▲月Λ日
行方不明になったヒカリさんの事も気にはなるのだが俺も今は宇宙警備隊に勤める身、成すべき任務があるのならばそちらを優先しなければならないのだ。
……ヒカリさんの事はトレギアさん達に任せるしか無いだろうな……何か“妙な違和感”を感じる気もするが、正直言って気の所為か考えすぎだろうしこの件で俺が出来る事は無いだろう。
そんな訳で話を宇宙警備隊の業務の方に戻そう……今日は光の国の宇宙保安庁本部で俺は21先輩と一緒に最近この宇宙で暗躍していると思しき“【高次元捕食体 ボガール】の調査任務”を受領した。
……何でも現在この宇宙で怪獣の異常行動、複数の強豪宇宙人達の不穏な動き、非常に高いマイナスエネルギーが散発的に観測されるなど様々な異変が起き始めているらしく、少し前から宇宙警備隊全体でその調査を行なっているらしい。
そして、警備隊ではこれだけの異変が同時期に起きるのは最早偶然では無く何者かの意図が関わっていると睨んでおり、この【ボガール】も“異変の黒幕”の可能性がある存在の一人であるから今回任務で調査する事になったのだとか。
そんな感じで今日は21先輩と一緒に宇宙保安庁としての任務を受領したのだが、まずは21先輩の提案で宇宙情報局やアーカイブで【高次元捕食体 ボガール】の詳しい情報を調べる事になった。
……21先輩曰く、まず情報収集の基本はその対象について詳しく知っておく事であり、長年の宇宙警備隊の活躍のお陰で光の国に集まっている情報や資料は全宇宙でもトップクラスの質を誇る為、とりあえず詳しい情報を集める時には最初に光の国の資料を漁るのが一番手っ取り早いとの事。
そうやってある程度の情報を手に入れた上で向こうの行動パターンを絞って行って、それから宇宙に出て情報を集めていくのだとか。この広大な宇宙をしらみつぶしに探すとか無駄極まりないからな。
それで俺はアーカイブでの資料漁りに慣れているからそっちへ、21先輩は宇宙情報局の方に【ボガール】に関する詳しい資料を求めにと言った感じで手分けして資料集めを行なった。
……幸いアーカイブの【高次元捕食体 ボガール】に関する資料は割とあっさり見つかったのだが、その内容は宇宙規模の事件の黒幕と疑われるだけあって中々にとんでもない物だった。
この【ボガール】という種族は尽きることのない食欲を持ち、高い知性を持つにも関わらずその貪欲なまでの食欲のみに忠実に行動するので宇宙中で様々な事件を起こしており、警備隊でも特級の危険生物に認定されている様だ。
更に資料によると“捕食”能力が非常に高く40メートル級の怪獣すらもあっさりと一飲みにしてしまい、一つの星の生物を残らず食らう事もあると書かれていた。それに加えて個体としての戦闘能力も極めて高く、念力やテレポートや餌となる怪獣の誘引などの強力な超能力を有している個体もいるらしい。
……こうして書き並べた上での【ボガール】という種族の概要は『高い知能と戦闘能力と強力な超能力を持ち、それらを自分の食欲を満たす為だけに使う超危険生物』って感じか。何このタチ悪いヤツ。
それとアーカイブには通常の【ボガール】の他にも亜種の資料もあった……まずは超能力や高い知性を持たず群れで行動する【高次元捕食獣 レッサーボガール】という種類。
資料によると【レッサーボガール】は普段は2メートルぐらいの大きさで群れを組んで行動しているが、群れの危機が訪れると共食いを行う事で50メートル級にまで巨大化する能力があるらしい。まあ名前の通り通常の【ボガール】の劣化版の怪獣といった所かな。
そんでもってアーカイブの資料にはもう一つの【ボガール】の亜種の情報があって、そいつの名前は【高次元捕食王 アークボガール】と書かれていた……その名の通り高次元捕食者であるボガール族の頂点にしてボガールマスターの異名を持つボガール族の王だそうだ。
ただでさえ強力なボガール族の王だけあってその食欲は異常であり、資料に残っていた情報によると“惑星そのものを食べてしまう”と書かれており、更に高い知性と非常に強大な戦闘能力を持ちその性質や性格は邪悪かつ残忍であるとあった……加えてその資料にはこの【アークボガール】は、かつてあの【暗黒宇宙大皇帝 エンペラ星人】が率いる怪獣軍団の大幹部暗黒四天王の元邪将だったという凄まじい厄ネタ情報まで載っていたのだ。
ただ、資料には他の四天王たちやエンペラ星人閣下の命令を無視して自分かってに本能の赴くまま宇宙各地の惑星をそこに住んでいる生命体ごと食い荒らし続けていた為、エンペラ星人閣下と残りの四天王メンバーによりブラックホールに追放、封印されていて『ウルトラ大戦争』には参加していなかったらしい。見つけた資料に載っていた情報もその後の追加調査で入手した物みたいだったな。
……と、今日一日掛けてアーカイブを漁ってみたらこんな感じの【ボガール】に関するヤバい資料がじゃんじゃん出て来たからな。嫌という程【ボガール】の脅威は理解出来た。
これまでの研修とは違い俺にとっては初めての宇宙保安庁での任務になるが中々にハードな任務になりそうだな。気を引き締めて行かないと。
──────◇◇◇──────
「……これが今日アーカイブで集めた【ボガール】に関する資料になります」
「分かった、見せてもらう。……しかし、よくたった1日で情報の坩堝であるアーカイブからこれだけの資料を集められたな」
「アーカイブには何度も訪れた事があってそれなりに慣れていますから」
翌日、俺は集めた【ボガール】に関する資料を21先輩の所まで持っていった……その際、資料の多さにちょっと驚かれたが、アーカイブは光の国が集めた情報が片っ端から詰め込まれていて、更に職場としては不人気な所為での人員不足もあって余り整理がされておらず欲しい情報を見つけるのには結構コツがいるからな。
……まあそれは置いておいて、俺も21先輩が宇宙情報局から取り寄せた【ボガール】の資料を見ておこうか。情報局は警備隊が入手した各種情報を整理・保管する所でもあるから、ボガールの生の目撃情報とかはこっちの資料に詳しい筈……。
「……【ボガール】の目撃情報や【ボガール】が起こしたと
「ああ、この【ボガール】は食欲のままに行動する所為で隠蔽なんかは一切考えていないから目撃情報自体は多いんだが、“高次元捕食体”と言うだけあって強力なテレポート能力……それも次元移動クラスの力を有しているらしくてな。お陰で討伐隊を編成しても直ぐに逃げられるし、現在位置が分からない様だ」
資料によると【ボガール】は高い戦闘能力を持っているから、偶々遭遇した隊員が単騎で挑んで返り討ちに遭うケースも何度かあるみたいだな。だから【ボガール】に遭遇した場合、まずは各支部に連絡して援軍を要請する事が推奨されていると。
……ただ、討伐隊を編成している間に【ボガール】を見失ってしまう事も多い様だがな。単騎で挑むならウルトラ兄弟クラスの実力が必要だし、討伐隊とか組むにも時間が掛かるからしょうがないんだが。
「行動パターンとしては自分だけで相手に出来る敵には躊躇なく戦い、敵が相手に出来ない戦力の場合には直接戦闘を避けて即座に逃亡するのか……【ボガール】レベルの次元移動能力と戦闘能力と知能を持つ相手にそんな事をされると捉えきれないか」
「普通の力と知恵がある宇宙人はその実力故にプライドも高く“逃げる”という選択を躊躇なく取る事は少ないんだが、コイツは高い知性を有していても行動原理が“食欲”しか無いが故にそういったプライドは殆ど無い様だな。……そういうプライドがあったり目的があったりする相手なら行動パターンを絞る事は容易いんだが、コイツは完全に“食欲”だけで行動しているからな」
情報局の資料にも一つの支部で目撃されたと思ったら直ぐに逃亡されて、また今度は別の支部で目撃されるとか言うレベルのフットワークの軽さを誇るみたいだからな。
「……というか、美味いものを見つけたらとにかく食べに行って、それを食べ終わったらテレポートしてまた別の美味いものを探してるみたいだから行動パターンの読み様が無い気が……」
「いや、そうでも無いさ。……この【ボガール】の逃亡時に狩場となる惑星を移すのは討伐隊が組まれた時などの“自分一人だけでは絶対に勝てない”状況だけで、自分一人でも対応できる状況なら逃げる際にその狩場となる惑星内という極狭い範囲しか移動しない様だ。……これらの事からコイツの性質には“その食欲からか一度狩場に指定した場所には相当な執着心を抱いている”事が読み取れる」
……ふむ、確かに資料をよく読んでみると【ボガール】にはそういう性質があるみたいだな。いざとなったら逃げる事に躊躇はしないが、最優先なのは何はともあれ食欲を満たす事って感じか。
「だから、コイツの今までの食癖から狙われそうな場所をピックアップしつつ情報を集めて捜索。発見出来たら俺が囮として単独で交戦して時間を稼ぎつつ、アークが極秘裏に援軍を要請して一気に叩くといった感じか」
「成る程……俺と21先輩で一気に倒すというのは?」
「それが出来る相手ならそうするが、おそらくそこまで甘い相手ではないだろう」
「分かりました」
流石は21先輩、宇宙保安庁としてのプロの仕事だぜ。こう行った情報収集や情報処理の仕方とかも身につけないと行けないな。
──────◇◇◇──────
▲月Ω日
本日、ようやく【ボガール】の行動パターンに関する情報が纏まった……ちなみに情報の纏めては殆ど21先輩の仕事である。この辺りは経験がモノを言うから俺だとイマイチ役に立てなかったな、今後頑張ろう。
そして肝心の【ボガール】の行動パターンは主に大型の怪獣を餌としていて、更に知的生命体が居る惑星を優先して狩場にしている事が分かった。
……俺も【ボガール】自体が40メートル以上の大型生物だからそれに見合う大型怪獣を餌とするのは資料を見れば分かったが、知的生命体が居る惑星を狙っているのは初見だとちょっと分からなかったな。
21先輩曰く、どうも【ボガール】は擬態能力を活かしてその惑星に住む知的生命体の文明圏に紛れ込んで追跡を躱す事があるらしく、知的生命体が居る惑星を優先しているのは宇宙警備隊の様な追手から逃れやすいからだろうとの事。
この“変身能力を使った文明圏への紛れ込み”は多くの宇宙人が使うから覚えておいた方が良いと言われた……というか、ウルトラ族も地球とかでやってるよなコレ。
……そう言った連中を見分けるコツとかも道中説明すると21先輩に言われたりした後、俺は【ボガール】の調査の為にウルトラの星を飛び立ったのだった。
──────◇◇◇──────
◉月α日
今日はM25星雲支部で聞き取り調査を行った……何でも以前の【ディノゾール】達の異常行動事件は【ボガール】によるものであるらしく、この支部の隊員であるセドンと言う人が遭遇・交戦したそうなので話を聞く事にしたのだ。直接交戦した者の生の意見は重要だからね。
そのセドンさんに聞いた話によると、まず【ボガール】が現れたのは“惑星ポントス”という表面積の九割が海に覆われた海洋惑星で、そこには銀河連邦に加入している水棲可能なヒューマノイドタイプの生物“ポントス人”が文明を築いていおり……そして例の【ディノゾール】の群れが事件の時に標的へと選んだ惑星であったそうだ。
事件の際には真っ先に自分達の惑星に【ディノゾール】の群れが接近している事に気付き銀河連邦と宇宙警備隊に報告、それから協力して群れを別の無人惑星に誘導したのだと言う。
……それで群れが誘導された原因の調査も一緒に行ったのだが、そこでポントスに生息していた【ゲスラ】【ツインテール】【ガンザ】【タガール】などの水棲怪獣がポントスに侵入していた【ボガール】に捕食されていた事が明らかになったのだ。
侵入された好き勝手に捕食活動をされて気付かなかったと思うかもしれないが、ポントス人は基本的に惑星上では一割の陸地とその周辺の海洋に文明を作っており活動圏は惑星内の三割程度で、残りの七割は水棲怪獣達の住処としてお互いに不可侵にする事で住み分けて緩やかな共生関係を築いていたので気付く事が遅れたらしい。
……どうもポントス人が宇宙のコロニーに主となる生息圏を移してから数千年近く共生が上手くいっていた為に監視が緩んでおり、更に【ボガール】は文明圏には一切手を出さなかった事も原因の様だが。
事態が発覚してこのまま怪獣が捕食され続ければ“お互いに不可侵”というバランスが崩れてしまうと考えたポントス人は、調査に同行していたセドンさんと協力して【ボガール】の討伐を試みたのだが、その圧倒的な戦闘能力にセドンさんが負傷してポントス人の討伐隊も大打撃を受けて撤退に追い込まれたそうだ。
……まあ、セドンさんは事前にM25星雲支部に援軍の要請を出していたので直ぐに援軍が来て、それを察知した【ボガール】は形勢が悪くなったと判断したのか、或いはもう十分に食ったと思ったのかあっさりと惑星ポントスから姿を消したと言う。
話を聞く限り【ボガール】には『銀河連邦加盟レベルの技術力を持つ惑星に侵入出来る隠密能力』『事態の発覚を送らせる為に文明圏を狙わない悪知恵』『その惑星の戦力+宇宙警備隊員を退ける戦闘能力』がある様だ……改めて見ても面倒過ぎる。
ただ、そんな悪知恵があるのに【ディノゾール】の群れを呼び込むという目立つ行為をしたのが何故か気になったのだが、セドンさんの証言によるとヤツは『せっかく餌を呼び込んだのに邪魔をしてくれて忌々しい。……だがもうこの惑星の餌には飽きた』と言っていたらしいから、おそらく最後に派手にやろう程度の気持ちでやった事なんだろうと21先輩は推測していた。
……つまりは『力と知恵があるのに食欲に任せて短絡的な行動を取る』という人格らしい様だ。資料を見た時点である程度予想できていたが本当にタチの悪いな。こんな相手を放置して置くわけにもいかないしな、なるべく早く何所を突き止めないと。
あとがき・各種設定解説
アーク:資料集めで活躍
セブン21:思ったより新人が優秀なので内心驚いている
・実はアーカイブでの情報入手は難易度が高いので宇宙保安庁でも利用者が少ない。
惑星ポントス:本作オリ惑星
・ポントス人の外見は水棲行動可能なエラっぽい器官や水かきがある地球人サイズの人型で、主な産業は養殖した海産物や水棲怪獣との共存の為に発達した水環境関係の技術の資材の輸出など。
・ただ、怪獣とは住み分けによる共生という道を選んだので武力に関してはそこまで高くなく、惑星防衛の為に銀河連邦に加盟した。
・作者的には、この宇宙にあるまあ一般的な知的生命体の文明がある惑星の一つをイメージして設定した感じ。
セドン:モブ警備隊員
・宇宙警備隊の中堅どころ隊員で戦闘能力的にはそこまで高くないが、ウルトラ族としては珍しく泳ぎが得意で水中戦に長けているので惑星ポントスの担当に選ばれた。
・作者的には趣味は水棲惑星での水泳とか考えているが今後の登場予定は未定。
【高次元捕食体 ボガール】:現在M78スペースで活動中
・惑星ポントスでの行動は大体21の推測通りで、本人的にはシーフードを食べに来たが食い過ぎて飽きた感じ。
・餌を狩る時や“食事”の時には本能・食欲に忠実に行動するが、それ以外の時には色々と悪知恵を働かせて自分が行動しやすい様にしている。
読了ありがとうございました。
ギャラファイも第2部が終わり第3部が始まる今日この頃。6兄弟の活躍やらコスモミラクル光線だとか本当にファンサービスが過ぎる(褒め言葉)