宇宙に輝くウルトラの星   作:貴司崎

71 / 89
宇宙警備隊員アークの日記・急

 ▽月◉日

 

 今日は久しぶりに朗報が届いた……なんと、地球にいるメビウスがCREW GUYSのメンバーと援軍に来ていたエースさんと共に暗黒四天王の一人である『邪将』ヤプールを倒したのだそうだ。

 ちなみにエースさんが援軍に来れたのは、タロウ教官が地球に向かった時の様子から『暗黒四天王が地球とメビウスを狙う可能性はある』と報告したので太陽系近くにウルトラ兄弟が持ち回りで待機していたからだそうだ。そのお陰で少し前にはレオさんや80さんも地球へと行っているらしい。

 ……とにかく、この報告で光の国の防衛隊若手達の士気は急上昇、特に俺たちメビウスの同期生達は我が事の様に喜んでいた……俺も少しだけとはいえ地球に行った事があるから彼等の活躍は嬉しかったな。とりあえず『メビウスはやる時にはやる男だと思っていました』と訳知り顔で語っておこうか(笑)

 

 更に暗黒四天王の一人が倒されたという情報を銀河連邦が主体で宇宙中に拡散したのが原因で、エンペラ側に付いた連中の士気がかなり下がっているそうだ……まあ、所詮連中はエンペラ星人と暗黒四天王の“力”を見て『そちら側に付いた方が得だろう』『あの強者達に付いていきたい』とか思って配下に付いたのが殆どだろうからな。

 それ故にその“力”という看板に傷が付けば士気も当然落ちるし、連中の殆どは自分本位だから離脱者も出て来るだろうと見られているからな。それが分かっているからこその銀河連邦の大袈裟な宣伝であり、彼等はそれに合わせて大規模な反攻作戦に移り初めていると聞く。

 

 ……ただ、懸念されてるのは暗黒四天王を倒した地球のメビウスに向けて更なる脅威が向かうのではないかという部分だ。実際傷ついた看板をメビウスを倒し地球をその手にする事で建て直そうと考えるのは普通にあり得そうだしな。

 勿論、俺程度に考えつく事を宇宙警備隊、特に地球に対して思い入れが強い親父を始めとするウルトラ兄弟達が考え付かない訳がなく、太陽系周辺の警戒態勢を更に強化する事で対応しているようだが。

 

 ……というか、地球に来た高級品インペライザーをメビウスに倒された時点で親父は遠からず地球が狙われると予想していたみたいだ。だからこそ先にも言った様にタロウ教官、レオさん、80さんを向かわせたんだろうし。

 さて、多分これで良くも悪くも戦局は動くだろうしどうなるかな……。

 

 

 ──────◇◇◇──────

 

 

 ▽月◇日

 

 今日は再び朗報が届いた……なんと地球にいるメビウスがCREW GUYSのメンバーと援軍に来ていたジャックさんと共に暗黒四天王の一人である『謀将』デスレムを倒したのだそうだ。

 ……なんかこの前と同じ事を書いてる気もするけどコピペじゃないよ。

 

 それはともかく、お陰で更に光の国と銀河連邦の士気は急上昇、エンペラ側に付いた連中も目に見えるぐらいに離反者や戦争に消極的になった者達もいるとかで戦局は大分盛り返して来たらしい。

 ……まあ新入りで地球攻略に専念していて割としょっちゅう倒されてるヤプールがやられたのと、今回の戦争でも謀略によっていくつもの惑星を落として来たデスレムがやられたのでは連中に与えるインパクトが違うんだろうね。

 

 しかしこれまで誰も倒せなかった暗黒四天王を二連続で倒すとか何か都合が良すぎないかと思って調べてみると、どうもデスレムは地球に単騎で訪れたらしい……インペライザーやロベルガーを向かわせなかったのかとも思ったが、実は同時期に太陽系周辺を警戒していた宇宙警備隊に嗾けて地球へ行かせない囮として使っていたらしい。

 一応デスレムも単騎で向かう以上、得意の謀略を駆使してメビウスが全力を出せない様にして戦いを優勢に運んだ様だが地球人を甘く見た所為で倒されたという感じの様だ。

 ……魔境である地球で強豪怪獣や侵略宇宙人と戦いまくってる地球人を甘く見るとか“謀将”とか名乗ってる割に馬鹿かな? とも思いはしたが、普通に考えると地球は宇宙進出もしてないヒューマノイドタイプの住民が住む後進惑星に見えるだろうから、俺みたいに詳細な情報を知ってないと油断するのも止むなしなのかもしれん。

 なので連中には是非ともドンドン油断と慢心を重ねていってほしい。その分だけこっちが楽になる。

 

 そんな事もあって最近は連中も光の国にちょっかいを掛ける余裕も無くなったのか襲撃もめっきり途絶えており、それを見た上層部は連中が態勢を立て直す前に打撃を与えておきたいという考えから光の国の防衛に割いているベテラン人員の一部を戦線に導入して反撃を始めている。

 ……まあ、俺含む新人隊員は防衛部隊のままだけどな。光の国の守りを無くす訳にもいかないからしょうがないし、士気が上がってるお陰で不満を漏らす者もいないから特に問題はないんだが。

 出来ればこのまま大戦争をこちらの勝利に持って行って欲しいんだが、まだ四天王の残り二人と頂点である【エンペラ星人】も残ってるし、四天王が二人もやられたとなると向こうも相当に慎重になるだろうから気をつけないとな。

 

 

 ──────◇◇◇──────

 

 

 ▽月▽日

 

 今日は三度朗報が届いた……なんと、地球にいるメビウスがCREW GUYSのメンバーと援軍に来ていたセブンさんと共に暗黒四天王の一人である『豪将』グローザムを倒したのだそうだ。

 ……いや、ちょっと順調過ぎない? メビウスやGUYSメンバーが強いのは知ってるし、そこにウルトラ兄弟が援軍に来たのなら暗黒四天王一人だけなら倒せるだろうけど、アイツら3度も同じ様なシチュエーションで倒されるとかそれでも四天王なの? 

 他の同期達や防衛部隊員の士気はもうお祭り状態の所でこんな事を考えてしまうなんて、やっぱ俺って捻くれてるのかなぁ……と思いつつ、地球での戦いの詳細をちょっと調べてみたら色々と分かった。

 

 まずグローザムは多数のインペライザーとロベルガーを率いて太陽系周辺に配置されていた宇宙警備隊を攻撃して、本人も自身の不死身と言っていい再生能力で当時警備についていたセブンさん相手に暴れに暴れたらしい……グローザムは『豪将』の名の通り単純な武勇に頼るタイプだったから正面から地球ごと宇宙警備隊を叩き潰せばいいだろうと考えたのかね。

 それで宇宙警備隊にある程度ダメージを与えた後に追加のインペライザーとロベルガーを向かわせて抑えさせ、その隙に自身は地球に行ってメビウスを始末しようとしたみたいだ。

 ……そうして抑えられたセブンさんだったが援軍に駆けつけたマンさんが戦闘兵器群を引き受けてくれたので、グローザムを追って地球へと向かう事が出来たって展開だったと報告にあったな。

 

 ふーむ、こうして並べてみると暗黒四天王の油断や慢心が酷いのかどうも行動が雑だな。或いは行動が雑になるぐらい何か焦らなければいけない様な理由でもあったのか……まあ、四天王の内三人が倒されて敵の士気はガタガタで離脱者も続出、更に序盤のダメージが回復した銀河連邦が本格攻勢に入った事で戦局は完全にこっちに有利な状況になってるからそれはそれでいい事ではあるんだが。

 ……出来れば彼等にはこのまま油断や慢心を積み重ねてやられていって欲しい。その方が楽だからね。

 

 

 ──────◇◇◇──────

 

 

 第二次ウルトラ大戦争(ウルティメイトウォーズ)が始まってから光の国の戦時中の厳戒態勢であったので住民は慢性的な不安を覚えており、その為か全体的にやや暗い雰囲気の中にあった。

 だが、四天王の撃破や宇宙警備隊と銀河連邦側の優勢のニュースが届けられた事と、先のバット星人襲来と違って本星が直接襲撃される事がなかった事から少しずつ雰囲気が元に戻り始めていた。

 ……そんな中、俺は少しだけ防衛任務を離れていきなり帰って来た親父と久しぶりの親子の会話に興じていた。

 

「……ではアークよ、『銀の鍵』の運用そのものは問題なく出来ているのだな?」

「ああ親父、エネルギーを馬鹿喰いするけど“使う”だけならまあ。発動中は時空間の操作で出来ない事は殆どない感じ。……詳しいデータはこっちにあるから」

「分かった、見せてもらおう」

 

 そうして俺が渡した科学技術局での『銀の鍵』の運用データを親父は真剣な表情で読み込んでいった……なんか全然親子の会話じゃなくね? むしろ事務報告か何かじゃと思うかもしれないが、俺は『親父』呼びだしそもそも普段から大体こんな感じだし

 ……後は『銀の鍵』とお袋についての話もしておきたいからな。親父は最前線に出ずっぱりだったからそういう機会が無かったし。

 

「しかし、お袋が封印の管制人格になってるとか教えてくれても良かったんじゃないか?」

「ティアからの頼みでな……『余計な意識を持たせない様に封印と管制人格についてはあの子が『銀の鍵』の力を自力で引き出すまで黙っていて欲しい』と言われていてな。……あの鍵についてはティアの方が遥かに詳しかったし、おそらく何か意味がある事だったんだろう」

 

 まあ、あの『銀の鍵』を使える様になった今ならなんとなく分かるかな。彼女(アリス)との出会いと別れ、そしてあの時抱いた怒りと憎悪とその果てに改めて得た()()()()()()()()がなければ多分『銀の鍵』は使いこなせなかっただろうから。

 ……さて、そんな感じで最近あった事を適当に話していった俺と親父だったが、それは親父が『銀の鍵』の運用データを見終わると同時に終わり今回の“本題”へと話は移っていった。

 

「……データは見させて貰った。そしてこれを踏まえての事なんだが、ここからは宇宙警備隊としての()()の話になる」

「了解した“隊長”」

 

 ……今現在の大戦争において、宇宙中で戦う警備隊員への前線での指揮を行なっている宇宙警備隊で最も忙しい親父が、単に息子と話す為だけにわざわざ本星まで戻って来る訳がないだろうしな。おそらく何か俺に任務面での用事……多分『銀の鍵』関連での“何か”があるからだと思うんだが……。

 

「現在のエンペラ星人の軍勢と我々宇宙警備隊及び銀河連邦諸侯との戦い、通称『第二次ウルトラ大戦争』はこちら側の有利に進んでいる」

「地球でメビウスとGUYSメンバーが暗黒四天王を三人も討ち取りましたからね」

「ああ、そのお陰でエンペラ星人の傘下に入った者達も離脱者が続出しているからな。……だが、()()()()()()()からまだ予断を許さない状況でもある。第一に連中の首魁である【エンペラ星人】本人が未だにどの戦線にもその姿が確認出来ない事だ」

 

 親父曰く、 捕縛した相手から聞き出したり宇宙警備隊と銀河連邦の専門家達が調べた所、エンペラ星人は傘下に入った有力な宇宙人の前には直接姿を表す事はある様だが、この大戦争そのものには一切参加した様子がないとの事だ。

 ……エンペラ星人はかつての第一次ウルトラ大戦争時に()()()光の国の防衛戦力を壊滅させる程の戦闘能力を見せており、ウルトラの父が光の国に伝わる聖剣『ウルティメイトブレード』によってパワーアップして迎え撃たなければならない程であったという。

 

「事実、エンペラ星人本人が戦線に出てその力を振るえばこちら側には大打撃を受けるだろうし、現在離れかけている者達も再び傘下に入る可能性は高い。……勿論、エンペラ星人の動向はこちらも全力で警戒しているから、もし動き出せば私を筆頭とした宇宙警備隊の最精鋭で迎え撃つ事になるだろう」

「エンペラ星人は配下の暗黒四天王が三人も倒されたにも関わらず不気味な程に動きを見せませんからね」

「ああ、油断は出来ないだろう。だが、未だに行方も分からないエンペラ星人よりも早急に対処しなければならない物がある……倒された三人の四天王を補うかの様に前線へ出てきたエンペラ星人の側近【エンディール星人】と【ジオルゴン】、そしてその配下として大量に投入される様になった【インペライザー】と【ロベルガー】だ」

 

 何でも現在エンペラ星人側が不利な戦場に対して多数のインペライザーとロベルガーが向こうの援軍として投入されており、その高い性能と物量で猛威を振るっているのだそうだ。

 

「あれだけ投入してまだ残ってるのか」

「うむ。一体一体が並大抵の怪獣を上回る戦力を持ったこの二種が多数投入されているが故、未だに敵戦力を押し切る事は出来ていないとも言える。……だが、あれ程の性能の兵器をこれだけの量投入しているという事は、何処かに()()()()()()()()が存在する筈だ」

 

 確かに、宇宙中で暴れ回ってるインペライザーとロベルガーもアレだけ倒されても次々と追加が現れる以上、何処かで新しく作っている筈だからな。

 

「つまりその施設を探して破壊すると?」

「そうだ……と言っても、あの二種が現れた時点で情報局と銀河連邦のエージェントにその出所を探らせていたからな。その生産施設の場所は凡そ特定出来ている」

「それじゃあそこを破壊すれば……って、出来るのならとっくにやってますよね」

「ああ、その生産施設がある場所は“暗黒宇宙”のとある座標である事は確認出来たのだが、そこには非常に強力な結界が張られていて侵入は不可能だったのだ。……おそらくエンペラ星人自身が作り上げた物である可能性が高いのだろう」

 

 その結界の強度はあの【ドルズ星人】の本星に展開されているモノよりも数十倍以上上回ると推測されており、更に生産されたインペライザーとロベルガーが警備に付いているので突破は困難を極めるとの事……成る程ね。

 

「つまりその結界を俺の『銀の鍵』の力で破ると」

「そういう事だ、ドルズ星人の結界を破ったお前の『銀の鍵』であれば可能性はある。……幸い戦闘兵器を戦線は投入する事を優先したからか、警備に付いている兵器群の数は減っていると監視に付いていた者から報告があった。私の『ブラックストリームM87』で結界ごと破壊する事も考えてはいたが色々と危険もあるからな。打てる手は多い方が良い」

 

 ちなみに宇宙警備隊と銀河連邦との合同で既に生産拠点に対する攻撃準備はと整いつつあり、後は結界を破壊する手段を用意するだけだと言う……一応銀河連邦の方でもいくつかの強力な兵器を用意しているそうだが、結界の強度は既存の技術では計測不能だったので可能な限りの手段を用意する事になったのだという。

 

「了解しました。敵生産拠点の攻略任務を受けさせていただきます」

「頼んだぞ。……詳しい戦略などはこれから説明する」

 

 こうして俺は一時光の国の防衛任務を離れ、大戦争の趨勢を決める戦いの一つに加わる事になったのだった……メビウス達も頑張っているし同期として、或いは親友として俺も頑張らないとな。




あとがき・各種設定解説

アーク:新たな任務へ

暗黒四天王:週一で倒されてると錯覚するぐらいのペースで欠けていった
・こんな事になったのにはいくつか理由があり、本編でのアークの推測以外にもまず四天王同士は仲間というよりは手柄を奪い合うライバルという面が強いので、ヤプールを倒したメビウスと地球を落とせば手柄になると考え単独で行動している事が挙げrsれる。
・そして『ウルトラ戦士が気に掛けている地球で四天王が倒された』事を聞いた皇帝が引き続き“戯れ”として残りの四天王に地球の攻略を命じられ、それを聞いた彼等は汚名を払拭する為に力を示す必要があった事もある。
・後は四天王の一人がやられて皇帝の機嫌が悪くなった、或いは『最早四天王は不要』とされるのを勝手に恐れた四天王が地球とメビウスを圧倒的な力の差を見せ付けて徹底的に倒して保身を図ろうとしたとかの理由もあったり。
・ちなみに最後の一人である“知将”は戦闘兵器達の追加投入の指示を出した後、グローザムにやられて守りが薄くなっている隙を突いて地球にこっそりと潜入して以前取り付けておいた催眠装置を起動する準備をしている。

【知略遊撃宇宙人 エンディール星人】【岩力破壊参謀 ジオルゴン】:皇帝の側近
・これまでは前線を暗黒四天王に任せて皇帝の補佐や後方支援に徹していたが、四天王が壊滅した為に自ら前線に出てきた古参の幹部達。
・尚、暗黒四天王の事は『皇帝が戯れで取り立てたぽっと出。戦闘兵器の量産に関しては役に立ったが辺境の惑星であっさり死ぬとか思ったより使えなかった』みたいに思っており仲は悪い模様。


読了ありがとうございました。感想・評価・お気に入りに登録はいつでも歓迎です。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。