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高次元捕食体 ボガール
マケット怪獣 エレキミクラス 登場
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「……ええと……こっちかな?」
日本のとある都市、その少し寂れた人気の無い街並みの中でCREW GUYSの一員であるヒビノ・ミライ隊員は、何時もの目立つデザインの制服ではなくごく普通の私服に身を包んでまるで
……今更言うまでもないかもしれないが、彼の正体は今地球で話題の新しいウルトラマン『ウルトラマンメビウス』であり、この人間の姿は彼が地球に来る前に出会った人間をモデルにした擬態──所謂、世を忍ぶ仮の姿というヤツである。
「……確か、この辺りから
そして何故今はCREW GUYSに勤めている彼が私服でこんな所にいるのかと言うと、先日のファントン星人の一件の際に謎の青い巨人──ファントン星人から聞いた話によるとハンターナイトツルギ──の光線から街を守った謎のエネルギーが、彼が光の国に居た頃の友人であるアークのものだったのが原因である。
……少なくとも宇宙保安庁に勤めていた筈の彼が何故地球に来ているのか、そしてあのハンターナイトツルギやボガールと何か関係があるのかなどを聞き出す為、ちゃんと隊長と補佐官に申請を出してから有給を取って街へと探しに来たのだ。
「……アーク人間態への擬態が上手かったからなぁ……それに宇宙保安庁に入った事で腕を磨いているみたいだし『そう言ってくれるのは嬉しいな、メビウス』ッ! アーク⁉︎」
そんな風に道を歩いていたミライだったが、突如として脳内に探しているアークの声──宇宙警備隊で使われている波長のテレパシーが届いた事で慌てて足を止めて辺りをキョロキョロと見回し始めた。
……そんな彼の様子を何処からか見たのか、アークのテレパシーは更に続けられた。
『あー、今お前がいる場所から100メートルぐらい離れた所にある喫茶店、そこに俺は居るから。……そこで今回俺が地球に来た理由やあのボガール、ハンターナイトツルギに関して俺が知る限りの事を話すよ』
「……分かった」
そうしてミライはアークのテレパシーが飛んできた方向に向かっていき、彼の言った通りに100メートルぐらい進んだ所にあった喫茶店を見つけたのでそこに入っていった……そして、その奥の方にあるボックス席で軽く手を降っている金髪の男性を見つけた。
「よう、久しぶりだなメビウス。まあとりあえず座れ」
「久しぶりだね、アーク」
……こうして彼等は士官学校での卒業式以来、ウルトラの星から遠く離れた地球にて久しぶりの再会を果たしたのだった。
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「それで何か頼むか? ここのコーヒーとケーキは意外と美味しかったぞ」
「……随分と地球を満喫してるねアーク。とりあえずカフェオレを一つ」
さて、そんな訳でようやく地球で再会した俺とメビウスはそのまま和やかに団欒……する訳もなく、俺の前に座ったメビウスがいつになく“真剣な表情”でこちらを見ているので、俺達の間の空気は喫茶店の食事を楽しむ様な物ではない真剣な物であった。
……まあ、事情はどうあれ地球に赴任したコイツに黙って地球で活動していたのは事実だからしょうがないんだが。
「それでアーク、宇宙保安庁所属の君がどうして地球に?」
「勿論、任務の為だ。……地球にやって来たボガール、そしてそれを追って来たハンターナイトツルギ──宇宙科学技術局長官のヒカリさんを連れ戻す為にやって来たんだ」
そうして俺はメビウスに対して『宇宙科学技術局長官ヒカリの保護』の任務を受けてから、これまでにあった捜索状況やヒカリさんとの会話、ボガールとの交戦情報などを含めてほぼ全て話していった。
……途中『そんなに早く地球に来たのなら、どうしてもっと早くに僕へ連絡を入れなかったんだ?』と聞かれたが、隊長からなるべくお前の任務を邪魔しない様にしろと言われたのと、まだ地球に不慣れな状態のお前に負担を掛けたくなかったんだ……だってメビウス、地球赴任直後は色々テンパってたじゃんと言ったら恥ずかしそうに顔を手で覆って黙ってしまった。
……うむ、少しからかい過ぎたかな。ちょっとフォローを入れておくか。
「まあ、最近はGUYSの皆さんと協力してちゃんと『ウルトラマン』をやってるんだから、過ぎた事をあんまり気にし過ぎるなよ。……俺も本格的にヒカリさんと接触したからだけじゃなく、今のお前なら伝えても問題ないと思ったからこうして事情を話そうと思ったんだし」
「うん、ありがとうアーク。……って! それよりも
「おおうっ!!!」
フォローを入れて喜んだと思ったらいきなりなんだ? “セリザワさん”って一体誰なんだ? ……とりあえずちょっと興奮しているメビウスを落ち着かせて情報を聞き出すことにした。
「ええと、リュウさん──僕と同じGUYSメンバーの一人がかつてGUYSの隊長だった“セリザワ・カズヤ”っていう人がハンターナイトツルギに変身する所を見たって話をここに来る前に聞いたんだ」
「成る程……確かに彼は地球に来た時に『死にかけていた防衛チームの地球人の身体を借りた』って言ってたからな。要はその“セリザワ”って人の身体を借りて行動しているんだろう」
……うむむ、GUYSメンバーに防衛隊員さん──セリザワ氏の同僚がいるとはな……さて、どうしたものかな。多分ヒカリさんは身体から出て行く気は無いだろうし、そもそも今ヒカリさんが出て行った場合だとセリザワ氏の肉体が無事に住む保証は無いし。
だからと言って融合したまま戦い続ければ当然セリザワ氏は危険に晒される訳で……それを基本お人好しでGUYSメンバーと絆を結んでいるメビウスが見過ごすかどうか……。
「はっきりと言うが、俺の基本方針はヒカリさんにボガールへの復讐を遂げさせる事で穏便な形であの“復讐の鎧”を排除、その後に彼を光の国へと連れ帰る事だ。……その際になるべく地球への被害は出さないつもりだが、セリザワ氏に関しては正直言って扱いが難しい。死に掛けた人間を融合で回復させるには相応の時間が必要だしな」
「それは……でも、融合したままのウルトラマンが死ねば……」
「融合している人間も危険になるだろうな。……ただ、ヒカリさんはボガールを倒す事をやめる事は無いだろうし、あの“復讐の鎧”が邪魔で無理矢理分離させるのも難しいだろう。それ以前に復讐を妨害しようとしたら彼に敵認定される可能性も高いんだが」
「ッ⁉︎ …………」
俺のその言葉を聞いたメビウスは複雑そうな表情で何かを考えながら黙り込んでしまった……まあ、一見複雑で面倒に見える問題ではあるが、
「要はボガールを犠牲無しでサッサと倒してしまえばいい事なんだがな。今のヒカリさんはボガールを倒す事が最優先だから、その手伝いをする事自体は止めないだろうしな。……それに本懐を果たさせてやれば“復讐の鎧”の怨念も成仏出来るだろうし、そうすれば鎧の排除やセリザワ氏の分離も問題は無いだろう」
「そうか! 僕とGUYSのみんな、それにツルギやアークが協力すれば誰も犠牲にならずにボガールを倒す事だって出来るよね!!!」
まあ、問題は『ボガールを倒す事が最優先』のヒカリさんと『地球を守る事が優先』なメビウスとGUYSの皆さんの方針が上手く纏まるか何だが……もしもの時は俺がヒカリさんを止めるしか無いだろうな。
……まだ上手くいかないと決まった訳じゃ無いし、『ボガールを倒す』という一点であれば利害は一致する筈だから纏められない事は無いだろうが……ただ……。
「……済まんがメビウス、今の俺は前回の一件で肉体にダメージを負っているから後一週間ぐらいは変身出来ん。流石に変身途中で殺意溢れる光線にぶつかるのはキツかった……」
「ええぇ!? ……何でわざわざ変身せずにぶつかったのさ?」
「しょうがないだろう、光線の発射タイミング的に変身がちょっと間に合わなかったんだから……ッ⁉︎」
「……ッ⁉︎」
そんな話をしていた俺とメビウスだったが、突然何か
「アーク! 今のは⁉︎」
「ああ! ボガールのエネルギー波だ! ……餌を食い損ね過ぎて腹が減り過ぎたのか、もう完全に隠れる気は無いと見えるな」
探知装置を使わずとも分かるぐらいに二つの気配は非常に剣呑なものである、おそらくは直ぐにでも戦いを始めそうだと俺とメビウスは判断して即座に席を立ってその場所に向かおうとした。
「……あ! 代金はどうしようアーク⁉︎」
「俺が全部払っておくからサッサと行け!!! どうせ俺は全力で戦えんしな!」
……その前に喫茶店の飲み物とケーキの代金を払う事は忘れなかったが。宇宙警備隊員として食い逃げとかは出来ないし、しょうがないよね!
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「……チッ、思ったより時間が掛かったな。まさか小銭が足りないとは……お陰で一万円札で支払う事になった」
そんな訳で会計を終えた俺は、先に行ったメビウスを追ってボガールのエネルギー波が感知された場所へと走っていた……そうして反応があった場所である山岳地帯に到着すると、そこでは巨大化したボガールと足下に落ちている【岩石怪獣 サドラ】のものと思しき腕、そして何故かボガールと戦っている『ミクラス』の姿があった。
「キッシャァァァァァ!!!」
「ガオオォォォォ!!!」
その『ミクラス』はボガールに対して果敢にフライングタックルを仕掛けたり、そのパワーを活かした格闘戦を仕掛けたりと結構善戦していた……ふむ、よく見るとあの『ミクラス』は生物では無いな。エネルギーと特殊分子で怪獣のデータを再現している感じかな?
……戦闘用の人造怪獣まで実用化しているとかやっぱ地球人凄いな。近くに指示を出しているGUYSメンバーらしき女性がいるから、ちゃんと指示も聞くみたいだし。
「キィキキャァァァァ!!!」
「がアアァァァ!?」
「ミクラス⁉︎」
ただ、やはりミクラスとボガールでは地力の差があるのか、あの地球製ミクラスはボガールに殴り飛ばされてそのまま消えてしまった……ああいや、アレはやられたフリをして
そして透明化したミクラスは敵を倒したと思って油断していたボガールの尻尾に組み付いて、そのまま電撃を流し込むことでボガールを悶絶させていた。確かミクラスは電撃に弱かった筈だが、どうも原種には無い能力も付加出来るのか。
……っと、この気配はメビウスと……ヒカリさんか。やはり彼もここに来ていたか。
「……まずはメビウスとヒカリさんに合流しないとな」
「ギャァァァァァ!?」
「ガオォォォ!!!」
とりあえずボガールの事は奮戦しているミクラスとGUYSの皆さんに任せる事にして、俺はメビウスとヒカリさんの気配がする場所へと向かって行ったのだった。
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「……その身体は君のものでは無いだろう! セリザワさんには帰りを待っている人がいるんだ! ……まずは僕がボガールと戦う。アーク、彼の事は任せたよ。……メビウゥゥゥゥゥゥゥゥッス!!!」
「「…………」」
ちょっとキツめな様子でそんな事を言った後、メビウスは俺とヒカリさんが見ている前で左手の『メビウスブレス』のクリスタルサークルを回転させてエネルギーをスパーク! 叫びながら勢いよく左腕を突き上げると共に本来の姿……『ウルトラマンメビウス』の姿となって、時間切れとなって消滅したミクラスに変わってボガールへと戦いを挑んで行った。
……何故こんな状況になっているのかと言うと、少し前にメビウスはヒカリさんと話したのだが、その際に彼が『地球人は下等な生き物』『容れ物の事など知らん』みたいな事を言ったのが原因でメビウスは彼が戦う事を良く思わなかったみたいだ。
「……ヒカリさん、割とあっさり引きましたね」
「先に戦ってボガールを弱らせてくれるなら別に構わん。適当な所で変身して介入する……邪魔はするなよ」
「ボガールと戦う“だけ”なら邪魔はしませんよ」
ふむ、まああの様子ならメビウスの方もヒカリさんがセリザワ氏の肉体を粗雑に扱う事を危惧して一旦止めただけで余り怒ってはいないみたいだし、ヒカリさんも比較的冷静だからまだ致命的な破局には「セリザワ隊長!!!」……ならないと思っていた時期が俺にもありました(滝汗)
「なあ! アンタはGUYS JAPANのセリザワ隊長だろう⁉︎ 生きていたのか⁉︎ 何であのツルギとかいう巨人に……」
「だから誰だキサマは……いや、この容れ物の記憶にあったな。この星の防衛部隊の隊員『アイハラ・リュウ』と言う名前の地球人か」
「容れ物だと……⁉︎」
そうしていきなりやって来た男性──発言からしておそらくメビウスが言っていたGUYSの『リュウさん』らしき人がヒカリさんに話し掛けるが、彼はまたもリュウ氏の神経を逆なでする様な返答を……この状況、一体どうすればいいんだorz
「……まさかテメェ! セリザワ隊長の身体を乗っ取りやがったな!!!」
「それがどうした? そのままでは無駄死にするだけだった肉体を使ってやっているだけだ」
「無駄死にだと⁉︎ ……セリザワ隊長、いやツルギ……!」
そんな内心頭を抱えている俺を他所に、ガンガン地雷を踏み抜いていくヒカリさんとそれを聞いて当然怒るリュウ氏の間の空気はドンドン張り詰めていき……こんな混沌とした状況、俺にどうしろと言うんだ(泣)
……って、そうしている間にもボガールと戦ってるメビウスが大分押されてるし! そんで同じくそれを見たヒカリさんは尚も言い募るリュウ氏を無視してハンターナイトツルギへと変身した。
「ヌゥ! ジェアァッ!!!」
「ッ⁉︎ ギシャァァァ!!!」
「セヤッ⁉︎」
……と思ったら、彼はボガールに組み付かれていたメビウス諸共いきなり必殺光線をシュゥ!!! してメビウス毎ボガールを吹き飛ばした……どうも連携する気は無いみたいですね(白目)
……こうなったらもうダメージを無視して俺も変身するしかないか? それでメビウスとヒカリさんをフォローしつつボガールを倒せば……。
「目を覚ましてくれ! セリザワ隊長!!!」
「ヌゥ⁉︎ ……ウゥ……」
そう俺が考えたその時、突然リュウ氏がヒカリさんに呼び掛けると彼は攻撃を辞めて振り向いて何やら頭を抱えて苦しみ始めた……やっぱりヒカリさんはセリザワ氏の精神にかなり引っ張られているみたいだな。部下であるリュウ氏と出会った事で内のセリザワ氏の精神が刺激されたのか。
……ただ、その行動は戦場では致命的な隙であり、それを見逃さなかったボガールが放った光弾を背後から食らって彼は地面に倒れ込んでしまった。
「ヌアァッ⁉︎」
「セリザワ隊長⁉︎」
「キッキャァァァァ!!!」
そんなヒカリさんを見てボガールは喜色を浮かべながら更に追撃の光弾を放とうとした……負担は掛かるが仕方ないか。
「ウルトラ念力!!!」
「ギィッ⁉︎」
そこで俺は両手を交差して人間態のままでの使える『ウルトラ念力』でもってボガールの動きを抑え込もうとした……が、やはり人間態のままで怪獣サイズの相手を押さえ込む念力を出すのは難しく、少し抵抗しただけでボガールは俺の念力から逃れてしまった。
……まあ、
「セヤァァァッ!!!」
「ギシャァァァァァァ!?」
そのままメビウスは
……そしてメビウスはボガールまともに動けなくなる程のダメージを負わせてから光線技の発射体勢に入った。宇宙警備隊に於ける対怪獣戦闘の基本戦術だな。
「ギッ……グググゥ……」
「ハァァァ……セヤァッ!!!」
そしてメビウスが放った光線『メビュームシュート』は見事にボガールに突き刺さり、その身体をボコボコと蠢かせた後に跡形もなく爆散させたのだった……んん? いや、アレは……。
「やったか!!!」
「いや、やってないな。……ボガールめ、光線のエネルギーが身体に浸透しきる前に
そう、ヤツはメビウスの光線が当たった瞬間に脱皮して出来た外側の皮を爆破して目くらましにしつつ、自身は高速移動と空間転移を駆使してその場から逃げ去っていたのだ……離れた場所に居た俺でも辛うじて目で追えるぐらいの早業だったな。本当に逃げ足の早いヤツだ。
……そして、そんな俺の発言を聞いてコッチを凝視して来るリュウ氏だったが、その目が徐々に『何か怪しい人物』を見た様な訝しげなものへと変わっていった……。
「……それでは、私はここで失礼しますね。お仕事頑張ってください」
「いやちょっと待て」
俺は片手を上げながら爽やかな笑顔で自然とその場から離脱しようとしたのだが、それよりも早く銃をコッチに向けて来たリュウ氏に呼び止められた……うぐぐ、何とか言い逃れて離脱しないと……。
「……オーウ! ワタシタダノ観光ニキタアメリカ人ネー! アヤシクナイヨー!」
「お前さっきは日本語ペラペラだったじゃねぇか。……そもそもさっきはボガールを何か念力とか言って動きを止めてたし、ウルトラマンでも見逃す様なボガールの逃走に気付くとかどう考えても只の人間じゃないだろ。……ツルギと一緒に居たって事はアイツの仲間か?」
……うん、流石に俺もこの言い訳は無いなぁとは思ったけどさ……本当にどうしてこうなった!!!
あとがき・各種設定解説
アーク:残念でもなく当然
・初単独任務で結構頑張っているのだが肝心な所で空回っている感じで、本人も『戦闘能力だけじゃ宇宙警備隊は務まらないんだなぁ』と思ってたり。
メビウス:この後は負傷したツルギを助けたりと原作通りの展開
ヒカリ:鎧のお陰でボガールが逃げた事には気付いた
・ちなみにアークは『ヒカリさん』と言っているが、これはこの小説が日本語で書かれている所為で翻訳されていて、実際にはウルトラの星での彼の本名で話している感じで。
・原作以降も違和感なく『ヒカリ』と呼ばれてるし、多分本名はウルトラの星で『光』とか『輝き』みたいな意味の単語なんじゃないかなと思う。
リュウさん:この時期はちょっと荒れてる
・まあ、彼の視点だとアークは『かつての隊長を乗っ取ったヤツと一緒に居て、明らかに只の人間では無い能力を見せる怪しい外国人』なので、どう考えても銃を突き付けるのも止むなしな職質案件ではある。
読了ありがとうございました。
なんか主人公イマイチ良いところ無いなぁ(そんな風に書いた作者の弁)……そろそろ活躍シーンを入れるか。