宇宙に輝くウルトラの星   作:貴司崎

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銀の鍵

『……成る程、君の大体の事情は分かった』

『はい、この世界の治安維持組織の一員である貴方にはご迷惑をお掛けした様で申し訳ありません』

『謝る事は無い。……君に過失があった訳では無いのだし、こういった地道な調査やパトロールも宇宙警備隊員としての職務だからな』

 

 そういう感じでお袋の過去──並行世界の地球で起きた光と闇の戦いの話は終わった……正直、ちょっと情報量が多すぎて頭がパンクしそうだが、当然目の前の親父とお袋は過去に起きた事を再現しているだけであるのでそのまま話を続けていく。

 

『……それで、君はこれからどうするつもりなんだ?』

『出来ればもう一度石像になって亜空間に潜りたいのですが既にこの“方舟”には寿命が来ていますし、ここ“封印の間”は辛うじて機能を維持していますがそれも時間の問題でしょうし。……実はこの“方舟”には石像化している私に対する深淵の邪神からの干渉を阻害する効果もあったのです。……一度邪神に肉体を乗っ取られて掛けていた私はあちらから干渉されやすくなっていて、ただ石像化するだけだと意識の無い内に肉体を乗っ取られる可能性があったので』

 

 お袋曰く、一度邪神に何らかの干渉を受けた生物は『干渉を受けたという認識』を起点にして深淵の邪神からの干渉を受けやすくなるとの事……お袋が並行世界の地球に留まれなかったのもその為だとか。

 

『なので、どこか生物のいない星で隠棲したいと思っています。……意思を持った生物が多くいる所に私がいると、ただそれだけで深淵の邪神に干渉される確率が上がるので。……後、貴方の立場上無理なお願いかも知れませんが、出来る限り私や私の『力』の事は内密にしてほしいんです。それを知る者が多く成る程に深淵の邪神達は私を介して現世に干渉しやすくなるので』

『……君は、本当にそれでいいのか?』

 

 ……この時の親父の気持ちは流石の俺でも何となく分かるぞ……お袋は散々並行世界の地球で辛い目にあって来て、挙げ句の果てに三千万年も石像化して亜空間を漂っていたのに、この後に及んでまだ生き物の居ない世界で隠棲とか不憫すぎるだろ……。

 ……お袋もそんな親父が自分を気遣う気持ちを察したのか、少しだけ嬉しそうな笑みを浮かべつつも覚悟を決めた表情になって再び言葉を紡ぎ始めた。

 

『ありがとうございます、ゾフィーさん。……ですが、私が既に邪神に魅入られてしまった以上、現世の生命に迷惑を掛けない為にはこうするしか無いのです』

『……俺は君の能力を知ってしまっているが、それは大丈夫なのか?』

『はい、ゾフィーさんやユザレさんの様な強い光の力と心がある生命は深淵の邪神達が最も嫌うモノですから、貴方が邪神に魅入られる事は無いと思います。……ただ、私の事を知る者が増えて深淵からの干渉が増えた場合には何か悪影響があるかもしれません。すみません……』

 

 そう言ったお袋はとても申し訳無さそうな表情を浮かべた為、親父はちょっと困った様な感じになった……うむ、多分これは親父の方は別に自分への悪影響を心配してるとかじゃないな。

 

『いや、そこは特に気にしていないが……つまり、私の様な者が少数なら君に会っても問題は無いと言う事だな。……君の様なまで年若い女性がこの後ずっと一人で暮らすのは些か不憫すぎるだろう。私でも大丈夫なら隊長辺りでも問題なさそうだし、事情を説明……するのも不味いのか? どうしたものかな』

『……あ……その……ありがとうございます。……私の為に色々と考えてくれて……』

『何、気にすることは無い。……困っている者、悲しんでいる者がいるのなら助ける。それが宇宙警備隊員としての最も重要な役目だからな』

 

 そう言って親父が笑みを浮かべると、お袋は顔を少し赤くして俯いてしまった……うん、感動的な場面ではあるんだろうけど、実の両親のラブコメとか見せられても息子として反応に困るから、この辺りは巻きでいいんじゃないかな。巻きで。

 

「そうか、ならこの辺りの二人の逢瀬は少し飛ばした方がいいか。……後、彼女は力を得てからずっと戦士として生きて来て、銀の鍵の巫女になってしまった後は自分の犯した過ちを償う為に戦って来たが故に、この様に誰かに純粋な善意で気遣われるのは久しぶりの事だった様だな」

「あ、謎の御老人()さん、久しぶりですねー」

 

 まあ、実際は久しぶりと言う程に大した時間は経っていないんだけど、お袋の過去の話が余りにも壮絶だったもんだからまるで一週間以上経った気分がしたぜ……後、この人がいきなり出て来るのはもう慣れた。

 ……後、俺の要望を聞いたからなのか過去の幻術空間もまるで一時停止する様に止まっていた。

 

「……というか、そろそろ正体を明かしません? めっちゃ今更ですけど」

「ふむ、まあ良いだろう。……それにそろそろ過去でも私の出番の様だからな」

 

 そう言った老人は纏っていたローブを勢いよく脱ぎ捨てるとマントを羽織った銀色を主体とした巨人の姿に変わっていた……そう、この老人の正体は伝説の超人『ウルトラマンキング』その人だったのである!

 ……うん、まあ分かりきっていた事だけどね。それに俺は彼には昔何度か会った事もあるし。

 

「それで()()()()()()()、この過去幻術で貴方の出番があるという事は、親父はお袋の事で貴方を頼ったのか?」

「うむ、その通りだ」

 

 そう、この伝説の超人ウルトラマンキング殿は実は親父の祖父、つまり俺の曽祖父に当たる人なのである……ただ、大っぴらになると少し面倒な事になるから他の人には秘密にしているし、公的な任務中の際には『伝説の超人』として扱う様にと親父に言われているからな。

 まあ、これまではただ身内として会った事があるだけで、今回みたいに“超人”としての圧倒的な力を見せられた事は無かったから結構動揺してしまったが。

 ……とはいえ、今は私的なお話だから“ひいじいちゃん”呼びで良いだろう。この人そう呼ばないとちょっとテンション下がるみたいだし。

 

「この後も二人は絆を深めつつティアの今後の事について話し合っていたのだが、この“方舟”は既に寿命を迎えており遠からず機能を停止する上、この惑星自体もアントラーを初めとした凶暴な怪獣達が多く住まう星だったから居住には向いていなかったのだ。……そこでゾフィーはティアの居住可能な場所を探すのと、彼女の『銀の鍵の力』や深淵の邪神の事についてもっと詳しく知る為に私の元を訪ねる事にしたのだ」

「ああ、ひいじいちゃんなら邪神の精神干渉はどうって事無いだろうし、その手の話も知ってそうだからな」

 

 それだけ言ったひいじいちゃんが腕を一振りすると目の前に居た親父とお袋、そして“方舟”の遺跡が消え去って別の場面が俺の前に映し出された。

 

 

 ──────◇◇◇──────

 

 

『……それでは彼女が住まう事が出来る平穏な惑星を提供して下さると?』

『うむ、儂が個人所有している惑星の中でもあのK54星ならば自然豊かであるし心穏やかに過ごせるだろう。それにウルトラの星とも近いしな』

 

 切り替わった場面には赤い空と荒れ果てた荒野ばかりの惑星で親父とひいじいちゃんが話し合っている場面だった……ちなみに親父は昔散々試練を受けさせられたので、今はフリーパスでひいじいちゃんに会えるとの事。

 まあ、ひいじいちゃんに頼り過ぎると宇宙警備隊員としての意義が無くなり甘えも出るから、基本的にその力には頼らず自分達の力だけでどうにかすべきと言っていたから滅多に頼み事はしないと言っていたし、ひいじいちゃんの方も自分の力は余程の事が無い限り軽々しく振るわないと言ってたが。

 ……ただ、そんな二人がお袋の為にここまでやってるって事はつまり()()()()って意味なんだよなぁ。

 

『しかし、貴方が試練も無しにここまでしてくれるとは……ティア君の『力』はそこまで危険な物なのですか』

『ふむ……あの『銀の鍵の力』そのものは『あらゆる“境界”に対する干渉()()』であり、具体的には空間や次元へ“門”を作り上げ別の時空へと干渉する能力を有している者の事だ。この能力者はいくつかの世界で稀に現れる。……空間や時間への干渉自体は儂を含めた一定以上の力を持つ存在や、相応の科学技術でも可能であるがな』

 

 確かにウルトラ戦士にもテレポーテーションやトゥウィンクルウェイを初めとして次元や空間にある程度の干渉が可能な人達が結構いるからな……ひいじいちゃんみたいにデタラメなのは中々居ないけど。

 

『……だが、この『銀の鍵』は単純な異世界や異次元以外にもこの世あらざる場所……世界の裏側や集合無意識の海、果ては人の心の中にある夢の国などすら『門』を開閉して干渉出来ると言われておる。……儂でもそのように事をするのはやや手間がかかるぐらいだが、彼等『銀の鍵』の所有者は当たり前の様にそれが出来るらしい』

「……いや、ひいじいちゃんも出来ないとは言わないんだね」

 

 まあ、キングだからね……後、“らしい”や“言われている”みたいな曖昧な表現なのはひいじいちゃんですら伝聞で聞いた情報が主で、直接見た事は数回しか無いぐらいに希少な能力だからだとか。

 ……加えて直接見た『銀の鍵』の所有者も、その殆どが死ぬか正気を失うかしていた為なのも原因だとか。

 

『時空に穴を開ける、或いはそう言った概念に干渉出来るという部分では“宇宙の穴”や“それを縫う針”などに近い力とも言えるが、彼女にとっての問題は『力』そのもの()()()()

『……というと……もしや邪神に干渉されるかもしれない部分ですか?』

『うむ。本来であれば『銀の鍵』は“現実にはあり得ない場所と現実との境界を繋ぐ門を開閉する能力”であるが故に、邪神からの精神干渉を“門を閉ざす”事で無効化出来る筈なのだが……おそらく、まだ力が目覚めて直ぐの未熟な時期にその“神殿”とやらを使って無理矢理『銀の鍵の力』を増幅して使ったが為に邪神達が住まう深淵に強く繋がってしまい、それを閉ざす事が出来なくなってしまったのだろう』

 

 ふむふむ、つまりはお袋の能力そのものよりも邪神達と繋がってしまった方が問題だと……。

 

『どうやら今は自分の意思で押さえ込んでいる様だが、意思を持つ生物が多くいる場所だと邪神側の干渉度合いが上がってしまう様じゃな。……あやつらは常にあらゆる世界で生物の無意識に干渉し、自分達を現世に降臨させようと行動しておるからな』

『……それはティア君の心の方にも原因があるかもしれません。彼女は一見気丈に振る舞っている様に見えましたが、自分がかつて地球の文明を滅ぼすきっかけになった事を強く悔いている様でしたから』

『うむ、確かにそれも原因の一つであろう。……そう言った点から見てもK54星での療養は彼女の為はなるだろうな』

 

 ……それは俺も思ったかな。明らかにお袋は無理をしている感じだったし、多分今は心の傷を癒す時間が必要になるんだろう。

 

『……それでお爺様、肝心の深淵に住まう邪神達をどうにかする方法は無いのでしょうか』

『ううむ……深淵に封じられた状態の邪神達は最早概念の様な存在になっておるからな。現実に生きる儂らとは根本的に在り方が違う存在である彼奴等は儂でさえ滅ぼす事は出来ないだろう。実空間に降臨した邪神であれば実体を持っている故に普通に倒せるのだがな。……とりあえずK54星には精神干渉を防ぐ結界を張っておくから早々に邪神が出て来る事は無いであろう』

 

 ひいじいちゃんが万能過ぎて『もうこの人だけでいいんじゃないかな?』状態な件……これは親父もあんまり頼らない様に気を付けようと口を酸っぱくして言うわ。ひいじいちゃんの力を間近で見た今ならそう思えるよ。

 ……そうしてお袋についての諸々の話が終わった後、親父はひいじいちゃんに深々と頭を下げた。

 

『……本当に何から何まで頼ってしまって申し訳ありませんお爺様。……出来れば余り頼りたくは無かったのですが……』

『そう謝る事は無い。邪神が住まう深淵に繋がってしまう者など放置しておく訳にも行かんし、今の光の国の技術では対応出来ぬだろうからな。……儂は光の国自らで対応出来る問題に手を貸す事は基本的に無いが、儂自らが動かねば救えぬ者が居るのに動かぬ程怠惰では無いぞ』

 

 ひいじいちゃんはウルトラの星が大暴走した時にも助けに来てくれたみたいだからね……ただ、基本的には頼って来た者に試練を与えてその本人が困難を乗り越えられる様な力を得させる事が殆どなんだけど。

 

『それでも本当にありがとうございました。……ティア君はこれまで地球を守る為に様々な苦難を味わって来て、その上に自らが住んでいた世界すらも離れなければならなかったなど余りにも酷過ぎる……せめて、この世界だけでも出来る限り幸せに過ごして貰いたいのです』

『……お前の気持ちはよく分かったぞゾフィーよ。……彼女の心を癒すには邪神に干渉されない強き心の持ち主との交流が必要であろうから、御主は積極的に彼女に会いに行った方がいいだろう。儂も偶に彼女に会いに行くし、ケンやマリーなら『鍵』の事を除いたある程度の事情を説明すれば彼女と交流する事も出来るじゃろう』

 

 ……そんな感じでお袋はこの世界で過ごす事になったらしい……うん、やっぱり親父は今も昔も変わらない『ウルトラマン』だな。

 

「まあ、この時点で二人が惹かれあっていたのは分かっておったからな。儂もそろそろ曽孫の顔が見たかったし、二人が結ばれる手伝いも兼ねておるが」

「……色々台無しだよひいじいちゃん……」

 

 ……まあ、ひいじいちゃんの冗談はさておき、そんなこんなで親父とお袋の交流が始まったそうだ。




あとがき・各種設定解説

アーク:血統が割とヤバイ
・具体的には父親がゾフィー、曽祖父がキング、叔父がティガで母親もクトゥルフ的にヤバイ人というオンパレード。

キング:曽孫には結構甘い
・アークとは軽い冗談を言うぐらいには仲が良いが、それはそれとして試練とかはちゃんとやる。
・尚、キングがゾフィーの祖父である設定は昔の雑誌記事から流用。

ゾフィー&ティア:ぶっちゃけ二人共お互いに一目惚れ
・ただし、今の所はお互いに無自覚。

『銀の鍵』:非常に希少な異能
・その能力は“この世ならざる場所と現実を繋ぐ門を作る”というもので、その応用として時間・空間などへの鋭敏な感覚や自分の無意識領域を“固有の亜空間”として運用出来たりもする。
・希少さは一つの宇宙に一人か二人ぐらいの割合で、その殆どがこの世ならざるモノに触れて死ぬか正気を失うかが多いので不明な点も多い。
・一応所有者はこの世ならざるモノの干渉に対してある程度の耐性を持つが、あくまで耐性であって完全に無効化出来る訳では無い。


読了ありがとうございました。
ギャラファイの情報量が多すぎ&Zが佳境を迎えたので毎週土日が待ち遠しくなる今日この頃。
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