宇宙に輝くウルトラの星   作:貴司崎

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宇宙警備隊員アークの日記:捜索-サーチ-

 ◉月□日

 

 そういう訳で拾った『謎の白い短刀』をマックスとゼノンに見せに行こう……と思ったら、いきなり何故か人間に擬態した状態(地球の時の姿)で遠くに変わった形の遺跡のように見える建造物がある森の中に俺は立ち竦んでいた。

 瞬間移動とか時間操作とかそんなチャチなモノじゃない、もっと恐ろしいモノの片鱗を味わった……訳でもないが。と言うか、一種の精神世界に取り込まれた事は直ぐに察せられた。以前ひいじいちゃんが使ってた幻術に近い気がする。

 

 まあ、手にはやっぱり件の短刀が握られていたし、その短刀がまるで脈動する様に光を放っていたのでこの短刀に由来する『何か』が俺に用があるっぽいと察する事が出来たが。とりあえずあからさまに目立つ遺跡まで行ってみる事にした。

 ……変身して飛んでいければ楽だったんだがどうも精神世界であるせいか人間形態のままでしか行動出来ないし、それなら『銀の鍵』の空間転移で行こうと思ったが使えなかった。俺の感覚だと『銀の鍵』は精神世界の境界にすら干渉出来る(精神世界に招かれたと直ぐに気付いたのはその為)筈なのだが、どうもこの空間を作ったモノに制限されている感じであった。

 

 それでも人間形態で出せる最大速度で移動したので1分も掛からずに遺跡にたどり着いたのだが、その中にはこれまたあからさまに過ぎるぐらい『何かあります』って感じの三角形を石を複数組み合わせた感じのモニュメントが鎮座していた。

 何かの気配を感じるんだがそれが『何か』はこうしてまじかに見た時には分からなかった……というより、今の俺では計り知れないレベルの相手な気もしたので、とりあえず何か起こるだろうと期待して触ってみたのだが……。

 

 

 ──────◇◇◇──────

 

 

『………………』

「……それで、俺を呼んだのはアンタなのか?」

『…………(コクリ)』

 

 そうしてモニュメントに触れたアークはいつのまにか水の中を思わせる空間の中で、巨大な“銀色の巨人”──ここでは無い宇宙に於いて【ウルトラマンネクサス】と呼ばれている者と向かい合っていた。

 ……尤も、アークはここが『インナースペース』の類いである事は気付いていたし、相手が巨大に見えるのも自分が人間サイズだからで実際にはウルトラ族と同じぐらいの大きさだとは察していたが。

 

「……ところで、貴方は光の国の住人……この世界の『ウルトラマン』でなく、異なる宇宙の『ウルトラマン』という事で間違いないか?」

『…………(コクリ)』

「それで俺を呼んだ理由は?」

『………………』

「……ふむ、別の世界で【暗黒破壊神 ダークザギ】と呼ばれる者と戦った際に空間を破壊するレベルのエネルギーを発生させてしまい、その余波でどちらもこの宇宙に飛ばされてしまった。その際の余波で力を失ったので一時的に身を休める為、短刀型アイテム『エボルトラスター』に自身を封じたと」

 

 ……ちなみに側から見ていいるとネクサスはずっと無言の様に見えるが、実際はアークとテレパシーを使って会話している。

 

『(コクリ)………………』

「……俺をここに呼び寄せたのはそのダークザギの脅威を伝える為だと。ヤツも貴方と同じぐらい消耗しているが、怪獣の生命エネルギーを吸収して急速に回復している……あの木乃伊化した怪獣達はそう言う訳だったのか」

『………………』

「……それで俺達宇宙警備隊にもダークザギの捜索を強力して欲しいって訳ね。……勿論、そんな物騒な相手を放置しておく訳にもいかないから協力するのに異論はないが、休眠状態の貴方はどうするんだ? エネルギーが必要ならこっちで用意するが」

『………………』

「そうしてくれるとありがたい、出来ればダークザギは自分の手で止めたいからねと……だが、俺一人だと必要エネルギー量を賄えないか。とりあえずマックスとゼノンに相談して、警備隊本部にも詳しい情報を上げないとな」

 

 

 ──────◇◇◇──────

 

 

 ◉月■日

 

 そういう訳でネクサス氏から聞いた情報をマックスとゼノン、更に宇宙警備隊本部に伝えた後に、俺達はそのまま調査任務から【ダークザギ】の捜索、及び討伐の任務に移る事となった。二人とも一度は並行世界の地球に行った事があるし、本部の方も親父が対応してくれたからスムーズに報告は出来た。お袋自身が並行世界のウルトラマンだと言う前例があったからな。

 ……まあ、二人に事情を説明する為に少しだけ姿を現したネクサス氏自身が神々しいまでの光エネルギーを纏っていて、その発言(テレパシー)にも嘘や悪意は一切感じ取れなかった事も話がスムーズに進んだ理由ではあるが。少なくとも話に矛盾点とかは無かったし、ダークザギと同じ事──怪獣からのエネルギー吸収だって出来たのに自己保存の為の封印を選んでいたからね。

 

 それでネクサス氏へのエネルギー供給に関してだが、最初は三人掛かりでエネルギーの譲渡しようと思っていたがそれだと俺達のエネルギーが枯渇状態になって任務に支障が出るので、ゼノンの提案で『マックスギャラクシー』に蓄積されたエネルギーを使う事になった。

 マックスギャラクシーは事前に光エネルギーを蓄積しておいて必要に応じて攻撃などに使用するアイテムではあるが、その応用として蓄積したエネルギーを他者に供給する事も可能なのである。マックスも以前エネルギー切れで仮死状態だった時に地球人が光エネルギーをギャラクシーに集めて彼に譲渡した事がある事らしいし。

 

 懸念はマックスギャラクシー自体が光の国のウルトラマン用の装備で、当然中の光エネルギーもディファレーター光線仕様だった事だが、ネクサス氏曰く『このエネルギーであれば自分を回復させるのに支障はない』と言う事なので問題無くギャラクシー内の全エネルギーを吸収して実体化出来るまで回復していた。

 その代わりにマックスギャラクシーのエネルギーが空になったので暫くは使えなくなったが……ぱっと見の雰囲気的にウルトラ兄弟並みの実力がありそうなネクサス氏が仲間に加わったんだから戦力的にはむしろプラスだよね。何でもダークザギやそれに付いてきたらしいスペースビーストの反応も追えるみたいだしな。

 

 

 ──────◇◇◇──────

 

 

 ◉月▷日

 

 そんな感じでネクサスさんと一緒にダークザギの捜索を行っていたのだが、その途中でスペースビーストの反応を察知したとネクサス氏が言うので向かってみると、そこでは他の怪獣達を襲う【レッドキング】や【ブラックキング】……の面影がある異形の怪獣達がいたのだ。

 そいつらの見た目は元となった怪獣をグロテスクにリデザインした感じで、他の通常の怪獣を次々と襲ってはその生命エネルギーを吸収している様だった。更に吸収し終えた怪獣にビースト因子を注ぎ込む事で同類である異形の怪獣へと変異させる事すらしていたのだ。

 

 ネクサス氏曰く『おそらくダークザギが生命エネルギーを吸収し終えた怪獣の遺骸に培養したビースト因子を植え付けて復活させ自身の配下として使役しているのだろう。ヤツはビースト因子とスペースビーストを操る能力があるからな』との事。ちなみにビースト因子はおそらくネクサス氏とダークザギの次元移動に巻き込まれてこっちに来たものだろうと。

 ……とにかく、あのビースト怪獣(仮称)を放置しておく訳には行かないと俺達は戦いを挑んだのだが……まあ、正直言って戦闘能力は大した事は無かった。木乃伊化した怪獣をビースト因子と寄生させて無理矢理動かしているから当然だろうが。

 

 ただ、改造されたと言う意味では超獣とかに近い感じなのかどれだけダメージを与えても行動を続けるので、活動を停止させるには完全に破壊せねばならず、更にビースト因子の拡散にも気をつけなければならないので思ったよりも苦戦した。

 ……幸い対スペースビースト戦に慣れているネクサス氏が戦闘形態に変身した後に不連続時空間──メタフィールドの形成によるビースト怪獣の隔離とビースト因子の封じ込めを行ってくれたり、相手を分子分解する光線で因子の拡散を最小限に抑えてくれたお陰でどうにか2次被害を起こさずに撃破出来た。

 

 ただ、不連続時空間の形成は自身の肉体の構成物質や生命エネルギーなどを大きく消費する超高等技術(それ故に光の国でも使い手は数える程、俺も『銀の鍵』無しではまだ使えない)であり、そこはネクサス氏も同じなのか戦闘終了後にはかなり疲労していた。まあ俺やマックスがエネルギーを供給する事である程度カバー出来たが連戦は厳しい感じだ。

 ……加えて完全に消滅させられずに死体が残ってしまったビースト怪獣は突然虚空に現れた闇の異空間に生命エネルギーと因子を吸い取られたのだ。ネクサス氏曰く『自分のメタフィールドに干渉出来る以上、アレはダークザギのダークフィールドで間違いないだろう』との事だ。

 おそらく向こうの目的はビースト怪獣に生命エネルギーを徴収させて、それを回収する事で効率的に自身の損耗を回復させる事だろうと言うのが俺達の考えだ。元手も木乃伊化した怪獣とビースト因子だけだし、スペースビーストの特徴として生命体の負の感情で成長するから適当に暴れさせてから回収するだけでも収入はプラスになるだろうからな。ネクサス氏の足止めにもなるし。

 

 とりあえずこのまま放置しておくと向こうの思う壺なので光の国本部に連絡を取ってウルトラ兄弟クラスの精鋭部隊の派遣を要請する事にした。多分ビースト怪獣の用途を考えると他のも複数ばら撒かれている可能性が高いので、俺達だけでは手が足りないだろう。

 それにビースト怪獣を放置すれば被害が広がる上にダークザギの力も増すし、ダークザギの方も捜索を続けないといけないからな。とにかくこの一件には援軍が必要だと熱弁しておいたから何とかなると思いたい。

 

 

 ──────◇◇◇──────

 

 

 ◉月◀︎日

 

 予想通りここら辺の星系各地にビースト怪獣が出現していた。幸い連中の好物である知的生命体が住む文明惑星の数はここらには多く無く、その各地にも援軍として呼ばれた宇宙警備隊が守りに付いているので被害は最小限に抑えられているが。

 それで送り込まれたビースト怪獣に対しては援軍に来てくれたウルトラ兄弟──親父・マンさん・セブンさん・ジャックさん・エースさん・タロウ教官の六名がそれぞれ手分けして撃破に動いている。

 

 なのでビースト怪獣の相手は6兄弟に任せ、俺達はダークザギの発見と撃破を優先する事となった。ダークザギの気配を追えるのは今の所ネクサス氏だけだからこういう配置になるのも当然だが。

 ……まあ、ネクサス氏によれば向こうも隠れながらビースト怪獣をばら撒いて自身を回復させようとしているので捜索は難航しそうだが。とりあえずビースト怪獣を生むにしても“材料”となる怪獣を殺さねばならない筈だからその痕跡を追ったり、回収時に空間を歪めた際に発せられる相手のエネルギーからネクサス氏に探知して貰うなどで情報を集め、それらを統合して相手の位置を割り出すつもりだ。

 

 

 ──────◇◇◇──────

 

 

 □月○日

 

 ビースト怪獣による襲撃は更にエスカレートしていた。最近では銀河連邦加盟の有人惑星にまでその魔手が届くようになり、このままではまずいと宇宙警備隊からはメビウスを始めとする更なる増援が派遣される事となった。

 ……何分ビースト怪獣はしっかりと始末しないとビースト因子を撒き散らすか件のダークフィールドによってダークザギに回収されてエネルギーになってしまうからな。あまり強くないビースト怪獣とは言え跡形も無く消滅させて因子の拡散を防ぐには精鋭隊員レベルの腕が必要だからなぁ。

 

 まあ、ダークザギが倒されたビースト怪獣から拡散した因子ごと回収してしまう所為で、逆にビースト因子の拡散が起きていなかったりするんだが。その分向こうの力の回復も早まるから良い事ばかりではないけどね。

 どうもダークザギの方もネクサス氏の気配とかを探知してるっぽく、追跡をさせない為なのか強めのビースト怪獣を何度か嗾けて来たし。今日は多分【ベムラー】をベースに身体中に様々な怪獣の攻撃器官を融合させた合成怪獣っぽいヤツだったな。市街地を襲いに行ったから戦わない訳には行かなかった。

 

 とりあえずネクサス氏のメタフィールドで取り囲んで市街地に被害が出ない様にしつつ、ウルトラマンが強化されるっぽいフィールドの効果もあって四人がかりでボコボコにしてどうにか倒したが。

 ……ただ、流石に跡形も無く消滅させる余裕は無かったので結構なビースト因子とエネルギーを回収されてしまったが。こっちはネクサス氏が消耗しているし、面倒な事にならなければ良いのだが……。




あとがき・各種設定解説

ウルトラマンネクサス:パーティー加入
・今回のエボルトラスターは変身アイテムでは無く休眠状態の器として使用していた形で、エネルギーの譲渡により不完全な状態だが活動可能になったのでネクサスの姿。
・近場にスパルタカウンセリングが必要な知的生命体もおらず、アークと出会った事でエネルギー供給の目処も立った上、ダークザギに対処したら直ぐに素の宇宙へと戻るつもりなので今回は適能者無し。
・光の国製のエネルギーでも十分に回復可能だが、本来は『ヒトの心の光』とかがエネルギーだったりするので『本当の姿』にはなれない模様。

ビースト怪獣:深夜31時半的なリデザインされた昭和ウルトラ怪獣
・分類としては人間の死体に取り憑いて操る【ビーストヒューマン】の同類であり、ビースト因子による強化により木乃伊化した怪獣ベースなのに元の怪獣よりやや弱い程度のスペックとなっている。
・基本的に他の怪獣を襲って生命エネルギーを奪うか知的生命体がいる場所を襲って恐怖を煽って精神エネルギーを徴収するかが行動パターンで、一定以上溜まったか倒されたかするとダークザギに回収される仕組み。
・ダークザギにはエネルギー回収要員やネクサスの追跡を誤魔化す囮と時間稼ぎとして使われており、とにかくネクサスより先に力を取り戻せば他の有象無象はどうにでもなると考えて嫌がらせしている。


読了ありがとうございました。
最後に出てきた合成怪獣の元ネタは【イズマエル】で、それを昭和ウルトラ怪獣で再構成した【イズマエル・ジアザー】って言う裏設定があったり。
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