試練の惑星
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磁力怪獣 アントラー 登場
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色々あったが無事にウルトラの星の士官学校を卒業して宇宙警備隊への入隊が決まった一介の新人隊員ことアークは、卒業式が終わったすぐ後に親父──宇宙警備隊隊長ゾフィーから『とある惑星に迎え。そこで母親の事を含む秘密を教える』と言われたのだ。
……正直言って、入隊が決まった直後にいきなりな話だったからちょっと動揺していたりもするが、あの親父がそう言ったと以上は多分俺の今後にとってその話が必要になると考えての事なのだろう。その程度には俺は親父を信用している。
「そんな訳で、トゥウィンクルウェイを使って指定された座標にある惑星にやって来た訳だが……外から見た限りではなんの変哲も無い無人の惑星に見えるな」
親父から渡された座標へやって来た俺の前にあったのは水や大気などが一切存在せず、無論の事ながら生命反応も無い見た限り荒れ果てた荒野が広がる、言ってしまえばこの宇宙で何処にでもある無人惑星だった。
……親父の言っていた事が本当なら、この惑星の名前は『キング星』と言うらしいのだが……
「……まあ、本当に
そう考えて早速その惑星に降り立ってみたが、やはりというか目の前に広がるのは荒れ果てた荒野と歪な形をした岩肌だけだった……空を見上げればそのまま宇宙が見えるぐらいだし、一見して真っ当な生命が住めない類いの星だな。
少なくとも俺のウルトラ族として保有する高性能な感覚器官や、学校で習った索敵技術には一切の生命反応は引っからないのだが……。
「……ほう、御主がアークか。よく来たな」
「なっ⁉︎」
そう周辺を索敵していたら突然背後から声を掛けられたので、俺は思わず驚きながら振り返った……するとそこには、フード付きローブを羽織った人間サイズの老人が後方にあった小高い岩山の上に一人立っていたのだ。
……先程までは確かにそこには誰も居なかった……それどころか俺の感知結果では半径数十キロに渡って微生物すら存在して居なかった筈なのに……。
「……はい、俺がアークです。ここには宇宙警備隊隊長である親父が話があると言われて来たのですが、失礼ですが貴方は?」
「…………」
とりあえず俺は一旦気分を落ち着かせて無難に返答を返す事にした……こんな環境の星で生存して、更には大気が殆どないのに
……と言うか、親父が言っていた事を合わせて考えるとこの目の前に入る老人の正体はおそらく……。
「……ふむ、そうか、大きくなったのだな」
「へ?」
その老人が急に柔らかい雰囲気になったので、彼の事を注視していた俺はやや気が抜けてしまって思わず変な声が出てしまった……しかし、何かこの老人からは懐かしい感じがするな。こう記憶の奥底に引っかかるモノがあると言うか。
「まあ、それはそれとして話をする前にどの程度出来る様になったのか試練を受けて貰おうか」
「は、え? ……うわぁっ!!!」
そう考えていたら、突然その老人が右腕を振り上げると共にいきなり目も開けられない様な暴風が吹き荒れ始めた……いや、これは念力の類いか⁉︎ そもそもこの惑星には大気なんて無かったし、そんな環境でウルトラ戦士である俺がまともに動けない程の風を吹かせるなんて不可能だしな。
……そうして暫くの間その念力の暴風が続いた後、その風は突如としてまるで何もなかったかのようにピタリ収まった。そして漸く目を開けられる様になった俺の目の前には驚きの光景があった。
「……こ……れは……
そう、先程までは確かに空には宇宙が見えて地上には荒れ果てた荒野と岩山が広がっている惑星だった筈なのに、今俺の目の前は
……幻術かと思ったがこの大気の暑さや砂の感触は俺の感知能力を持ってしても
「……つまり、
そんな感じで俺が目の前の光景の余りの有り得なさに驚愕していると、突如として俺が立っていた地面が崩れて流砂となったのだ。
「今度は何だ⁉︎ ……ええいっ! とりあえず一旦空に退避だ!」
俺はまだ混乱している頭を振るといきなり出て来た流砂から逃れようとすぐさま上空へと飛翔し……ようとした直後、その流砂の中から発せられた超強力な
……ああ、確かあの老人は“試練”とか言っていたな! それに砂漠に流砂、そして超強力な磁力を操る相手と言えば一つ心当たりがあるぞ!
「グァッ! ……以前アーカイブで見た事もあるしシミュレーターで戦った事もあったが、それとは桁違いの磁力だな。磁力怪獣アントラー!」
「キャシャァァァァァァッ!!!」
俺の言葉に答える様に流砂の中から現れたのは、頭部に巨大な両顎を持ち強固な外殻に身を包んだ二足歩行する巨大なアリジゴクの様な怪獣……かつて地球でウルトラマンさんを苦戦させた事もあるという大怪獣【磁力怪獣 アントラー】であった。
……成る程、つまりこいつを倒すのが“試練”って訳みたいだな。
「キシャァァァァッ!!!」
「それに向こうもこっちを見逃す気は無いみたいだしな。……じゃあやりますか! アークブレード!」
まだ少し混乱する頭を元に戻す為に気合いを入れながら、俺は右腕のアークブレスのクリスタルサークルを回転させてエネルギーを解放、更にそれをブレード状に収束させてブレスから光剣を展開した。
そして大顎を振りかざしながらこちらへ向かって来るアントラーを迎撃する為に光剣で斬りつけたのだが、その強固な外殻に弾かれてかすり傷をつけるのがやっとだった。
「ッ⁉︎ キッシャァァァァァ!!!」
「ええいっ! 外殻が固すぎるだろう! あのウルトラマンさんのスペシウム光線すら弾き返したと聞いていたがここまでとは!」
ダメージが無いとは言え攻撃された事で怒ったのか、大顎でこちらを挟み込もうとしてくるアントラーから距離を取りつつ俺は思わず愚痴ってしまった。
しかしどうやって倒そうかね。あの同じ光線技とは思えないレベルの迫力と威力がある“ウルトラマンさんのスペシウム光線”が効かないレベルの外殻を突破する手段は中々無いしな。
……だが、向こうは俺が距離を取る事を許してくれるつもりは無いらしく、大顎の間から再び虹色の磁力線を発生させて俺の体内にある鉄分に干渉する事で引き寄せようとして来たのだ。
「キキシャアアァァァッ!!!」
「グゥ! ヌオォォォ!? 何という強烈な磁力線! シミュレーターとは大違いだなぁ!」
しかし、本当に厄介だなこのアントラーという怪獣は! ……まず外殻が硬すぎてまともに攻撃が効きやしないし、それを突破出来る威力の攻撃を出そうにもこの磁力線の妨害があると難しい。
……隙があるとすれば大顎の挟み込みは強力だが格闘自体はそこまで上手く無い事ぐらいか。だが、この堪えるのが精一杯な強度の磁力線があれば勝手に獲物が大顎の中に入っていくから余り弱点にはならないし。
「つまり正面からではどうしようもないから、ここは絡め手で行ってみようか。……そういう訳でタイプチェンジ! ブラックゲート!」
「キャシャァッ!?」
そこで俺は磁力線に絡め取られたままリバーススタイルに変身し、そのまま前方の空間に穴を開けて磁力線に引っ張られるままその中に飛び込んで穴を閉じた……思った通り、流石にブラックゲート内部の謎空間にまでは磁力線は届かないみたいだな。
更に俺は即座に実空間のアントラーの背後にあたる位置にもう一つのブラックゲートを開き、そこから外に出てヤツの背後に回った。
「通常の攻撃が効かないならこれでどうだ! フリーズショット!」
「キショアァァァッ!?」
そして、アントラーが俺を見失って右往左往している隙に冷凍光線を連続して叩き込む事でその身体を凍結させていく……単純に砕けない硬度の外殻であっても凍らせて動きを封じるぐらいならば出来るであろうさ!
……ただ、周辺環境が高温の砂漠地帯である事が足を引っ張ったのか凍結がやや遅くなってしまい、その間にヤツはこちらに振り向いて再び虹色の磁力線を放って来た。
「……まあ、二度も三度も喰らう気は無いさ! アクセルダッシュ!」
「キャシャァッ!」
だが、俺はその磁力線を念力による加速によって高速で地上を走りアントラーの側面に回る事で回避した……あの虹色の磁力線はヤツの大顎から放射状に広がる性質があるみたいだからな。
なので下手に距離を開けると放射状に広がった磁力線に捕まってしまうが、近い距離で側面や背後に回り込めば磁力の影響を最小限に出来るという寸法よ。
「そして、このまま攻め手は緩めない! フリーズショット」
「キェシャアアァァァッ!?」
そのまま俺はアントラーが発する虹色の磁力線を高速移動で回避しながら、連続して冷凍光線を発射し続ける事でヤツの身体を徐々に凍らせていった。
……と言っても冷凍光線も高速移動もエネルギーを消費する事に変わりは無いから余り長時間は続けられないし、向こうだってこのまま不利な状況に甘んじるとは思えないし……。
「キキィ……キャシャァァッ!!!」
「チィッ! アイツ地面に潜る気か⁉︎」
そう考えていたら、予想通りというか肉体が半分以上凍りついたあたりでアントラーは磁力線で攻めるのを中断して地中に潜り始めたのだ……予想していた中で一番面倒な手段で来たな。
地中に潜られるとこっちに攻撃手段が殆ど無くなるからどうにかして阻止しないと。幸いヤツの肉体は凍りつき体温が大きく下がっている所為で動きは大きく鈍っている。
「悪いが逃す気は無いし、自分から離れた物を動かせるのはそっちの専売特許じゃないぞ! ウルトラエアキャッチ!」
「キャシャキャシャァッ!?」
そこで俺はリバーススタイルになって強化されているウルトラ念力を使ってアントラーを拘束し、そのまま上へ持ち上げて空中に固定した……今の俺の実力であれば怪獣一体の動きを念力で完全に拘束する事も可能だからな。
……とは言え、念力が強化されるリバーススタイルでなければここまでの拘束は出来ないだろうし、このままではただ動きを封じるしか出来ないので……。
「まずは完全に凍らせる! ウルトラフリーザー!」
まず俺はアントラーを空中に固定したままその頭上に高出力の冷凍光線を放ち、それを炸裂させる事で下のアントラーを強力な冷気で包み込んでその肉体を完全に凍結させた。
こうして凍結させれば暫くの間は身動きを封じる事が出来るだろう。それにどうやらアントラーは昆虫っぽい生態をしているからか寒さに弱いみたいだからな。
……そして俺は念力を解除してアントラーを地上に下ろし、姿をシルバースタイルの方に戻した。
「一旦凍結させて仕舞えば姿を変えても問題無いからな。……後はその厄介な外殻を貫くだけだ。ウルトラランス!」
俺はアークブレスからウルトラランス──ウルトラスパークの槍モード──を取り出しつつブレスのクリスタルサークルを回転させてエネルギーを解放、その全てをウルトラランスに集束させていく。
……しかし、今のこの惑星は地球などに近い環境だからかエネルギーの消耗が激しいな。短時間でのエネルギーの使い過ぎでカラータイマーが鳴り始めたぞ。
「……まあ、この一撃で決めれば問題無い! アントラーの外殻は生半可な威力の光線は弾き返すから、エネルギーを一点に集中させて外殻を貫く! 行っけぇっ!!!」
そうして俺はエネルギーを収束し終わったウルトラランスを全力で凍結されたままのアントラーに向かって投げ放った……収束させた膨大なエネルギーとウルトラ念力による加速が加わったランスは、俺の狙い通りアントラーの外殻を貫いて突き刺さりその体内で収束されたエネルギーを解放する。
「キャシャァァァァァァ……!!!」
……流石に体内からの攻撃には耐えられなかったのか、そのままアントラーは絶叫を上げながら爆発四散したのだった。
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「……ふぅ、手強かった……」
どうにかアントラーを倒してまだ敵がいないか周辺を確認し終えた俺は、ピコンピコン鳴るカラータイマーを抑えながら一息ついた。
「とりあえずこれで試練は合格って事でいいのか? ……或いはまだ何か条件があるとか「いや、あのアントラーを倒せば合格で間違い無いぞ、アークよ」うわぁっ⁉︎」
そんな感じで俺が周辺を警戒していたら、誰もいない筈の背後からいきなり声を掛けられたので思わずびっくりして変な声が出てしまった……そのまま背後を振り返ると、やはりというかそこにはあの老人が立っていた。
……これでも俺はさっきの事もあってかなり念入りに周囲を索敵していたんだが気配すら掴めなかったな。
「限定的とは言え『鍵』の力も使いこなしている様であるし、これならば御主の父親と母親、そして御主自身の出生の秘密について語ってもよかろう」
「は、はあ……って! おうわぁっ⁉︎」
老人が何となく意味深な事を言ったので俺はそれについて考えを巡らせようとしたのだが、その直前に再び老人が腕を振り上げるとまたもや砂塵を纏う暴風が吹き荒れたのだ……ってか“また”かよ!
……そうしてやはり暫くしたら砂嵐は収まり、俺の目の前には見上げる程に
「それで、この砂漠に建っている遺跡に一体何が『ふぅ、あのアントラーという怪獣は手強かったな』……え?」
その如何にも何かありそうな遺跡について老人に聞こうとした俺の耳に、突如として凄く聞き覚えのある声が聞こえて来たので思わず後ろを振り向くと……。
『……それでここが妙なエネルギー反応があった遺跡か』
「親父⁉︎」
そこには何故か俺と同じ様に目の前の遺跡を見上げる親父の姿があったのだ……一体どうなってるんだってばよ⁉︎
あとがき・各種設定解説
アーク:怒涛の展開にちょっと混乱中
・所有するウルトラスパークはウルトラランス・ウルトラディフェンダーの三形態に変形する機能があり、アークブレスのエネルギーを収束させやすい様にカスタムされている。
・各形状はゼロが使っているヤツの青い部分を黒色に変えた感じ。
【磁力怪獣 アントラー】:『キング星での試練』繋がりで登場
・冷凍攻撃に弱いのは砂漠で生息している昆虫型怪獣という点から思いついたオリ設定で、凍結した所為で外殻が脆くなっていたから倒せたという裏設定もある。
・実は老人が出した『本物と全く同じ能力がある実態を持った幻術』である。
謎の老人:いったいウルトラマン何ングなんだ(バレバレ)
・ちなみにこの『キング星』と呼ばれる惑星は大きさ・宇宙座標・環境などを老人の意思で自由に変えたり出来るのだとか。
読了ありがとうございました。
第3章は過去編と主人公の宇宙警備隊での日々の二部構成になる予定です(話の長さ次第では章分けするかも)