▲月△日
目が覚めたら知ってる天井だった……まあ、光の国のウルトラクリニックの一室だったんですがね。士官学校の治癒能力訓練の時によくお世話になってたから見覚えあるわ〜。
……さて、現実逃避気味に日記を書くのはここまでにして、俺は惑星ジャルマでの一件でブチ切れて『銀の鍵』を起動させてしまった所までは辛うじて記憶にあった。
その後に俺がやらかした事についての記憶はかなり朧げだったのだが、目覚めた時にタロウ教官から報告を受けたウルトラの母から大体の事を説明されたのでおおよそ把握している。
……把握してはいるしおぼろげな記憶で自分がやった事だと理解してはいるんだが、どうにも実感がないんだよなぁ。戦闘兵器二体を瞬殺した上で暗黒宇宙に逃げたドルズ星人の円盤を撃墜とか何? 『銀の鍵』ヤバすぎだろ。
それと封印の管理者とかいう母さんっぽい人が出て来たとか言われて頭がパンクしそうだった……一応、ウルトラの母からは親父が母さんの生前に聞いていた情報を伝えてくれたので、出てきたのが母さんの残留思念をベースに作られた擬似人格プログラムだって事は分かってるんだが、そんなのが俺の中に仕込まれていたとはなぁ。色々と複雑である。
ちなみに親父は俺の所に顔を出さなかったが、これは惑星ジャルマでの事件と同時期に銀河連邦の主要惑星のいくつかが襲撃を受けて壊滅するという大事件が起きているからだ……そして、その直ぐ後に“真なるエンペラ星人の配下”を名乗る『暗黒四天王』から銀河連邦並びに宇宙警備隊への宣戦布告──第二次
……それによりエンペラ軍団(自称)の対処がようやくひと段落ついたばかりの銀河連邦は大混乱、宇宙警備隊も例の強力な戦闘兵器【インペライザー】と【ロベルガー】が量産されて宇宙各地に攻め込んで来たり、四天王に協力する宇宙人達も一緒にやって来たりで現在全力稼働中なのだ。
それに対抗する為に宇宙警備隊では親父を始めとするウルトラ兄弟を中心として宇宙各地で戦っているとの事なので、光の国へと帰ってくる余裕もないという訳だ……まあしょうがない、そりゃあウルトラの母に伝言するのがやっとだろうよ。
……しかし宇宙は酷い事になってるな。宇宙猫の手も必要なぐらいだし俺も早く退院して戦線に復帰するべきかな……
ちなみにコールドスリープ状態のアリスはウルトラの母の気遣いで銀十字軍の方で保護して貰える事になったらしい……ドルズ星人の改造怪獣にはそれなりの被害が出ているので、それらに対する対策の研究として改造された者を元に戻す研究の被験者として引き取ったとの事だ。
……本当にウルトラの母には頭が上がらなくなりそうだな。
──────◇◇◇──────
▲月▽日
そういう訳でリハビリが終わって今日が退院の日である……まあ、別に何かダメージを負ったとかではなく『銀の鍵』使用による疲労が倒れた原因だからな。
……実際の所、入院期間は『銀の鍵』による精神汚染度合いを調べる為のカウンセリングが大半だったがな。一応、影響は無いと診断されたので退院と相成った訳だ。
それじゃあ早速戦線復帰……とは行かず、まずは宇宙科学技術局で使えるようになった(又聞き)らしい『銀の鍵』の試験をする事になった。
……流石にこんな危険物が使えるのに詳細も知らず放置するのは無理だし、ここまで大っぴらに使ってしまった以上はある程度の人間に事情を話すのも仕方ないだろうという親父とウルトラの父の判断であった。
まあ、妥当な理由だからなぁ。母さんも『銀の鍵を使いこなせる様に』と言っていた気がするし、実際凄まじい力ではあったからもし万が一上手く使う事が出来るのならば相当な戦力になるだろうからな。
そういう訳で俺は気合いを入れつつ宇宙科学技術局にある何時もの秘匿研究室で、謎の新能力に興味津々でハイテンションな何時もの局員達の全力解析の元で『銀の鍵』の使用を試みたのだが……何というか、色々と身構えていた割にはあっさりと『銀の鍵』の展開と行使に成功してしまった。
……実際、『出そう』と思えば銀色に輝く鍵が手の中に出るし、『使おう』と思えばその使い方やどのぐらい使えるのかがあっさり理解出来たんだよな。多分これって封印の管制人格が何か関わってるんじゃと思うんだが。
まあ、とにかく『銀の鍵』を使う分には問題無いので色々と小規模な空間操作をしてみた訳だが……まず、これは当たり前だろうが以前の暴走状態の時と比べて出力は大幅に下がっているみたい。もう少し使ってみないと正確な所は分からないが、極小規模な空間操作や空間移動・空間把握とかしか出来ない様だ。
……問題はエネルギーの消費が尋常では無い事なんだがな。今回はウルトラ族ならほぼ無尽蔵で活動出来るはずの光の国なのに、『銀の鍵』を使っている間はまるで地球で活動しているかの様にエネルギーを消費してしまっていたのだ。おそらく通常の宇宙空間とかだと30秒も使えばカラータイマーが鳴り始めるだろう。地球上だと十秒持つかどうかかな。
後、研究員達による『銀の鍵』の解析作業はさっぱりだった模様……解析の為、研究員達が俺に次々と倒れるまでエネルギーを供給し続けたんだがな。光の国の科学力を持ってしても辛うじて分かった事は『銀の鍵はこの宇宙の物理法則に則ったモノでは無い』って事ぐらいだそうだ。
……まあ、あの研究員達なら『銀の鍵』の先にいるっぽい邪神の精神汚染は大丈夫そうだけどね。というか多分俺の封印には他者への精神汚染の無効化みたいな効果も付いてる気がするんだよね。エネルギーの消費量の原因の一端もそちらにある感じかな。
──────◇◇◇──────
▲月■日
とりあえず科学技術局の人達の協力で『銀の鍵』の能力を大凡把握出来た──結局、職員達が言うにはこの短期間では銀の鍵についての科学的な解析はほぼ通じなかったらしいが、次元・空間操作のデータは十分集まったと喜んでいた──ので、俺は本日から宇宙警備隊の任務に復帰する事になった。
……ちなみに色々な実験の結果、俺の『銀の鍵』は単に空間を弄るよりも変化した空間を元に戻す方がエネルギー消費が少ない事が分かったな。基本的に空間は操作するより元に戻す方が修正力的に楽ではあるんだが、『銀の鍵』の場合にはほぼエネルギーを使わずに済むぐらい効率が良かったし、そう言う方向性の力なのか或いは操作する方向性には制限が加えられているのか……そこはまだ分からんな。
まあ、復帰最初の任務はウルトラの父からの指示で大事を取って光の国周辺のパトロールだったんだがな……第二次ウルトラ大戦争が起きた時点でベテラン勢はほぼ全員出払っている所為で光の国周辺は手薄になってるんだよな。
……以前までの『エンペラ軍団』での騒動の時も似た様な感じだったがただ宇宙中で騒動が起きていただけの前回と違い今回は宇宙警備隊へ直接宣戦布告までしている以上は光の国の守りを手薄にする訳には行かず、俺の様な腕が経つがまだ戦争に参加するには経験が足りないと判断された隊員は本星での防衛に回す方針らしい。
実際、只のチンピラに毛が生えたレベルの『エンペラ軍団(自称)』達と違って、暗黒四天王率いる軍勢はあの二種の戦闘兵器群を始めとして強敵揃いであり、ベテランの隊員もやられる事が多いと同時期に光の国の防衛に回ってきたフォルトから聞いたしな。
情報局に努めている彼曰く、主要惑星が壊滅させられた事で銀河連邦も重い腰を上げて本格的に暗黒四天王へと相対する気になった様で、『エメラルド星』や『二次元世界』や『アンドロ戦士団』などの連邦所属の戦闘に長けた星や勢力も動いているのだとか。
……本当に本格的な『戦争』になってきたな。一体この先どうなる事やら……。
──────◇◇◇──────
▷月○日
今日も今日とて光の国周辺のパトロール……なんだが、色々と戦争に纏わる物騒な噂が流れてくる中で光の国周辺は不気味なぐらい静かだった。時折自称エンペラ軍団レベルのチンピラがちょっかいをかけて来るぐらいだ。
……どうも暗黒四天王率いる軍勢は銀河連邦の中でも防衛戦力が足りない星や各勢力を優先して狙っているらしく、光の国周辺にはむしろ近付こうとはしていないらしい。
まあ、連中が宇宙警備隊にも宣戦布告している以上は本星周辺の警備を疎かにする訳にはいかないんだがな。一部では更なる援軍の派遣を求める意見もあったがウルトラの父と親父が却下したし。
……防衛戦力が手薄になった所を狙うのはお約束だからね。守りが開かなくても幾らかの戦力を釘付けに出来るし……ま、今は自分のやるべき事をしっかりやっておくしか無いかな。
──────◇◇◇──────
▷月△日
あぐぐ……【キングジョー】は硬い……今日は暗黒四天王の配下になった【ペダン星人】の一派が率いる軍勢が光の国に攻めて来たのだ。
……しかも連中お約束の【キングジョー】だけでなく、現在宇宙で猛威を振るっている戦闘兵器の【インペライザー】と【ロベルガー】まで率いて来たから実に厄介だった。
惑星ジャルマの時には『銀の鍵』で瞬殺してしまったが、あの二体の戦闘兵器はどちらも異常に高い火力を持っている上に装甲も厚いので中々倒せず、逆にこちらの被害が広がっていくと言う厄介な状況だった……幸いパトロールしていた隊員が連中の接近に気が付いたから、以前の様に本星に攻め込まれる事なく宇宙空間で迎撃出来たが。
……まあ、キングジョーも片腕をペダニウムランチャーに換装して宇宙用ブースターを取り付けた宇宙型だったし、他の二体……特に円盤生物であるロベルガーは宇宙空間での機動力も高かったから厄介極まりなかった。
とりあえず救援要請を受けた俺とフォルト、後帰って来ていたゴリアテが援軍として向かってロボット軍団の相手をしてどうにか戦線を維持出来たんだが……負傷した味方のフォローをしながら高火力・高耐久の連中を相手にするのはかなりキツかった。
……アイツら殴っても蹴っても光線撃っても中々倒れないからなぁ。最終的には電撃攻撃の『ライトニングカウンター』とかで機械率が高い【キングジョー】のショートを狙いつつ、生物であるが故に比較的脆い【ロベルガー】優先して倒して数的有利を確保、その上で宇宙での機動性は低い【インペライザー】を集団でボコるという感じでどうにかしたが。
まあそれでもこちら側には戦死者こそ居なかったものの負傷者はかなり出てしまったし、連絡を受けて救援に来てくれたタロウ教官を始めとするベテラン隊員がいなかったら退けられなかっただろうがな。
今回の一件で光の国の警備を強化した方が良いんじゃないかと言う声も上がってるが現在の戦況ではそれは難しいっぽいしなぁ。更に敵の質が全体的に高いから特に実力の低い隊員の負傷率が高まってるとか教官は言ってたし。
それに加えて四天王の一角であるヤプールが地球に戦力を送り込んでるとかの情報があるので、派遣したメビウスを呼び戻すみたいな話になってるとも教官は言ってたし……多分何と無くだがメビウスが素直に帰還に従わない気もするんだよな、地球の事をだいぶ気に入っていたみたいだし。アイツ素直な様に見えて意外な所で頑固だからなぁ。さてどうなるか。
──────◇◇◇──────
▷月◀︎日
今日は【リフレクト星人】の一派が攻め込んで来た……何やら『我々にはウルトラ族の切り札である光線技は効かない!!!』とか言ってたので、ゴリアテと一緒に直接ブン殴って対処しました。多少は硬かったが【キングジョー】程じゃなかったしね。
……しかし、光剣で対抗出来たフォルトとかと違って他の隊員は光線技を封じられると途端に苦戦してたな。宇宙空間だと格闘戦はやや難しい事も踏まえて光線対策とか露骨にこっちをメタって来てるな。
この様に時折嫌がらせの様に光の国に小規模かつ散発的な襲撃を掛けられる様になって暫く、俺たち新人隊員防衛組は比較的近場に配置されてるベテラン組の援軍もあってどうにか防衛戦をこなす事が出来ていた。
……捕獲した襲撃者から聞き出した話や現在の戦局からして、どうも暗黒四天王の配下に警備が手薄になってる光の国を落として手柄を上げようと考える連中がいてそいつらが攻めて来ているらしいな。
そして四天王も『万が一光の国を落とせれば良し、そうでなくても敵の戦力を一定以上釘付けに出来る』って考えで、やる気のある配下を送り込む事にしてる様だ……多分だが、配下と言っても利害の一致で協力しているのが殆どなので、ガス抜きも兼ねてるんじゃないかと情報部のフォルトは推測しているが。
やれやれ、最近はあまりにいいニュースが無いな。戦局も戦闘兵器群が強くて押され気味だし……強いて言うならメビウスが
その際の話はどこか嬉しそうなタロウ教官に聞いたんだが、実にアイツらしいと言うか何というか……ウルトラ兄弟でも出来なかった『正体がバレた上で最後まで地球人と共に戦う』事をやってのけたメビウスはやはりすごいな。友人としても鼻が高い。
……地球のメビウスも頑張っているんだし、こっちはこっちで自分のやるべき事をしっかりしておこうかね。
あとがき・各種設定解説
アーク:『銀の鍵』が少し使える様になった
・ちなみに使用には相当な集中も必要でエネルギー消費も悪すぎるので、基本的に普通に戦った方が強い。
・本人は『リバーススタイルと合わせて通常戦闘では使いにくい特殊能力ばっかりだなぁ』と内心思っていたり。
第二次ウルトラ大戦争:開戦
・現在は四天王の配下に付いた宇宙人達+生産した強力な戦闘兵器達によってエンペラ星人側がやや優勢な感じ。
・ただ、連中は余り足並みが揃っていないので攻めあぐねており、その間に銀河連邦は奇襲でやられた施設や人員を復旧させて反撃に移る構え。
・そして、その準備の間は宇宙警備隊などの比較的フットワークの軽い勢力が応戦して時間を稼いでいると言う状況。
・尚、エンペラ星人自身はこの戦争を『余興』と考えているのでまだ動かず、現在は『自身が身に付けさえすれば単騎で全宇宙を相手に出来る』と考えている“鎧”の整備と調整を慎重かつ念入りに進めている。
読了ありがとうございました。
本作ではメビウスが呼び戻されたのは『大戦争が始まって強力な敵が地球を狙ってるので、若手は比較的安全光の国の防衛に回す方針になったから』としています。タロウがいきなり現れて撤退命令を出したのにもちゃんと事情があった感じで描写しました。