宇宙に輝くウルトラの星   作:貴司崎

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格闘訓練とウルトラ兄弟

 今日も今日とて、この俺アークは光の国の士官学校で宇宙警備隊になる為の訓練を積んでいた。ちなみに今日の訓練は近接格闘用の訓練場で、同期生の誰かと二人一組になって格闘の模擬戦をやっている。

 ……これでも、俺は親父を始めとするウルトラ兄弟総がかりで鍛えられているので、格闘戦にもそれなりに自信があるんだが……。

 

「ゼアァァッ!!!」

「グゥッ⁉︎」

 

 俺はゴリアテが繰り出して来た右ストレートを交差させた腕で受け止めたものの、相手のパワーに押されて後ろに吹き飛んでしまった……そう、今回俺の模擬戦の相手は光の国ジュニア格闘大会チャンピオンのゴリアテなのである。

 ……と言っても、お互いに格闘戦の実力が他の同期生と比べて頭一つぐらい頭抜けているので、こういう訓練の際にはよく組まされるんだが。

 

「オラァッ!!!」

「チッ!」

 

 後ろに下がった俺に対してゴリアテはこちらに力強く踏み込んで追撃の左パンチを見舞って来たが、俺は身を屈める事でその拳を躱しつつヤツの直ぐ横を通り過ぎてその背後に回った……体格に差がある所為で単純なパワー比べでは部が悪いが、逆に言えば体格差のお陰でスピードと小回りはこちらに分があるからな。

 ……さて、これも勝負だからな、背後を取った利は全力で活かさせてもらう! 

 

「シュワッ! シャオラァッ!!!」

「グッ! 体勢が……ヌワァァァ⁉︎」

 

 まずは全力のローキックをゴリアテの片足に払って体勢を崩し、更にそのまま懐に潜り込んで体勢が崩れている最中のヤツを投げ飛ばして地面に叩きつけた……そして、ここからがウルトラ兄弟より学んだ技を見せる時だ!

 ……まずは、地面に倒れたゴリアテの上に馬乗りになり……。

 

「テェーイ! ジュアッ! シェアァ!」

「おい、待て……グベェ⁉︎」

 

 その体勢を維持したままゴリアテの顔面に向けて連続パンチとチョップを叩き込む! これこそがウルトラ兄弟から伝授された、自身より巨大でパワーも強い怪獣用のコンボ攻撃だぁ! オラオラオラオラオラオラァ!!!

 

「グブッ! グベッ! ゴバッ! ……良い加減にしろやァァ!!!」

「ヌオォッ⁉︎」

 

 と、そうやって一方的に攻撃を加えていたのだが、何とゴリアテは全身のバネを活かして倒れた体勢のまま跳ね飛び、馬乗りになっていた俺を弾き飛ばしたのだ。

 ……そうやって弾き飛ばされた俺は、ゴリアテの追撃を計画して即座に距離を取った。

 

「しかし、流石だなゴリアテ。あの体勢から肉体のバネだけで俺を弾き飛ばす程のパワーを叩き出すとは。ただ力が強いだけでなく、相応の技術を持っていなければこうはならないだろう」

「うるせぇ! このアホ! お前の戦い方はダーティー過ぎるんだよ!」

 

 ムゥ、俺はゴリアテの事を褒めたのに何故か罵倒された……解せぬ。

 

「一応、馬乗りからの連続殴打はウルトラ兄弟みんなが使う戦法なんだが。それに、この格闘訓練では基本的に何でもありだった筈だ」

「……とりあえず、これは模擬戦なんだから使うのは投げ技か関節技ぐらいに自重しておけ。……周りの見る目が酷い」

 

 そう言われて周りを見てみると、そこにはこちらに畏怖の視線を向ける同期生の姿が……その顔は何だ⁉︎ その目は何だ⁉︎ その涙は何だ⁉︎ そんな事で怪獣が倒せるのか⁉︎ 一人前の宇宙警備隊員になれるのクヮァッ⁉︎ (ヤケ)

 

「カラレス教官、あの馬乗り戦法がウルトラ兄弟直伝の技っていうのは本当なんですか?」

「まあ、一応怪獣の動きを封じてダメージを与えられるから、周囲に被害を出したくない状況でなら有用な手段ではあるから使う事もあるだろう」

「見栄えはともかく、条件次第では有効な手段なんでしょう……見栄えはともかく」

 

 すぐ近くでは先に模擬戦を終えたメビウスとフォルトがカラレス教官に質問をしており、それに対して教官も有用な戦術だと認めているしな。後、フォルトは何で二回言った。側から見たらそんなに酷かったか? 

 

「もし宇宙警備隊になった時、そういった泥臭い戦術を駆使しなければならない場面が訪れるかもしれないのだから、訓練生である今のうちに慣れておく事も必要だと思うんだ」

「……まあ、お前が言っている事も間違いでは無いんだろうがなぁ。……とりあえず、俺以外に使うのは辞めとけ。お前、抵抗出来ない相手もただひたすらに殴り続けるから超怖いんだよ」

 

 むう、これが今問題になっているゆとり教育というやつか? 仕方ない……。

 

「ハァ……なら訓練の一環としてセブンさんから習った宇宙拳法主体で行くか。お前相手なら良い訓練になるだろう」

「そうそう、しばらくは普通に戦っとけや」

 

 先日のスペシウム光線の一件で同期生の俺を見る目がちょっとアレだからな。しょうがないから多少は縛りを入れて戦うとしますか。

 

 

 ──────◇◇◇──────

 

 

 そうして、今は授業の間にある昼休み。俺はゴリアテ、フォルト、メビウスと一緒に教室で駄弁っていた。

 フラリと教室から出て行くのではなく、こうして自分達と普通に喋っていれば同期生が貴方を見る目も少しは改善されるでしょう……というフォルトの提案があったしな。

 

「そう言えば、ウルトラ兄弟の一人であるジャックさんが地球に派遣されるって聞いたんだけど、アークは何か詳しい事情は知らないのかい?」

「確かに最近はそんな話をよく聞きますね。……ウルトラマンさん、セブンさんに続いてジャックさんまで派遣されるとは、地球という星には何かあるのでしょうか?」

「でもよ、地球って銀河連邦にも加入していない辺境にある未開の惑星だろ? そんなところに何かがあるのかね?」

 

 俺達が適当に話をしている中でメビウスがウルトラ兄弟の話題を出してきた……コイツはウルトラ兄弟の大ファンだからな、昔家に連れて行って親父と合わせた時には物凄い興奮して大変だったし。

 ……まあ、その話題ならちょうどこの前親父に少し事情を聞いたし、少し話しても良いだろう。

 

「まず、フォルトの持っている情報には少し間違いがあるな……マンさんとセブンさんは宇宙警備隊の任務で地球に派遣された訳じゃないからな」

「そうなんですか? あのお二人は地球で多くの怪獣・宇宙人と戦ったと言う話をよく聞きますが」

「うむ、親父から聞いた話だとマンさんは凶悪な宇宙怪獣ベムラーが宇宙の墓場までの護送中に地球へと逃亡して、その際に人身事故を起こして地球人の一人を死なせてしまったんだよな。それで、その人の命を助ける為に融合したから地球に留まらざるを得なかったんだよ」

「それは大問題じゃないのか? ……と言うか、その話をしても大丈夫なのか?」

 

 ゴリアテがそう小声で聞いて来たが別に大丈夫だぞ……そもそも、宇宙警備隊は失態を隠蔽する様な黒い組織じゃないし、そもそも秘匿しなければならない情報を親父が俺に教える筈がないしな。

 もちろん、マンさんが起こした人身事故は大問題になっており、彼は今現在に至るまで宇宙警備隊の任務を外されて謹慎状態にある……まあ、地球で多くの怪獣・宇宙人を倒した功績もあるし、その地球人も親父が助けたから、今の謹慎は地球で負った怪我を癒すための療養も兼ねている殆どポーズみたいなもんだが。

 

「そして、セブンさんは恒点観測員としての仕事の最中に宇宙人の地球への侵略計画を見つけ、それを阻止する為に地球に降りてその宇宙人と戦ったんだ。……だが、そこから多数の宇宙人や怪獣が現れる様になった所為で、そのままやむをえず地球で戦い続けたという事になっている」

「……なんか、地球という一つの惑星に物凄く怪獣や宇宙人が出すぎじゃないですか?」

 

 うむ、良いところに気がついたじゃないかフォルト。そこが今回ジャックさんが地球に派遣される事になった最大の理由なのだよ。

 

「その通りだフォルト。マンさんやセブンさんが地球にいた時には、多い時だと週に一度くらいのペースで怪獣・宇宙人が出現していたらしいからな。……しかも、それらの怪獣・宇宙人は個々の実力も二人を苦戦させる程で、時には二人を敗退させる程の力を持つものすら現れたらしい」

「ウルトラ兄弟が負けたの⁉︎」

「ああ、マンさんは()()()()()に殺されかけて、親父が救援に行かなければ死んでいたし、セブンさんも宇宙人に捕まって張り付けにされたり、更に光の国への帰還直前には過労死寸前までになる程のダメージを負っていたらしいからな」

 

 そう、光の国の宇宙警備隊の中でも最精鋭であるあの二人ですらこうなる程に、地球という惑星は宇宙全体から見てもあり得ない程の危険度を持つ魔境なのだ。

 ちなみに、そんな魔境に住む地球人はマンさんを倒した程の怪獣を一撃で爆散させる武器を持っていたり、セブンさんを張り付けにした宇宙人を掻い潜って彼を救い出したりしていたらしい……地球人マジパない、戦闘民族か何かかな?

 ……正直、地球が未開の惑星って欺瞞情報か何かなんじゃ……。

 

「成る程、つまりそこまで危険度の高い惑星だからこそ、ウルトラ兄弟クラスの精鋭を送り込む必要があるという訳ですか」

「そういう事だ。地球は宇宙全体から見てもトップクラスに危険な魔境だからな。そんな惑星に並みの警備隊員を送り込んでも無駄死にさせるだけだろうという判断らしい。……加えて、『ウルトラ兄弟を殺しかける程の()()が地球にはある』という話が宇宙中に広がったから、多くの宇宙人が地球に目をつけ始めたからな」

「地球が狙われる責任の一端が光の国にある以上、警備隊員を派遣しない訳にもいかないって事か……」

「………………」

 

 む? さっきからメビウスが黙ったまんまだな……憧れのウルトラ兄弟が人身事故を起こしたと聞いてショックでも受けたか? 

 

「あー、メビウス。ウルトラ兄弟だって神じゃないから間違いぐらいは犯す事もあるさ。……うちの親父だって最近は仕事にかかりっきりでまともに家に帰ってこないしな「よし! 僕ももっと頑張らないと!」オワァッ⁉︎」

 

 なんか、いきなりメビウスが立ち上がって叫び出したんだが……とりあえず周りの同期生がコッチを見ているから座りなさい。

 ……それで、どうにかメビウスを落ち着かせた俺達は、一先ずコイツの話を聞く事にした。

 

「それで? いきなり叫び出してなんなんだ?」

「うん、それはゴメンね。……宇宙警備隊の任務ではあのウルトラ兄弟でも窮地に陥る事があるって知って、もっと訓練を頑張らないといけないと思ったんだ」

「そうか……俺はてっきりウルトラ兄弟の敗北とか聞いてショックを受けたのだと」

「ショックを受けていないと言ったら嘘になるけど……彼等ウルトラ兄弟はそんな事があっても決して挫けずに地球を守り抜いたんだから、それ以上に尊敬の気持ちが強いよ。だからこそ、彼等に追いつく為にはもっと頑張らないといけないって思ったし」

 

 ……コイツは昔からズバリと物事の本質を捉える事があるからなぁ……。まったく。

 

「確かにメビウスの言う通りだな。……俺達はまだ未熟な訓練生なんだから、今は自分を磨く事に集中するべきだろう。彼等の様に決して諦めず守るべきものを守れる様になる為に」

「そうですね。……いつか、あの偉大なるウルトラ兄弟に追いつく為に」

「やれやれ、メビウスに教えられるとは俺も焼きが回ったぜ」

「うん! 一緒に頑張ろうね!」

 

 こうして俺達は改めて宇宙警備隊を目指して努力する事を誓ったのだった。

 

 

 ──────◇◇◇──────

 

 

「ただいま〜」

 

 あれから、今日の訓練を終えた俺はそのまま自宅に帰ってきていた……士官学校用の寮もあるのだが俺は親父と一緒に宇宙警備隊本部のある場所の近くに住んでいる為、本部と隣接している士官学校に通う分には問題無いから寮には入っていない。

 ……そして、今日は珍しく帰って来た俺に対して返事があった。

 

「おうアークか、お帰り」

「親父、帰って来てたのか。こんなに早く帰って来るなんて珍しいな」

 

 返事を返したのはリビングの椅子に座っている宇宙警備隊隊長こと、俺の親父ゾフィーだった。隊長に就任してからは殆ど家に帰って来る事がないぐらい忙しいと言う話だったのだが、今日は珍しく早めに帰って来たらしい。

 

「ジャックの地球派遣に伴う各種手続きも終わって仕事がひと段落したからな。……本当はまだ仕事があったんだが、同僚達に『いい加減に仕事し過ぎだから一旦帰れ』と言われてしまってな」

「ちゃんと休みぐらいは取れよ親父」

 

 親父は真面目だからな〜。大方、隊長に就任した事による責任感から必要以上に仕事をしてしまい同僚に心配されたんだろう。

 ……とりあえず、疲れたので俺もリビングにある椅子に座ったら親父が話しかけて来た。

 

「それで、士官学校では上手くやっているか?」

「それなりにね〜。成績に関しては同期でもトップクラスだと思うし、同じクラスのメビウス達とも仲良くしてるし」

 

 え? 他の同期生? ……き、嫌われてはいない筈だし!

 ……それはともかく、その事を聞いた親父は深く頷いて言った。

 

「そうか、流石は俺の息子だな」

「まあ、昔からあれだけ扱かれてますからね。……そっちは隊長の仕事とかどうなの?」

「前任のウルトラの父や同僚達の助けもあって何とかやっているさ。……ところでアーク、()()()()()についてだが……」

 

 そんな感じで俺と親父が和やかな会話をしていると、突然親父が雰囲気を変えた……まあ、俺の“あのチカラ”についての話っぽいし、しょうがないかな。

 

「大丈夫大丈夫、()()はちゃんと言いつけ通り訓練では封印しているからさ」

「それなら良いんだが……済まんな、こちらの都合でお前を縛りつけてしまう」

「まあ、あんまり見栄えの良いチカラじゃないからしょうがないさ。……俺もあの“チカラ”を人前で積極的に使いたい訳じゃないし」

 

 あの“チカラ”はこの光の国ではイメージかなり悪いだろうからなぁ、流石の俺でも大っぴらに使うのは自重するさ……その割には光線技と格闘技では自重して無い? ……光線技と格闘技は宇宙警備隊で使う技術の延長線上にあるものだし(震え声)。

 

「そうか。……ところで、今度の休みには宇宙科学技術局に行ってもらう事になっているが覚えているか?」

「覚えてる覚えてる。ちゃんとその日には予定を空けているよ」

 

 今までも何度か俺の“あのチカラ”の事を調べる為に宇宙科学技術局には行ってるからな、今更聞かれなくても大丈夫だよ。

 

「その時にお前の士官学校の教官であるカラレスも呼んである。……そこでお前の“チカラ”について話すつもりだ」

「ん、分かったよ。……というか、カラレス教官その事知らなかったのか」

「あまり広めるモノでもないからな。……だが、お前を指導する以上知らせておいた方がいいだろう」

 

 まあ、それはそうだろうな。制御は出来ているつもりだけど、うっかり使う可能性も無いわけじゃないし。

 ……俺と親父はそんな感じの会話をしつつ訓練や任務で疲れた身体を休ませたのだった。




あとがき・各種設定解説

アーク:格闘スタイルは昭和式怪獣プロレス
・なので、必要なら相手を得物で突き刺したり、切断したりとかも容赦無くやる。
・地球の事はヤバい場所だと思っており、そんな環境で生存権を確保している地球人は超ヤバいと思っている。

ゴリアテ:ちゃんとした格闘技を学んでいるので戦い方はちゃんとしている
・アークのダーティーな戦い方についても理解があるが、もう少し空気を読むべきじゃないかと思っている。

メビウス:原作主人公
・何だかんだと言って四人組の中心になる事が多い。
・今回の件で地球に興味を持ち始めた(本格的に地球行きを志望するのは原作通り『ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟』プロローグ後)

ゾフィー:家では普通に息子と接している。
・まだ隊長に就任したばかりなので色々慣れていない感じ。


読了ありがとうございました。次は宇宙科学技術局編予定、みんな大好きなあのキャラも出るかも。

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