○月■日
技術局の人とかに聞き込みをした結果、どうもトレギアさんは例の『ヒカリさんハンターナイトツルギ化事件』以来技術開発局の仕事を休んで自分の家に篭っていたらしい。まあ事情が事情なので職場の同僚達も『今の彼には休養が必要だろう』と休暇を取らせていて、始めの方は定期的にタロウさんや親しかった仕事上の同僚が偶に様子を見に行くなどしていたらしい。
だが、そのすぐ後にあの第二次ウルトラ大戦争が始まってタロウさんや技術局の職員はそちらに掛り切りになってしまい、その結果としてトレギアさんの事を気にかける余裕もなくなって実質放置状態になっていたそうだ。復帰したヒカリさんも警備隊と技術局の二足の草鞋で超絶ブラック労働だったから、復帰した直後に攻撃した事を謝りに行ってからは会いに行く事は出来なかったとの事。
それで大戦争が終わり、その後に起こった色々な揉め事を片付いたのでどうにか休暇を取れたタロウさんとヒカリさんがトレギアさんの家に行ったら、そこは既にもぬけの殻だったという話の様だ。
それで丁度休暇だった俺も二人からその話を聞いてトレギアさんの行方を追ったのだが、光の国にある施設の使用情報などを調べてみても彼に関する情報は一切なく、技術局の職員などトレギアさんと付き合いがあった人達への聞き込みをしても一切の情報は得られなかった。
なのでトレギアさんは既に光の国には居ないと判断した俺達は光の国から出る者の渡航記録も調べたのだが、そちらにも一切情報が無かった……光の国はかなり高度な技術で情報は管理されており、最低でも惑星からの出入りや銀河系からの出入りとかの情報ぐらいは残る筈なのだが、おそらく大戦争中のドサクサに紛れて情報管理系のシステムに干渉して自分の存在を残さない様に出たのではないかとはヒカリさんの弁である。トレギアさんの技量ならそのぐらいは訳ないそうだ。
……それはつまり、トレギアさんが誰にも知られない様にしながら光の国を出奔したって事になるんだよなぁ。あの人って色々と思いつめやすい所があったし、何となくだけど光の国のウルトラ族のあり方に疑問を持っていた節があるからヒカリさんの事件がきっかけになったっぽいかな。詳しい事は本人に聞いてみなければ分からないが。
まあ、寿命が超長いウルトラ族が自分探しの旅とか傷心旅行とかで光の国を出る事はままあるので、トレギアさん出奔の報告があってもそんなに騒ぎにはならなかったが。数百年単位で修行の旅に出てる人とかもいるらしいし。
……だが、原因になったとすごく気にしているヒカリさんや誰にも言わずに出て行った事を心配したタロウさんは、休暇を利用して可能な限りトレギアさんを探しに行くとの事。そんで俺も付き合う事にした……なんか嫌な予感がするしね。
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△月△日
そうして俺は休暇中の小旅行を兼ねてM78星雲周辺の有人惑星や観光施設やらを回ってトレギアさんの目撃情報を探しているのだが、これまでの所全く手掛かりは無し。少なくとも光の国から出て普通に旅行するルートは一通り当たったんだがなぁ、他の地区を探している二人の方も情報が得られていないみたいだし。
……ウルトラ族はこの宇宙でもかなり目立つから目撃情報ぐらいは集まると思ったんだがな。まあ俺らは訓練すれば擬態出来るし、目立つからこそ有人惑星での行動の時にはヒューマノイドタイプに擬態しながらってのが割と一般的だからしょうがないかもしれんが。良くも悪くもウルトラ族は有名で無駄に目立つから擬態はむしろ推奨されてるし。
まあそもそも少し訓練を受けたウルトラ族なら一つの星系を休憩なしで飛び出て、そのまま別の星系に行く事も問題なく可能だしね。疲労やエネルギーも太陽光線に含まれるディファレーター光線があれば問題ないし。移動用のトラベルスフィア(宇宙船)もあるし。
……つまり、普通の旅行とかで使われる様な中継施設を無視してどっか行ったって事になるか。トレギアさんは元宇宙警備隊志望という話だし、そもそも科学技術局員は調査目的に光の国の外への出向もあるから普通に宇宙や他惑星での行動訓練とかもやってるからなぁ。これまで何度も日記に書いてきたが広大な宇宙での人探しはクッソ大変であり、しかも自分の痕跡を消してるっぽいから尚更見つけにくい。
これで今まで捜索してきた連中みたいに何か事件でも起こしてくれれば見つけやすいんだが、どうも隠蔽されてる……って言うか、光の国を出てからは誰とも関わってない感じがするな。直接追われない様にエネルギー波長を隠してる事ぐらい? 正直見つけるのは難しそうだな。
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◇月▼日
残念だがトレギアさんは見つからずに休暇期間は終わってしまった。元々大戦争での疲れと傷を癒すためのものだったし、俺は宇宙保安庁としてはまだ新人だから色々と覚える事も多いからしばらくは余り休暇は取れないだろうしなぁ。精々五年ぐらいであまり長期的な休暇は取れなかったのだ。
……タロウさんやヒカリさんの方でも彼の情報は全く手に入らなかったみたいだし、正直言って宇宙ではそれなりに目立つウルトラ族がここまで時間が経っても何の音沙汰もないとなると本格的に身を隠しているか、或いは宇宙警備隊や銀河連邦の目が一切届かない所にいるっぽいかなぁ。でもこの前みたいな辺境とかなら逆に品行方正なウルトラ族が居れば目立って情報がこっちにも来る筈だし……本当に何処へ行ったのか。
それに二人にもそろそろ現場復帰して欲しいという声が上がってる(特に代えの効かない人員であるヒカリさん)みたいだし、もう向こうが何か行動を起こして情報がこっちまで来るのを待つしかないかなぁ。
一応、ここまで情報が無いのはおかしいって事で捜索願いは出したけど、推定範囲が宇宙規模だとそう言ったのはあんまり役に立たないからなぁ。だから宇宙警備隊も基本的に事件や怪しいエネルギー反応があった場所に向かうぐらいが限界。
……なんとなく報告が出たら取り返しのつかない事になってる気がするけど、そもそも今のトレギアさんの居場所がさっぱり分からないんじゃもうどうしようもないしね。切り替えていこう。
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◆月○日
そう言うわけで宇宙保安庁の仕事に復帰した俺は早速仕事として広域パトロールを行う事になった。これまでの経験と21先輩の指導から『もう単独で任務を行なっても大丈夫だろう』と上層部に判断されたので一人での任務である。
……まあ、仕事のやり方は殆ど覚えたし、後は比較的事件が少ない地域をしばらく(数十年ぐらい)担当して経験を積めば良いだろうとも言われたから頑張ろう。自分で決めた道だししっかりやらないと。
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○月◀︎日
今日もお仕事は無事完了……本当に平和だな。あの大戦争以降のわちゃわちゃが何だったのかってレベルで。最近は地区をパトロールしたり友好的な各惑星や組織から情報を貰ったり、後はなんか問題がありそうな所を聞きつけたら偶に自分の足で調べるぐらいだからね。
戦闘に関しても偶に来た救援信号に答えてちょっと戦うぐらいだし。最近戦った中で一番強かった……というか面倒だったのはアボラスとバニラかな。アイツら普通に強い上に体力が凄まじくてめちゃくちゃしぶといし、下手に倒すと毒素を撒き散らすから肉体を跡形もなく焼却するしか無いからな。
幸いその時は二体と交戦経験のあるマンさんとパワードさんがいたお陰でどうにかなったが。二人が全力でのスペシウム光線でアボラスとバニラを爆散させつつ毒素も可能な限り焼き払い、その後に俺が出た残りの毒素を浄化する形で決着した。
二人曰く長期間封印されているなどして毒素が弱まっているなら光線を調整して毒素毎焼き払う形でも問題なかったが、今回はかなり強い個体だったから自分達だけでは完全に毒素を除去出来なかったので応援を呼んだとの事。まあ毒素浄化するだけの簡単なお仕事だった。
……戦闘面では一番キツかったのもこのぐらいで、後はちょっとピンチになってた隊員を救助して敵を倒すぐらいの、浄化作業よりは気を使わなくて済む楽な仕事だった。まあ平和なのは良い事なんだけどな。
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α月β日
今日はとある惑星で何やら怪しい動きがあると聞いて調査……してみたらノワール星人の連中が怪獣の密猟をやってた。オラこの惑星は密猟禁止区域だろうがと言ったら『怪獣を捕獲して何が悪い! お前達だって怪獣を殺して回っているだろう! それなら捕獲して資源として有効活用している我々の方がマシの筈だ!』とか言ってきた。
……いやあのな、俺が問題視してるのは怪獣を捕獲している事じゃなくて、保護指定区域に無断で入り込んで密猟している事なんだけどな。別に合法的に怪獣捕獲するなら俺も文句は言わんよ? だから論点をずらすな。
……と、そんな感じの事を懇切丁寧に説明してやったんだが、何故か逆ギレして来て改造怪獣【メカレーター】を二体ほど嗾けて来たので、久しぶりにセブンガーを出してサクッと倒してからノワール星人達を捕縛しておいた。
まあ、改造されてる所為でプログラム通りに動くしか出来ないから冷静に相手の動きを読めればそこまで苦戦する相手でも無かったな。セブンガーは単純にスペックで上回っていたから普通に倒してくれたし。
その後は捕獲した連中を近場の支部へと移送。どうも色々やらかしてるグループみたいだったから余罪も結構見つかりそうだったとの事……連中の母星であるノワール星は怪獣が多く住んでいる上に資源にも乏しい過酷な環境の惑星だったらしく、その状況で生き残る為に怪獣を改造して重機や兵器として扱う技術が進歩したらしい。
……だが、怪獣を安定して狩れて当たり前の様に利用出来て、更に過酷な環境でも生き残れるレベルまで文明が発展すると状況は変わり、改造した怪獣を兵器や重機として他所の星に輸出して代わりに外貨や技術を手に入れる方向性へシフトしていったとの事。そうしてノワール星は銀河連邦に加入して怪獣改造の本場としてかなりの富と栄誉を得て発展していったのだそうだ。
しかし、その貿易を続けた結果歯止めが効かなくなり自星周辺の怪獣を狩り尽くして絶滅させてしまった事から状況は一変、新たに改造怪獣を作る事が出来ず他の惑星から素体である怪獣を輸入するにしても怪獣の生け捕り自体が他の惑星では困難である事から金が非常に掛かり完全な赤字経営になっていったのだとか。
他所の星の領地に怪獣を取りに行くにも当然使用料や通行料やらが(足元を見てふっかける感じで)掛かるので儲けなどでず、それならと怪獣の養殖に手を出したのだが育成に掛かるコストが高過ぎる上に養殖した怪獣の暴走事件まで起きてしまって計画は頓挫したらしい。
……それで彼等の一部はこう思ったみたいだ……『そもそも怪獣なんて害しか齎さ無いんだし、勝手にとっていっても感謝されこそすえ文句を言われる筋合いは無い筈だ』と……。
そんな理由で連中は最近無許可で他惑星の領域に押し入って怪獣の密猟に乗り出しているのだとか……まあ、怪獣に困ってる惑星だからと言って無許可で密猟を行い続ければ当然の如く連中への不信感は増して行くし、それの所為でノワール星との貿易を拒否する所も出始めてるからむしろ状況を悪化させているだけなんだよなぁ。
それなら銀河連邦未加入の未開の惑星なら良いだろとかで好き勝手やって、連邦未加入の現地の文明に対しての侵略スレスレの恫喝なども行っているから宇宙警備隊でもマークされてるし、その所為で評判が更に落ちて経済も悪化してそれを何とかしようと更に悪どい無茶をする……と言う負のスパイラルになってるらしいと支部の職員が言ってた。
……怪獣改造の文化から脱却して別の産業や貿易とかをやっていけば良いんだろうが、数千年以上続けて来た事をいきなり変えるのは難しいらしい。一度上がった生活や文明のレベルってのは中々落とせ無いものだろうからなぁ、そのせいで無謀な行動に出てる節もあるし。
一応、現状を良しとせず改革しようとする穏健派・改革派みたいなのもあるけどその辺りがネックになっているのだとか。今はギリギリ侵略では無いレベルの犯罪しかしてないので個人個人を逮捕するしかしてないが、これ以上問題行動が続くなら銀河連邦を介して本星の方に直接干渉もあり得るらしい。
互助組織である銀河連邦は基本的に個々の惑星には内政不干渉なのだが、やらかし過ぎた相手には例外も当然ある。まあそこまでやられるレベルだと判断されると『加入惑星』から『要監視惑星』ぐらいまで格下げされるので、仲間じゃなくて保護が必要な一段低いレベルの所だと判断されてこれまでの様な扱いはされ無いらしいが。さてどうなる事やら。
あとがき・各種設定解説
アーク:この話の日記の行間は実は十年ぐらい空いてる所もある
・トレギアに関して嫌な予感はしているが、それはそれとして仕事をしない訳にもいかないしまだ新人だから覚える事も多いしで一旦保留している。
・戦闘面では現在は苦戦した事ないし平和だと思ってるが、普通の新人隊員ならアボラス・バニラ・メカレーターと戦うのは普通に危険度が高い強敵である。
・本人は今までの強敵と比べれば雑に倒せる相手だったし、むしろ調査とか調整とか事務仕事覚える方が難易度高いと思っている。
トレギア:行方不明
・実は既にM78スペースにはおらず別の宇宙に行ってしまっている模様……何故、宇宙を超えられたのかは不明だが、或いは彼の狂気に『邪神達』が呼応して然るべき運命へと導いたのかもしれない(なのでこれ以後は時が来るまで登場しない)
・最終的にはO-50がある宇宙に流れ着いて、そこからは大体『トレギア物語/青い影』と同じ展開に……。
読了ありがとうございました。
トレギアに関しては原作通り。主人公は勘がいいとは言ってもどっかのアブソリューティアンみたいに未来の筋書きが分かる訳ではないので形振り構わず捜索とかはしませんでした。数十年単位で星を開けるウルトラ族も珍しくないので。