惑星ジャルマへ:暗黒の軍勢
惑星ジャルマ──そこはつい最近銀河連邦に加盟した惑星であり複数の交易系惑星の航路の中心部に位置する為、それらの惑星を往還する宇宙船の中継地として使われている星なのだ。
実を言うと惑星ジャルマはほんの少し前までは惑星内の国家統一や宇宙開発なども進んでいない『未発達文明圏』扱いだったのだが、上述の理由でその時期に多くの不法侵入宇宙人がおり、それによって起きた様々な事件や流入した技術によって文明が急速に発展して銀河連邦に加盟出来る国家へと至ったのである。
……最も、早期の銀河連邦への加盟にはジャルマを中継点とする各交易系惑星からの圧力があったとか、急速に過ぎる技術発展と国家統一によって社会体制の整備などが追いついていないとか言う世知辛い実情もある様だが。
「……それでタロウ教官、例の【ドルズ星人】の一派が惑星ジャルマで活動していると?」
「ああ、捕らえた『エンペラ軍団』の証言と宇宙情報局・保安庁の調査によって判明したのだ。……連中は以前から宇宙警備隊全体で追っていたのに補足出来なかったからな。出来ればこの機会に捕まえておきたい」
そんな事を話したタロウ教官は宇宙情報局・保安庁が集めた【ドルズ星人】に関する資料を俺に渡して来た……資料によるとドルズ星人の本星『ドルズ帝国』はM88星雲にあるとされているが、そこに存在するのは彼等が支配下においた惑星とその住民のみでヤツらの本拠地は存在しないらしい。
……じゃあその本拠地が何処にあるのかと言うと、どうやらM88星雲と同じ座標軸の
「加えてドルズ星人は暗黒宇宙と通常の宇宙を自由に行き来する事が出来る特殊な技術を持っていてな、犯罪行為の殆どを部下か
「基本的に暗黒宇宙にある本拠地から指示だけ出すやり口みたいですからね。暗黒宇宙を介してこちらの宇宙の距離を無視して通信・移動する技術もあると書かれてますし」
そもそも殆ど実宇宙に出てこない上、出て来ても部下か改造・洗脳された者、仮にドルズ星人自身が出て来たとしても危険があれば直ぐに暗黒宇宙へと引っ込んでしまうと言った具合なので、どれだけ凶悪犯罪を犯しても宇宙警備隊や銀河連邦が手出し出来ないという状態に陥っている様だ。
……この資料を見るだけでもドルズ星人のタチの悪さがよく理解出来るな。帝国の方を攻略しようにも壊滅しても問題ない替えの効く人員や設備しか置いてない上、犯罪に加担しない一般市民も普通に暮らしてるから攻め込んだら本格的に戦争になるし。宇宙警備隊が惑星国家自体への戦争とかは許されないからなぁ。
「……だが、そんなドルズ星人が自ら直接出向いてエンペラ軍団の幹部と取引を行うという情報が得られたのだ。この惑星ジャルマでな」
「用心深いドルズ星人ですら直接出向かなければならないとは、エンペラ軍団の黒幕はそれ程の相手なのか。……しかし、余りにも都合が良すぎるので罠と言う可能性は?」
「その可能性も考慮しているが、そもそも『エンペラ軍団』の黒幕への情報が殆ど集まっていない以上は例え罠であっても踏み込む必要がある。……無論、もし罠だった時の事も考えて惑星ジャルマの治安維持機構の協力も極秘裏に取り付けたし、更に何人かベテランの隊員と銀河連邦からの援軍も来てくれる事になっている」
……尚、現在絶賛ブラック労働中の宇宙警備隊ではあったが、俺みたいな新人隊員を働かせたり銀河連邦と協力する事で、こっそりと黒幕を捉える為の戦力を確保出来る様にしていたらしい。
「この惑星ジャルマは今では様々な人種の坩堝と化しているからな。実際社会体制の整備が追いついて居ない所為で色々な犯罪組織が裏に入り込んでいる様だ。……ジャルマの治安維持組織の調査だと、そこでドルズ星人と思われる者達が『超人になれるドラッグ』を販売していると言う情報が入っている」
「超人になれる薬……ですか?」
「ああ、服用した人間に超人的な身体能力や何らかの特殊能力を付与する薬の様だな。……どうもジャルマ人で構成された現地の犯罪組織に売り付けているらしい」
資料によると密入星した超常的な能力を持つ宇宙人の犯罪組織に対して、ただのヒューマノイドタイプでしか無い現地の犯罪組織が次々と駆逐されたか傘下に入っていったらしい……そこに目を付けたドルズ星人が追い込まれた現地の犯罪組織に『超人薬』を売り込んだと言うのが真相の様だ。
……最もドルズ星人は超人化した犯罪組織にやられた宇宙人側にも武器を販売したりしているみたいである。完全に互いを争わせて高みの見物しながら自分だけ儲けるクソムーブですね。
「今回の目的はドルズ星人の確保と可能ならば黒幕の捕獲または撃破。最低でも黒幕の情報は得ておきたい」
「分かりました、それで俺は何をすれば良いんですか?」
「アーク、お前は今回予備兵力として動いてもらう。連中の捜索は既に現地治安維持組織と調査に長けたベテラン隊員や銀河連邦からの協力者が行なっているが、これまで何度も煮え湯を飲まされ続けてきたドルズ星人に、未だに失敗を掴ませていない謎の黒幕相手だからこちらの動きが読まれている可能性もある」
そういう訳だから俺は惑星ジャルマに入った後は敢えて目立たない様に潜伏しながら、何かあった時の為の遊兵として動いてほしいって事らしい……まあ、調査関係では余り役に立てなさそうだが、いざと言う時に動かせる戦力としてはそれなりに働けるかな。
……そうして俺はドルズ星人とエンペラ軍団の“黒幕”を捕まえる為に惑星ジャルマへと入っていったのであった。
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……この宇宙の殆どの者が知らない場所にある宇宙船の内部、その黒い円卓がある一室に現在宇宙を騒がせている『エンペラ軍団』の裏で糸を引いている者達──【皇帝】の真なる配下である『暗黒四天王』である知将【メフィラス星人】、豪将【グローザム】、謀将【デスレム】の三名の姿があった。
「それでメフィラスよ、新しく“邪将”の座に付いたヤプールは何やってんだ?」
「ウルトラマン達にやられたダメージを回復させる為、私が渡したマイナスエネルギーで回復している所ですね。しぶとくて執念深い事がヤプールの最大の取り柄ですから直ぐに復活するでしょう。……しかし、貴方がヤプールを気にかけるとは珍しい事もあるんですね」
「勘違いするな、俺はヤプールが皇帝陛下に不利益な行動をしていないか気になっただけだ。……ヤツは皇帝陛下には圧倒的に実力差から忠誠を誓っているが、俺達他の四天王の事など事が済んだら始末すれば良い邪魔者としか思っていないだろう」
「まあ、明らかに『コイツらも後で超獣に改造して配下に加えてやる』みたいな視線でこっちを見てましたからねぇ」
……最も同じ四天王とは言え仲間同士の信頼関係など微塵もなく、そこにあるのは僅かでも隙を見せた相手から食い殺そうとする様な暗黒の意思による張り詰めた緊張感だけだったが。
「まあ、新人“邪将”の事は今は置いておきましょう。どうせウルトラマン達への鉄砲玉として使えれば良いと思って入れただけですし。……態々『エンペラ軍団』などと言う名前まで貸して暴れさせたチンピラ共や、散々事件の火種になりそうな所に“火”をつけて回った私の部下のお陰で今や宇宙は大混乱、宇宙警備隊も絶賛ブラック労働中です……デスレムさん、例の戦力の準備は?」
「【インペライザー】【ロベルガー】共に暗黒宇宙内の工場で順調に量産が進んでいる。両者共既に約
「好き勝手『エンペラ軍団』を名乗る様なクズ共では無く、俺達“真なる皇帝の配下”が動く時が来たか。……ようやく我らが皇帝陛下が宇宙に覇を唱える機会がやって来た様だな」
そう言ったグローザムは不敵な笑みを浮かべながら戦意を立ち上らせ、メフィラスとデスレムは手元にホログラムを展開して自軍の戦力となる強力な兵器群の量産体制や出来を確認していった……そうして彼らがこれから起こす“戦争”の為の準備をしていた所で、突如として彼らが囲んでいた円卓の中央から恐ろしい程の暗黒のオーラが噴き出して黒い炎で出来た“影”を形作ったのだ。
……それを見た彼らは即座に作業を停止して“影”──彼らの主人である【暗黒宇宙大皇帝 エンペラ星人】が作り上げたオーラによる分身へと跪いた。
『……“戦争”の準備は整った様だな。“邪将”はどうした?』
「は、今はマイナスエネルギーを与えて休ませておりますが、直ぐに呼び出しましょう」
……そんな桁外れの暗黒のオーラを発するエンペラ星人の問い掛けに対し、あのメフィラスでさえ少し慌てた様子で直ぐ様異次元で治療中だったヤプールの思念体を呼び出した……当然、呼び出されたヤプールの思念体も皇帝陛下のオーラを感じ取って即座に平伏した。
『……この様な姿で申し訳ありません、皇帝陛下』
『よい。……それで“知将”よ。戦争の準備と策の方は?』
「戦力としては量産された【インペライザー】【ロベルガー】といった兵器群と我ら暗黒四天王及びその配下、そして皇帝陛下御自らになります。……ですが宇宙中で事件を起こす事で宇宙警備隊と銀河連邦の戦力を分散、そちらに釘付けにする事に成功しておりますので、今ならば銀河連邦主要惑星を始めとする重要施設を攻め落とす事は容易いでしょう」
これまで宇宙のチンピラに『エンペラ軍団』などと言う名前を与えて暴れさせたのは、その宇宙警備隊が無視出来ない名によって彼らの戦力を分散させる事、そして主戦力である兵器群の量産を行う為の時間稼ぎ及び目眩しが目的だったのである。
……そう、今までの宇宙で起きた事件の全ては彼等『暗黒の軍勢』がこれから行おうとする“大戦争”で勝利する為の布石でしかなかったのだ。
『ならば、我ら暗黒の軍勢が光の者を討ち倒して宇宙を闇へと染める
「では、銀河連邦主要惑星の殲滅はこの不死身のグローザムにお任せを。【インペライザー】と【ロベルガー】を幾らか貸していただければ、我が配下と共に惰弱な銀河連邦なぞ容易く滅ぼしてみせましょう」
そのエンペラ星人の『大戦争』の開始を告げる言葉に、まず『豪将』グローザムが戦意をみなぎらせながら自信満々にそう答えた……都市一つ程度なら容易く凍結させ、更に肉体がバラバラになろうとも即座に元通りになるレベルの再生能力を持つグローザム。
そして彼が一体一体がウルトラ戦士に匹敵する戦闘能力を持ち、再生能力を備えた高級品であればウルトラ兄弟でも倒すのは手間取る【インペライザー】【ロベルガー】を率いるならば銀河連邦の主要惑星を滅ぼす事も出来るだろう。
「それでは私は『謀将』らしく現在の銀河連邦に不満を持っている連邦内勢力をこちら側に寝返らせるとしましょうか。既に不満を持つ勢力はリストアップ済みですし、グローザムの殲滅がうまくいけばこちらに寝返る者も増えるでしょう」
『よかろう』
それに続いて『謀将』デスレムが銀河連邦内への調略を行うと宣言した……これまで『エンペラ軍団』が起こした事件によって宇宙で燻っていた様々な火種が表に出始めており、四天王の中で最も悪辣なデスレムはそれに漬け込めば銀河連邦加盟勢力を裏切らせる事も可能だと考えていたのだ。
『……ウルトラマン共が贔屓にしている地球の攻略は私が行います。私自身の傷はまだ治っていなくとも配下の超獣は未だ健在です。必ず地球を闇に堕とし、忌々しいウルトラマン達を血祭りに上げて見せましょう』
『地球……光の者共が贔屓にしていると言う辺境の惑星か。……良いだろう、存分にその恩讐を果たすが良い』
更に『邪将』ヤプールが地球とウルトラマンへの怨念を剥き出しにしながらエンペラ星人にそう提案をした……エンペラ星人自身としては地球にそこまでの興味は無かったが宿敵である光の者達が贔屓にしている星を闇へと堕とせば連中へ屈辱を味あわせられるだろうと考え、加えて目の前のヤプールの憎悪の度合いならば十分な座興になるだろうと思って許可を出した。
「私は『エンペラ軍団』からそれなりに使えそうな者を勧誘して手駒にしましょうか。【ドルズ星人】の様な“協力”が出来そうな勢力もいますしね。……それらの戦力を使って宇宙警備隊にはとにかく負担を掛け続けて自由に動けなくさせましょう」
『『エンペラ軍団』とやらの策は貴様が考えたモノだ。好きにせよ』
そして最後にメフィラス星人が薄い笑みを浮かべながらそう言った……彼の策は徹底して宇宙警備隊の動きを制限しながら味方を増やす事に終始しており、その為に様々な布石を打っているのだ。
……無論、惑星ジャルマに於けるドルズ星人との会合も策の一つである。
『では暗黒四天王よ、今これより“大戦争”を始める。……光の者達をこの宇宙から駆逐し、真なる永遠の闇を齎すのだ』
「「「『ハハッ!』」」」
……そのエンペラ星人の言葉によって、後に全宇宙を震撼させる事となる第二次
あとがき・各種設定解説
惑星ジャルマ:銀河連邦のちょっとブラックの部分が出た星
・要するに銀河連邦的に都合のいい星を“合法的に”連邦入りさせる事はそれなりにあるという事。
・最も征服では無くあくまでキチンと惑星国家として独立させた上で連邦入りさせている上、その惑星も“全体としては”発展して裕福になっているので“余り”文句は出ないのだが。
ドルズ星人:タチが悪い上に技術力も勢力も高い
・暗黒宇宙に本拠地があるとかの設定は原作でゲスい事をしながら高みの見物をしているのに宇宙警備隊が捕まえられなかった所から、当然このぐらいの技術を持っているだろうと考えたからです。
・超人になる薬は漫画『ULTRAMAN』が元ネタであり、“生物の改造”に長けたドルズ星人の主要製品の一つ。
暗黒四天王&暗黒宇宙大皇帝:遂に本格始動
・四天王はお互いに仲間意識などカケラも無いのだが、皇帝という絶対強者の機嫌を損ねない為に最低限の連携はする模様。
・皇帝自身はまずは戯れに配下を嗾ける気+“鎧”の調整とかがあるので基本的に暫くは動かないつもり。
読了ありがとうございました。
第二次ウルトラ大戦争に関しては『メビウス』本編でタロウが無理矢理連れ戻そうとしたり、エンペラ星人の配下が来てるのにウルトラ兄弟が一人ずつしか援軍に来れなかった所から『同時期に宇宙では更にヤバい事が起きている』と考えた末の設定です。