宇宙に輝くウルトラの星   作:貴司崎

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彼等の戦い

 ──────◇◇◇──────

 

 

 火山怪鳥 バードン

 宇宙斬鉄怪獣 ディノゾール

 ハンターナイトツルギ 登場

 

 

 ──────◇◇◇──────

 

 

 大熊山で起きた【火山怪鳥 バードン】とメビウスの戦いが終わった翌日、その際に太平洋上へと逃げたバードンはそこでGUYSオーシャンの攻撃を受けて再び日本へと舞い戻っていた。

 それを知ったGUYS JAPANは進行予想地点の住民を避難させると共に、日本の領海に入ったバードンの撃破をCREW GUYSメンバーに出撃を命じていた。

 

『ガンフェニックス! バーナーオン!!!』

 

 GUYS JAPANの本拠地【フェニックスネスト】よりCREW GUYSが誇る多目的戦闘機『ガンフェニックス』がバードンを倒すべく空へと舞い上がった

 ……事情が事情とは言え前回はほぼ何も出来ず、更に隊員の一人がバードンの毒にやられた事もあってCREW GUYSメンバーの士気は高く、研究によって発見された()()()()()()()を突く作戦がもあってやる気十分に戦闘へと向かっていった。

 

「…………」

 

 ……視点は変わってバードン上陸の可能性が高いとして住民が避難されたとある漁村。その近くにある小高い岡にガンフェニックスが太平洋に向かって飛翔していく所を見上げる一人の金髪の男性の姿があった。

 ……言うまでもなく彼は宇宙警備隊員アークの人間態であり、彼はガンフェニックスを見送りつつも周囲を念入りに警戒していた。

 

「……近くにボガールの気配は無しか。前回の件もあって警戒しているのか?」

 

 彼がここに居る主な理由はバードンが再び日本に近づいている事を察知したので、再びボガールがバードンを餌として狙うのではないかと考えて警戒する為であった。

 ……また、前回のバードンとの戦闘でメビウスが猛毒を貰ってしまった以上、今回変身して戦う事は難しいだろうと考えて、万が一の時は自分がバードンの相手をする事も理由としてあった。

 

「とはいえ、宇宙警備隊的には要請も無いのに怪獣を倒しに出撃は余り良い事ではないので、まずはCREW GUYSに任せる事になるが。……地球での『ウルトラマンのお約束』と言うやつだな」

 

 ちなみにこのお約束は『基本的に地球の防衛は可能な限り地球人に任せる』という配慮と、『銀河連邦に加盟しておらず救援要請も出ていない(出せる事を知らない)星での活動は控えるべき』という不文律と、『それでも地球人を助けたい』というウルトラマンの心情が合わさった折衷案というのが大きい。

 ……そうして地球での基本方針を『基本的に宇宙警備隊員として行動しつつ、イレギュラーが起きたら先人達(ウルトラ兄弟)に倣う』様にする事を再確認したアークはウルトラ族的超感覚を駆使して、とりあえず今は海上におけるCREW GUYSとバードンの戦いを見守る事にした。

 

「キャシャァァァァッ!!!」

 

 まず、接近するガンフェニックスに気が付いたバードンが“アレはさっきコッチを攻撃して来たヤツ(GUYSオーシャンのシーウィンガー)と同じ敵だ”と判断して、撃墜するべく口から超高温の火炎を吐き出した。

 

『ガンフェニックス! スプリット!!!』

 

 だが、ガンフェニックスの方も咄嗟に機体を真ん中から分離する事で火炎を回避した……そして、そのまま前半分を構成していた攻撃戦闘機『ガンウィンガー』と、後ろ半分を構成していた多用途重戦闘機『ガンローダー』に分かれてバードンへと攻撃を開始した。

 

『ウイングレットブラスター!!!』

『バリアブルパルサー!!!』

「キシャァァァァァァッ!!!」

 

 搭乗しているGUYSメンバーの操作によって、ガンウィンガーの熱線砲『ウイングレットブラスター』とガンローダーの重粒子砲『バリアブルパルサー』がバードンに放たれるが、“最強の地球怪獣”の一体とも言われる鳥型の怪獣であるバードンはその異名に恥じない空中機動力でそれらの攻撃をあっさりと回避して見せた。

 ……それを見たGUYSメンバーの一人アイハラ・リュウは現在の形態『クルーズモード』では“作戦”を実行する事は不可能だと判断し、隊長であるサコミズ・シンゴにガンフェニックスに秘められた()()()の使用許可を求めた。

 

『メテオール解禁!』

『パーミッション・トゥ・シフト! マニューバ!!!』

 

 そして隊長からの許可が降り、それと同時に搭乗しているGUYSメンバーが操作を行うとガンウィンガー・ガンローダー共に機体の一部を展開・変形させた……これこそCREW GUYSの切り札とも言えるかつて地球に訪れた異星人の技術を解析して得られた『メテオール』であり、それを運用する為の形態『マニューバモード』である。

 ……そうして解放されたメテオール(異星技術)によりガンウィンガー・ガンローダーは黄金の光を放ちながら、空中に残像を残す程の戦闘機とは思えない超起動──異星人の宇宙船の航行技術を再現した超飛行能力『ファンタム・アビエイション』でもってバードンへと襲い掛かった。

 

『作戦通りマリナとテッペイのガンローダーはバードンの動きを止める事に集中! その隙に機動力のある俺とジョージのガンウィンガーで接近してヤツの顔に付いている()()を狙い撃つ!』

『了解!』

『OK!』

『了解!』

 

 ガンウィンガーに乗るリュウがそう指示を出した直後、まずガンローダーがバードンへとその動きを止める様に射撃を行って牽制していく……そう、彼等CREW GUYSの作戦とはバードンの顔と毒袋を繋ぐ『毒腺』にある血管を破壊する事で、毒袋内部の猛毒をバードン自身に逆流させて倒すというものなのだ。

 初戦の大敗からGUYSは過去の怪獣頻出期の防衛チームと比べて平和ボケしているなどと一部では言われる事もあるが、その平和な時間によって過去の防衛チームが戦った怪獣のデータや戦訓を『ドキュメント』という形に纏めており、それらの情報を参考・応用する事でより有効な(トリモチ作戦とかでは無い)作戦を立てる事が出来ているのだ。

 ……そして、それを遠目から見ていたアークもガンウィンガー・ガンローダーの動きからCREW GUYSの作戦に気が付いていた。

 

「……成る程、バードンの毒腺を狙うのか。確かにその方法ならバードンを倒すのに大火力は要らないし、海上でなら猛毒の流出による人的被害は最小限に抑えられるか。ちゃんと陸地にバードンが飛来する可能性も考えて毒による人的被害が発生しない様に避難も出来てるし……流石は地球の防衛チームだな」

 

 ちなみにアークは地球の防衛チームの事を『ウルトラ兄弟すら死ぬ事が割とある超高難度魔境に現れる怪獣・宇宙人から自分の星を防衛し、尚且ついくつかの怪獣は自分達で倒せるレベルの超精鋭部隊』と認識している。

 ……それはともかく、CREW GUYSが駆るガンウィンガー・ガンローダーはマニューバモードの()()()を活かしたドックファイトによってバードンを徐々に追い詰めていった。

 

「キシャァァァァァァッ!!!」

『直線速度はまだ向こうの方が上だけど、マニューバモードの運動性を活かせば!』

 

 マニューバモードのファンタム・アビエイションは“残像を残しながら空中で横滑りする”様な機動も可能であり、あくまでも地球上の鳥類をスケールアップした飛行しか出来ないバードン対し運動性なら上回っているのだ。

 ……そうしてガンローダーが緩急を付けた機動で付かず離れずの距離を動き回りながらバードンの注意を引いている隙に、ガンウィンガーがバードンの毒腺を狙える顔の正面に接近しようとしていた。

 

『よし! 今の内に毒腺まで接近する! ジョージ、外すなよ!』

『誰に言ってる!』

 

 そして、バードンがガンローダーに注意を向けている間に、ガンウィンガーは空中にいくつかの残像を残しながらバードンの顔の前まで接近して毒腺を狙い撃とうとし……その直後、ガンウィンガーのマニューバモードの制限時間である1分が過ぎてしまい、元のクルーズモードに戻ってしまったのだ。

 ……未だに地球の科学力では完全に解析出来ていないメテオール(異星技術)は安全性や機体への負荷などへの関係で1分間しか使用出来ない制限が掛けられているのである。

 

『クソッ⁉︎ 時間切れか!!!』

『それより前ッ⁉︎』

「キシャァァァァァァ!!!」

 

 あと少しの所で! と毒づくリュウだったが、後ろのジョージの声と正面から迫り来るバードンの叫び声にこのままでは激突すると慌てて操縦桿を切った……だが、接近し過ぎていた事で回避は完全には間に合わずガンウィンガーの翼端にバードンの突撃が掠ってしまい、撃墜こそされなかったものの飛行能力が大きく落ちてしまったのだ。

 ……更にバードンは同じくクルーズモードに戻ってしまったガンローダーに火炎を吐きかけてダメージを与えて遠ざけると、一気に海上スレスレを高速で飛行してCREW GUYSを振り切り漁村……の近くにあった小山に激突した。どうやらスピードを出し過ぎたらしい。

 

「……キャッシャァァァァァ!!!!」

 

 だが、流石は地球最強レベルの怪獣だけあってバードンは特にダメージを受けた様子も無く、そのまま立ち上がって村の人が避難している場所──餌がある方向へと歩いて行った。

 

「……ここまでかな。仕方ない……」

 

 その戦いを見ていたアークはもう自分が変身するしかないかと考えて右腕に『アークブレス』を展開し、それに左手を添えて変身の態勢を取った……が、その直前にまるでメビウス()の輪の様に見える光の塊がバードンの前に飛来した。

 ……そして、その光の中から右腕を天に掲げたポーズのメビウスが現れたのだ。

 

「キシャァァァァ!?」

「セヤッ!!!」

「メビウス⁉︎ ……アレ? 毒は……」

 

 猛毒を食らっていた筈なのにいきなり現れたメビウスにアークも一瞬驚くものの、とりあえず来た以上は彼に戦いを任せようと変身を取りやめた。

 ……そんなアークが見ている事など露知らずメビウスは2回目となるバードンとの戦いに挑んでいくが、その動きは明らかに精彩を欠いておりバードンの強力な格闘攻撃と火炎によってあっという間に追い詰められてしまっていた。

 

「シェアッ!?」

「キャッシャァァァァァ!!!」

「……やっぱりまだ毒が抜けてないな」

 

 そう、アークが言った通りメビウスの身体は未だに以前のバードンの猛毒に蝕まれ続けており、思うように身体が動かない状態だったのだ……それでもCREW GUYSメンバーと民間人の窮地に無理を押して変身したが、そんな状態でバードン相手にタイマンでは勝てる訳もなく、遂にはエネルギーの枯渇を示すカラータイマーまで鳴り始めてしまった。

 ……それを見たアークは再び右腕を上げて変身態勢に移ろうとしたが、それよりも早く地面に膝をついたメビウスに対してバードンが地上スレスレを高速飛行して再び猛毒の嘴を突き刺そうとした。

 

「キシャァァァァァァッ!!!」

「ヘアッ⁉︎」

「チッ!」

 

 猛毒に侵されて動きが鈍っているメビウスではその攻撃は躱せないと判断したアークは即座にクリスタルサークルを回転させて変身しようとし……それよりも早く地上からメビウスに放たれた()()()()を見て咄嗟に変身を中断した。

 その光弾はバードンよりも早くメビウスの頭上に到達すると青色の立方体型バリアフィールドとなって彼を囲み、突っ込んで来たバードンを弾き飛ばしたのだ。

 ……それを見たメビウス(とアーク)が光弾が飛んで来た場所を見ると、そこには戦闘機から降りて地上に展開していたCREW GUYSのメンバーの一人──アイハラ・リュウがトライガーショットを構えている所だった。

 

「おい! ウルトラマン! ……俺はなぁ! たった一つしかない自分の命を粗末にする様なヤツに! この星を守って貰おうだなんて思わないっ!!!」

「…………」

 

 そして、彼のその言葉を聞いたアークは無言でクリスタルサークルの回転を止めてからブレスを消し、この戦いに関しては完全に静観の構えを取った。

 ……その後は、まずCREW GUYSの言葉に奮起したメビウスがバードンを抑え込み、そこをCREW GUYSメンバーがトライガーショットの貫通力特化弾『アキュートアロー』による一斉射撃でバードンの毒腺を破壊して毒を逆流させた。

 

「キシャァァァァァァ!?」

 

 それによってバードンは自分自身の毒で悶え苦しんで動きが大きく鈍り、その隙にメビウスが左腕の『メビウスブレス』のクリスタルサークルを回転させてエネルギーをチャージし、地上のCREW GUYSメンバーはトライガーショットに『キャプチャーキューブ』──先程メビウスを守った最大1分間攻撃を遮断する立方体のバリアを展開するメテオール──をセットした。

 

「ハァァァ……セヤァッ!!!」

「「「キャプチャーキューブ!!!」」」

「キャシャァァァァァァァァ……」

 

 そうしてチャージが終わったメビウスの必殺技『メビュームシュート』が悶え苦しむバードンに直撃し、その直後にCREW GUYSメンバーが放ったキャプチャーキューブが爆発するバードンを包み込み猛毒が周囲に飛散する事を完全に抑え込んだ。

 ……そうやって周囲への被害を防いだ上でバードンを撃破してみせたメビウスとCREW GUYSメンバーを見たアークは、彼等がサムズアップとかしてるのを横目にさっさと踵を返してその場から立ち去っていった。

 

「やれやれ、どうも今回の俺の行動は完全に余計なお世話だったみたいだな。地球に関しては()()に任せておけば大丈夫そうだな。……しかし、あれが親父の言っていた“人間とウルトラマンの絆”ってヤツか……ちゃんと『ウルトラマン』やれてるじゃないか、メビウス」

 

 ……去り際に少し嬉しそうな声音でそんな独り言を零しながら、アークは足早にその場を後にしたのだった。

 

 

 ──────◇◇◇──────

 

 

 ……そんな事があってから暫く過ぎたある日、地球の衛星軌道上に宇宙から一体の怪獣が接近して来ていた。

 

「ギャァァァ……」

 

 その怪獣はかつて地球を襲ってウルトラマンメビウスに倒された【宇宙斬鉄怪獣 ディノゾール】の別個体であり、以前に現れた個体と同じ様に地球に居るボガールが自身の餌にする為に呼び寄せられたモノだった。

 ……そのディノゾールは自分を呼び寄せた者が何者かなどは気にせず(水素)が豊富な惑星に向かって行き……突如横合いから放たれた()()が直撃した事によって地球へとたどり着く事は出来ずに爆散したのだった。

 

「……ボガール……ッ」

 

 その光線──ナイトシュートを放った青い巨人『ハンターナイトツルギ』は後ろを向き、今のディノゾールを呼び寄せたボガールが居るであろうを地球を憎々しげに見つめていた。

 ……だからだろうか、彼は後ろから猛スピードでやって来た()()()()()()()()()()()に気がつくのが僅かに遅れてしまったのだ。

 

「……ギシャァァァァァァッ!!!」

「ヌゥ!?」

 

 既に同族がやられているからか最初から戦闘状態で突っ込んで来るディノゾールに対して、ツルギは咄嗟に右腕の『ナイトブレス』から光剣を展開して迎え撃とうとした……が、それよりも早く念力で制御された三枚の八つ裂き光輪(ウルトラスラッシュ)が、それぞれ違う方向からディノゾールに向かいその身体をバラバラに斬り裂いて爆散させた。

 

「……やぁヒカリさん、探しましたよ」

「……アークか」

 

 その爆発を振り払って光輪が飛んで来た方向を向いたツルギが見たのは、右腕にブレスを付けた赤と銀の肉体を持つウルトラ族──宇宙警備隊員アークの姿だった。

 ……彼はさっきのナイトシュートの際のエネルギー反応をキャッチして『ようやく本来の任務を果たせる』と急いで地上から衛星軌道上まで上がり、ツルギに声を掛けるついでに襲い掛かろうとしていたディノゾールを倒したのだ。

 

「……とりあえず、こんな所で話すのもアレなので一旦地上に戻りませんか?」

「…………」

 

 ……そのアークの提案に対してツルギは無言のまま青い光に包まれて地上へと降りていき、それを肯定だと受け取ったアークも彼の後を追って同じ様に地上へと降りたのだった。




あとがき・各種設定解説

アーク:今回は殆ど傍観者
・とりあえず地球の事はほぼ完全にメビウスとCREW GUYSに任せる方針にしたので、ボガールとヒカリを探すのに集中して漸く見つけた感じ。
・彼にとっての『ウルトラマン』とは高い戦闘能力とかでは無く、“ウルトラマンらしい行動”が出来るかが重要だと思っている。

メビウス&CREW GUYS:漸く『ウルトラマンメビウス』となった回
・GUYSのマシンとかメテオールの名前はカッコいいのが多いので、ついつい長ったらしく解説してしまった。
・今の所はほぼ原作と同じ展開になっている。

バードン:雑に戦っても強い種族値の暴力
・ボガールが手を出さなかったのは『高速で飛べるしそこそこ強いしで狩るには手間が掛かるな。もっとお手軽に狩れるヤツにするか』と考えたから。

ディノゾール:かませ

ハンターナイトツルギ:ボガールへの嫌がらせに余念がない
・アークとの会話がどうなるのかは次回。


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