例え世界が壊れても、お前を選ぶなんてありえない   作:月兎耳のべる

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あけましておめでとうございます~
今年もゆるゆる書いていきますっ




 季節は春を過ぎ、初夏に差し掛かろうとしていた。

 肌寒さが抜けきった外気の中、早くも半袖になった野球男児達がオッスオッスと掛け声を挙げているのが聞こえる。

 もちろん我々助太刀研究会の活動も彼らに負けることはなく、春より一層忙しい日々を送っていた!

 

【Result】

  依頼『超難問クイズを制覇せよ!①』解決!

 『助太刀ポイント』を20獲得した!

 

【Result】

  依頼『10円おじさんの謎を探れ』解決!

 『助太刀ポイント』を40獲得した!

 

【Result】

  依頼『赤茶けた柱』解決!

 『助太刀ポイント』を30獲得した!

 

 

【Result】

  依頼『見た目が10割!?』解決!

 『助太刀ポイント』を10獲得した!

 

 

佐野円堂「依頼解決しに外に行ってきます」

 

「あっちょっと円堂君! ……はぁ、もう居ないだなんて。呆れを通り越して何も言えないよ」

 

「本当よねぇ、アタシ達が言うまでもなく解決していくから……頼りになりすぎちゃうわ」

 

「貴様ら、マイ・ベスト・フレンドの力に依存しすぎているぞ! 頼りになるのは分かるがオレ達も活動をだなぁ!?」

 

「草だって私達と一緒にお茶飲んでるじゃないか」

 

「そうよそうよ。それにこの固焼き濡れ煎餅も佐野ちゃんからの差し入れよ。一番食べてるあなたが率先的に行動しなきゃ駄目じゃないの草ちゃん」

 

「くっ、お、オレはこの煎餅を食べ終えたら手伝うつもりだったんだ! 舐めるなよ!」

 

「噛んで食べてるよ」

 

 我々……というのは語弊があるだろう。そう、この助太刀研究会で目まぐるしく動いているのは実は佐野一人だけだ。

 我々がこうして休憩時間にぼりぼりと煎餅を貪り食ってる間も、奴はさながらマグロのように留まることなく依頼をこなしていく。

 そして奴の尽力のお陰で我々研究会の名は学校内で知らぬものはない、というレベルまで上昇し、学校からの備品提供や、依頼者の感謝の品で部室も以前とは比ではないくらいに充実している。

 マッサージチェアに筋トレ機材、4kテレビに最新型ゲーム機、プロジェクターまで配備されている部室などまずないだろう!

 

「それにね草ちゃん。私達だって手伝いたいのはやまやまなのよ? でも彼ったら依頼を受けたと思ったら次の瞬間に解決してることが多いから……」

 

「手伝う間もないって感じなんだよね。でもそれは決して一人よがりって訳じゃない。円堂君が無駄なく準備した結果手伝う必要がなくなったって感じだから……何というか、ね」

 

「だから私達が出来る事と言えば彼が倒れそうにならないように休憩を薦めたり、差し入れするくらいね。気が付くと倒れそうになってるから……」

 

 奴は最初嫌いな物はないと言ってはいたが、そんな奴が嫌う物があるとすれば間違いなく『無駄』であろう。

 どんな物事にも兎に角スピードを求め、早期解決を求む。

 言葉は最低限に。行動もまた最小限に。少しでもスキップ出来るものがすぐにそれに飛びつく。

 そしてその無駄のなさ故、我々が手伝うスキが全く生まれない。

 唯一口を出せる事があるとすれば、依頼をこなしながらも我々とのコミュニケーション(オレは最近避けられているが!)、自己鍛錬も欠かさないという明らかなオーバーワークくらいか。

 

 全く、奴はRTA(リアルタイムアタック)でもしているつもりなのだろうか? 一所懸命に活動してくれる事は素晴らしいが、それで草が体調を崩して貰っては困る! 我々は硬い絆で結ばれたベストチームなのだ! だからこそ助け合わねばならないだろう!

 

「あ。ねえねえ。それだったら円堂君の慰労(いろう)会でもするのはどうかな?」

 

「それ……いいわね、ナイスだわ一華ちゃん!」

 

「おぉ慰労会か!」

 

 なるほど。頑張り屋の奴のために労いの会を入れるというのも悪くはないな!

 我々も感謝の気持ちを改めて伝えられるし、奴も休める。そして今以上に我々の絆も深まる! まさしく全員が得する素晴らしい展開だ! やるな一華!

 

「で、あるならやっぱりサプライズにしておきたいわね」

 

「うーん、でも勘がいい円堂君の事だからすぐに気がついてしまわないかな?」

 

「オレには素晴らしい案があるぞ。聞きたいか聞きたいだろう! 奴のために我々で千羽鶴を!」

 

「素敵な案だね。他人の昨日見た夢の話聞くほうがまだ建設的だったよ」

 

「あ。だったら匿名の依頼を出すのはどうかしら? 佐野ちゃんも依頼だったら飛びつくだろうし!」

 

「ほむほむ。そして最終的にはこの部室に誘導して~って感じ~?」

 

「良いわねソレ」

 

「オレの案も悪くないと思ったが……なるほど、それも良いな!」

 

「それで色とりどりのお菓子とか、ジュースとか……あとは~、私とイッチーと葛ちゃんで、水着でも着て思いっきりサービスしちゃう? しちゃう~~?」

 

「草、死ねとまでは言わないから切腹しろ」

 

「実質死じゃないか!? というか今のはオレの発言じゃない!」

 

 我々の秘密会議に唐突に混じったパリピ陽キャの声! 全員の顔がその声の主に向けられれば、そこには眩しいほどの金髪をポニーテールにしてまとめた、どこか小悪魔的な美少女がいたではないか!

 

「やほやほ~、久しぶり。みんな元気してた?」

 

「あざみ!」

「あざみちゃん!」

瑠璃玉(るりたま)……さん」

 

 コイツの名は『瑠璃玉(るりたま)あざみ』、我が助太刀研究会の部員ながらも、設立以来数えるほどしか来なかった幽霊部員! なおしょっちゅう学校をサボるため研究会どころか学校でも出会えるのが(まれ)なレアキャラでもある! その見た目のギャルギャルしさと行動から不良と呼ばれているものの、珠玉(しゅぎょく)のルックスと出るとこの出たスタイルから男女問わず人気があるのだ!

 

「よく来たな、珍しいじゃないか!」

 

「だよね~。ほぼほぼ半年ぶり? ごめんね~顔出せなくって! 私も色々忙しくってさ~」

 

「忙しいって……貴方はただ遊んでるだけじゃないかな?」

 

「バレた~?」

 

「一華ちゃん! もう、折角来てくれたんだから角が立つような事は言わないの」

 

「……」

 

「やーい、怒られてやんの~」

 

「やめて」

 

 デコられたネイルで一華の頬をつつくあざみ。

 いつも以上に険しい顔をする一華の反応で分かるだろうが、奴は何故かあざみを嫌っている。しかし一方のあざみは一華を嫌ってはおらず、面白がってむしろ積極的にからかおうとするのだから変な関係だと言えよう!

 

「で。どうしたんだ? あぁそうか、貴様もまたオレ達の活躍を聞いて復帰したくなったというのか!? それならば大歓迎だ! 共に真なる友情を築いていこうではないか!!」

 

「うんうんそんな感じ~。いや~、本当快適になっちゃったねこの部室! 見てびっくりしたけど何この大画面モニタ! 音響もガチじゃん~! うわは~~、リクライニングマッサージチェアもあるし、あのクーラーだってつい最近出たばっかりの奴でしょ? 冷暖房完備! すごい! 住めるじゃん! あ、この椅子今度から私の特等席にしていい?」

 

 おぉ(うなず)いてくれた! 絢爛(けんらん)豪華になった我らが部室を見て驚くのも致し方がないというものだな! ただそのマッサージチェアは部員全員のものだから特等席という事には……うん? なんか怒ってないか一華?

 

「瑠璃玉さん、貴方は別に活動したい訳じゃなくて体よくサボるためにこの部室を使いたいだけでしょ? そう言うのが一番困るんだけどね」

 

「一華ちゃん!」

 

「え~、なになに邪推しすぎだよイッチ~? 私、みんなの活躍をまた聞きして感動しちゃって~。それでまたみんなと活動したいな~って思っただけだよ~。ほんとほんと~」

 

「そんな呼び方しないで。片手の指で数える程しか研究会に来てないのに、良くぞまあそんな薄っぺらい事が言えるね」

 

「今度は心入れ替えたから、ほんとほんと~! あ、ごめんちょっとMINE返すからこの話後でいい?」

 

「……っ! この!」

 

「一華!」

 

 思わず手が出そうになった一華をどうにかして抑える。

 全く、なんで一華はあざみを邪険にするのか! あざみも面白がって挑発しないで欲しいぞ!

 お陰で一瞬にして険悪ムードに変わってしまったじゃないか! 全くどうしたものか……ん? この特徴的な連続で床を擦る音……こ、コイツは!

 

【Result】

  依頼『ムハジャキントゥントゥクのお告げ』解決!

 『助太刀ポイント』を50獲得した!

 

 

佐野円堂「ただいま。……どちら様?」
 

 

 やはりマイ・ベスト・フレンドか!

 スライディングで滑り込むようにして部室に入った奴は、あざみの姿を見つけると首を傾げた!

 

「佐野ちゃんお帰りなさい! この子はね。前ちらっと言ってたかもしれないけど……」

 

「よっすよっす~、瑠璃玉あざみちゃんだよ~。君が噂に聞く大文字高校の『スピードオブスピード』? 元幽霊部員だけど、これから心を変えて一緒に活動してくからよろしくね~」

 

「よろしくしなくていいよ、そんな奴」

 

○……どうして一華が不機嫌?

●普通に挨拶する。     

 

佐野円堂「よろしくね瑠璃玉さん」

【下の選択肢を選ぶとあざみの好感度が上がり、一華の好感度が下がります。が、一華は既に絆MAX状態なので下がっても問題ありません】

 

「おぉっ、素直でいい子だね~、私的にもポイント高いよ~? うりうり」

 

「……っ!」

「コラァあざみ! 初対面のマイ・ベスト・フレンドにそんな馴れ馴れしくっ!」

「あざみちゃん、貴方女の子だからそんなに佐野ちゃんにくっつかないの。はしたないわよ?」

 

「おっと怒られちゃったか~、って何か草君の怒りどころ違くない?」

 

 何も違うところなどない! 全く、知り合ってばかりの相手にそこまで距離を詰めれるパリピムーブは尊敬に値するが、汗と涙と血をもって交友を深めた佐野にべたべたするのはオレの目が光っている間は許さんぞ! 隣の一華もきっとオレと同じ気持ちだろう!

 

「まあいっか~。でさ。でさ。でさ。私キミの事が凄い気になるんだよね~。この研究会がここまで大きくなったのってキミのお陰なんでしょ? 学校一の俊足(しゅんそく)の持ち主で、一日10件以上の依頼をこなしたり、貰った依頼をその場で解決したり、10円おじさんを討伐したり、教頭先生のヅラを暴いたり、食堂の裏大食いメニューを制覇したり、助っ人野球で全打席ホームラン決めたり、学年テストで1位を取ったり、小説コンテストで大賞を受賞したり、コンビニ強盗を退治したり、懸賞で4k巨大TVを当てたりと、本当どれだけ偉業があるのやら……」

【手に入れた称号の数だけこのセリフは長くなります。仕方ないね。ちなみに現時点で取得している称号は『スピードオブスピード』『依頼マイスター』『辻切り解決魔』『10円おじさんキラー』『ハゲは隠すものじゃない』『極食漢』『サヨナラホーマー男』『学年一位の秀才』『令和生まれの大文豪』『ユアヒーロー』『豪運の持ち主』です。】

佐野円堂「過大評価だよ」

 

「いやいやいや。こんだけやっといて過大も何もないでしょ。それだけやってたらこの学校で最早君を知らない人なんていないさ、いよっ、『伝説のスーパー転校生』君!」

 

【称号】

 『伝説のスーパー転校生』を獲得した。

  全ステータスに+20の補正!

  更に全アクションの好感度+5!

【本RTAのマスト称号②です。これがあるとより攻略が捗ります。これは本来なら周回しないと手に入らない裏称号です】

 

「伝説のスーパー転校生……だと!」

 

「何その変な異名……何?」

 

「あれ? みんな知らなかったの? 彼ってば全校生徒からそう呼ばれてるんだよ?」

 

 くっ、そんな(うらや)ましい通り名がついてるなんて……! だが他でもない佐野がその名を貰えるのは納得いく話であるし、また親友としても誇らしいな!

 

「ま、そんな伝説のスーパー転校生君とは是非ぜひ色々な話を……え? ちょっ、佐野君どこに消えた? 今までそこに居たよね?」

 

「円堂君ならもう教室を出ていったよ」

 

「佐野ちゃんは相変わらず止まらないわね……なになに、次の彼の依頼は――『筐体(きょうたい)に居座り続けるゲームセンターの四天王を倒して欲しい』ですって?」

 

「奴であるならばその程度の依頼造作もないな。お茶でも飲んでるか……」

「そうね」

「そうしましょうか」

 

「えぇーいつもそんな感じなの~? どうせなら見に行こうよ~。彼の活躍っぷり気になるでしょ?」

 

 正直我々は佐野の活躍なら普段見ているので、今回の依頼に関しても絶対に成功するだろうなという信頼があるのだが……ふむ。そうだな! ここはマイ・ベスト・フレンド初心者のあざみの驚く姿を見るというのもまた一興だろう!

 葛も一華も同じ思いだったらしく、ほどなくして全員でゲームセンターに行く事になった。

 

 そしてところ代わって夕焼け赤らむ商店街の一角。

 創業30年以上、歴史ある古びた大文字町唯一のゲームセンター『イリュージョン』。

 店の中に入り込むと様々な光と大騒音が我々を迎え、その騒音の中、ほどなくしてひときわ目立つ人だかりの山を見つける事が出来た。あれは……!

 

「くぅっ……!! ば、馬鹿なこのオレの悪男(ワルオトコ)が一度も触れる事なく……!?」

「カ、カムイたん……!」

「我が黒面の物をあんなに呆気なく……貴様、一体何者だぁぁぁぁあッ!?」

 

「おぉーやってるやってる。ABG(アルカナブレイブギアーズ)かー。ってランク『極』の奴ら相手にP勝ち? やるじゃん~っ」

 

 対戦格闘ゲームの筐体の周りには佐野とそのギャラリー達がいた! そして思った通りマイ・ベスト・フレンドは勝ち進んでいたようだ。

 ふっ、まあ当然だな! 奴であるならばどんなジャンルのどんな相手であろうと、顔色一つ変えずに勝利をもぎ取る事など造作ない事なのだから!

  

「どぅーっふっふっふ。多少はやるようですなぁ……だが今まで倒したのは私より(はる)かに格下。チミには格の違いというのを教えてあげましょう!」

 

 しかし今度は佐野が座るゲーム機の向かい側に、全体的に体面積の大きいドラム缶のような巨体の主が現れる。まるで洗ってない生乾きのシャツのような臭いを振りまく奴は、まさしくこのゲームセンターの大ボスといった風格! マイ・ベスト・フレンド……油断するなよ!? 

 

「……何なの。ゲームって極めると盤外攻撃までしてくるのかい? 臭い……」

「何だか洗ってない犬みたいな香りするわねぇ……」

「このゲーセン特有の香りってほんっとあれだよね~」

 

「うぎいいいぃぃぃぃ~~~っ、その精神攻撃をやめろォ!」

「き、ききき貴様ら口プレイは禁止ですぞ!!」

「何故拙者どもにも巻き添えで攻撃するのでござるか!?」

 

 何やらオーディエンスも盛り上がっている中、佐野とゲーセンのボスとの闘いが今まさに始まろうとしている!

 佐野が選んでいた葉っぱ一枚だけ装備した原始人に対し、ボスが選んだのはちびっこ魔法少女! 見た目は確かに可愛らしいが、そんなので佐野のキャラに勝てるのか!?

 

「いや~。でもあのキャラはかなり強いよ~。使いこなすのは大変だけど、何よりあの佐野君のキャラに7:3で相当有利取れるからね」

 

「詳しいのねあざみちゃん!」

 

「まあね~。私もこのゲームは家庭版でも結構やってるし~」

 

「ふんっ! だから何だと言うのだ! ありとあらゆる分野に精通し、その道でトップをひた走るマイ・ベスト・フレンドに不可能など……な!? お、おいどうしたというんだマイ・ベスト・フレンド!?」

 

 その光景にはあざみを除いた全員が驚いた! 

 なんとあの佐野が……佐野が一方的にやられ続けているというのだ! 

 敵ボスが操る魔法少女の多種多様な攻撃の前にすべて無防備どころか、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()! ば、馬鹿な!

 

「どぅぉーっふぉっふぉっふぉっ!! 弱い、弱すぎですなぁ! 他の者共を倒せても、所詮私には勝てないという事がよ~く分かりましたかなぁ?」

【この戦闘はあざみ入部時専用の負けイベです。倒す直前までねばっても唐突にガード不能即死が飛んでくるので迅速に負けましょう】

「円堂君!」

「嘘……佐野ちゃんが負けるなんて!?」

 

 蓋を開けてみればまさかまさかのストレート負け……!

 あの佐野が相手に傷一つ負わせる事なく負けてしまうなんて……くそっ、なんて奴だ! 

 だ、だがな! たとえ佐野が負けでもオレがいる……! 佐野、貴様の雪辱は絶対に晴らしてやるからな!

 

「まあまあコイン投入は待ちなって~。アイツはランク『至極』。さっきの3人組よりも強い奴だよ。勝てるわけないって」

 

「何が至極だオ●ホみたいな名前しやがって! 勝てる勝てないじゃない、勝つんだ!」

 

「根性論はいいからちょっとどいてなって? まだ私の方が勝率あるからさ~」

 

「おほぉ? まぁだ身の程を知らぬものが挑んで来たのですか? 無駄だというのが分からないのですかねぇ。ま、ハンデなどくれてやりませんが」

 

 いつもの間延びするような声でオレの代わりに座ったあざみは、何も気負う事なく手なれた手つきでスティックとボタンを操り、あっという間に対戦を初めてしまう。

 確かに、かなりこのゲームに対して慣れているようだ。だがな奴は佐野が勝てなかった相手! あざみに勝てるとは……な、なぁ!?

 

「ほいほいほいっと、はい勝利ー!! いえーい、あざみちゃんの勝・ちっ!」

 

「ぷ、ぷぎいいぃぃぃぃいいぃぃぃいぃぃ!!?」

 

 あれだけ押されていた筈のあざみ操る警察コスのキャラは絶体絶命のタイミングで逆転勝利。

 動揺を隠せぬボスが2R目から挽回をたくらむものの、結局はあざみのワンサイドゲームで終わってしまった……あざみ、お前このゲームをやりこんでいたな!?

 

「いえーいみんな見てた? いえーいいえーい!」

 

「凄い、凄いじゃないのあざみちゃんっ!」

 

「まさか円堂君が勝てなかった相手に勝つなんてね……」

 

佐野円堂「凄いや」

 

【Result】

  依頼『四天王を超えし者』解決!

 『助太刀ポイント』を10獲得した!

 

「ふふーん、見直した? 佐野っちも凄かったよ~極相手にあれだけ動けるのは中々いないね! 良ければお姉さんが鍛えてあげよっか?」

 

「佐野っちって……はぁ、こんなの聞く必要ないわよ円堂君。依頼達成したし帰りましょう?」

 

 あざみめ、よりにもよってマイ・ベスト・フレンドにそんな上から目線で! いや、確かに奴に勝てなかったマイ・ベスト・フレンドがあざみに勝てる道理はないが、佐野がそんな教えを乞うなど!

 

●教えを乞う。    

〇教えを乞わない。  

 

佐野円堂「教えてくれるなら是非」

【上を選ぶとあざみとの追加ミニゲームが遊べるようになります。一日一回挑戦できて、超反応クソ強あざみ相手に勝利するのが最終目的ですが、勝てなくても10回以上通うとクリア扱いになります。通ってられないので速攻で勝利します】

「ほいほい~じゃあ明日暇だし~明日やろっか……あ。あとそこのゲーセン軍団。ゲームは譲り合ってプレイするように。なかなか強かったよんっ、ばいばーい」

 

「……え。え、えぇ……分かりましたよ」

 

 呆然としているゲーセンのボスを置いてこの場を後にするあざみ。

 しかし呆然とするのはこちらも同じだ。

 普段を知る者にとっては到底信じられない佐野の敗北。

 そしてその佐野を上回るあざみ――奴にも苦手分野があったという事なのだろうか。

 

「あざみちゃんにあんな才能があったなんて……」

「まさか円堂君より強い人がいるなんて……信じられない」

 

「……」

 

 信じられない。確かにそうだ。 

 そもそも佐野はどうしてあのボスに何一つ反撃出来なかったのだろうか? 

 

 相手の強さを悟って無駄な抵抗はしなかった? それとも体調不良なのか? あるいは……あざみが乱入するのを待っていたというのか?

 

 理由こそ分からないが、どうにもその部分がオレの喉元に引っ掛かり続けていたのだった。

 

 

 

 § § §

 

 

 

「やっほ~、また来たよ~、お邪魔~」

 

「あらいらっしゃいあざみちゃん」

「あざみ貴様……! 遅いぞ!」

「……はぁ」

 

佐野円堂「いらっしゃい」

 

 そしてゲームセンターの件から四日後の事。あざみはふらりと研究室に顔を出した!

 奴の猫のような気紛れと適当さ加減は知っていたが……まさか約束をほっぽり出すとはな! それもよりにもよって佐野との約束を!

 

「えぇ~? 佐野っちと約束なんてしてたっけ~~?」

 

「してただろう! 貴様がマイ・ベストフレンドに訓練をつけると!」

 

「訓練? ……あぁ~~っ、ゲーセンのね。思い出した思い出した。そうそう佐野っち凄いゲームの筋良かったもんね~」

 

 こいつは佐野ほどとは言わないが昔から要領がよく、どんな物でも平均以上……いやトップクラスの腕前を見せる才能があるのは知っていた。だがこの上から目線の発言と来たら! 思わず怒鳴り散らしそうになる!

 確かにあの時は貴様の方が上だったが、佐野とて才能の塊! 訓練すれば貴様の喉元などすぐに食い破る一匹の龍となるだろう! せいぜい今はいい気になっていればよい!

 

「そんな約束すら守れない、適当な奴に教わる必要なんてないよ円堂君」

 

「厳しいな~イッチー。いやごめんて~、ちょい用事が多すぎてさ~、マジだるだるだったんだよ~。もうスマホが鳴りっぱなしでね~、いや~人気者はつらいですな~」

 

「あなたねえ……っ!」

 

「ハイハイ一華ちゃんクールダウンしましょ。それで?」

 

「うん。今なら暇だし出来るよ~、どうするやっちゃう?」

 

〇今はちょっと…。  

●お願いします。   

 

佐野円堂「是非」

 

「んじゃあやりますか~。ABGSはアケと家庭版じゃ地味に違うから本当はゲーセンでやるのがいいんだけど、佐野っち筋良さそうだし問題ないっしょ」

 

 そうして研究室になぜか置かれているGS(ゲームステーション)4で佐野の特訓が始まった! 

 他メンバーも特に佐野の対戦というだけあって注目が集まる。

 ……正直な話をすれば常勝無敗だった佐野が練習とは言え負ける姿を見せるのは心情的に嬉しくはない。が、奴が更に成長するというのであれば心を鬼にして見守るしかあるまい……! くっ、頑張れマイ・ベスト・フレンド!

 

「最初は佐野君が使うキャラに合わせてあげるよ~。っと、そうそう! やるじゃんやるじゃん。確反忘れずに対応も出来るし暴れも……いや、ちょ、待って。あ。あぁ~~~」

 

「あ、あははは、い、いや~ちょっと手加減しすぎちゃったかな。だったら次はこのキャラで……」

 

「は? いや何それ!? 待って小足に合わせて昇竜はおかしいでしょ! ちょま、おかしい! おかしいおかしいおかしい!?」

 

「は、はははは……や、やってくれるじゃない……絶対にぶっ●してやる」

 

「オラッ、くそっ、あ゛!? 今技出しただろ! 何で潰れて……あ゛ぁあ゛ぁあ゛ぁあ゛ぁあ゛ぁやめろっ、キャラ限0F目押しコン完遂するなぁぁああ――ッ!!」

 

【Result】

  依頼『あざみちゃんを超えし者』解決!

 『助太刀ポイント』を50獲得した!

 

 しかし、しかしだ! 蓋を開けてみれば我々の結果は予想に反して佐野の完全勝利であった!

 指導目的で始まった対戦も佐野が白星を重ねて行けばいくほどあざみの顔色が変わり、あのどこか人を食ったかのような奴の態度も、気が付けば見たことのない憤怒の形相になり――そして、その顔は憤怒を通り越して無に代わってしまった!

 

佐野円堂「対戦ありがとうございました。すっごく参考になったよ」

 

「お、おおおおぉぉおぉ、流石マイ・ベスト・フレンド! やはり前のは調子が悪かったのか! ドッキリさせてくれる!」

 

「……」

 

「ちょ、ちょっと、あざみちゃん……あざみちゃん?」

 

「この子のこんな姿初めてみた……ぷぷっ」

 

「――うがああああぁ~~~~ッ!! 今のはなし! なし! もう一回! もう一回佐野君!? ……何でいないの!?」

 

「遅かったな。もうマイ・ベスト・フレンドは依頼に出かけたぞ!」

 

「あの子は事が終わったらさっさと次の事をしたがるのよねぇ……あざみちゃんも覚えていた方がいいわ」

 

「く、く、くうぅぅぅ~~~~っ!! そんなの認められない! どこ!? どこ行ったの!?」

 

「諦めた方がいいと思うけど。円堂君の才能は間違いなく貴方以上だろうから。それじゃ、私たちも依頼をこなしていこうか」

 

 ふはははは! やはり佐野はオレの、いや。オレらが見込んだ男だった!

 あざみすらも手玉に取るその手腕、まさしく末恐ろしい! しかしながら敵なし! 天晴(あっぱれ)だ! この結末にはさしもの一華も思わずニッコニコだぞ!

 

「絶対に、絶対に負かす! 負かしてやるから~~~っ!!」

 

 

 

 § § §

 

 

 

「佐野っちもう一回! もう一回ABGやろう!? 今度は負けないからさぁ~~~~!」

 

佐野円堂「ごめん。依頼があるから」

 

「ちょっと~~~、またぁ~~~~!?」

 

「ちょっとも何もないでしょ瑠璃玉さん。円堂君は忙しいんだから」

【あざみとのミニゲームに勝つと、あざみが向こうから寄ってくるようになります。これはあざみに負けるまで続きます】

 例の依頼以降、あざみの様子が変わった。

 

 今まで奴が負ける姿を見た事がなかったため知る由もなかったが、どうやらあざみは極度の負けず嫌いだったらしい。

 自信があったゲームでコテンパンに負けた結果、普段の飄々(ひょうひょう)とした雰囲気はどこ吹く風。食い気味に佐野へと勝負を持ち掛け始めたのだった。

 

「佐野っち今度こそ見つけた~~~っ! ちょうど依頼終わった所だよね!? じゃあ来てきて! コテンパンにしてあげるから!」

 

佐野円堂「しょうがないなぁ」

【挑戦を断り続けると強制イベントになります、この強制イベントで毎回勝ち続けていくと大幅にあざみの好感度があがり、また本チャートで一番超重要なアイテムが手に入ります】

「あんなムキになってるあざみちゃんなんて初めて見るわねぇ……」

 

「あざみ、マイ・ベスト・フレンドに勝つのは極めて難しいと言わざるを得ないぞ!」

 

「やってみなきゃ分からないじゃないのっ、挑戦すら諦めた弱者は指でも(くわ)えてろっ! ……ちょ、は!? 何その先読み技術! 置きコマ投げなんてどういう判断で……あ、ああぁあぁぁああぁあ――っ?!」

 

佐野円堂「対戦ありがとうございました」

【あざみはパターン化すると簡単に倒せます。1ゲーム10秒以内に倒しましょう】

 

 しかし当然と言うべきか佐野は負けない。

 あのときの不調が嘘だったように油断も手を抜くこともせず、常にパーフェクトかつ最速であざみを下していく。

 何度挑戦しようと判子を押したかのような結果になったため、あざみはとうとう格闘ゲームでの挑戦を辞めていた。

 

「佐野っちっ! 次はトランプ!! トランプで勝負!!!」

 

 その代わりに別のゲームで挑戦し始めた。

 意気込みこそ買うが、佐野の奴がトランプで負けたことも一度たりとも見たことはない。

 あざみが勝つのは難しいのではないだろうか。

 

「♠の8のフォーカード!! どうだ佐野っち!!」

 

佐野円堂「ロイヤルストレートフラッシュ。対戦ありがとうございました」

 

「はああぁぁああぁぁ~~~~っ!!? ふざけんな~~~っ!!」

 

「すご……円堂君たらまたロイヤル? 勝てる気がしないよ」

 

「あざみちゃんも十分強いんだと思うけどねぇ……佐野ちゃんはやっぱり凄いわ」

 

「あざみ、分かっただろう。マイ・ベスト・フレンドに勝とうとするのは至難の業だという事が。それこそ、ヘソで茶を沸かすくらいにはな」

 

「草、それ誤用だからね言っとくけど」

 

「まだ私はあきらめてないから! 次はこの大富豪で……!」 

 

佐野円堂「8切りしてエース3枚。対ありでした」

 

「うがあぁぁぁあああ!? つ、次っ! 次はジジ抜き!」 

 

佐野円堂「一抜け。対あり」

 

「おごぉぉぉぉぉぉ!!? つ、次は七並べで……!」

 

 ……………

 …………

 ………

 ……

 …

 

「二人ともー、私達もう帰るわよー?」

 

「あと一回! あーとーいーっかいっ! ねえやろっ、勝ったらこれあげるからやろっ!? 次は絶対負けないからっ!」

 

佐野円堂「えー」

 

【アイテム】

  『金色のネックレス』を獲得した!

  さっきまであざみが付けてた

  オシャレできんきらのネックレスだ。  

  まだほのかに暖かい…。

 

「……凄いわね。あざみちゃんも全部が全部相当上手い筈なのに、佐野ちゃんと来たらその上を全て言ってるわぁん……」

 

「真に凄いのは瑠璃玉さんに思えてきた……今の今まで連戦連敗の筈なのに、まだ萎えずに立ち向かおうとするバイタリティはある意味尊敬……」

 

 あざみが我が研究会の一員として復帰してから既に一週間が経とうとするが、奴の負けず嫌いは筋金入りのようだ。毎日のように様々なゲームで挑戦しては佐野に完敗、それを繰り返す。

 流石にしつこく挑戦をしすぎて佐野も難色を示しているが、「じゃあこれあげる! これあげるから!」と普段はその美貌(びぼう)とスタイルで貢がれる側のあざみが、逆に貢いで繋ぎとめる程だ。

 あまり健全でない一幕であるが、佐野の奴がそれを認めているならオレ達から何も言う事はない。

【あざみとの対戦は基本的に難易度が高いのでクリア時の報酬も高めです。連戦するたびに報酬も上がっていくので、金策はあざみ戦で基本的に行います】

「おっ、この! この積みが出来れば……ちょ、待って起爆早すぎっ、まだ私積んでる最中。あっ、あぁぁ~~~~っ!!!」

 

佐野円堂「対あり」

 

「……」

 

「……何をむすっとしてるんだ一華よ。……はは~ん」

 

「……何。そのしたり顔。別に何でもないから」

 

「いや、分かる。わかるぞ一華よ。愛しのマイ・ベスト・フレンドがあざみに取られて寂しいんだ――グボォッ!? ゲッホ!? ストマックッ、マイストマックペインッ! ドントハートミーッ!!」

 

「お前と一緒にするな! 別にそんな事ないっ!」

 

「ぼ、暴力は雄弁に語るぞ……っ、とりあえずその腕を下げろ……下げてくれお願いしますっ」

 

 一華よ、貴様の事はよく知っているがすぐに口と物理暴力に頼ろうとする姿勢はよくないぞ! まあ今のところ暴力を振るう相手はオレにだけだから良しとするが……いや、良くないが!

 

「オレも同じ気持ちだ。奴との密なコミュニケーションを取れずに早2か月……オレの心も飢えている! 相変わらず二人きりは避け続けられているが……オレは諦めてないぞ!」

 

「言動の節々から感じる気味の悪さが、二人きりを避けられる理由だと思うんだけど」

 

「どこが気味が悪いというんだどこが!? オレと佐野との真の友情の中に(よこしま)な気持ちなど何もないぞ! ……それで実際のところどうなんだ」

 

「なにが」

 

「最近の貴様はしかめっ面が多い。さっきのは冗談だが、何か悩みがあるなら聞くぞ」

 

「……」

 

 佐野とあざみの二人を眺めていた一華は、ひとつため息をついて研究会から離れると、学校を去ろうとする。オレが負けじと奴についていけば、観念したのかぽつり、ぽつりと語りだした。

 

「……一員みたいな顔して研究会に居る瑠璃玉さんが気に入らないだけ」

 

 こちらに顔を向ける事なく、奴は(こぼ)していく。

 

「去年。覚えてるよね、あいつはこの研究会に片手の指の数ほどしか顔を出さなかった」

 

「顔を出さなかった理由は何って聞いたら『ごめん忘れてた』……あの子の理由はいつもそれだった。呆れて物も言えない」

 

「草はそれを許容してるようだけどね、私は許せなかった」

 

「だって草がこの研究会に全力を注いでいたのに。事あるごとにサボって、サボって……大事な時にあの子が居た試しがなかった」

 

「今もそう。あの子の目的は研究会じゃなくて円堂君。あの子に勝つ事だけ」

 

「草の本気で学校を良くしたいという目的なんて、見向きもしてない……円堂君がいいっていうから放置はしてるけど、正直この研究会を出禁にしたいのが本音だよ」

 

 拳を握りしめ、怒りを眼に宿して語る一華に。オレの心が揺れ動いた。

 

 そうだ。去年発足したこの研究会は、実はサボリ場のために作ったのではない。

 本気で学校を良くするためにオレが立ち上げた物だった。

 

 ただし『生徒一人一人の自主性を~』、とかそう言う綺麗ごとが目的ではない。

 オレの大好きな学園物ギャルゲーにあやかって『キラキラな青春生活が送れるような場所を作りたい!』という思いで作ったのだ。(ちなみにこの事は誰にも話してない!)

 動機こそ最悪かもしれない、だが俺は本気でそれを実現させようと熱意に燃えていた! そして活動の一環として様々な依頼を受けて学園生活の向上を目指したものだったが……。

 

 結論から言えば、破綻した。

 

 当時のメンバーはオレと一華と葛、そしてあざみだけ。

 そんなオレたちの草の根レベルの活動は周りに全く響かず、

 費やした努力のほとんどは全てが空回り。

 生徒も先生も、そんなオレ達を笑い、ただ小ばかにするだけだった。

 

 (あこが)れていた学園生活は遥か遠くに。

 挫折と苦渋しか待ち受けない現実に……結局、オレは、ただ研究室でくすぶってしまったのだった。

 

 だからだろう。

 佐野という希望の水が我らが研究会が芽吹かせたこの時に。

 したり顔で戻ってきたあざみを、一華は好きになれないのだろう。

 

「……すまん。一華。お前の気持ちをオレは気付かなくて……」

 

「草が謝る必要なんてないだろうに。……はぁ、喋り過ぎた。こんな事言うつもりなかったんだけど」

 

「話してくれて助かった。今の話が出来なかったら、オレはきっと誤解したままだったと思う……ありがとう一華」

 

「……~~~~っ、あぁもうっ」

 

 ずんずんと怒り肩で風を切る、心優しい幼馴染。

 オレは間違っていた。一華は面倒見がいい、だから惰性(だせい)でオレのすることに付き合ってくれたのだと勘違いしていた。

 

 だが実際は違った。

 

 奴は本気で、本気でオレの理念に付き従おうとしてくれたのだ!

 このどうしようもない動機を知らずとも、純粋にオレのやることに協力しようと思っていたのだ!

 胸が(おど)る! 心も、体も熱い! オレは奴の優しさと本心に触れ、より一層の活力が全身に(みなぎ)るのを自覚した!

 

「ありがとう一華!」

 

「……うるさいっ!」

 

「あざみの件についてはオレがきっと解決する! だからちょっと待っててくれ!」

 

「好きにするといいさっ!」

 

「オレは今度こそ、貴様の期待に応えてみせるぞ! これからもよろしくな一華!」

 

「わかってるよっ!」

 

 あぁクソッ、どうして気が付かなかったんだ。

 一華、お前は腐れ縁なんかじゃない。このオレの最高の幼馴染だ!

 この胸の高鳴りは、きっと今日明日じゃ抑えられなさそうだ……!

 

 

 

 § § §

 

 

 

 夏の陽射しに磨きがかかり、生徒のそわそわが最高潮になる一学期終業式。

 校長の長い一言が終わってしまえば全員が歓喜に包まれ、若人たちはとうとう約1か月の黄金の休みを手に入れたのだった!

 

「夏休みに突入しても我々の活動は止まらんぞ!」

 

 終業式後、自然といつものように部室に集まったメンバー達は、その一言に多種多様な反応を見せた。

 

「マイ・ベスト・フレンド筆頭に皆の頑張りがあったからな! 知ってはいるだろうが我々の認知度はもはや町内どころか県外まで知れ渡っている! 見ろこの大量の依頼を!」

 

「うーわぁ……これはまた」

 

「なんだか最近になってより増えた感じするわねぇ……あらま市役所からの依頼もあるわよ。凄いわんっ」

 

佐野円堂「腕がなるね」

 

「……へー、ふーん」

 

 山のように机に積まれた依頼は下は幼稚園児から上はお年寄りまで、老若男女や校内校外問わずの大盤振る舞い! 中にはすぐに終わらないようなものや、間違ってもいち高校生に頼むような内容ではないものまでと大量であり、一見すると夏休みどころか一年通しても片付けられない気もしてくるが……。

 

「マイ・ベスト・フレンド。やる気なんだな」

 

佐野円堂「うん。みんなが困ってるならやらないとだね」

 

 やはり佐野は事もなげに頷いてみせた。貴様ならそう言うと思っていた! 流石はマイ・ベスト・フレンド!

 そして佐野がやると言ったのであれば……我々メンバーも全力でもって協力せざるを得ない! わかっているな皆!?

 

「はいはい分かってるよ。円堂君がやるって言うなら手伝う」

 

「もちろんよぉっ、みんなに頼られるのは悪い気分じゃないし、それに感謝の言葉も気持ちいいものっ」

 

「……うーん……あ、ポン! それポン!」

 

「……おいあざみ」

 

「それもポン! ふふふ……さーってそろそろ佐野っちも年貢の納め時じゃないかな~?」

 

「あざみっ、貴様はどうするんだ?」

 

「……え? あー手伝い? やってもいいよ~、夏休みはそこそこ用事とかあるけど~空いてる時間限定でね、とーりゃっ」

 

佐野円堂「みんなありがとう。あとそれロン。倍満16000点。逆転だね」

 

「……は? え、うそ、はぁぁ!? むぎぃぃぃ~~~っ!! 西単騎!? なんでそんな待ちしてるのよ!? また負けた~~~っ!!」

 

 あざみは携帯ゲーム機を放り投げて髪をかきむしり、悔しそうな唸り声を上げ始めた。

 

 今のところ連戦連敗のあざみは、佐野に挑戦する口実を作りたいのか部室に入り浸っている状態だ。

 そこで研究会に依頼以外で来るのならば活動に協力しろ、と言いつけたらオレの願いをあっさりと聞いてくれた。そんなにも佐野との対戦は重要らしい。

 というより最近は勝ち負けは別として、佐野の奴と遊べる事が目的になっているような……?

 

 まあいい。なんであれあざみのお陰で解決できる依頼の幅も広がり、何より人手が増えた事でより一層助太刀に磨きがかかってきた。素直に喜ぶとしよう。

 

「思考が読めないし手も早いし、未来予知かってくらい先読みが強すぎるよ佐野っち~……あーもう、でも負けないからっ、はいこれ報酬だよ!」

 

【アイテム】

  『お古のスマホ』を獲得した!

  ポップで可愛らしい猫のシールがこれでもかと

  貼られた最新機種のスマートフォンだ。

  超高画質のカメラ付き! 

  動画もサクサク見れるぞ!

【来ました、このRTA一番のキーアイテムがこちらです。このスマホがあることで全キャラ絆MAXが可能になります。このアイテムの説明は後述します】

「それってあなたのスマホじゃ……」

 

「いいのいいの~っ、最近新しいの買っちゃったから。それに、佐野っちってスマホ持ってないんだよ? 彼が持ってた方が活動がもっと(はかど)るでしょ?」

 

「……まあね、瑠璃玉さんがいいなら」

 

 そして佐野はイマドキの高校生らしからぬ事に、スマホを所持していなかった。

 普段アルバイトをしている事からお金に苦慮しているのは見て取れる。恐らくそのせいなのだろう。

 

佐野円堂「ありがとう瑠璃玉さん」

 

「あ。もちろん私のお古だからちゃ~んと私の連絡先入れてあるよっ。いつでも連絡していいからね佐野っち~」

 

「はっ!? 瑠璃玉さんっ」

 

「あらぁぁ~~っ、じゃあじゃあ私も登録してもらっちゃうわっ、ほら佐野ちゃん私の番号っ、私もエニタイムコーリングOKよ~んっ」

 

「マイ・ベスト・フレンド! もちろんオレのも登録してもらうからなっ、親友であるお前ならどんな内容でも1時間から1日まで電話を受け付けるぞ!!」

 

「えっ、ちょっ、みんなっ」

 

 佐野のスマホに瞬く間にメンバーの連絡先が登録されていく。

 これでいつでも佐野と連絡が取れるようになるのは良い事だ! そして奴の才能、そして人望があれば連絡先は更に埋めつくされていく事だろう!

 

「さて。話を戻して夏の活動だが……オレにプランがある! まずは強化地域密着! 来たる2週間後のお祭りに向けて、地方自治体イベントへの協力および参加をする!!」

 

「……これだね。大文字町盆踊り大会、舞台の設営の協力、あとは普通にお祭りを楽しむくらい?」

 

「次は遠征だ! 我々は普段山に囲まれているが、たまには海の声も聴くべき! 海の悩み事を解決していくぞ!」

 

「ようするに海水浴ってこと? いいじゃんいいじゃん~っ、おニューの水着用意しちゃおっかな~」

 

「そして最後は強化合宿だ! オレの爺ちゃん家で2泊3日の地獄のトレーニングだっ! 昼は畑で汗をかき夜には肝を鍛える恐怖の二日間だっ!」

 

「お泊り会ね~、草ちゃんのお爺さんにはいつもお世話になってるわっ、しかも肝試し大会つきなんてワクワクしちゃうっ!」

 

「当然だがこれ以外でも活動は続けていく! 基本は部室集合だが時々別の場所にも呼び出す! 各自心しておくように!」

 

佐野円堂「分かったよ」

 

 さぁ今年の夏はもっと忙しくなるぞ!

 我々の助太刀が一層輝くように全力で駆け抜けるぞ!!

 

 

 

「……えっと。あの、円堂君。私の連絡先も良かったら……。い、いつでもはダメだけど。可能な限り返答はするから……」

【このスマホで各ヒロインと連絡を取れるようになりますが、時間確認さえ出来ればよいので連絡しませんし、連絡が来ても全て無視します。時間の無駄ですからね】

 

 

 § § §

 

 

 

「おっはよ~、一華ちゃんは今日も早いわねぇ」

 

「かずちゃんおはよ。円堂君の方がもっと早いよ。というか……何だかんだで研究会に毎日来るのが普通になってるかも」

 

「私も今はここ中心の生活よんっ、依頼が忙しいのもあるけどそれ以上にワクワクしちゃうもの」

 

「ワクワク……ね。うん、なんか分かるかも、窮屈で退屈な家よりかはこっちの方が楽しい」

 

「それもこれも佐野ちゃんのお陰ねぇ。あの子の八面六臂(はちめんろっぴ)の活躍と来たら本当筆舌に語りつくせないくらいに……」

 

「円堂君……そう、だね」

 

「一華ちゃん?」

 

「う、ううん。何でもない、円堂君はやっぱり凄いなって思ってただけ」

 

「……」

 

「ほ、ほら! あの子ってほとんど自分の力で解決しちゃう事が多いじゃないか。ほとんど彼の力なのにそれでも少し手伝うとみんなのお陰、みんなのお陰っていうものだから……」

 

「あらぁ……彼の力になれてるか、不安?」

 

「……まあ、その。そう」

 

「うふふふ、青春ねえ本当に……」

 

「茶化さないでよ……でもそう思ったりしないかい? ミスも含めて無言でフォローしてくれるから、なんだか手伝いも余計な事してないか、心配で……」

 

「分からなくはないけど……いいんじゃないかしら。きっと大丈夫よ」

 

「かずちゃん?」

 

「佐野ちゃんはきっとそんな事気にしてないと思うわ。あの子はひたすらに純粋で、裏表がなくて……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。理由は分からないけどそれこそ限界を超えてまでね……だから、手伝ってくれる事に感謝こそすれど(わずら)わしく思うことはない筈よ」

 

「……」

 

「そして佐野ちゃんがそんなあなたを嫌うこともない筈よん~っ」

 

「っ、も、もぅっ……かずちゃん……っ!」

 

「――おう一華、葛! 今日も早くから来てくれて関心だが問題発生だ! 開かずの倉庫の鍵をマイ・ベスト・フレンドが見つけたぞ! 今から探索をするから集合だ!」

 

「あらあら」

 

「い、今行く! ……かずちゃん、ありがと。ちょっとスッキリしたかも」

 

【Result】

  依頼『封印されし倉庫』解決!

 『助太刀ポイント』を20獲得した!

 

 

 

 

「あっづぅぅぅぃ~~~っ、だだいま゛ぁ~~~……」

 

「おかえりなさいあざみちゃん」

 

「おかえり瑠璃玉さん。依頼はどうだった?」

 

「へっへっへ~、もちろんバッチリチリチリだ~、大文字町盆踊りのポスターは今日で全部(さば)けたよ~~、いや~~~、案の定佐野っちがあっという間に配ってくれた! マジで凄かった~!」

 

佐野円堂「瑠璃玉さんが手伝ってくれたお陰だよ」

 

「おいあざみ! 貴様そんなに佐野にくっつくなど!」

「瑠璃玉さん。人前でそういうのは……」

 

「え~~、でも佐野っちは嫌っていってないもん~~、ね~いいよね佐野っち~?」

 

●瑠璃玉さんがいいなら…。 

〇ちょっと恥ずかしいかな。 

 

佐野円堂「瑠璃玉さんがいいなら……」

 

「ほらね! さっすが佐野っち、私のライバルっ! わかってるじゃんっ~~」

 

「円堂君っ」

 

「ぐぬぅぅぅ……マイ・ベスト・フレンド! このような奴に情けをかけるなど!」

 

「はいはい、収集つかないわよんみんな。ほらあざみちゃんもべたべたは程ほどにねんっ」

 

「はぁ~い」

 

「……ふんっ、まあお疲れ様だと言っておこう。しかしあれだけ大量のチラシを30分も経たずに配りきったというのか? あ、いやマイ・ベスト・フレンドの力を疑う訳じゃないが!」

 

「いやいやそれがさ、二回言うけど凄かったんだよ佐野っち! 大量のチラシを抱えた状態でスマホを見始めたと思ったらさ、その状態を維持したままスライディングとジャンプの連続!! 不可能と思える体制で町という町の人にチラシを次々渡していったんだよ! 体感時間は2時間ほどだったけどでも実際は30分しか経ってないなんて! あれは流石のあざみちゃんにも真似はできないね~」

【スマホを起動すると時間が確認できますが行動が出来なくなります、しかしスマホ起動⇔キャンセルを3回繰り返すと、時間を確認しながら行動が可能になります。そしてその状態だと行動をしても時間が進まなくなります】

「おいおいマイ・ベスト・フレンド。お前はどれだけオレたちを驚かせてくれるんだ!」

 

「すっごぉいっ!?」

 

「もう円堂君について驚くのはよした方がいいかな……でも、凄いよ円堂君」

 

「でっしょ!? でしょでしょ! いや~~やっぱあざみちゃんを負かす人だもん、このくらい凄くて当然だよっ、んふふふ~」

 

佐野円堂「おっとっと……」

 

「あらあらぁん? あざみちゃんはもうべったりねぇ、妬けちゃうわぁん」

 

「ぐぬぬぬ……!」

 

「……っ」

 

【Result】

  依頼『お祭りの準備①』解決!

 『助太刀ポイント』を30獲得した!

 

 

 

 

「えーっと……x=2の時に、yが……yが……分からん……分からんぞ! マイ・ベスト・フレンド!!」

 

佐野円堂「その問題は……」

 

「ピピーッ、立浪っちイエロカード~、お助け佐野っち3回目~! お助けは二回までって言ったでしょ~?」

 

「ぐ……し、しかしだな! この問題はあまりにもオレの知識からかけ離れ過ぎている!」

 

「自分で解かないと勉強にならないでっしょ~?」

 

「久しぶりに瑠璃玉さんに同意できるね。その通りだ草。久しぶりに雑草の意地でも見せてみたらどうだい? 宿題は自分の力で解いてこそだ」

 

「草ちゃんの気持ちは分からないでもないけどねぇん……普段からお勉強してないと本当にこの課題は辛いわぁん……お嫁力は養ってきたけど、学問はからきしだから尚更っ」

 

「そうだ! オレも助太刀力は養ってきたが勉学は全くだぞ! 人には向き不向きがある!!」

 

「確かに不向きかもしれないね。それ中1の問題だし」

 

「あははは、まあがんばがんば~。私と佐野っちはもう課題終わらせたからね。極力教えてあげるよんっ」

 

「解せぬ!! 解せぬぞ!!? マイ・ベスト・フレンドは分かるがあざみは解せぬ! どんな魔法を使った貴様ァァァ!!?」

 

「知らなかった? あざみちゃんって実は天才なんだよっ、ぶいっ☆」

 

「草ちゃん、あざみちゃんは佐野ちゃんに継ぐテスト成績上位者よん?」

 

「天は二物を与えずというのは絶対嘘だ畜生ッ!!」

 

「と~~こ~~ろ~~で~~~佐野ちゃん~~~っ、この化学式良く分からないのよ~~~っ、教えて教えて教えてぇぇんっ!!」

 

「……ね、ねぇ。円堂君。良かったら私もここについて聞きたいんだけど」

 

〇両方とも自分で教える。     

●瑠璃玉さんにも手伝ってもらう。 

 

佐野円堂「ごめん、一華は瑠璃玉さんに聞いて貰っていい?」

 

「おぉ~? 今私頼りにされてるっ? んっふ~~、いいよいいよ~、どんどん頼ってって! じゃあイッチ~私が手取り足取りっ、教えて進ぜよう~」

 

「……えぇ」

 

「それでね、このベンゼンとかジクロロメタンとかがどうしたらこんな形に――」

 

佐野円堂「それはこの円環が――

 

【Result】

  依頼『夏休みの宿題』解決!

 『助太刀ポイント』を10獲得した!

 

「……ふんっ」

 

 

 

 

「うおおおぉぉぉぉ~~~~っ!! 海だぞ葛ぁぁぁぁぁぁぁ~~~~~っ!!」

「雄オォォォォォォォ~~~~~っ、素っ裸のイケメン共が布キレつけて魅せつけてくれとるわ~~~~~っ!!!!」

 

「……テンション上がりすぎでしょ全く」

 

佐野円堂「海は人をおかしくするんだね……いい天気だから」

 

「まあ山育ちの私たちにとっては輝いて見えるよね~、ところで(えっ)ちゃんは行かないの~? 迷ってたりする?」

 

()()()()って……というか円堂君は円堂君のペースがあるんでしょ。準備運動とか」

 

佐野円堂「うん。準備運動は大事」

 

「ふぅ~ん、まあ確かにね。それじゃあさそれじゃあさ……じゃじゃ~~~んっ」

 

「っ!? ちょ、何だいその攻めた水着!?」

 

「ふっふ~~ん、どうよどうよ円ちゃん。本邦初公開っ、悩殺ビキニだぞ~、結構惹かれちゃうでしょっ?」

 

佐野円堂「すごく似合ってるよ」

 

「でっしょ~~~っ!? で、で、で。そんな特別な悩殺ビキニのあざみちゃんを~~、なんとっ、円ちゃんには特別にオイル塗りさせてあげちゃいま~すっ!」

 

「……瑠璃玉さん? オイル塗りくらいなら私がやるけど?」

 

「いやいや~、イッチーじゃなくて私は円ちゃんにして欲しいんだからさ~。ほらほら塗って塗って~」

 

●オイルを塗る。   

〇一華にお願いする。 

 

佐野円堂「ゴクリ……じゃあ、やるよ? ()()()

【今作随一のベストスケベシーンです。一華にお願いすると一華の水着が見れるシーンもあるけど、こっちの方がテキスト量が少ないので選びます。貧相キャラなんていらねぇんだよ!!(暴言)】

「んっふふ~、正直でよろしいっ。正直者にはご褒美に、ちょっとオイルを塗りすぎちゃっても許しちゃおっかな~♪」

 

「……ッ、私、ちょっと飲み物買ってくる……!」

 

 

「――漢最高漢最高っ! フンフンフンッ!!」

「――ひゃァッははははぁ~~~っ! 海最高っ、海最高っ! ……ってなんたるスケベ水着姿!? あざみ貴様か!」

 

佐野円堂「おかえり二人とも」

 

「おっかえり~~っ、ご機嫌だねぇ~。いえーい似合ってる?」

 

「直視できないくらいにはな!!」

 

「あらやだあざみちゃんったら、本当に似合ってるわんっ。セクシーっ!」

 

「かずっちーありがと~~っ、かずっちーもそのブーメラン似合ってるよっ! 肉体美と合わせてなーいすセクシーっ!」

 

「む? ところで一華の奴はどうしたんだ?」

 

「んん~? そういえばさっき飲み物買ってくるって言ってたよ~」

 

「……そうか。分かった、じゃあオレが迎えに行ってやろう! 奴一人はぐれてしまっても困るからな!」

 

「久しぶりに部長らしいところ見せてもらえるのねぇん……ってあらや冗談よ冗談っ! いってらっしゃい草ちゃんっ」

 

「ふんっ、貴様らもはぐれぬ様にそこで待っているといい!」

 

【Result】

  依頼『海水浴』解決!

 『助太刀ポイント』を10獲得した!

 

 

 

 

「遅いぞ貴様ら! 時間厳守だといっただろうに!」

 

「うるさいよ草。女の子は着替えたら終わりとはいかないんだから」

 

「そうよんっ、草ちゃんはもうちょっと女の子に詳しくならないとっ」

 

「――イエーイ、待った~? あざみちゃん登場っ」

 

佐野円堂「お待たせ」

 

「二人とも遅いぞ……って貴様ら腕組みして登場とは何事かぁっ!?」

 

「いや~~、途中で偶然にねっ。偶然円ちゃんと出会ったらから一緒に行こ~ってなってさ! 結構ペース合わせるの大変だったよ~、スライディングとジャンプを何度も繰り返すからっ」

 

「ついていくだけでも凄いと思うわっ……それにしても。うふふ、一華ちゃんもそうだけどあざみちゃんも浴衣、可愛いわね~~っ、花火柄っ、すっごくお洒落よんっ!」

 

「えっへへ~、わっかる!? わかる~? これ今日のために下ろしたお気に入りなんだよね~っ、円ちゃんもどう思う? 似合う?」

 

佐野円堂「とっても似合うよ」

 

「ふふふふ~~んっ、そうでしょそうでしょ~っ」

 

「……本当、綺麗ね。私のと大違いなくらいに」

 

「そ、その通りだな! 一華。貴様の浴衣はその……大違いではあるがそれはあれだ! ベクトル的な意味で、全く似合わないわけではないが!」

 

「は?」

 

「うふふふ……甘酸っぱいわ~」

 

佐野円堂「その紫陽花の浴衣もとっても似合ってるよ」

 

「……っ……そ、そう? そうかな……? その、お祖母ちゃんのお古だけど……嬉しい」

 

「むぅぅ~……ねえっ! 設営活動のお礼に屋台の無料チケット貰ったよねっ、盆踊りの時間までに手分けてして色々買ってこようよ!」

 

「あらいいわねぇ、じゃあ集合はこの櫓の前ね……で、佐野ちゃんは誰と行くのかしらん?」

 

〇草と行く。   

〇一華と行く。  

●あざみと行く。 

〇葛と行く。   

 

佐野円堂「せっかくだし、あざみと行こうかな」

 

「おっ! お目が高いね~~、もちろん喜んでっ! ねえねえ途中で射的とかやろうねっ! 絶対負けないからさっ!!」

 

「あらぁん……じゃあ私達はどうする?」

 

「……そうだね。それなら三人で……」

 

「いや、すまないが葛。オレは一華とちょっと話がしたいから……いいか?」

 

「! ふふ、いいわよぉん~。じゃあごゆっくりんっ」

 

「はぁ? いや、ちょっとかずちゃ……もうっ! 何だよいきなり話って」

 

「すまんな。いや、買い食いしながらでいいんだが……少し気になる事があってだな」

 

「……何」

 

「その前に確認だが……お、お前はマイ・ベスト・フレンドが好きなの……あっだぁ!??」

 

「~~~~っ!!」

 

「だからその手を! 出す癖を! やめろ! 大体その行動で大体わかるからな!?」

 

「……ぅ、うぅぅ~……な、なんだよ。草のくせにそんな分かったような……恋愛なんてしたことないくせにっ」

 

「舐めてくれるなよ。数多の恋愛シミュレーションをやりこなしてきたオレだからこそ、貴様の心情など丸わかりだ! あとのその赤い顔で特にな!」

 

「だ、だったらどうだっていうんだ……何? お似合いじゃないからやめろって言いに来たのかい? それとも本気で円堂君のことを草が狙ってるっていうのかいっ?」

 

「そういう話ではないっ、その……逆だ。…………あー応援、そうっ、お、応援をしにきただけだっ。貴様とマイ・ベスト・フレンドの仲を取り持つ。オレはいわゆるキューピット!」

 

「は……はぁぁ? それ、正気で言ってるのか?」

 

「ほ、本気だ! 本気だとも! 分かっているだろうがオレは貴様の幼馴染だぞ、幼馴染が困っているのなら助ける! それでこそが幼馴染だ!」

 

「っ――馬鹿。本物の馬鹿よお前は……気持ちは嬉しいけど別に、間に合ってる。それに自分の事なんだから自分で解決するし」

 

「佐野にそれとなく避けられていてもか?」

 

「――」

 

「少し前からか、奴はお前の誘いを断るようになっていると感じていた。オレの時のようにな。 あぁおじさん、このたこ焼き15個入りよろしく頼むっ!」

「あいよっ!」

 

「そんなの……偶然だよ。円堂君とは偶然タイミングが合ってないだけ」

 

()()()()()()()()()()()? オレは少なくとも、ミサンガを渡した日から佐野と二人きりになる日は一度たりともないぞ! そしてスマホに連絡しても全然音沙汰なしだ!」

 

「なんで誇らしそうにするんだお前は……」

 

「はっはっは! 例外なく一度たりとも二人きりになれないのがいっその事潔すぎてな! ほら、たこ焼きだぞ。好きだろ?」

 

「……貰うけど。でも仮にそうだとしたら……急になんで? どうして? お前と同じで私、気味悪がられたとか?」

 

「全力で失礼だな貴様は!? というか気味悪いわけがないだろう。貴様はその、最近はオレの目から見てもかわ、かわ……ぃ! し、その浴衣もその……凄く似合って…」

 

「あっつ、はふっ……美味し……え? なんて?」

 

「……。まぁとにかくだ。貴様は気味悪がられた訳ではない。むしろ好かれている方だと考えている」

 

「それならどうして避けるという結論になるんだよ」

 

「あくまでオレの持論だが……もう貴様に構う必要がなくなった。と考えている。そう、オレと同じようにな!」

 

「構う必要がなくなった……?」

 

「そう。貴様はギャルゲー同じく攻略対象でありながら早々に攻略され、もはや陥落寸前! というか堕ちていると言ってもいい! そして才能溢れたリアル主人公の超人であるマイ・ベスト・フレンドならば次はこう考える! 『ハーレムを目指してやる!』……と!」

 

「……あ゛?」

 

「つまりだ! オレは攻略された、お前も攻略された! そして次なるターゲットがあざみという訳だ! そして一度狙ったターゲットに好感の集中砲火するのはギャルゲーの基本! それ以外に時間を割いてるのが惜しいから相手をしないという事だ!」

 

「……」

 

「どうだ、オレの経験も馬鹿にしたものじゃないだろう? この理論に穴は……うぁっつ! あっふぅ! たこやきにほ、にほ口にいれるのは、はんそくらろぉっ!!?」

 

「真面目に聞いて損した。馬鹿馬鹿しい」

 

「ま、待て! 悪かった! 実際はそうじゃないかもだが、オレが貴様を応援するのは間違いないぞ! おい、おぉ~~いっ!?」

 

 

【Result】

  依頼『夏祭り』解決!

 『助太刀ポイント』を10獲得した!

 

 

 

 § § §

 

 

 

 黄金の日々は瞬く間に過ぎ去り、夏休みは今や片手の指で数えられる程しか残されていない。

 しかし我々助太刀研究会の活動は日々を無駄に過ごすことなく使い、校内町内問わず様々な場所でまさしく鬼神の如く働きぶりを見せ、依頼の(ことごと)くを完璧に達成してきた。

 無論それだけではなく、目的もなく皆で遊びにいったし、夏休みの宿題も協力してやったり、日焼け跡がくっきり残るまで海水浴で楽しんだ。夏祭りは屋台を食べ歩き、皆で踊り、そして花火を見てひと夏の思い出を刻むという、まさしくリアル充実の日々を過ごしていた!

 

 そして今! 我々は最後の夏の思い出を作ろうと強化合宿の会場に来ている!

 我が家から電車で1時間半! 田舎である大文字町から更に文明という文明を取り除いた山の奥、ここがオレの爺ちゃんの家だ!

 

 

「ふはぁ~……あ~ごちそうさま~っ、ごはん美味しかった~っ」

 

佐野円堂「ごちそうさまでした。」

 

「本当ねぇっ、うふふ~、夜を眺めながらこのスイカを食べるのもまた風情あるわぁ~」

 

「草のお爺さんとお祖母さんに感謝だね、極上の料理を用意してくれるから……なんだか悪い感じがするよ」

 

「気にするな! うちの爺ちゃんも祖母ちゃんも賑やかなのが好きだし、対価は昼の手伝いで貰っている!」

 

 

 我々は爺ちゃんの家で強化合宿という名のお泊り会を楽しんでいた!

 一日目はそれこそ電波も何も届かない環境にあざみがごねていたが、大文字町とは打ってかわった大自然の美しさと、美味しい料理の数々にすぐに機嫌をよくし、皆で楽しく二日目の夜を過ごしている。

 

 爺ちゃん祖母ちゃんの依頼も解決できたし、万事OKだ! しかし……このお泊り会はこれで終わりではないぞ!

 

「さぁ貴様ら、腹もおさまっただろうが……まだ寝るには早いぞっ! 助太刀研究会強化合宿、最後のイベントが待っている! ――肝試しだ!」

 

「うわ……やっぱりやるんだ」

 

「えっ、ちょ、本気? こ、この辺りでやるんだよね? すっごいガチそう……」

 

「これが中々にガチなのよねぇ……あざみちゃん、コレは怖いわよ~」

 

佐野円堂「ドキドキする」

 

「ふっふっふ、恐れおののくのはまだ早いぞ。ルールを説明しよう! 二人でペアになって、奥の廃神社に括りつけられた鈴をとって、そして戻ってくる! 以上だ! ペアはちなみにくじ引きで決めるぞ!」

 

「っていうか私たちは合計で5人じゃないか。2人ペアだとどう考えても余るんじゃ……?」

 

「無論! 一人余る! しかし大丈夫だ! 余った人には、うちの爺ちゃんがついて行く! 爺ちゃんは頼りになるが……怖いぞっ! 道中でガチの恐怖体験を教えてくれる!」

 

「絶対嫌なんだけど!?」

 

 くくく、あざみは去年参加してなかったが……そうかそうか!奴は怖いのが苦手か!

 だが残念な事に……今日はあざみにはとことん怖がって貰うとしよう!

 そしてオレはパニック状態のあざみをなだめる葛と佐野を尻目に、こっそりと一華に耳打ちする。

 

「一華よ、貴様にはこのクジと鉛筆を改めて渡しておく……」

 

「は? なんでそんな真似……って白紙じゃないか」

 

「馬鹿、静かにしろっ。貴様、マイ・ベスト・フレンドと更に進展したいんだろう……? クジは先にひかせて、番号を言わせる。あとは……分かるな」

 

「……ちょっと!?」

 

教本(ギャルゲー)によれば肝試しのドキドキ効果は恋愛につながる可能性は非常に高い……! 怖くなくても抱き着け、そして押し倒せ!」

 

 無理くりクジを押し付けてやると、一華と来たら見た事ない程に顔を真っ赤に染めて狼狽(ろうばい)した後、顔を伏せてこくりと頷いた。

 ……あぁクソッ、不覚にも胸がときめいた……本当に可愛い奴だ貴様は! だが、だが一華が好きだと思っているのなら……全力で推すまでよ! オレは横恋慕(よこれんぼ)などという無粋な真似はしない。こうなったら絶対に、絶対に貴様には幸せになって貰う!

 

「言っておくがこれは強制だ! さぁクジを引いて貰おうか!」

 

 

〇手前にあるのを取る。 

●右隅にあるのを取る。 

〇左隅にあるのを取る。 

〇何だこの変なのは…。 

〇ちょっと待って。   

【ここからがこのRTAの真骨頂です。選択肢は上から二番目が一華、三番目があざみになってるので、まず一華を選びます。何も書いてないを選ぶと葛ルート確定になって夏でENDINGを迎えてしまうので絶対に選んではいけません】

「マイ・ベスト・フレンド! 何番だ!?」

 

佐野円堂「2番……だね」

 

「ふむ。なら次は一華。貴様はどうだ!」

 

「……えっと…………っ! に、2番、みたいだね」

 

「!! え、これもう揃ったんだけど? もうイッチーと円ちゃんは確定なの?」

 

「そうだ! そして決まった奴から先に行ってもらうぞ!」

 

「え、えぇぇぇ~~~そ、そんなぁ~~~っ、円ちゃん~~~~っ」

 

「あらぁん……残念。私も佐野ちゃんと一緒に行きたかったのに」

 

佐野円堂「ごめんね。先に行かせて貰うよ」

 

「円堂君、よろしくね……じゃ、じゃあ行ってくるから」

 

 ――そうしてオレの目論見(もくろみ)通り、佐野と一華は夜道に消えていった。

 

 ふっ。うまく言ったようだな……ここから神社までは歩いて30分。如何に奴が速足とは言え、たっぷり20分は二人きりだろう! 

 奴がなぜか()()()()()()()()()()()()()のは気になるところだが……まあいい。これで奴は一華ルート確定間違いなし! あざみには悪いが、現実でハーレムは許されない。佐野は一華に譲って貰うぞ!

 

「さぁて、では我々も次のクジを引くとしよう――」

 

 

〇手前にあるのを取る。 

〇右隅にあるのを取る。 

●左隅にあるのを取る。 

〇何だこの変なのは…。 

〇ちょっと待って。   

 

佐野円堂「2番……だね」

【ながら見バグで時間を止めて、一華を置いてスライディングで山道を駆け上ってさっさと鈴を取ります。鈴を取った後神社から出ようとすると、絆MAXイベントが発生しますが、神社からワープで逃げるとイベントスキップが可能になります。内部的にはフラグは立っているのでイベントを見た扱いにはなっています。】

「か……?」

 

 ……んん? 佐野、なんで貴様はまたクジを引いているんだ?

 というか、貴様は肝試しに出発したんじゃなかったのか?

 

「私は……()()みたいね」

 

「つ、次は私だよね? ……えっと、()()! や、やった~~~円ちゃんと一緒だ~~~っ!!」

 

 待て。どうして、どうして一華もここにいるんだ?

 貴様もまた佐野の奴と一緒に出発した筈なのに……それに、なぜ一華は奴と同じ番号になっていない?

 

「円ちゃんお願いっ、私、マジでマジでこういうの無理だからっ、本気で頼りにしてるからねっ!!?」

 

佐野円堂「出来る限り頑張ります」

【重要なのは、このくじ引きイベントが21時ぴったりに開始されるイベントという事です。つまり21時ぴったりスタートして、1分も経たずに戻ってくればまたクジが引けるのです。これにより絆MAXイベントが量産出来ます】

「あらぁん……残念。私も佐野ちゃんと一緒に行きたかったのに」

 

「お前たち、ちょっと……ちょっと待て……」

 

「い、行ってきま~す……いや、円ちゃんほんとガチで! ガチでお願いね! 私無理だから!」

 

佐野円堂「はいはい」

 

 オレの静止の声さえ聞かず、佐野もあざみも夜道へ消えていってしまう。

 奴はあざみを一瞥(いちべつ)することなく、やはりスマホに視線を向けたままで……そしてそんな光景に一華も葛も違和感を覚える様子がなく、それがどうにも恐ろしかった。

 

「い、一華……お前、さっき佐野の奴と一緒に行ってなかったか?」

 

「……何言ってるんだ草、今のを見てなかったかい? クジは外れてたじゃないか」

 

「い、いや確かにそうだが……な、なぁ葛! さっき見ただろ? 一華と佐野の奴が!」

 

「どうしたの草ちゃん? まだ決めたのは一組目だけじゃないのよんっ。もう、ほらさっさと次のクジを引きましょう」

 

 き、気のせい……気のせいだったのか?

 しかしさっき、確かに佐野達が……いや。はは、ははは……確かにそうだな。オレは疲れていたのかもしれない。だって一華も葛もこう言ってるんだから――

 

〇手前にあるのを取る。 

〇右隅にあるのを取る。 

〇左隅にあるのを取る。 

〇何だこの変なのは…。 

●ちょっと待って。   

 

佐野円堂「ごめん。肝試しはちょっと待ってくれるかな」

【そして一華と同じ要領でイベントスキップから元の場所に戻ってきたら、一度肝試しをキャンセルすると、神社の鈴がインベントリにあるため肝試しの終了フラグが立ちます】

 

「あら、佐野ちゃん何か準備をすることでもあるのん?」

「待ってるよ」

「円ちゃん~、早く戻ってきてねぇ~……」

 

「……なんで」

 

 だがそんなオレの混乱をあざ笑うかのように佐野の奴はまたこの場に戻ってきていた。そして一緒に出掛けた筈のあざみでさえもしれっとオレの隣に居た。()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 全身からブワっと冷たい汗が噴き出した。

 

 一体何が起こっているんだ? 何故こんな事が起こりえるんだ?

 いきなりタイムリープでもし始めたのか、それともオレは夢でも見ているのか?

 佐野がこれでクジを引くのは3回目だぞ。一華と行った筈なのになかった事にされ、あざみと一緒に行ったと思えば、それもなかった事になった? そんな事ありえてたまるか。

 周りもどうして違和感を覚えない? どうして一華もあざみも葛も、今の状態を平然と受け入れられるんだ!?

 

 いまだ現状を認識できない中、オレの元に佐野が近づいてくる。

 奴はいつも通りの無表情で、どこも普段と変わった様子は見受けられない。

 でも普段と全く変わらないからこそ、オレは怖くなった。

 コイツが、まるでこいつが別次元の生物のように思えてしまったから。

 

 冷や汗をかき、身動きの動けないオレに、奴はとある物を手渡してきた。

 それはこのタイミングでは絶対に手に入れている筈のない、あるアイテムだった。

 

【アイテム】

  『神社の鈴』を草に手渡した!

 

――おぉ! マイ・ベスト・フレンド早いな! もう戻ってきたのか!

 

 待て。オレも、何を言って――。

 

確かに鈴は受け取ったぞ! で、肝試しはどうだったか?

 

佐野円堂「中々スリルがあったよ」

 

はっはっは! 何たってうちの爺ちゃんの肝入りだからな! だが最高の夏の思い出も作れただろう!?

 

 オレの口が自分の意志に反して勝手に言葉を(つむ)ぎ出す。

 感情を置き去りにし、普段のオレらしい台詞がばらばらと口元から零れ落ちていく。

 どうして。なぜオレはこんなことを口走っている?

 というか、まだ肝試しが始まって1分も経っていない。なのに、なぜお前がその鈴を持っている?

 

「いや~、今年も怖かったわねぇ……本当恐ろしかったわぁ」

 

「うぅぅぅ……マ・ジ・で! 怖かったんだからぁ! もう二度と行かない!」

 

「な、なかなか怖かったんじゃないかな? ま、まあ私は平気だったけれども……」

 

 みんなだってそうだ! お前達はまだ肝試しを味わっていない筈だろう。

 なのに何でそんな事を? 誰と行ったっていうんだ? 誰もおかしいと思わないのか!?

 

さぁこれで肝試しは終わりだ! 今日の依頼の疲れもあるだろう! 早いうちに寝てしまうぞ!

 

 しかしそこに疑問を(てい)する存在はオレ一人しか存在せず。

 オレは訳も分からずに、ただ自動で流れ続ける一幕を、まるで他人事のように眺める事しか出来なかった。

 

【Result】

  依頼『肝試し』解決!

 『助太刀ポイント』を10獲得した!

 

 

 

 § § §

 

 

 

 強化合宿の帰り道。

 ほぼ貸し切り状態の電車、その心地よいリズムに揺られてメンバーが眠っている中。オレは窓の外で流れる景色を無気力に眺め続けていた。

 

「……何見てるんだい?」

 

「一華」

 

 対面式の椅子に座りこんで、正面窓側に座っていた一華が、眠たげな(まぶた)をゆったりと開けてオレを見ていた。

 

「何でもない。昨日のことを思い返していただけだ」

 

「肝試しの事? ……私は毎年草のお爺さんの家にはお邪魔するけど、やっぱり慣れないね。本気でびびっちゃった……」

 

「ふん。まだまだだな、オレは。小さな頃にビビらされまくってチビリまくったから最早怖いなどという感情は抱かないぞ」

 

「サイテーだね」

 

 気だるげに、頭を預けて微睡(まどろ)む一華と視線が交わされる。 

 オレは一華の眼が今までと違って美しく見える事に気が付き、すぐに視線を()らしてしまった。

 

「それにしても……」

 

「……何?」

 

「その……なんだ」

 

「だから何だよ……はっきりと言ったらどうだい……」

 

 今にも眠ってしまいそうな声で返事をする一華に、オレはどうしても言葉を続ける事が出来ない。

 今でも昨日の謎の出来事を覚えている。だが、昨日の出来事に対して皆は何も違和感を覚えていないし、朝食の時も皆で肝試しを楽しんだという共通認識が残っていた。

 もはや自分が夢を見ていたと疑った方が早いくらいには、自分だけ取り残されていた。

 

「……昨日の、き、肝試しはなんか変じゃなかったか?」

 

「はぁ……?」

 

「いや……自分でもおかしいとは思うんだが、ちょっと記憶が飛び飛びなんだ。お前と佐野が肝試しに出掛けたと思ったら、次にあざみと佐野が肝試しに出掛けて……その後、1分も経たずに肝試しは終わりになっていて」

 

「……何を言ってるんだ草は。とうとう馬鹿すぎて狂ったのかい……?」

 

「……そ、そうだな……うむ。その通りかもしれん」

 

「認めるくらいなら本気で……病院にでも行ったらどうだい……全く」

 

 一華はいよいよ眠ることを決めたようだ。

 体勢を変え、自然かつ安心出来るポイントを探して体重を預けると、そのまま瞼を閉じ始めた。

 

 そう。か。そうだよな……きっと夢を見ていたんだ。

 疲れていたせいだろう、意識が飛んで記憶が混乱していたのだろう。

 あんなおかしな出来事が現実に起きるわけないじゃないか。全く、オレとした事が情けない! これでは部長失格だ!

 

 オレは苦笑すると同じく窓枠に体重を預け、皆に(なら)って眠り始めようとする。

 しかし、眠りに入る直前。オレは一華の声に意識を(かたむ)けざるを得なかった。

 

「……ねぇ。肝試しの事だけど……ありがとう」

 

 それは今にも消え入りそうな、か細い声だった。

 

「私は、草が力添えしてくれたお陰で……円堂君と二人きりで話す事が出来た」

 

 奴はふにゃり、とどこか弛緩(しかん)した表情でこちらを眺め、

 

「その時思った事、他愛ない事、今後の事……そして、私の気持ちの事を、ちゃんと話したよ……」

 

 今もなお体重を預ける存在に、改めて体をすり寄せた。

 

「今はまだ……返事は貰ってないけど……でもね、私は今なら……円堂君が好きって自信を持って言える……」

 

 握りこんでいた手がゆるゆると解けていくのが見える。

 掌から紙片が零れだす。

 

「……そう思えたのは草の手助けのお陰。だから……ありがとう……おやすみ」

 

 くたくたになった紙片は自然と広がってゆき、そして正体を現した。

 

 それはあの時のクジだ。

 

 一華らしい几帳面な文体で書かれた「2」が、オレの前に現れたのだった。

 

「……」

 

 ――そうして一華は、座席中央で眠る佐野の肩に頭を置いたまま。幸せそうに眠ってしまったのだった。

 

 

 どうやら……当初の作戦通り、一華は思いを告げることが出来たみたいだ。

 思うところはない訳ではない。

 だがこんな幸せそうな笑みを見るとそれを否定する気力は起きない。

 そうさ。素晴らしい事だ。

 これは大切な幼馴染の、大切な第一歩。

 祝うことは出来て、どうして呪う事など出来よう!

 その相手も、他でもないオレが認める心の友である佐野だ! きっと仲(むつ)まじいベストカップルになれるという確信もある! なのに、なのに……!

 

「なんで、こんなに嫌な感じがするんだよ……ッ」

 

 オレは目の前の光景に、どうしても不安を(ぬぐ)う事が出来なかった。

 

 佐野にもたれ掛かっているのは、一華だけではなかった。

 その左隣には()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

【Infomation】

 『紫花一華』との関係が

 『絆MAX』になった!

  秘めたる彼女の思いに、キミは

  触れる事が出来たようだ……。

 

【Infomation】

 『瑠璃玉あざみ』との関係が

 『絆MAX』になった!

  才能故に孤独を味わう彼女と

  唯一競い合う存在になるだろう……。

 

【一華とあざみ攻略完了です。これでもう彼女たちは構う必要はなくなったので、後は秋に加入予定の最難関ヒロイン撫子ちゃんを全力で構いに行きます!】

 

 

 

 

 




【ながら見バグ】:RTA走者、「HEROと」氏が発見した時止めバグ。
瑠璃玉あざみとのコミュを進めると手に入れられる、【お古のスマホ】を使ったバグ。

スマホを開いている間は時間が進まない事を利用し、特定操作で「スマホを確認中だが行動可能である」という状態を作り出し、時間制限のあるイベントや、時間がかかってしまうイベントを時間消費なくクリアすることを可能とする。

また本作では時間毎に区切られたイベント体系が多い事に着目し、一度きりの筈のイベントを複数回実行可能とする。
たとえば肝試しイベントは21時00分ぴったりであれば何度でも実行可能で、本来なら周回必須なキャライベントを一度のプレイですべて確認することが可能。
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