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悪質宇宙人 メフィラス星人
無双鉄神 インペライザー
円盤生物 ロベルガー 登場
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『……いあ いあ んぐああ んんがい・がい いあ いあ んがい ん・やあ ん・やあ しょごぐ ふたぐん いあ いあ い・はあ い・にやあい・にやあ んがあ んんがい わふる ふたぐん よぐ・そとおす……来たれ、“銀の鍵”』
そんな聞く者の正気度を削る様な詠唱の後、虚空を見つめるままのアークの手には一本の『銀色に輝く光で出来た鍵』が握られていた……その『銀の鍵』はウルトラ族の彼に合わせては10メートル程の大きさで、この世の物とは思えない銀の輝きを無理矢理鍵状に固めた様に輪郭がぼやけていた。
……それを見たタロウ・ジーン・ラルドの宇宙警備隊組と宇宙Gメンのガニメデ、そして“知将”メフィラス星人達は本能的にあの『銀の鍵』は
『指令、抹殺、消去』
『◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️!!!』
……だが、プログラム通りにしか動けない戦闘兵器である【インペライザー】と【ロベルガー】は、メフィラス星人から与えられた『アークを倒せ』という指示に従って躊躇なくアークに接近して攻撃を始めようとしていた。
それを見たメフィラスは一瞬戻そうとも考えたが『とりあえずあの鍵の脅威を図る良い機会なのでこのまま行かせよう』と思い直して放置。それとは逆にタロウ達は異様な雰囲気のアークに戸惑いつつも動き出したインペライザーとロベルガーを止めるべくそちらへと向かおうとしたが……。
『……邪魔だな、消えろ』
それよりも早く、無機質な目で二体の戦闘兵器を睥睨したアークが軽く手に持った『銀の鍵』を振るい……次の瞬間、迫ってきたインペライザーとロベルガーは
「なっ……⁉︎」
「一体何が……!」
「……まさか、
そう、メフィラス星人を発言通りアークは『銀の鍵』の力によってインペライザーとロベルガーの周囲の空間ごと歪めて抉り取り、そのまま二体を世界の外側にある虚数空間へと放逐したのである。
……そうして二体の強大な戦闘兵器を容易く消滅させたアークではあったが、それだけの事を成し遂げてもその表情には何の感情も浮かんでおらず、まるで何かを探す様に虚空を見つめるままだった。
『……見つけた』
そして虚空を見つめるばかりのアークが突然そう呟くと同時に『銀の鍵』を上に向けた……その目に写っているのは先程暗黒宇宙に転移して、現在はドルズ星の結界の中に逃げ込んで一息吐いていた“ドルズ星人の外交官が乗っていた円盤”であった。
……時間と空間を司る邪神とも、全ての時空間と隣接して存在するとも言われる『かの副王』の力の断片を振るっている今のアークにとっては、
『逃がさない、と言った筈だが』
そうして怨敵を見つけたアークは『銀の鍵』を勢いよく振り下ろし、それと同時に暗黒宇宙にあるドルズ星の港に帰還しようとしていた円盤は彼方から放たれた
……尚、これは余談になるが、いきなり本星防衛の要である結界を破壊されたドルズ星人達は外交官が乗っていた円盤も一緒に破壊された事もあって謎の敵対存在からの攻撃だと判断し、結界の修復及び強化が終わるまでは全力で本星を守る戦術を取ったのでしばらくの間活動を停止する事になる。
「……タロウさん、彼は一体どうしたんですか?」
「分からん……だが、ゾフィー兄さんが言うには『アークには秘めた力がある』との言っていたが、まさか……」
「……ドルズ星人がやられましたかね?」
最も実空間にいるタロウ達にはアークが手に持った『銀の鍵』を振り下ろした事しか知覚出来ず、彼が宇宙を隔てて遠く離れたドルズ星に直接攻撃を仕掛けた事までは分からなかった……が、その中でタロウとメフィラスだけはそれぞれの経験と頭脳から『恐らく逃げたドルズ星人を空間を超えて攻撃したのではないか』と予想していたが。
……そしてその場の誰もが変貌したアークの事を警戒してどう動けばいいのか分からない状況で、真っ先に動いたのは『自分は絶対に彼に味方認定されていない』と分かっていたメフィラス星人だった。
(……あの鍵を出してから、彼は恨みのあるドルズ星人と自分に向かってきたインペライザーとロベルガーを倒す事しかしていない……そもそも周囲に注意を向けていないとなると、恐らく一種のトランス状態というやつですかね。……であれば)
「ここは全力での逃げ一択ですね。ではさよなら」
「ハッ! 待て! メフィラス!!!」
持ち前の頭脳で現在のアークの状況をおおよそ予測したメフィラス星人は、彼をこれ以上刺激する事なくこの場から離れる事を最優先とする全力での空間転移を実行して惑星ジャルマから立ち去ったのだった。
咄嗟にタロウは追撃しようとしたが異常な状態であるアークを放っては置けなかった事と、メフィラス星人が全力で隠蔽と転移を駆使した為にすぐ見失ってしまった為に断念せざるを得なかった。
……そうして惑星ジャルマに災いをもたらした者達が居なくなった事によって、一先ずこの星で起きた戦闘は終息したのだったが……。
『………………』
「……あの、それで彼の事はどうしましょうか?」
「さっきから何もせずに突っ立ってるだけなんですけど」
「声を掛けてはいるんですが一向に反応が無いですし……」
「うむ……」
そう、戦闘が終わったにも関わらずアークは『銀の鍵』を展開したままであり、タロウやガニメデが声を掛けても一向に反応せずにただ茫洋とした視線を宙に向けて突っ立ってるだけだったのだ。
……未だに『銀の鍵』からは名状しがたい異様な気配が発せられているが、タロウ達の視点だとアーク自身は二体の戦闘兵器を消滅させた後は何もしていないので、どうすべきか決めあぐねていたのである。
「……仕方ない、声を掛けてもテレパシーにも反応がない以上は直接触れて叩き起こすしかないだろうな」
「タロウさん、彼はあの『銀色の鍵の様な物』を持ったままですが……」
「だが、アークはその力を敵だけに向けて我々に使っていない以上、まだ最低限の理性や判断力が残っている可能性は高い。……だが、念の為にジーンとラルド、それにガニメデは下がって万が一の為にシールドの展開準備を。それから私一人で近づく」
それでもこのままでは埒があかないと判断したタロウは、多少のリスクを背負ってでもアークの目を覚まさせる事にした……無論、その手にある『銀の鍵』への警戒は消えていないので、万が一に備えて他の者を下がらせた上で『銀の鍵』へ最大限の警戒を払いながら近づいていく念の入り様だったが。
……だが、そうしてタロウがアークに触れるよりも早く、彼の身には更なる異常が起こり始めた……具体的に言うとアークの周囲の空間が徐々に歪み砕けていき、その空間の向こう側から『銀の鍵』の気配を数倍増幅した様な名状しがたい気配が漏れ始めたのである。
『──────……』
「なっ⁉︎ これは……ジーン! ラルド! 我々ごとこの一帯を覆うバリアを展開するんだ!!!」
「「は、ハイッ!!!」」
タロウにも“ソレ”が一体何なのかは分からなかったが、とにかく非常に危険なモノであると判断して待機していた二人に命じて自分とアークを覆う形の球状のバリアフィールドを展開させた。
……幸いと言うかバリアのお陰かその外側の空間には異常が起きなくなっていたが、アークの周囲の空間の歪みは徐々に広がっていき、それに比例するかの様に異常な気配も強まっていった。
「アーク!!! しっかりするんだ!!!」
『────────────ー………………』
タロウは尚もアークに声を掛け続けるが一向に反応が無く、ならばと接近して無理矢理叩き起こそうにも歪んだ空間が邪魔をして近づく事が出来ないでいた……なので、タロウは多少の危険を承知で光線技による異常空間の修復を試みようと考えた。
……この方法は空間異常を起こすエネルギーを光線で吹き飛ばした後、空間の修正力を頼りに元に戻すと言う士官学校でも習う単純な空間異常修復方であるが、タロウは自身の空間操作技術では目の前の異常を直す事は出来ないと判断して敢えて一番単純な方法を選んだのだ。
『────……──────………………』
「アーク直接当てなければ大丈夫だと思いたいが……止む終えん、アレを放置しておく方が危険だ。……ストォリュゥゥゥゥム!
多少のリスクよりも危険な気配を放つ“何か”の排除を決心したタロウが光線を放とうとした直前、外界から遮断されている筈のバリアフィールド内部から声を掛けられたので、驚いた彼は慌てて光線を中断すると共に声が聞こえてきた方を向いた。
そうしてタロウが振り向いた先には“全身がまるでホログラムの様に透き通った”一人のウルトラ族と思しき女性が立っていたのだ……『思しき』と言うのは、その女性の見た目が
「……貴女は一体何者だ?」
『私は封印の管理者、或いはとある女の残留思念をベースに作られた管制人格プログラムみたいなモノよ。……ようやく封印の
いきなり現れた見覚えの無い『謎の女性』に対してタロウは問い掛けるが、彼女の方は要領の得ない答えを返しながらアークの方を見ながら何やら訳知り顔でそんな事を呟いていた。
『精神の方は善性よりだが過剰に『光』へとより過ぎない所は良いけど、今までは少しばかり物事を一歩引いた視線で斜に構えて見過ぎな所があったけど、この星での一件で『銀の鍵』の力を引き出せるだけの激情を知ったのは上出来ね。怒りも憎悪もヒトにとっては必要な感情だから。……おっと、先ずは空間の歪みをどうにかしましょうか。来なさい、私の『銀の鍵』』
そんな評価を言った後、謎の女性はおもむろに手の中にアークのモノよりはかなり小さな『銀の鍵』を生成して軽く振るった……すると空間の歪みやひび割れは一瞬にして元に戻り、“向こう側”から発せられた異様な気配もまるで嘘の様に消えてしまった。
「収まった……のか?」
『ま、連中にとってはちょっと寝返りを打った程度だからこんな物でしょう。……さて、さっきも言ったけど『銀の鍵』の力を引き出すのに必要なのは正負問わず強い意思な訳だが、その力を十全に制御するには
空間の歪みを一瞬で収めた“謎の女性”を見てタロウが動揺しているのを尻目に、彼女は掌の上に小さな『銀の鍵』を乗せながらゆっくりとアークに近づいていった。
『そう、邪神を打ち倒す『魔を断つ剣』はいつだって、どんな世界だって、喜び、悲しみ、尊び、怒り、楽しみ、憎しむ事が出来る“強きヒトの心”に他ならない。……だからこそ貴方が怒りと憎悪を抱いた事は決して間違った事では無いわ。重要なのはソレに振り回されない事、そういう意味では無意識とはいえ“倒すべき相手”のみに『銀の鍵』の力を向けたのは及第点よ。強いて言うなら“憎悪の空より来たりて、正しき怒りを胸に”とでも言った所かしら』
……そう言いながらアークに向かって歩く彼女の身体は徐々に薄くなり始めており、彼の目の前に来た時には足先から徐々に身体が消えていっていた。
『貴方が『銀の鍵』の力を解放した事で封印の第一段階は解除されたわ。今後は貴方が『銀の鍵』を使える時だけごく短時間の間、限定的な空間操作能力として行使出来る様になるでしょう。後、邪神連中からの精神干渉はこれまでと同じ様に防御するから安心なさい。……この封印は貴方が『銀の鍵』の力を使いこなせる様にする為のモノ、だから貴方の精神の成長と共に徐々に封印は解けていくから。貴方が完全に自分の“チカラ”を解放出来る様になるまでは私がどうにかするわ。……貴方の思いは決して間違ったモノじゃ無いんだから、今後も頑張りなさい』
「……かあ……さ……」
そんな激励を送った『彼女』はおもむろに手の中の『銀の鍵』をアークの胸に差し込んで、まるで鍵を閉める様に回すと彼の手に握られていた『銀の鍵』は霧散して、その表情にも感情の色が戻った……それと同時に彼女の姿は跡形も無くかき消え、正気に戻ったアークも無茶な力の使い方をしたせいで気を失って倒れてしまった。
……これにより惑星ジャルマで起きた全ての騒動──第二次ウルトラ大戦争の始まりを告げる事件の
あとがき・各種設定解説
アーク:SAN値直葬暴走パート
・敵味方無く無闇に暴れ回るのは前例が色々あるので、敢えて彼には何か理解出来ないモノに半ば取り憑かれてる感が出る異常行動を取らせる形で暴走させてみた。
・彼に掛けられた封印はキングと『彼女』が『いずれアークが自分の力を使いこなせる様に成長するまで邪神の干渉を防ぐ』事に特化して組まれている。
・故に敢えて本人の精神状態次第で『銀の鍵』の力を使える様にしてあり、本人の肉体と精神の成長を促す仕様になっている。
謎の女性:アークの封印を管理している存在
・言うまでもないが、その正体は彼の母親であるティアーーではなく、超古代の巨人の中でもトップクラスの超能力の使い手であった彼女がキングの助けを借りて自らの残留思念と『銀の鍵』のカケラをベースに組み上げた管制プログラムである。
・なので生前と比べると性格はやや人間離れする感じで超然としており、カケラとは言え『銀の鍵』を自在に使いこなしたりしているが、それでも夫と息子への愛情は変わらず持ち続けている。
・ちなみに封印の管制人格についてはゾフィーも知っているがティアとの別れは既に済ませており、何より彼女の願いであるアークの守護の為に敢えて何も言わないでいる。
タロウ:対応自体は間違ってない
・ちなみに彼が光線で歪みを吹き飛ばしても99%は問題なく事は解決した模様……だが、1%邪神が目覚める可能性はあったので止められた。
・この後は倒れたアークを回収してジーンとラルドに預けて休ませつつ、自分は惑星ジャルマで起きて事件の後始末と光の国への報告を行った。
・その際にその場にいた他の者にアークの身に起きた事について口止めを頼みつつ、彼の父親であるゾフィーに起きた事を詳しくつたえている。
ドルズ星人:無事死亡
・今回の一件によってドルズ星人達は第二次ウルトラ大戦争中は本星に引きこもって大人しくせざるを得なくなった。
メフィラス星人:流石にイレギュラーが過ぎるので撤退
・協力を取り付けたドルズ星人は引きこもり、せっかく持ってきたインペライザーとロベルガーも瞬殺されたりと踏んだり蹴ったり。
・だが、本人は無事に脱出してエンペラ星人に今回の一件を伝えているし、本命である銀河連邦主要惑星襲撃の方は上手くいったのでお咎めは無し。
・ちなみにエンペラ星人はアークに起きた異常を邪神のそれだと看破しているが、邪神について知っているが故に『あんなモノ光の者に制御出来る訳がない、そもそも奴ら相手だと関わるだけ面倒な事にしかならない』という考えである。
読了ありがとうございました。
色々あったけどこれで惑星ジャルマ編、および第二次ウルトラ大戦争序章は終わりになります。いやーきつかった。