宇宙に輝くウルトラの星   作:貴司崎

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ティアの過去・光の巨人達の戦い

 親父の過去を見たら実は俺の母親が元石像だった件……いや、あの石像モードが一種の仮死状態とかエネルギー節約の為のものらしいって事ぐらいは分かってるぜ?

 ……まあ、それはともかくとして遺跡の最奥まで来た親父は、何でもお袋らしいティアという人が眠りについてしまったのでとりあえず人間態での活動様に用意してあったっぽい寝袋に彼女を寝かせてから側で見守っていた。

 

『……ふむ、やはりこの部屋に使われている素材も光の国のデータベースには無いが、データによるとこれまでの遺跡で使われていた石材と近似した性質がある様だな。……だが、この部屋、いや()()を中心として遺跡に流れるエネルギーの詳細は未だに不明か。やはり直接事情を聞くしかないか』

 

 その間にも親父は遺跡の調査を進めていた様だが、どうも芳しい結果は得られなかったらしくお袋が目覚めるのを待つ事にしたらしい……そしてしばらく経った後、お袋が身じろぎした気配があった。

 

『……ううん……ここは……』

『む、目覚めた様だな。……何か気分が悪いとかはあるか? それと私の事は分かるか?』

 

 そうして目覚めたお袋の顔を親父が覗き込んで意識がはっきりとしているかや健康状態とかを確認していった。

 

『あ……大丈夫です。私の身体におかしい事とかは無いと思います。……えーっと、確かゾフィーさんでしたね。……それとここは“方舟”の中ですね。やっぱり亜空間からはもう出てますし、そうでなければ私が目覚める事は無いでしょうから』

『……この遺跡の事や君の事など色々と聞きたい事はあるのだが、まずは改めて自己紹介をしておこう。……私はM78星雲ウルトラの星の宇宙警備隊に所属しているゾフィーと言う者だ』

 

 目覚めたお袋はぼんやりとした様子で周りを見渡しながら何かを呟いていたが、特に何か異常があるという感じでも無さそうだった……それを見た親父は事情を聞き出すのを後回しにして、自分の事と現在の状況の説明を行う様だった。

 ……まあ、石像になっていたあちらさんが現状を把握出来ているとは思えないし、まずはこっちから状況を説明した方が良いだろうな。警備隊のマニュアルにもそう書いてあったし、俺だってそうする。

 

『今日はこの文明が存在しない筈の惑星にいきなり謎の次元エネルギーの様なものが確認されたので調査に向かった所、この遺跡を発見したので内部に入って調査していたんだ。……そこで何かエネルギーが流れているのを辿って、その先にあった壁画から出て来たユザレを名乗る女性のホログラムの案内もあってこの部屋に辿り着き石像になっていた君を見つけたと言う状況だな』

『……成る程、これはご迷惑をお掛けした様子で申し訳ありません。……改めまして、私は地球星警備団に所属しておりましたティアと申します』

 

 一通り親父の説明を聞いたお袋は申し訳無さそうに頭を下げた後、自身をあのユザレと名乗った女性と同じ“地球星警備団”という組織に所属していた者だと自己紹介を返した。

 ……しかし、疑問に思っていたんだが“地球星警備団”なんて組織は聞いた事無いし……。

 

『地球星というのは太陽系の惑星の一つである『地球』の事か? ……あそこには以前一度だけ行った事があるが君の様なウルトラ族に似た姿に変身出来る者はいなかった筈だが……』

『それは私が()()()()()()()からこの世界に転移……厳密には亜空間に封印していたこの方舟が寿命によって偶々この世界に漂着したのですが』

 

 ……ふむふむ、別の世界ね……マルチバース理論には単純に別の可能性の世界の他にも根本的に違う世界とかもあると聞いた事はあるけど、つまりお袋は別の世界のウルトラマンだったという事かな? 

 

『別の世界か……成る程、観測された次元エネルギーはこの遺跡がこの惑星に漂着した際に現れたものか。だとすればいきなりこの惑星にこんな遺跡が発見された事にも説明がつくな』

『……随分とあっさり信じてくれるんですね』

『これでも宇宙警備隊員……ああ、私はこの宇宙の治安維持組織の一つ宇宙警備隊の隊員なんだが、そこから説明した方がいいか』

 

 そうして親父はウルトラの星や光の国の事、更に宇宙警備隊やこの宇宙の一般的な常識などを掻い摘んで説明していった。

 

『そういう訳で、私はこれまでの任務の際に次元や時間や異世界に関係する事件に遭遇した事が無くもないからな。……それに君の目を見る限り嘘を言っている様には見えなかったからな』

『……ありがとうございます』

 

 ……そんな事を軽い笑みを浮かべながら言った親父を見たお袋がちょっと照れたりもしているがノーコメントで。実の両親のラブコメ展開なぞ見せられてもコメントに困るんだよ。

 

『それよりもこの遺跡……君がいう方舟の事や君自身の事についてもう少し詳しく教えて貰えないだろうか? ……あのユザレという女性のホログラムが“君を別の世界に逃がす”とか、“君を闇から救い出してくれる者が現われる事を願っている”と言っていたからな。……宇宙警備隊員として君やこの方舟に何かあるのなら放ってはおけん』

『……分かりました。……この方舟が現実世界に漂着してしまった以上、()()も遠からずこちらに来るでしょうから。この宇宙の治安を守る貴方達に私は元の世界であった事まで含めて話しておく義務があるでしょうから』

 

 そう言ったお袋は雰囲気を真剣な……或いは何処か悲愴さを感じさせられる様なものに変えると、親父へと向き直って自分の世界の事について説明し始めた。

 

『私達が住んでいた地球ではかつて世界に怪獣、宇宙からの侵略者、闇の眷属等の様々な脅威が現れて、人々はそれらに脅かされていました。……しかしその危機に突如として宇宙より多くの“光の巨人”が地球へ降臨し、人々を守る為に戦ってくださったのです』

『……その“光の巨人”が君達の世界でのウルトラ族という事か』

 

 ……ふむ、ウルトラの星の地球派遣みたいなものなのかね? ただ、話を聞く限りだとかなり大規模だったみたいだが。

 

『そうして長く苦しい戦いの果てに巨人たちは脅威を退けると、その後の人類の行く末には干渉せずに肉体を石像化させて体から分離すると本来の光の姿となり遠い空の果てに帰って行ったらしいです。……その後、平和が訪れた地球では私達の都──ルルイエを中心に光の巨人達が残した石像を守護神として崇めながら人々は平和な日々を過ごしていました』

『……分かった。続けてくれ』

 

 まあ、原住民の行動に過度な干渉をしないのは宇宙警備隊でも普通の事ではあるが……その“光の巨人”達は石像を残したというのが気になるな。

 

『はい。……ですが、平和は長くは続来ませんでした。再び『闇』による怪獣災害が起こり始めて地球に再びの危機が訪れたのです。……ですが今度は天から光の巨人達が降りてくる事は有りませんでした。……その代わりに地球に残った石像と同化することによって光の巨人となる事が出来る人間達が現れ始めたのです。私もその一人でした』

『……成る程な。その為に光の巨人達は石像を地上に残していたのか』

 

 えーっと、つまり光の巨人達は自分達が居なくなった後も地球に脅威が訪れる事を知っており、人間達がそれに対抗出来るように地上に石像を残したという訳か……ただ、その親父の意見を聞いたお袋の表情が少し複雑なものなのが気になるな。

 

『それは分かりませんが、とにかく石像と同化して光の巨人となった戦士達は地上に現れた怪獣達と激しい戦いを繰り広げました。……私も同じ様に光に選ばれて巨人となった兄のティガ兄さんや、その友人で同じく選ばれたダーラムさん、ヒュドラさん、カミーラさん、そしてユザレさんと一緒に怪獣達と戦いました』

 

 ……そう語ったお袋の表情は何処か懐かしいものを思い出している様な柔らかいものだった。

 

『私と彼等は所謂幼馴染みという奴だったんです。……ぶっきらぼうだったけど面倒見が良くて色々な人に慕われていたティガ兄さん、口下手だけど凄く友達思いだったダーラムさん、口調や態度は悪かったけど私にも色々気を使ってくれたヒュドラさん、キツイ事を言う時もあったけど優しかったカーミラさん、そしてちょっと問題を起こしがちだった兄さん達を注意しながらも仲が良かったユザレさん。……そんな彼等と過ごした日々は今も明確に思い出せます』

 

 ……と、そこまではかつてを懐かしむ様に語っていたお袋だったが、突如としてその雰囲気が暗いものに変わってしまった。

 

『ですが、その日々も長くは続きませんでした。先程も言った通り地球各地に再び『闇』による怪獣が現れて、それらと私達は『光』に選ばれた戦士として戦いました。……まあ最初の方はまだ良かったのです。兄さん達は戦士達の中でもトップクラスの実力を持っていて、ルルイエに現れる怪獣達を他の戦士達と協力して次々と倒していきました。ちなみに私は大して強く無かったのですが当時は怪獣の出現を探知出来る能力を持っていて、後はテレポーテーションが使えたので兄さん達を怪獣の居る現地に送り届けるのサポートが主な役割でしたね』

 

 お袋曰く、全ての能力が非常に高い上にエネルギー吸収の力で長時間戦う事が出来たので最も多くの怪獣を倒していたティガ兄さん(俺にとっては叔父さん)、圧倒的なパワーと大地を操る力でティガさんと共に戦ったダーラムさん、戦士達の中で最高のスピードと風を操る力で遊撃として活躍していたヒュドラさん、氷を操る力と高い武器を扱う技術で常にティガさんの隣にあったカーミラさん、最高クラスの超能力と戦士を纏め上げるカリスマを持ちルルイエにいた戦士のリーダーだったユザレさん、そして彼等が中心となった戦士達とルルイエの人達の協力で怪獣達をどうにか退ける事が出来ていたのだとか。

 

『まあ、ルルイエは当時の地球で最大の都市でしたから人員や資源も豊富だった事と、兄さん達を始めとした戦士達の質も高かった事によって怪獣を退ける為の防衛線の構築はとてもスムーズに進み、都市に一先ずの秩序を構築する事には成功しました。ですが、地球全体で見れば人類は劣勢であり怪獣に滅ぼされた街や民族はかなりの数に登っている状況でした。……そこでルルイエではユザレさんを中心として地球全ての人類が協力して怪獣と戦う為の組織を作るという提案がなされ、それで出来たのが“地球星警備団”になります』

『「成る程な、そう繋がるのか」』

 

 いかん、親父とハモった……尚、地球中の他都市と協力体制を構築した方法は、当時惑星一つぐらいまでを能力の効果範囲にする程に成長していたお袋が怪獣によって窮地に陥った都市を感知し、ティガ兄さんを始めとする強力な戦士達をテレポーテーションで送り込んで怪獣を打倒した信用を得る感じだったとか。

 ……何というか割と強引な方法だし、お袋が自分は大した事無いって言ってたくせにさらりと物凄い事をしてるんだよな。ただ、そうしていたのは最初の方だけで怪獣に対抗するために急速に技術レベルが上がっていった結果、“地球星警備団”が正式に発足した辺りで都市同士での通信手段や移動手段などが確立されたそうだが。

 

『それ以降は怪獣の襲撃にも安定して対処出来るようになって、どの都市でも一定の秩序を構築して人々はどうにか真っ当な生活が送れる様になる程の余裕を手に入れていました。……その頃になると他の戦士達と比べても頭三つぐらい飛び抜けた実力を持っていた兄さん達は英雄と呼ばれて尊敬されていましたね。後は兄さんとカミーラさんが付き合い始めたのもこの時期でしたか』

 

 そうして地球星警備団が発足した後も怪獣災害が収まる事は無かったそうだが、少なくとも安定して対処出来る方法が確立されたので徐々にではあるが人々は元の生活を取り戻していったそうだ。

 ……うーむ、このまま行けばハッピーエンドになりそうなものなのだが、話をしているお袋の雰囲気が暗めだからそうはいかないんだろうなぁ……。

 

『……ですが、地球を襲う『闇』達も何もしないと言うわけではありませんでした。……宇宙が始まる前の混沌、生物の集合無意識の海、或いは深淵とも呼べる場所に住まうらしい彼等はそのままだと現実世界で活動出来ないので、その為に作り出したらしい尖兵である『這い寄る混沌』と呼ばれていた怪人を介して地球で暗躍していました。……そして奴らは私達の目が怪獣向いている間にこれまで死した者達の怨念を集め、自分達が住まう領域と現実世界を繋ぐ『穴』をルルイエの近郊に開くという行動を取ってきたのです。……と言っても、その『穴』は不完全な物で『闇』の本体を深淵から呼び出す事が出来ない程度の物だったので、最初にそこから出てきたのは精々()()()()()の地を焼き払う悪しき翼──【尖兵怪獣 ゾイガー】の群れでしたが』

 

 ちなみにその【ゾイガー】という怪獣は一体でも並みの戦士と互角以上の実力があるとか……それが数十体とか何それ超ヤバイ。

 

『その出てきた数十体の【ゾイガー】は兄さん達が中心となって倒したのですが、ルルイエ近郊に空いた『穴』を塞がない限り【ゾイガー】はほぼ無尽蔵に出現するので一刻も早い対処が必要でした。……しかし、当時のルルイエを含む地球には深淵に繋がる『穴』に干渉する技術はありませんでした』

『……では、どうしたんだ?』

()()()()()()()。……私には深淵に繋がる『穴』に干渉出来る『力』が偶々あったのです。怪獣の探知やテレポーテーションもその『力』の片鱗だったみたいですね』

 

 お袋曰く、深淵に繋がる『穴』を知覚した時点で『アレは私なら塞げる』と理解出来たらしい……なのでティガ兄さん達に頼んで『穴』まで接近したらあっさりと塞げたとの事。

 

『正直言ってルルイエはかなり危険な状況だったので、それをどうにかしてしまった私は一夜にして救世主扱いでしたね。私の髪が銀髪だった事や『穴』を閉じた事から『銀の鍵の巫女』とか呼ばれたり。……更に私が干渉する術がないと思われていた『穴』に干渉出来た事から、その『力』を研究すれば『闇』との戦いを終わらせられるという考えも出て皆が終わりが見えなかったこの戦いに希望を見出していきました』

『「…………」』

 

 ……うん、話の展開的にいい方向に進んでいる筈なのに、お袋の雰囲気が暗いを通り越して虚無になってるから俺も親父(過去)も何も言えねぇ……! 

 

『ですが、私達は余りにも楽観視し過ぎて肝心な事を見逃していたのです。……深淵を覗き見る時は深淵もまた私達を覗き見ているのだと言う事を。その深淵に住まう『闇の邪神』達の恐ろしさと、人間が持つ『闇』の悍ましさを』

『「…………」』

 

 ……そうしてお袋は異なる世界の地球で起きた光の巨人と闇の邪神との戦いの結末を語り始めた。




あとがき・各種設定解説

アーク:話を聞くのに集中してる

ゾフィー:同上

ネオフロンティアの原作キャラ達:まだ光の巨人だった時期
・若い頃のキャラは根は優しい不良的なティガ、その親友ポジのダーラム、ティガと喧嘩してからつるむ様になった悪友ヒュドラ、ティガに気があるけど素直になれずツンケンしてしまうカミーラ、そんな連中を注意する委員長ポジなユザレみたいな感じ。
・五人とも石像との同調率は最高レベルで光の巨人達の中でも中核に近い存在だった。
・尚、五人の間にはティガとヒュドラ、カミーラとユザレの様に仲が悪い組み合わせもあったが、その辺りはティアやダーラムが間に入ってとりなしていた。

『闇』:ネオフロンティアスペースの地球を襲った謎の存在
・その正体はご存知『ウルトラマンティガ』に於けるラスボス【邪神 ガタノゾーア】である。
・尚、この作品に於いては【ガタノゾーア】と【邪神魔獣 グリムド】は同種の邪神という設定で、どちらもかつて深淵に封じられた宇宙が誕生する以前の光も闇もない混沌が形を成した邪神の一体。
・その深淵に封じられてなお悪夢や創作家のインスピレーションとして干渉しており、それを受信した生物に答えて限界するらしいが詳細は不明。

『這い寄る混沌』:闇の邪神達の尖兵の一つ
・他にも『無貌の王』『千の無貌』『黒い男』とか呼ばれている闇の邪神が干渉した世界に必ず現れる怪人。
・その正体は深淵に居る闇の邪神達に干渉され尖兵となった現地の生物の総称であり、邪神達を現実世界に降ろす為に行動している。
・というより、彼等が深淵を覗き見たから邪神達が現実に現れたとも言い換えられる。

【尖兵怪獣 ゾイガー】:ティアは三千万年前の当事者であるので【超古代】とは付かない
・大量に出てくる割にタイマンでティガ(テレビ版)と互角に戦えるとかいう怪獣。
・尚、ティガ兄さんの場合はコイツと数体まとめて倒せるぐらいの図抜けた戦闘能力を持っていた設定。

ティア:闇の巨人では無く邪神(クトゥルフ)的に厄ネタな人
・その能力は邪神が住まう深淵への干渉、具体的には深淵までの道を開いたり閉じたり出来る感じだが正確な所はよく分かっていない。
・この力は石像側の光の巨人ではなく人間だった彼女が元から持っていたもので、深淵の片鱗である『穴』を知覚した時に覚醒してしまった。


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