宇宙に輝くウルトラの星   作:貴司崎

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災厄の魔獣

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 高次元捕食体 ボガールモンス 登場

 

 

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 何故かいきなり出て来た【エリマキテレスドン】の所為でボガールを取り逃がしてしまった俺──宇宙警備隊員アークは、邪魔をして来たテレスドンの方をGUYSの皆さんの援護によって襟なしにした上で撃破した。

 その後はエネルギー残量が厳しかったので人間態に戻り、同じくエネルギーが切れて巨大化を解除したメビウスとヒカリさんに合流するべく彼等の反応がある方向に進んでいた。

 

「しかし、中々の長期戦だったからかもう夕方になったな。……しかし何度見ても地球の夕日は美しいね、常に真昼間の光の国では見れない光景だし」

 

 そうして俺が夕日を眺めながら歩いていると、同じく夕日を見ながら何かを話しているヒカリさんとメビウスの姿が見えたので俺も話しに入ることにする。

 

「……俺は既にウルトラマンの心を捨てた」

「それはウソだ。心は簡単に捨てられない。……例え地球を犠牲にしたとしても、今度はまた地球という鎧を纏わなければならない」

「そもそも本当に心を捨てたのなら復讐になど走らないでしょう。……貴方が復讐の道を選んだのは貴方にアーブの民を思う心があったからだ、ヒカリさん」

 

 メビウスがヒカリさんに結構良いことを言っていたので、思わず俺も彼に向けて自分が考えていた事を言ってしまった……まあ、ヒカリさんが復讐に走ったのは良くも悪くも彼が『良い人』だったからだからな。

 ……この人が善人なのは俺の能力の検査を嫌な顔せずに続けてくれた事からも分かってるし、復讐に走った事をあまり責めたりは出来ないんだよなぁ(それはそれとして余りにやばい時にはブン殴ってでも止めるけど)

 

「アーク……」

「ようメビウス、それにヒカリさんも」

「…………」

 

 そんな感じで話しに割り込んできた俺を見たメビウスとヒカリさんは何とも言えない表情になった……そうして暫くの間その場を沈黙が包んだ後、不意にヒカリさんが夕日を見ながら口を開いた。

 

「美しいなあ。……セリザワとはどんな人間だったんだ?」

「え?」

「アイハラ・リュウと対するとこの人間の記憶が俺の中に流れ込んでくる」

「大切な人だったんだ。リュウさんにとって、セリザワ隊長は」

「そうだろうな。俺が捨てたはずの感情が一瞬甦った」

「ツルギ……(ヒカリさん……)」

 

 そう言ったヒカリさん(セリザワ氏)の顔にはこれまで見た事がない様な晴れ晴れとした笑顔があった……が、その表情はすぐに元の険しい物へと戻った。

 

「しかし、復讐は果たす。……どんなことをしてでも」

「ツルギ!」

 

 ……そんな呼び止めるメビウスの声にも答えず、ヒカリさんは青い光に包まれてその場から消えてしまった。

 

「……捨てられるはずはない。アークの言う通り、その感情が優しさであるのなら」

「そうだな。……さて、じゃあ俺も行くわ」

「え?」

 

 とりあえず要件は終わったので俺がその場から立ち去ろうとすると、メビウスが何故か疑問の声を上げた……だってお前、行方不明の『ヒビノ・ミライ隊員』を探してGUYSメンバーが周囲を捜索してるっぽいし、そんな時に俺が近くにいると説明が面倒だろう? 

 

「……それに余りにも都合のいいテレスドンの襲来といい、そもそもボガールが態々この地球に来た事といい、多分だが裏で糸を引いているヤツがいるっぽいしな。現在の宇宙の状況もきな臭いし、俺はそっち側をもう少し調べてみるさ」

「アーク……分かった。何かあったら連絡してくれ」

 

 ……そうした事情を話して納得したメビウスの言葉に、俺は背を向けたまま手を振って答えつつまたGUYSメンバーに見つかる様なヘマをしない為にも早急にその場を後にしたのだった。

 

 

 ──────◇◇◇──────

 

 

「……ハァァ……ハァ……ハァッ……クソッ! アノ忌々シイウルトラマン共メ……!」

 

 ……深夜、日本のとある森の中で一人の不気味な女──ボガールモンスの人間態『ボガールヒューマン』──は、その辺りにある木に手をついて息を切らしながら忌ま忌ましそうな表情で自身をここまで追い詰めたウルトラマンへの呪詛を吐いていた。

 見て分かる通りボガールがメビウス、ツルギ、そしてアーク(一番割合が大きい)に負わされたダメージはかなり大きく、どうにか逃げ延びたもののこの様に人間態で隠れながら行動するのがやっとの状態だったのだ……ダメージと進化した事による急速なエネルギー消耗によって空腹状態になっている事も、ボガールの気性が荒ぶっている理由ではあるが。

 

「……トニカク、適当ナ怪獣ヲ食ッテ……」

「まあ少し落ち着きなさい。闇雲に行動してもまたウルトラマン達にやられるだけですよ」

「ッ⁉︎ オ前ハ……!」

 

 いつの間にやら闇の中から現れてボガールへと話しかけたのはボガールを地球に送り込み、更に【エリマキテレスドン】を操ってボガールを助け出した謎の『黒い男』だった。

 ……だが、その男を見たボガールはこれまの傍若無人な行動とは打って変わって『全力での警戒』を行いながら黒い男に話し掛けた。

 

「……何ノ用ダ。宇宙警備隊ノ探知ヲ誤魔化ス術ヲ渡ス代ワリニ、地球トイウ獲物ノ多イ場所デシバラク暴レロトイウノガ貴様トノ契約ダッタダロウ。ソレ以降ハ干渉シナイトノ言ッテイタダロウニ」

「そのつもりだったのですがね、どうも私が渡した隠蔽装置でも既に誤魔化しきれない程度に貴方のエネルギー量は上がった様ですからね。少しだけお手伝いに来たんですよ」

「フン、ドウダカ……ソレデ手伝イトハナンダ?」

 

 嫌にフレンドリーな感じで話しかけて来た黒い男に対して、ボガールは警戒を緩めずに自身と彼の間の“契約内容”を確認しつつ答えていった……何せ相手はこの宇宙でも()()()()()()()()()()()()であり、警戒は幾らしても足りない相手なのだから。

 

「ええまあ、手伝いと言っても少し道具と知恵を貸すぐらいですが」

「フン、貴様ガ自分デ戦エバイイダロウニ」

「私も色々と忙しいもので……それはともかく、まず貸す道具はこの新型の探知妨害装置ですね。少なくとも宇宙警備隊製の探知装置に関しては貴方が巨大化しようが怪獣を捕食しようが探知はされないでしょう。……最も突貫作業で出力を上昇させて作ったのでこの星の暦で一週間程しか使えませんが」

「……一時的ニ身ヲ隠ス事ニシカ使エンデハナイカ」

 

 そう言いながらもボガールは黒い男から投げ渡された探知妨害装置を受け取った……正直言って男の言う事はかなり怪しかったが、この装置があればウルトラマン共に見つからずに食事が出来るという考えに逆らえなかった形である。

 ……最も、そんなボガールの思考や欲求を含めて黒い男にとっては計算通りの対応であったが。

 

「それでもう一つ貸すのは情報と知恵ですね。……今この星にいる三人のウルトラマン、纏めて相手をすれば幾ら強化された貴方でも勝率は余り高くないでしょう」

「……フン」

 

 その黒い男の言葉に対してボガールは鼻を鳴らす程度で特に怒る事も無く冷静に対応していた……そもそもボガールが最重要視するのは良くも悪くも『食事』であり、それを妨害されて忌々しく思う事はあっても戦闘での敗北自体は対して気にも止めないのである。

 ……それ故に特に躊躇もなく逃亡を選択するので厄介さが増しており、現在も男との会話の中で既にアークに打ち倒された屈辱感などはほぼ消えて冷静さを取り戻している……自分よりも遥かに賢い目の前の男の案を聞くだけ聞いておこうと考える程度には。

 

「ですので、彼等を分断してしまいましょう。……丁度よく今この太陽系の近くには()()()()()()()()が接近していますので、コレを強化された貴方の力で地球に呼び寄せれば、この星を守る為にいる彼等の誰かは一時的に地球を離れざるを得ないでしょう。数が減れば貴方にも十分な勝機があるかと……」

 

 そう言った黒い男は空間に『とある怪獣』が映った宇宙空間の映像を投影した……それを見たボガールは一瞬『“この怪獣”は言うほど強力ではないだろう』と思って怪訝な表情を浮かべたが、直ぐに周りの隕石などと見比べてその画面に映った怪獣の()()()が不自然な事に気が付いた。

 

「……成ル程、“子供”ハヨク見カケルガ“親”ノ方ハ初メテ見ルナ。……イイダロウ、貴様ノ提案ヲ飲ンデヤル。精々アノウルトラマン共ニハ“コイツ”ヲ相手ニ踊ッテ貰ウカ」

「私も影なから応援しますよ(まだ装置の設置に一週間程掛かるので本当に応援するだけですが)」

 

 ……そうして凄絶な笑みを浮かべるボガールと、何を考えているか分からない意味深な笑みを浮かべた黒い男はそのまま闇の中へと姿を消していったのだった……。

 

 

 ──────◇◇◇──────

 

 

「……ふむふむ、それでGUYSの皆さんはボガールを倒す為に島一つにバリアフィールドを張って、そこにボガールを誘い込んで倒す気な訳だ。効果的で合理的な戦術だな」

『うん、それでもし僕たちが現れてもいいようにキャプチャーキューブの技術を応用してバリアの一部に短時間だけ穴を空けておいてくれるんだ』

「成る程、至れりつくせりだな。流石は地球の防衛チーム」

 

 ボガール(とエリマキテレスドン)との戦闘が終わってからだいたい一週間後、俺はGUYSの本拠地フェニックスネストの近くまで来てメビウスを秘匿念話による情報交換を行っていた。

 ……ちなみに外国人の姿は既に見られているので、今回は黒髪黒目の日本人に外見を変更してGUYSメンバーにバレない様にしている。

 

『それで僕はボガールをそこまで誘き寄せて戦う気だけど……』

「勿論、俺も手助けするしそこまでお膳立てされたのなら今のヒカリさんも断らないだろう。……問題はボガールがやって来るかどうかなんだが。前回散々ボコボコにした以上、奴がウルトラマンが複数いる場所にノコノコやって来るかどうか……」

 

 ……アイツ意外と頭が良いからな。食欲最優先だから逃げるのにも躊躇は無いし。本当にタチが悪い。

 

『……そう言えば、アークの方で色々調べてみると言っていたけど何か分かった?』

「全然さっぱり。黒幕どころか肝心のボガールの反応すら捉えられない有様だよ」

 

 俺が調査に慣れていない事を差し引いても全然さっぱりなしのつぶてなんだよなぁ……怪獣倒すのは簡単なのに、調査となるとウルトラ族の特殊な能力はイマイチ役に立たないから難易度が凄い高い。宇宙保安庁の仕事って大変……。

 

『とにかく準備が整ってるから、ボガールが現れた時にはアークも無人島まで来て欲しい』

「分かった。……ヒカリさんの方にはもし会えたら伝えておく。まあ、そんな事しなくてもボガールが出てくれば普通に来るだろうが」

 

 その会話を最後にメビウスは念話を切って、俺は怪しまれない程度に急いでフェニックスネストから離れようとした……その時、突如として例の微妙に役に立たない探知装置が激しく反応し、同時に俺自身の感覚も非常に覚えのある気配を捉えた。

 ……慌てて俺が気配のある方向を見ると、そこには既に巨大化したボガールが真っ直ぐこちら──フェニックスネストの方角に向かって来ていたのだ。

 

「ギギィシェアァァッ!!!」

「……まさかここまで堂々と現れるとはな」

『アーク! これから作戦を決行するから、僕がガンウィンガーでボガールを無人島まで誘き寄せるよ!』

「分かった! じゃあ俺も……っ⁉︎」

 

 俺は再びかかって来たメビウスの念話に答えて事前に伝えられていた無人島の座標まで向かおうとしたのだが、そこでボガールがこちらを見ながら嫌な笑みを浮かべている事に気が付いてしまい……その直後、ヤツは天に向かってこれまでに無い大きさの声で咆哮した、

 

「……ギェッシャァァァァァァァァァァッ!!!」

「一体何を……⁉︎ いや、アレは怪獣を呼び出す力か!!!」

 

 こちらにまで暴風が起こるほどの咆哮に一瞬何をしているのかと疑問に思ったが、その際に発せられたエネルギーの波長から直ぐにアレがボガールの怪獣を呼び出す力だと気が付いた……が、じゃあヤツは一体何を呼び出しているんだ? どうやらエネルギーは宇宙に発しているみたいだが……。

 ……と、思ったらボガールのヤツが憎たらしい声音で俺とメビウスに念話を使って来た。

 

『……ククク……早ク宇宙ヘト向カッタ方ガイイゾ。今呼ビ出シタノハ俺デスラ食エルカワカラナイレベルノ大怪獣ダカラナァ。下手ヲスレバ地球ナド簡単ニ滅ブゾ?』

「くそがっ!!! そういう手かよ⁉︎ ……メビウス、宇宙の方は俺が向かう! どうもかなり厄介なヤツを呼び寄せたっぽいしな!」

 

 実際、俺の感覚にはボガールに呼び寄せられて猛スピードで向かって来る()()()()()の気配がはっきりと捉えられていた……こっちを分断して各個撃破とか有効だけどみみっちい手を使いやがって!

 

『アーク! でも……』

「向こうの目的が戦力分散なら大人数を宇宙に向かわせるのは悪手だ! あのボガールについてはお前とヒカリさん、それにGUYSの皆さんに任せる!」

『……分かった。こっちは必ずボガールを倒すからそっちは頼む!』

 

 その念話を最後に俺は素早くアークブレスを使って変身しながら、同時に宇宙空間での高速移動用である『光球型エネルギー式宇宙船』を展開して一気に大気圏を離脱して宇宙へと飛んでいったのだった。

 ……くっそ、ボガールのヤツめ宇宙に行く俺を見て『してやったり』みたいな表情しおって……まあいい、俺が居なくても貴様はメビウスとヒカリさんとGUYSメンバーに倒されるんだからな。精々今の内に調子に乗っているがいいさ! 

 

 

 ──────◇◇◇──────

 

 

 そんな訳で俺は宇宙に出てから全速力で地球圏を離脱、そのまま一気に火星圏までを通り過ぎて近付いて来る巨大な気配をはっきりと捉えられる位置で宇宙船を解除した。

 ……そして、いつでも戦闘出来る準備を整えつつ気配が近づいて来る方向へと飛行を続けた。

 

「……さて、あのやろうは一体どんなヤツを呼び寄せたのやら……」

 

 それからしばらく宇宙空間を飛行し、火星と木星の間にあるアステロイドベルトまで来た所でようやくその『何か』を目視範囲内に収める事が出来たのだが……。

 

「アレは……『ケルビム』か?」

 

 俺の視線の先に居た怪獣は()()()()()で宇宙中に生息している宇宙怪獣【宇宙凶険怪獣 ケルビム】であった……全身を覆う青いウロコ、長大な尾と極端に長く鋭い爪、鉈のような巨大な一角が特徴的な怪獣なので分かりやすいな。

 ……いや、こう言ってはアレだが“たかが”ケルビムがこんな強大な気配を発するのは可笑しいし、よく見たら周りのデブリと比べて縮尺が……。

 

「……ああ! そういう事かよ! あのクソ野郎(ボガール)め、とんでもないヤツを呼び出しやがったな!!!」

「ギャァァァァァァァァァァオォォォォォ!!!」

 

 そう、俺の目の前に居たケルビムは姿自体は普通と同じでもその大きさが全く違ったのだ……具体的には通常のケルビムの6倍以上の身長と23倍以上の体重を持つ超巨大怪獣だったのだ。

 ……確か昔アーカイブで見た記憶があるな。ケルビムを産み落とす母体にして、強いエネルギー波を辿って見つけた惑星に無数の卵を産み付けてその星の生態系を破壊する、宇宙警備隊でも特級の危険生物に認定されている大怪獣。その名は……。

 

「【宇宙凶険怪獣 マザーケルビム】……こんなヤツを向かわせたら冗談抜きで地球が滅びるぞ!」

「ギャァァァァァァァァァァッ!!!」

 

 メビウスもGUYSも今はボガールの相手に全力を尽くしてる所で、更にマザーケルビムとまで戦う余裕なんて無いしな……ここは俺がコイツの相手をせざるを得ないか。くそう、とんだ貧乏くじだ!

 ……こうして地球から遥か離れたアステロイドベルトで俺とマザーケルビムの戦いが切って落とされたのだった。




あとがき・各種設定解説

アーク:ヤベーやつと戦う事に
・調査のコツとかはセブン21から教えて貰っているが、それと実際に上手く調査出来るかは別の話でまだまだ経験不足。

ボガール:黒い男の口車に乗せられてヤベーやつを呼び寄せた
・以前自分をボコったヤベーやつ(アーク)が地球を離れた事には内心ガッツポーズしており、それで意気揚々と残りの邪魔者を始末するつもりである。
・尚、マザーボガールがやって来た時点でさっさと地球から撤退するつもりであったり。

メビウス&ツルギ&GUYS:この後は原作通りにボガールと戦う模様
・詳しくはウルトラマンメビウス10話『GUYSの誇り』を参照……つまり原作通りにボガールは倒されます。

【宇宙凶険怪獣 マザーケルビム】:ヤベーやつ
・ちなみにボガールに呼び寄せられたと言うより、ボガールが出したエネルギー波を感知して自分でやって来た感じ。
・尚、地球で先にやって来たケルビムはこのマザーが近くの星に産み付けた内の一体がボガールに呼び寄せられたものである。


読了ありがとうございました。
次回は『メビウス編前編』の最後の戦いになるアークVSマザーケルビムになります。感想・評価・お気に入りに登録などはいつでも待っています。
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