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触角宇宙人 バット星人
宇宙恐竜 ゼットン 登場!
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今、宇宙警備隊隊長ゾフィーの息子であり現在はその士官学校の訓練生であるこの俺アークは、本来なら学校で訓練に明け暮れている時間であるにも関わらず光の国の街中に出ていた。
……勿論、サボっているとかでは無く、今俺はメビウス達他の訓練生と一緒に手分けして光の国の住民の
「はーい! 押さない、駆けない、飛ばないを守って焦らずに避難して下さーい!」
「落ち着いて、落ち着いて避難して下さーい! ここはまだ安全ですからー!」
俺とメビウスの声に従って住民達が不安そうな表情を見せながら、ウルトラの星に有事の際の為に備えられた避難用シェルターまで歩いていく……どうにか、今のところ避難は順調に進んでいるな。
……と、俺が考えたその時、ここからかなり離れた遠方で爆発音がした。
「キャッ⁉︎」
「あっ⁉︎ 大丈夫ですか?」
「は、早く避難しないと……」
「はい! 急いで避難する為にも慌てず騒がない様にゆっくり移動して下さいね! 避難用シェルターはすぐそこですので!」
その音に驚いて倒れそうになった女性をメビウスが支えたり、慌てて避難しようとした人を俺が落ち着かせたりしながら、確実に避難用シェルターへの誘導を進めていった……こういう時には光の国の住民のモラルの高さが有難いな。何せ未だにパニックとかは起きていないみたいだし。
……だが、やはりというか住民達にも不安や恐怖が広がっているな。
(まあ、無理もないか。……何せ
そう、今現在この光の国は戦線布告を受けた上で戦争状態にあり、現在はウルトラ兄弟を始めとする宇宙警備隊員達が戦争を仕掛けてきた襲撃者達と交戦中なのである。
どうして、こんな事になったのは現在から少し前に遡る……。
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その日も俺達訓練生はいつも通り士官学校に通っていたのだが、急にカラレス教官を始めとする学校の教師達が全員『今日は授業に遅れるのでしばらく教室で自習をしている様に』と連絡を入れて来たのだ。
「教官達、いきなり自習なんて一体どうしたんだろう?」
「しかも、全員纏めて授業に遅れると連絡がありましたからね。何か急な予定が入ったのでしょうか?」
メビウスとフォルトがそんな話をしているが、他の訓練生達も自習なんてしている者は殆どおらず似たような話をしているのでさして目立ってはいない。
……それだけ、今回の一件はおかしいんだよな。この光の国における最重要の組織である宇宙警備隊、その隊員を育成するこの士官学校の教官はかなり重要なポジションの筈なのだが、それが一人二人ならともかく全員が遅れてくるなんて只事ではない。
「アーク、お前何か親父さんから聞いてないのか?」
「悪いが何も聞いていないな。……親父は公私をはっきりと分けるタイプだし、重要な情報なら基本的に身内にも話したりはしないからな」
ゴリアテがそう聞いて来たが、こっちも何も聞いていないので答えられなかった……本当に一体どういう事なんだろうな?
……訓練生達みんながそうやって困惑していた時、突如外の街の方からブレた大音量の音声が聞こえて来た。
『……愚かなる全宇宙の裏切り者、ウルトラの星の住民どもに告ぐ!!!』
「! なんだぁ⁉︎」
「この声は……外から⁉︎」
「おいっ⁉︎ アレを見ろ!!!」
その時、同期生の一人が教室の窓から街の空の方を見上げてみんなに外を見ろと叫んだ……その只ならぬ様子から、俺を含む同期生達は揃って窓際によって空を見上げた。
……そこには、こちらの目を疑うような信じられない光景が浮かんでいた。
『我々バット星人連合は! 愚昧にもこの大宇宙に生きる者としての義務を果たさず! のうのうと安寧の時を貪っているウルトラの星に対して宣戦を布告する!!!』
「ハァッ⁉︎」
「アレはホログラムですか⁉︎」
「また随分デカイな」
何と、光の国の街──クリスタルシティ上空には巨大なホログラムが浮かんでいたのだ……映し出されているのはコウモリの様な羽根を持ち、頭部には触覚、口には大きな牙が生えている宇宙人──先日話を聞いた後、アーカイブでその姿を見た【触角宇宙人 バット星人】だと思われる姿だった。
……そして、そのバット星人は傲慢な態度を隠そうともせずに宣戦布告とやらの続きを話し始めた。
『貴様らウルトラ族供は全宇宙に公開すべきである不老不死を齎す技術『命の固形化』を秘匿し! あまつさえそれを自身の欲望の為だけに行使し続けている! 我々バット星人連合は全宇宙の代表としてこれに抗議し続けて来たが! 貴様らは頑なにその訴えを黙殺したのだ!』
「……アーク、あの人は何を言ってるんだい?」
「適当な言いがかりかな? まあ、宣戦布告なんてのはとりあえず自分側が正しく、相手側が悪く思わせる様に言うものだし」
しっかし、言ってる事がめちゃくちゃだな。そもそも技術に公開の義務なんて無いし『命の固形化』だって不老不死を齎す程万能でも無いんだが。
……とは言え、この異常事態に対して同期生達はかなり動揺している様で、メビウス以外も先程から近くの者と話し合ったりしている。
『よって! 我等バット星人連合は全宇宙の正義と秩序の為にウルトラの星へと総攻撃を仕掛ける! 貴様らには宇宙の正義と秩序の為に早急な降伏を期待するものである!!!』
そんな最後までツッコミどころしか無い宣言が終わると共に、上空に映っていたバット星人の巨大ホログラムは消滅した……本当に最後まで好き勝手な事を言ってくれたな……。
その直後、光の国全体に非常事態用のサイレンが鳴り響くと共に、一般住民は非常用シェルターに避難する様にと言う広域放送が流された。
「ど、どうするんだよ……戦争だって⁉︎」
「お、俺達も避難を……⁉︎」
「馬鹿! 俺達も戦うんだよ!」
……ふーむ、思った以上に訓練生達も混乱している奴がいるな。幸いメビウスやゴリアテ、フォルトなど一部の同期達は落ち着いている様だが……。
「それで、どうしますアーク?」
「とりあえず同期生達を落ち着かせよう。……避難する様に指示されたのは一般住民だけだし、俺達にも何か別の指示があるかもしれないし」
「分かった! ……みんな! まずは一旦落ち着こう!」
「てめえら何動揺してやがる! それでも宇宙警備隊の訓練生か!!!」
メビウスとゴリアテが声を張り上げると、動揺していた同期生達は少し落ち着きを取り戻した様だ……更に俺とフォルト、そして他のまだ冷静だった同期生達もそれに続いた事でどうにか混乱は収まってくれた。まあ、全員伊達に士官学校の狭き門を潜り抜けている訳では無いって事かな。
そして、そのタイミングでカラレス教官が勢いよく教室へと入ってきて、これまでに無い程の真剣な表情で俺達に向き直った。
「お前達、状況は分かっているか?」
「いえ、先程の宣戦布告とやらと一般住民に避難勧告が出た事ぐらいしか分かりません」
「そうか……では、今から現在の状況を簡潔に説明する。心して聞く様に」
俺がカラレス教官のその質問に答えると、教官は手早く現在の状況を説明し出した……その話では現在バット星人が率いる大艦隊がウルトラの星に接近中であり、後一時間もあれば到着するとの事(先程のホログラムは先行して来た無人機が投影したものらしい)。
この事態に対し宇宙警備隊は一般住民にシェルターへの避難勧告を出し、更に全宇宙警備隊員にウルトラの星への集結とバット星人連合の迎撃を命じたのだ。
「だが、ウルトラの星周辺にいる隊員の数はそれほど多く無く、更に前線に戦力を集中させているので住民の避難誘導に手が回らなくなる事が懸念されている。……そこでお前達訓練生には一般住民の避難誘導をやってもらう事になった。緊急時の避難方法は授業でやったから覚えているな、これからお前達にはいくつかのグループに分かれて光の国の各地区の避難誘導をやって貰う」
「「「「「分かりました!!!」」」」」
そうしてカラレス教官は手早く俺達をいくつかのグループ分けてそれぞれの担当地区を決めていった……ここまでスムーズに進んでいるのは事前に同期生達を落ち着かせておいた事もあるが、それ以上にこれまでに無いぐらいカラレス教官の雰囲気が張り詰めていたからだろう。
……そして、一通り全ての説明と各種準備が終わったところでカラレス教官が口を開いた。
「いきなりこんな事態になって動揺していると思う。……だが、宇宙警備隊を目指す以上戦いを避けて通る事は出来ない。そして、我々ウルトラ戦士の力はこの様な事態で戦う術を持たない者を守る為にこそあるのだ。……共に光の国を守ろう!」
「「「ハイッ!!!」」」
敬愛する教官からのそんな言葉に、俺達はやる気を満ち溢れさせて返事をしたのだった。
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……そういう訳で、俺達訓練生は一般住民の避難誘導をしているのである。さて、このD地区の避難は大体終わったか……。
「アーク! こっちも終わったよ!」
「そうか……じゃあ、最後に逃げ遅れた人がいないか二人で確認して、それから訓練生達の指揮を執っているカラレス教官にテレパシーで連絡しよう」
「分かった! 僕は向こうから回るね!」
そうして、俺とメビウスは担当しているD地区を隈なく周り、取り残された人達が居ないかどうか念入りに確認していった……幸いにもそんな人は居なかったので避難完了の報告をカラレス教官に入れる事にした。
「カラレス教官、D地区の避難は無事に完了しました。俺とメビウスが見て回った限り逃げ遅れた人は居ません」
『そうか、良くやった。……では、隣のE地区の避難がやや遅れている様だから、二人にはそちらの手伝いをしてもらう』
「分かりました!」
その指示に対してメビウスが勢いよく答えるとそのまま連絡が切れた……直後、光の国の宇宙港がある方角から連続した爆発音が聞こえてきて、俺達はついそちらの方向を向いてしまった。
「! この音は⁉︎」
「どうやら本格的に戦闘が始まった様だな」
宇宙港はその役割上地上と宇宙の往き来がしやすい場所に作られているからな、それで真っ先に攻撃場所に選ばれたんだろう……そう考えながら避難誘導を急ごうとメビウスに声を掛けようと振り向いたら、そこには拳を握りしめて悔しそうな顔をしながら音が聞こえた方向を見ているメビウスの姿があった。
「……僕にもっと力があれば光の国を守る為に戦えるのに……!」
「メビウス……阿呆。貴様如きがそんな事を言うのは2万年早いわ」
「えぇ⁉︎」
ちょっとコイツが馬鹿な事を言っていたので、とりあえず罵倒しておいたら驚愕の表情でこっちを見てきた……あのなぁ、今はそんな事を言っている場合では無いだろうに。
「俺達が今やるべき事は避難誘導だろう。……それにそう思っているなら尚更避難を急ぐべきだ。俺達が早く避難を終わらせれば、それだけ前線で戦う戦士達の負担が減るんだからな」
「……うん、そうだね! 僕達には僕達で出来る事があるんだから、まずはそれをやってからだよね!」
「分かったなら、さっさとE地区に行くぞ」
そうして、何故か妙に明るくなったメビウスを連れて、俺は避難が遅れていると言う隣のE地区に飛んで行ったのだった。
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ところ変わって光の国の宇宙港『スペースポート』、ここでは襲来したバット星人の連合艦隊と光の国にいた宇宙警備隊員達が激しい戦いを繰り広げていた。
だが、急な襲来だった所為でこの場に集まった警備隊員の数はそこまで多くなく、更に非常に広範囲を常にパトロールして宇宙の平和を守る為に腕の立つ隊員は遠方の宇宙に派遣される事が多い事もあって、その質もあまり高くは無いのが実情である。
……それでも、宇宙全体から見て種族的にはトップクラスのスペックを持つウルトラ族の隊員なので、敵が無人戦闘機や巨大化したバット星人
「グワァァァァ⁉︎」
「クソォ⁉︎ なんて火力だ⁉︎」
「「「グモォォォォォォォォ!!!」」」
その
……そう、バット星人はこの光の国を攻め滅ぼすに当たってそこを防衛するウルトラ戦士達を抹殺する為に
「チクショウ! くらえっ! スペシウム光線だ!」
「ッ⁉︎ 馬鹿ッ! やめろ!」
その怪獣のデタラメな火力に痛めつけられていた隊員の一人が、痺れを切らしたのか腕を十字に組んでスペシウム光線の構えを取った……その怪獣の事を知っていた隊員は止めようとしたが、それよりも早く光線が発射された。
……その光線は黒い怪獣の一体に当たり……その手を胸の前で合わせたその怪獣に
「ッ! そんな⁉︎ グワァァァァ!!!」
「グモォォォォ!」
その光線を吸収した個体はそのまま両手を前に突き出すと、そこから先程吸収した光線と同じ威力のある光波を先程スペシウム光線を使った隊員へと放ち吹き飛ばした。
……そう、その怪獣とは、かつて地球でウルトラマンを倒した
「フハハハハハ!!! 圧倒的ではないか! 我等バット星人が誇る
「「「グモォォォォォォォォ!!!」」」
……十体を超える数の【宇宙恐竜 ゼットン】であった。
「さぁ! 行けぇぃ! ゼットン達よ! 愚かなるウルトラ戦士どもを皆殺しにするのダァ!!!」
「「「グモォォォォォォォォォォォォ!!!」」」
その前線指揮官であるバット星人が手に持った剣を振りかざして号令発すると共に、横一列に並んだ量産型ゼットン達がゆっくりと前進して行く……その光景はまるで“絶望”と言う名の黒い壁が迫って来るかの様だった。
……ここに、ウルトラマン達の故郷である光の国は最大の窮地を迎える事となったのだった。
あとがき・各種設定解説
アーク&訓練生達:いきなり光の国が襲撃された件
・現在の時間軸は『帰ってきたウルトラマン』の最終話『ウルトラ五つの誓い』の時期であり、その同時期に起こった光の国への襲撃事件が今回の舞台。
バット星人:ゼットンブリーダー
・最初にホログラムで出てきたのは艦隊の総司令官でデザインは前線指揮官共々『サーガ』に出てきたリメイク版の方に近い。
ゼットン:終わりの名を持つ者
・尚、今回出てきた連中のデザインは二代目の方です。
読了ありがとうございました、この光の国襲撃編まだまだ続きます。