくしなくて良いよ」

「分かりました。……では、俺の地球や地球人に対する印象は控えめに言って物凄く頑張っていると思いますよ。何せウルトラ兄弟ですら何度も死にかける様な魔境で生存圏を確保しているんですから」

 

 俺がそんな事を言ったら予想外の発言だったのか目の前の二人はポカンとした表情になった……いやだって、地球や地球人って普通の文明黎明期の惑星なら、ウルトラ兄弟の助けがあっても余裕で滅びそうなレベルの怪獣や宇宙人が次々と来襲しても惑星に生存権を確保してるからね。控えめに言って物凄い偉業だと思うんだよ。

 

「……じゃあ、地球人が同族同士で争っている事に関してはどう思っているのかな?」

「いや、文明黎明期の惑星で同族同士の争いが起きるのはごく普通の事でしょう? それに核兵器を開発した時点での惑星規模の戦争で滅びていない以上、宇宙全体から見れば地球はちゃんとやってる部類ですよ。……争い自体が十万年以上もまともに無かった、宇宙規模で言えば()()に分類されるウルトラの星を基準にしてはいけません」

 

 実際、文明黎明期の惑星って核兵器を開発した時点で使い方を誤って、住んでいる惑星を死の星にして滅びる事がこの宇宙では結構ザラだからね。ちゃんと文明を築けているだけでも良くやっている部類に入るでしょ。

 そう考えると核兵器で滅びる前に大きな戦争を辞めた地球人はかなりマシな部類である。バルタン星人とか宇宙に文明の枠を広げた所だって滅ぶ事があるぐらいには核関係の技術は危険性が高いし。

 ……まあ、核関連の技術を使いこなさないと文明レベル的にその先の宇宙進出がし難くなるから、この辺りは産みの苦しみってやつなのかな。

 

「……それじゃあ、アーカイブに載っていた地球人が原因で起きたいくつかの事件はどう思う?」

「ん? …………へー、怪獣頻出期とか言われる程の動乱があったのに、地球人やらかした事件は()()()()()()んですね。地球って結構治安良いんですね」

「……それだけか?」

 

 タロウ教官が【ギエロン星獣】や【メイツ星人】とかの事件の資料を見た俺の言葉に対してそう聞いて来たが、実際宇宙に出る以前の文明圏の外惑星との付き合い方としては“まだ”上手くやっている方でしょうよ。

 ……まあ、兵器の試射という理由でギエロン星を破壊した事に関しては決して褒められた事ではないし、その後も似たような実験を続けている事は問題ではあるんだがな。

 

「とは言え、地球の“事情”を考えると兵器開発はむしろ必須だし、ここまで侵略が頻発していれば惑星破壊レベルの兵器が必要になると考えるのも理解出来なくはないですかね。……例え血を吐きながら続ける悲しいマラソンだとしても、足を止めたら食い殺されると言うのが当時の地球の状況ですし」

「「…………」」

 

 ただ、そうして進んだ先で血を吐かずに前に進める方法を見つけ出せるか、或いはそのまま出血多量で死ぬかは彼等次第なんですけどね……宇宙では他人の生き血を啜ってでも走る続ける連中も居たりするから、地球と地球人がそうなってしまったら宇宙警備隊として“対処”する必要があるでしょうけど。

 ……まあ、流石に侵略してくる可能性のある有人惑星を無差別攻撃するとかになったら宇宙警備隊として動く必要があるだろうが、今の段階でなら温かく見守っていく段階でしょう

 それに資料を見るとやらかしたのは地球全体ではなくその一部勢力で、しかも有人惑星(と分かっている所)を狙わない程度の理性は残っている様だし。更にそれらの無作為な兵器実験は地球内でちゃんと問題視されていて、怪獣頻出期が終わった事もあって急速に兵器開発は縮小の方向に向いている様だし、ちゃんと惑星規模での自浄作用は働いているみたいだしな。

 

「それと【メイツ星人】の事件の方ですけど、そもそも他の宇宙文明との交流がない文明黎明期の惑星に無断侵入した時点で現地民に敵対判定されるのが普通でしょう。特に宇宙人による侵略が多発していた地球ではね。……そのぐらいの情報は恒星間航行可能な文明を持つメイツ星なら事前に入手出来たと思うんだが、なんで地球に無断侵入したんでしょうか」

 

 資料には“地球の環境調査の為”と書かれているけど、当時の地球を取り巻く状況からすると宇宙人が地球に無断で降りた時点で排除するべきだと言う考えに地球人全体がなっていても不思議ではないだろう……友好的な理由だろうが無断侵入した時点で殺されても文句は言えないぐらいに。

 ……地上に降りずに宇宙から環境を測定してそのまま帰るんじゃダメだったのかな? 一般的な未開惑星の環境調査ならそんな感じだった筈だし、地上での直接測定はその測定で危険性とかを判断してから行うのが普通じゃなかったか?

 

「ウルトラの星でも『文明監視員』や『宇宙保安庁』の人間はそう言う未開惑星の調査の為に無断侵入するグレーゾーンな任務もありますが、その場合はそこで何がおきても自己責任でありその惑星には罪を問わないと決められてますし。……例えば任務で来たジャックさん以降はともかく、無許可で戦っていた時期があるウルトラマンさんやセブンさんがその時に侵略宇宙人と誤認されて地球人に殺されたとしても…悪いのは無許可で戦った二人だとしてウルトラの星では処理されたでしょう」

「……確かに、宇宙警備隊の規則上はそうなるだろうな。……それに、私を含むジャック兄さん以降のウルトラ兄弟が地球で戦う事を地球人に“黙認”されたのは、そんなリスクすら飲み込んだ彼等二人が命を賭けて地球の為に戦って『ウルトラマンは地球人の敵では無い』と証明し続けたからだ……と言う一面もある」

 

 逆に言えばそこまでしなければ、地球の様な未開惑星で宇宙人が行動を黙認される事は殆ど無いって事でもある……そう言った場所での任務では現地の住民の見返りは求めるな、とも士官学校では習ったし。

 ……むしろウルトラマンが受け入れられている地球はだいぶマシな方だろう。

 

「……資料にはこの【メイツ星人】は汚染された地球の環境汚染に蝕まれながらも怪獣を封印し続けていたが、ただ宇宙人だからという理由で暴徒となった現地の警官に射殺されたと書かれているが……」

「それに関しては確かに地球人の方にも非がないとは言えませんが、銀河連邦にも加盟しておらず宇宙への本格進出もしていない惑星で起きた事件は基本的にその惑星の法で裁かれる事になってますから、地球に『宇宙人を殺したら罪になる』法がない以上は罪には問えないでしょう。……“宇宙警備隊員としては”そう判断せざるを得ないですね」

「……それならアーク、()()()はこの事件を聞いてどう思ったんだ?」

 

 そこまで語った所でタロウさんが真剣な表情でこちらを見ながら問いただして来た……中々難しい事を聞くなぁ。別に俺だって今までの意見はただ機械的に正しい()()のモノだって事は分かっているんだけどさ……。

 ……こういう思考が真っ先に出て来るから、俺は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()んだろうな。

 

「正直言うとこの資料の情報が断片的過ぎて“機械的に正しい意見”しか言えないです。……この【メイツ星人】はどうして肉体が汚染されるのに怪獣を封じ続けていたんですか? と言うか、肉体が汚染された時点で宇宙船で地球から離れるべきだったのでは?」

「……ジャック兄さんからは念力を使って地中に宇宙船を埋めていたらしいんだが、とある地球人の少年を怪獣から助ける為にその怪獣を封印したらしい。だが、天涯孤独だったその少年の面倒を見る為に地球に長時間滞在した事による汚染で、地中に埋めた宇宙船を掘り出す事が出来ないぐらいに消耗してしまったと聞いている」

 

 ……ああ、成る程ね。……タロウさんの言葉を前提に資料をもう少し読み込んでみると分かるが、随分と()()()()()()()事件だったみたいだな。多分、原因は()()()()()()()()()()()()()()って所みたいだし、その辺りの考えを俺なりにまとめて二人に話してみるか。

 ……俺のその考えを聞いて“ウルトラマン”であるタロウさんがどう答えるのかも気になるし……。




あとがき・各種設定解説

アーク:TOY一番星の製品のファン
・彼の考え方について分かりやすく言うとウルトラの星の殆どのウルトラ族は『秩序・善』なのに対して、アークは『中立・中庸』なイメージ。
・本人的にはそんな考えしか出来ない自分について悩んでおり、アーカイブなどで様々な知識を得るのもその悩みを解決する為の答えを探しているからでもある。
・この問答では今まで狂言回し的だったアークの内面について少し触れる予定です。

タロウ:一般的なウルトラ族なので『秩序・善』
・アークの意見に対しては一理あると思っているが、客観的すぎる意見だったので彼自身の考えをもっと詳しく知りたいと考えている。

トレギア:まだ綺麗な時期なのでイメージ的には『混沌・善』
・『タイガスパーク』は一応完成したが、まだ量産性などに改良点は残っている模様。
・今は形の無いエネルギーである光と闇について色々と考えている時期。
・アークに意見を聞いたのは、以前から光では無い力を持つ彼ならば光の国には無い『闇』についての明確な考えを持っているのではないかと思っていたので、その意見を聞いてみたいと思ったからでもある。


読了ありがとうございました。
なんか最近UA数とお気に入りに登録数がめっちゃ増えてたと思ったら日刊ランキングに乗っていたらしい。
最近は推薦も書いてもらったし……本当に応援ありがとうございます。

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