宇宙に輝くウルトラの星   作:貴司崎

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名前の意味と墓参り

「……これでゾフィーとティアの過去の内、御主に見せておくべき物は全てじゃ」

「……うんまあ、正直言って色々とあり過ぎてまだイマイチ受け入れられないけど、とりあえずありがとうひいじいちゃん」

 

 過去の光景を写していた幻術空間が消失した後、周りの風景は一番最初にに見た岩肌がむき出しの荒野に戻っていた……最もひいじいちゃんの力からして、この荒野がこの惑星の本当の姿とは限らないけどね。

 ……さて、過去映像はこれで終わりみたいだけど、まだ少し気になる事があるからひいじいちゃんに聞いてみるか。

 

「ところでひいじいちゃん、多分この後は俺が生まれるんだろうけどその辺りの映像は映さないんですか?」

「……うむ、映像として写すのはここまでだが、この後に起きた事については口頭だがちゃんと説明する。……これ以降は幻術で写すべきでは無いのでな」

 

 多分、ひいじいちゃんなりに色々と俺に気を使ってくれているんだろう……ただこう、ひいじいちゃんは見ている視点が普通の人とはかなり違うというか、むしろ親父と一緒で言葉がちょっと分かりにくいのでイマイチ何が目的なのか分かりにくいんだよな。

 ……とりあえず話はしてくれるみたいだし黙って聞いておこうか。

 

「まず、この後ティアは無事に御主を産んだのだが……並行世界での地球での戦いやその後の三千万年の眠り、そして邪神に囚われた事などによって肉体への負担が積み重なっておったからの。……出産をきっかけとして徐々に体調を崩してそのまま亡くなったのだ」

「……やっぱりそうですか……」

 

 ひいじいちゃん曰く、お袋は『銀の鍵』の力を持っていたとは言えベースが人間だったので、生粋の超人である光の国のウルトラ族と比べるとどうしても寿命はそこまで長くは無かったらしく、そこに先に言った様々な事件による肉体への負荷が重なった事で寿命はかなり短くなっていたそうだ。

 ……流石に寿命が原因では光の国の医療技術やひいじいちゃんの力を持ってしてもどうしようも無かったのだとか。怪我やエネルギーの不足はどうにか出来ても、根本的な生命エネルギーである寿命の延長は『命の固形化技術』とかを使っても無理だからな。

 

「無論、ゾフィーとティアはお互いの寿命の差を知った上で結ばれ、子供を産めば長くは生きられない事を覚悟した上で御主を産んだのじゃからな。言うまでもないだろうがそれについて御主が何か引け目を持つ事は無いぞ」

「……そのくらいはあの過去の光景を見れば俺でも分かりますよ」

 

 邪神に囚われた時もお袋はお腹の中に居た俺の事を最優先で行動してたし、親父もお袋の事を物凄く(胸焼けするぐらい)大事にしてたのは伝わったしな。

 ……ひいじいちゃんがあれ程に精巧な過去の光景を見せたのは俺にそう言った事を伝える為でもあったんだろうからなぁ……。

 

「……ただ、産まれた御主には先の邪神が自分を復活させるのに利用したからか『銀の鍵』の力が宿ってしまい、更には産まれる前に無理矢理その力を行使させられていた所為でその力が暴走状態になってしまっておってな。その力にまだ産まれたばかりの御主の身体が耐えられずに、危うくこの世から消滅してしまう所だったのだ……やむを得ず御主の力の内、母親側である並行世界の光の巨人の力と『銀の鍵』の力の大半を儂が封印したのじゃ」

「じゃあ、俺の『リバーススタイル』はやっぱりその『銀の鍵』の力が関わっているのか……って、なんか消滅仕掛けたとか言ってるけど大丈夫なのか⁉︎」

 

 その『銀の鍵』が自分の中にある事は『リバーススタイル』とかの件もあって直ぐに受け入れられたけど、消滅仕掛けていたとかは初耳なんだが! ……今、俺が生きている以上は大丈夫なんだろうが、やっぱり不安になるだろ。

 

「大丈夫だ。暴走自体は既に収まっているし、消滅仕掛けていたのは産まれたばかりの未熟な状態で暴走状態になっていたからであるから、現在の鍛え上げて成長した御主ならば儂の封印があれば消滅する事はあるまいよ。……後、御主が『リバーススタイル』と呼ぶ力は正確に言えば『銀の鍵』の片鱗を意図的に現出させた形になるが……この力はその者の魂に根付くモノである故に、完全に封じ込め続けると却って悪影響が出てしまうでな」

「成る程……という事は、何故か俺が親父に受けさせられた無駄に厳しい修練はその為か?」

 

 あの親父のM87光線(手加減)を撃ち込まれたり、ウルトラ兄弟複数名になんかスピリチュアルな事を言われながらボコボコにされる訓練もそう言う事情があったなら納得……いや、もうちょっとやり様があった様な……。

 

「まあそうなるな。御主に『銀の鍵』の力に耐えられるだけの実力を持って貰わねばならなかったからの。……ただし、御主が身も心も真の意味で『銀の鍵』を使いこなせる様になるまで、その力を含む母親の能力は封印されたままであるがな。力を使いこなせる様になったら封印は自動で解ける様にしておいたから、それまで精進すると良い」

「あ、ハイ」

 

 どうやら俺には覚醒イベントがあるらしい……親父達が訓練の時に『秘められた力を解き放て!』とか『眠っている領域にタップするんだ!』などと言っていたのはその所為なのかな。

 ……まあ、何となくだけど『銀の鍵』の力はそんなポンポン覚醒出来るものでは無い気がするし、あんまり意識し過ぎる事無く気長に行こうか。

 

「うむ、その調子で良いぞアークよ。『銀の鍵』の力は精神力に大きく左右される特性があるからな。使いこなす為には御主自身の“心”の成長が不可欠であり、それには長い時間を掛けて様々な経験を積むのが一番だろうからな。……下手に力を追い求め過ぎれば力に溺れて自滅するだろうからな」

「あ、はい……って、ひいじいちゃん心を読んだ?」

「御主の雰囲気から察しただけじゃよ。……後、もし『銀の鍵』について何かあれば、事情を知っているゾフィーか儂にいつでも相談に来ると良い。力を追い求める者が一人で悩むと大概碌でもない事になるからな」

 

 尚、ウルトラの父とウルトラの母は『ゾフィーの妻がティアである』事は知っていても『銀の鍵』については知られていないらしい……これは先にも言った通り邪神は自身を認識する生物が多い程に現実への干渉能力を増すので、俺の封印状態の『銀の鍵』を刺激しない為の措置であるとの事。

 

「……と言うか、今までリバーススタイルについて宇宙科学技術局で色々と実験やら研究とかしてけど、それとかは大丈夫何ですか?」

「ふむ、まあ『リバーススタイル』の力自体は『銀の鍵』と違ってただの空間・次元操作能力だからそこまで問題にはならんだろう。重要なのは邪神へと繋がる深淵を認識する事だからな。……光の国は『光』の要素が強すぎるから深淵の『闇』の存在である邪神達にとっては干渉が非常に難しい場所だから重度の問題にはなり難いしな。それにケンやマーブル辺りは既に察しているだろうし、この後機を見て儂の方から彼等に事情を話しておくでな」

 

 今まで報せなかったのは俺が『銀の鍵』について知らなかったからなので、それについて知った今なら教えておいても問題ないだろうとの事……あの二人であれば色々とフォローしてくれそうだしな。

 ……あのマッド達がうっかり邪神が居る深淵にアクセスしたりしないか心配だったが、これなら宇宙科学技術局に万が一の事態があっても大丈夫だろう。

 

「分かりました、ありがとうございます。……ちなみに俺の封印ってどのくらい強くなったら解けるんですか? 親父ぐらい?」

「ふむ、肉体面においてはよく鍛えられているお陰で今現在の御主の実力なら問題は無いだろうが、心の強さの方はまだまだだな。……先も言ったが、それに関しては一朝一夕でどうにかなるモノではないから、これからの宇宙警備隊員としての日々で己の心の強さを養うと良い。……御主が自分から真の意味で“ウルトラマン”と名乗れる様になれば、その時は封印が解かれるであろう」

 

 そのひいじいちゃん──ウルトラマンキングのまるで全てを見透かすかの様な目と共に告げられた言葉に対し、()()()()()()()()()()俺は思わず一瞬固まってしまった。

 ……俺がずっと内心では気にしていた事──自分が『ウルトラマン』と呼ばれるのに相応しく無いのではないかと言う事を、あっさりと言い当てられてしまったからなぁ。ちょっとだけ愚痴ってみるか。

 

「……以前トレギアさんにも『君の考え方は光にも闇にも寄っていない中庸』だと言われましたが、やっぱり俺には親父達の様な“ウルトラマン”達の在り方が尊いとは思っていても、心のどこかではそれに疑問を抱く自分があるんです。……正直、自分でも上手く言葉に出来ないのですが……」

「ふむ、心の問題に関して儂から言える事は然程多くは無い。おそらく御主の“答え”は最終的に自分で見つけ出さねばならない事だろうからな。……ただ、儂から言える事は“()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()”と言う事ぐらいだな」

 

 ……そうして、ウルトラマンキングは俺に自分の考えを語り始めた。

 

「例えば自分にとても素晴らしい親友がいたとして、その親友に憧れると同時に嫉妬もしてしまうというのは悪い事か? 或いは実力を競い合っていたライバルが自分よりも強くなったから、それに勝つ為にただひたすら力を追い求めるのは間違っているのか?」

「……ええと、内心思ったり周りに迷惑をかけない範囲でなら、悪い事でも間違っている訳でも無いのかな?」

 

 その問い掛けに対して、俺はそんな感じの曖昧な答えしか返せなかったのだが……それを聞いたキングは頷きながら話を続けた。

 

「うむ、その通り。そしてこの宇宙の殆どの生命体は御主が言った風に心の中に善悪正邪……そして光と闇を持ちながら、それらを自分の暮らす社会や環境と折り合いをつけながら生きている。……行き過ぎて周りに迷惑を掛ければ“悪”となるだろうが、そう思う事自体はごく普通で当たり前の事であるのじゃ」

「……言っている事は分かるんですけど……」

「納得はしきれんと言うのじゃろう? それならそれで構わぬ。……こういった己の心と向き合うには多くの人と触れ合い様々な経験をして、その上で自分の意志で答えを出さねばならないモノだからな。儂の言葉もその内の一つとして頭の隅にでも置いておくぐらいで良い」

 

 うむむ、まあ確かにひいじいちゃんは()()()()()()()()しか言ってないしな……やっぱり答えは自分で見つけ出すしか無いのか。

 

「まあ、この宇宙では常に光が善くて正しく闇が悪くて間違っている……などと言える程に単純なモノでは無いと言う事だ。時として“行き過ぎた光”は生物として当たり前の悪性をも拒絶する、そこらの闇よりも更に醜悪なモノになる事すらあるからな。……そういう意味では、御主の考え方は“光にも闇にも一定の理解を示せる寛容さ”と言う長所であるとも言えるだろう。決して卑下する様な事では無いと儂は思うぞ」

「……ありがとうございます。ひいじいちゃんの言っている事はまだよく分かっていないけど、これから色々と頑張っていくよ」

「うむ、それで良いぞアークよ。……そう考えられる事こそが御主の長所なのだからな。御主に“アーク”と言う名前を付けた甲斐があった」

 

 ……え? それは初耳なんだけど。俺の名付け親ってひいじいちゃんだったの? ……そんな風に疑問に思っていたら、ひいじいちゃんは何か思い出したかの様に手を打って俺の名前の由来を話し始めた。

 

「ああ、そう言えばそれはまだ話していなかったな。御主に名前を付けたのが儂じゃよ、ゾフィーとティアに『世話になったお爺様にこの子の名前を付けて欲しい』と頼まれてな。……そして“アーク”というのは普通なら『円弧』と言う意味でしか無いが、銀河の円周部分や惑星の公転軌道がその内と外を分ける事に使われるから、古い言い回しとして『境界線』と言う意味で使われる事もあったのじゃよ。まあ大分昔の言い回しだから、今では知っている者は殆どいないのじゃがな」

「そうだったんですか。……しかし、境界線ねぇ……」

「ああ、光と闇に理解を持ちながらもそれらに呑まれる事なく、確固とした己を持ち続ける事が出来る様になれ……そういう意味でつけた名前じゃ」

 

 成る程ー、うん、抽象的すぎてイマイチ意味がよく分からないけど……ひいじいちゃんの言っている事は現在の俺の状況に結構当てはまってくるし、俺が生まれた時からそんな意味の名前を付けるとか本当に底が見えないよなぁ、この人。

 

 

 ──────◇◇◇──────

 

 

 そんな訳でひいじいちゃんから親父やお袋の過去の事を伝えられた俺だが……まだちょっと気持ちを整理出来ていないので、しばらくの間黄昏ていた。

 ……まあ『とりあえず複雑な事は後で考えれば良い』と思い直して気持ちを切り替えたが、それと同時にひいじいちゃんが再び話しかけてきた。

 

「……さて、これで御主に伝えるべき事は全て伝え終わったが……最後に一つ、とある場所に行ってもらうか」

 

 そう言ったひいじいちゃんは腕を一振りすると、再び周辺の景色が先程まで見ていた自然溢れる場所に変わっていた……いや、これは幻術空間では無くて、テレポーテーションによって別の場所に移動したっぽいな。

 ……それにこの風景には見覚えがあるし、ひょっとして此処は……。

 

「そう、此処は御主の母親がかつて住んでいたK54星じゃよ」

「やっぱりか、通りで見覚えがあると……って、ひいじいちゃん本当にさっきからこっちの心を読んでない? 俺まだ何も喋って無いんだけど」

「さっきも言った通り、単に御主の雰囲気から察しているだけじゃよ。これでもそれなりに長く生きておるでな、目の前の者が何を考えているのかぐらいは読み取れる。……それよりも御主に訪れて欲しかったのはそこじゃ」

 

 そうして、ひいじいちゃんが指差した先には人間サイズの小さな“お墓”があった……ああ、成る程そういう事か……。

 

「……うむ、此処が御主の母親であるティアの墓じゃよ。彼女が生前に思い出深いこの星に埋葬して欲しいと言ってな」

「成る程、此処に連れてきたのは墓参りの為でしたか。……じゃあちょっと行ってきます」

 

 ひいじいちゃんが俺を此処に連れてきた理由を察した俺は、手早く自分の体を縮小化&人化させてお袋のお墓に向かっていった……これでも士官学校首席卒業だからな、肉体の縮小化と人化による半永久的な活動方も当然習得している。

 ……そして俺はお袋のお墓の前でしゃがんで手を合わせて目を閉じた。

 

「(……えーっと、拝啓お袋……正直ちょっとまだ貴女に何を言えば良いのかよく分からないんだけど、とりあえず貴女が俺の事を愛してくれていた事は伝わったので感謝を。色々とありがとうございました!)……終わりました」

「うむ、キチンとそういう事が出来るのも御主の長所だからな。……これで儂から御主に伝える事は全部じゃよ。これから宇宙警備隊でも頑張ると良い」

 

 相変わらず声にも出してないのにコッチの考えを読んでそうなひいじいちゃんにはもう驚かないが、これで本当にお袋の話は終わったみたいだな。

 ……さて、数日後には俺も宇宙警備隊に入隊だし、光の国に戻って頭を冷やしつつ色々と準備をしますか。




あとがき・各種設定解説

アーク:今回で色々な事が明らかになった
・ちなみにアークの見た目がゾフィーにそっくりなのは母親であるティア側……ネオフロンティアウルトラマンの力が封印されている所為で父親の特性だけが出ているから。

キング:やっぱり色々と底が知れない人
・アークに対しては自らが知る“答え”をそのまま定時する事も出来たのだが、それだと彼の成長に繋がらないため色々とボカすスタイル。


読了ありがとうございました。
ギャラファイ四話の光の国の過去は色々と衝撃でしたね。陛下と父の関係の空回りっぷりがお労しい感じだったり、2次創作オリ主系ボスのタルタロス君が原作改変に挑んだり(違)と実に先が気になります。
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