宇宙に輝くウルトラの星   作:貴司崎

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予告通りどうにか一週間以内に書き上がりました。では本編をどうぞ。


戦え! ウルトラ戦士達! (前編)

 ──────◇◇◇──────

 

 

 触角宇宙人 バット星人

 宇宙恐竜 ゼットン試作型

 宇宙恐竜 ゼットン量産型 登場! 

 

 

 ──────◇◇◇──────

 

 

「「「ゼェットォォォォン!!!」」」

「ッ! ……こちらアーク! 避難シェルター西側にゼットンが三体出現! 至急避難と援軍をお願いします!」

 

 カプセルから出て来た三体のゼットンの威容からいち早く立ち直ったのは、幼少期からウルトラ兄弟に扱かれ続けた所為で強者の出す覇気に慣れていたアークであった。

 ……彼は即座にテレパシーと通信を駆使して他の訓練生や教官に現在の状況を伝えると共に、目の前に居る三体のゼットンに対して戦闘態勢を取ったのだ。

 

「とりあえず援軍が来るまで時間を稼ぐぞ! 避難シェルターを守るんだ!」

「あ、ああ!」

「分かった! やろうアーク!」

「……それしかありませんか」

 

 更にアークは固まって居るメビウス達三人に分かりやすい指示と発破を掛けて、呆然としていた彼等を元に戻して戦闘態勢を取らせたのだ……彼のこう言う緊急時での対処や周りを動かす才覚に関しては父親譲りなのかもしれない。

 ……だが、それとほぼ同時に『避難シェルター周辺に居るウルトラ族を攻撃しろ』と指令を与えられたゼットン達が動き出した。

 

「「「────!」」」

「ッ! 避けて下さい!」

 

 そのゼットン達の行動にいち早く気が付いたのは、冷静に相手を観察していたフォルトだった……彼の指示を聞いて全員が咄嗟にその場を飛び退いた直後、一秒前まで彼等が居た場所に数発の火球が着弾してその付近を大きく抉りながら溶解させた。

 ……言うまでもなく、それらの火球は三体のゼットンが放ったものであり、その熱量はウルトラ戦士の光線にもある程度耐える光の国の建物を容易く溶解させるなど量産型のゼットンとは桁違いの威力であった。

 

「地面が……」

「オイオイ……なんて威力だ!」

「絶対にまともに当たるな! とにかく攻撃を避け続けて時間を稼げ! ……後、光線技は使うなよ、ゼットンは光線を吸収して反射する能力がある!」

「それは知っていますが……また来ます!」

「「「──────!」」」

 

 フォルトが発したその言葉とほぼ同時に、三体のゼットンは彼等に向けて追撃の火球を次々と放って来た……その火球は連射性に特化したものなのか先程の火球よりも威力は低かったが、それでも光の国の地面や建造物を破壊出来るだけの火力があった。

 更にその圧倒的な連射性による火球の弾幕は、彼等四人でもかろうじて逃げ回る事しか出来ない程の圧力を持っていた。

 

「「「──────!」」」

「クソッ! このままじゃやられるぞ!」

「それにシェルターの方にもダメージが……!」

「チッ! ……だったら、吸収されてもいい威力の低い技か切断系の技で牽制する! とにかく射撃をやめさせて時間を稼ぐぞ! ウルトラスラッシュ!」

「メビュームスラッシュ!」

 

 このまま攻撃を続けられたら持たないと判断した四人は、逃げ回りながら牽制の為に威力の低い光の刃や光輪を放っていく……訓練校の中でも成績優秀な四人はこの手の小技もある程度は使えるのだ。

 ……だが、バット星人グライスが作り上げた『特定機能特化式試作型ゼットン』達が強化された能力は決して火力ではないのである。

 

「ゼットォォン」

「何ィ!」

「アレは……バリアーですか⁉︎」

 

 彼等が放ったその攻撃に対して、一体のゼットンが素早く前に出ると即座に自分の周囲に円筒状のバリア──ゼットンシャッターを展開した……そのゼットンシャッターに当たった彼等の攻撃はヒビ一つ入れる事は敵わずに、逆にまるでガラスが砕けるように破壊された。

 これがバット星人グライスが作り上げた試作型ゼットンの内の一体『ゼットンシャッター特化型ゼットン』である。そのゼットンシャッターはウルトラ戦士の必殺技すら容易く防ぐ程の鉄壁の防御力を誇り、更に相手の攻撃を確実に防げる様に反応速度と敏捷性を強化した個体なのだ。

 ……更に、一体が自分の力を発揮し始めたのを皮切りに、他の二体も自分に与えられた力を行使し始めた。

 

「ゼェットォォン」

「一体が近づいて来た⁉︎ ゴリアテそっち行ったぞ!」

「格闘戦を挑む気か⁉︎ 上等だ!」

 

 まず、残り二体の内の一体が火球を放つ事をやめて訓練生達の方に向かって来たのだ……その相手の行動に対し一番近くにいたゴリアテは、自身が格闘に自信があった事もあってその相手を迎え撃った。

 ……悠々と歩いて来たゼットンの一体に対して、ゴリアテはその拳を固めて殴りかかるが……。

 

「ゼェェェットォォ!」

「なっ⁉︎ 捌かれ……グハァッ!!!」

「ゴリアテ!」

 

 そのゼットンは放たれた拳を片手で捌き、すぐさまカウンターのタックルを放ってゴリアテを後方へと吹き飛ばしたのだ……この試作型ゼットンは『格闘能力特化型ゼットン』、単純な身体能力だけでなく反応速度や頑丈さ、更に宇宙にある様々な格闘技の戦闘データをインストールしているのだ。

 よって元々ウルトラマンと渡り合える近接戦闘能力は更に強化されており、生半可なウルトラ戦士なら一蹴出来る程の格闘能力を有しているのだ。

 ……その友人の窮地を見たフォルトとメビウスがゴリアテを助けに向かおうとするが……。

 

「ゴリアテ、今助けに⁉︎ ……ガハッ!」

「ゼェットン……!」

「フォルト! コイツいつの間に「ゼェット!」うわぁっ!」

 

 その二人の近くに()()現れた三体目のゼットンがフォルトを背後から殴り飛ばした……突如現れたゼットンに対しメビウスは一瞬動揺するも即座に殴りかかるが、それをゼットンは即座にテレポートで回避すると同時にメビウスの背後に回りそのまま殴り付けて吹き飛ばした。

 ……このゼットンは『テレポート特化型ゼットン』であり、テレポートの発動速度・移動距離・連続発動能力を大幅に強化された個体である。

 

「お前達! ええいっ邪魔だ! ウルトラスラッシュ!」

「ゼェットォォン!」

 

 唯一戦えているアークもどうにか助けに行こうとするがシャッター特化型が放つ無数の火球を躱すのに手いっぱいで、援護に辛うじて放った光輪も割り込んで来たゼットンが展開した『ゼットンシャッター』に防がれるだけに終わった。

 ……三体の機能特化型ゼットンの力は圧倒的で、アーク達四人の訓練生達の運命はまさに風前の灯だと思われたが……。

 

「……スワローキィィィィック!!!」

「⁉︎ ゼェェェットォ!」

 

 その時、突如上空から一つの影が現れ、きりもみ回転しながらの飛び蹴りを格闘特化型ゼットンに浴びせかけた……格闘型は咄嗟に腕を交差させてその飛び蹴りを防いだものの、衝撃までは完全に殺しきれず後ろへと弾き飛ばされた。

 

「大丈夫かお前達!」

「カラレス教官! 来てくれたんですね!」

 

 その影の正体はアークからの連絡を聞いて救援に来たカラレス教官であった……更にその直後、上空から次々と光刃や光輪がゼットン達に降り注いだ。

 それらの攻撃はゼットンシャッターに阻まれたり、テレポートで躱されたり、素の耐久力で耐えられたりしたので大したダメージにはならなかったが、その足を止める牽制には十分だった。

 ……その攻撃を放ったのは、同じく連絡を受けて援軍に来た十人程の士官学校の教官達だった。

 

「……アーク、あのゼットンは我々に任せてゴリアテ達を連れて下がれ。お前達はシェルターの人間達の避難を行うんだ」

「教官……いえ、分かりました! 後、気を付けて下さい、そいつらただのゼットンじゃないです!」

 

 カラレス教官の指示にアークは一瞬だけ躊躇したが、直ぐに気を取り直して倒れていたゴリアテに肩を貸しメビウスとフォルトを連れてシェルターへと向かって行った。

 ……そんな彼等を背にカラレス教官を筆頭とした士官学校教官達が並び立ち、三体のゼットンと向き合った。

 

「この惨状から考えるにあのゼットンは量産型ではなく高級品、しかも先程のバリアやテレポート、格闘能力から考えてカスタム品といったところでしょうか」

「それだけではないの。……先程の攻撃で各々が別の対処をしておったし、ゼットンの生産性から考えてもおそらく各機能へと特化した改造が施されているのではないかな?」

「そこも含めて戦いながら見極めるしか無いでしょうな」

 

 ……ウルトラの星の宇宙警備隊はその活動範囲に比べて、所属している隊員の数は精々百万人程度と決して多い訳ではない。だが、それ故に人材の育成には力を入れており、それは士官学校での教育にも当てはまる。

 そして彼等士官学校の教官とは、宇宙警備隊の中から能力・知性・人格において『新しい宇宙警備隊員を鍛えるに相応しい』と()()()()()()()()に認められた者だけが就く事の出来る職業なのである。

 

「……さて、このシェルターを攻めてくるとは、我々士官学校の教官も随分見くびられた物だ」

「……我々がここを任されたのは生徒達の面倒を見るためではなく、このシェルターが()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だと言うのに」

「その勘違いはしっかりと教育し直してやるとしよう」

「「「ゼェェェットォォォォン!!!」」」

 

 ここに宇宙警備隊士官学校の教官達と三体の試作型ゼットンとの戦いが幕を開けたのだった。

 

 

 ──────ー◇◇◇──────ー

 

 

 ところ変わってここは現在の最激戦区『スペースポート』、そこではバット星人先行部隊と宇宙警備隊のウルトラ戦士達が激しい戦いを繰り広げていた。

 

「ジェアッ!」

「セェイ!」

 

 中でも目を引くのはアイスラッガーを逆手に持ったウルトラセブンと、長剣を持つバット星人前線指揮官との激しい剣戟である。

 

「チィッ! 喰らえ!」

「ジェイッ! エメリウム光線!」

 

 両者はそれぞれが手に持った刃で斬り結びながらも、時折相手の隙を狙って装備している銃火器や額からの光線を撃ち放って行く……その戦いの趨勢は全くの互角であり、両者の非常に高い戦闘技能を伺わせた。

 ……だが、彼等の戦いとは裏腹に全体的な戦況は徐々に片方へと傾き始めていた。

 

「シェアッ!」

「グモォォォ⁉︎」

 

 その戦場の一つではウルトラマンが量産型ゼットンの一体に接近してからのチョップを放ち怯ませていた……相手のゼットンも反撃に火球やナパーム弾を放つが、ウルトラマンはそれらの攻撃をサイドステップで躱してから相手の懐に潜り込む。そして、彼はゼットンの腰を両手で掴むとそのまま大きく振り回して地面に叩きつけた! 

 ……地面に叩きつけられてゼットンは直ぐに立ち上がろうとするが、量産型である為かその動きは鈍く……。

 

「スペシウム光線! シェアッ!」

「ッ⁉︎ グモォォォ…………⁉︎」

 

 その隙にウルトラマンは一旦バックステップすると、直ぐにゼットンが光線を吸収出来ない背中部分にスペシウム光線を放つ……全てのウルトラ戦士の基本技でありながらも、あの日地球でゼットンに敗れてから更なる研鑽を積んだウルトラマンのソレは他の宇宙警備隊員とは別格の威力を持ってゼットンを爆散させた。

 

「チィッ! やはり量産型一体ではウルトラ兄弟相手には通じんか!」

「バット星人、もう降伏しろ。……既にこの場の戦局は我々の方に傾いた」

 

 セブンの言う通り、スペースポートの戦局はウルトラ戦士達に有利に進んでいた……特に量産型ゼットンを分散させて複数名のウルトラ戦士で各個撃破出来た事が大きく、バット星人達の命脈は風前の灯だった。

 ……量産型ゼットンが強かったのはこの指揮官型バット星人の采配による集団戦闘だった事が大きく、セブンによって指揮を封じられ単体になったゼットンは宇宙警備隊員が複数揃っていれば十分相手が出来るレベルでしかなかったのだ。

 

「……ふん、確かにこの場での勝敗はお前達の勝ちの様だ。……だが、我々は十分に己の役目を果たした! 見るがいい!」

 

 降伏を勧告されたバット星人前線指揮官はこの場での敗北を認めながらも、不敵に笑いながら上空を指差した……そこには、衛星軌道上に存在するバット星人連合艦隊から援軍として派遣された大量の無人戦闘機が、地上に向けて降下してくる光景があった。

 

「あれは……」

「フハハハハ!!! やはり貴様らは“戦争”には向いていない様だなぁウルトラ戦士供よ! 我らの役目は本隊が援軍の準備を整える為の時間稼ぎと地上の迎撃部隊の戦力を削る事よ!」

 

 そうしている間にも大量の無人戦闘機とソレらに守られてゼットン入り降下カプセルが徐々に地上へと近づいて行く。

 

「この様な局所での戦術的勝利ではなく、大局における戦略的勝利こそが戦争の肝よ! この場での勝利などくれてやるわ!」

「……成る程な」

 

 その光景を見てその場にいたウルトラ戦士達に絶望の感情が襲う……だが、そんな状況にあってもウルトラマンとセブンの表情には一片の絶望すら無かった。

 

「それならば、こちらも一つ教えておこう」

「……何?」

「このウルトラの星には、()()()()()()()()()()()()()“最強の戦士”がまだ残っているという事を」

 

 ウルトラマンとセブンがそう言った直後、彼方からその無人戦闘機の軍勢に向けて一条の超威力の光線が撃ち放たれたのだ! ……その光線は無人戦闘機群の一角を文字通り()()させると、そのまま薙ぎ払う様に放たれ続けて無人戦闘機群と降下カプセルの半数以上を消しとばしたのだ! 

 ……その余りに出鱈目な光景を見てしまったバット星人前線指揮官は、戦闘中である事すら忘れて叫び出してしまった。

 

「な……あァァ! ば、馬鹿な……ウルトラ戦士の光線技は有人惑星上では威力を大幅に減じなければならないのではないのか⁉︎ ……それに、あの光線、あの威力でこちらには一切の輻射熱すら無かったぞ⁉︎」

「当然だ。……だからこそ、“あの光線”は()()()()()()()()()()()と呼ばれているのだから」

 

 通常、彼等ウルトラ戦士の光線技は有人惑星上では威力を大幅に落として放たれている……そうしなければ、守らなければならない惑星に、自らが放った光線技の輻射熱や磁場などの余波によって甚大な被害を齎らしてしまうからだ。

 ……故に士官学校でも光線技の授業では最優先で制御能力を磨かされるし、バット星人もウルトラの星での戦闘に持ち込めば自星への被害を恐れて全力の光線を撃てないだろうと読んでいたのだ。

 そして、下手撃てば惑星すら破壊してしまいかねないウルトラ戦士の光線技に対してその読みは正しい……一人の例外を除けばだが。

 

「流石は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()最大温度87万度を誇る光線だな」

「ああ、磁場で惑星の地軸が歪むことも無い様に、敵だけを消滅させられる様に余波も含めて完全に制御されている」

「ま、まさか……!」

 

 彼等に言う通り、その光線はかつて『砂漠の中にある一粒の砂だけを正確に撃ち抜く』とまで言われた程の精度があるとされる……その証拠に先程の光線は無人戦闘機と降下カプセルを消滅させたが、地上──ウルトラの星には一切の被害を出していないのだ。

 ……故にこそ、様々な状況でその星にいる命を守らなければならないウルトラ戦士にとっては、その光線──『M87光線』が“最強”だと言われているのである。

 

「済まない遅れた。指揮を大隊長に任せてきたから、ここからは私も前線に出よう」

「宇宙警備隊隊長、ゾフィー!!!」

 

 空からスペースポートに降り立ったその人物に対して、バット星人前線指揮官はそう叫んだ……ここにウルトラ兄弟の長兄にして、ウルトラの星最強の戦士ゾフィーが参戦したのだ。




あとがき・各種設定解説

アーク達:時間稼ぎの役目は果たした
・ラスボス三体相手なら上出来な部類。
・いきなりの実戦でまだ未熟な訓練生が活躍できる程世の中は甘く無い…例え特別な力があったとしても。
・ウルトラ兄弟の厳しい修練のお陰で、アークはその辺りの事は自覚済み。

士官学校教官達:当然ながら他者に指導出来る程のベテラン揃い
・宇宙警備隊員を兼任する事も多いので、全員高い実力を持つ。

ゾフィー:これが宇宙警備隊隊長の力だ!
・(降下カプセル内の)ゼットンは私が倒した(ガチ)。
・この作品のゾフィーさんはテレビ本編+Story0+ウルトラマン超闘士激伝・新章な感じで捏造設定マシマシにお送りします。
・他にもウルトラの父に指揮権を譲る前に、各種重要拠点への援軍派遣や外宇宙にいる隊員達への帰還命令とかもやってました。

ゼットン:戦闘能力は高いのだが知性はそこまででは無い
・なので、バラバラに戦った量産型は複数人からの攻撃に対応仕切れずあっさり倒された。
・グライフが生産した試作型はその辺りもある程度改善されており、多少の連携行動も可能。

バット星人前線指揮官:本当に優秀な人物
・戦闘能力はウルトラ兄弟と互角に戦える程であり、その中で戦略的な立ち回りも出来る理想の指揮官……なのだが、今回は相手が悪すぎた。


読了ありがとうございました。
ゾフィーさんをかっこよく書くのがこの小説を書き始めた理由の一つなので、ようやく書けて満足。

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