黒いジャンヌ達を撃退し、手がかりを掴むべく次の街へと移動している途中、ダンテ達一行の前に珍妙な二人組が現れた。
「偉大なる魔剣士の御子息にオルレアンの奇跡ジャンヌ・ダルク! それに小さく素敵なお二方! どうか私の話を聞いてもらえませんか?」
突然現れた銀髪に赤いドレスのような衣服を纏った可憐な少女が鈴の音のような声でそう言ってくる。
そしてこちらの言葉をを聞く前に勝手に名乗り出した。
「はじめまして! 私はマリー、『マリー・アントワネット』! クラスはライダー! あなたたちとたくさんお話ししたいと思いましたの! つもるお話は、あなた方の秘密の場所で行いたいの。私のわがままを聞いてくださらないかしら?」
「僕は『ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト』。クラスはキャスターだ。とりあえず僕らは君達の敵じゃあない。怪しい身分だがそれだけは断言しよう。こっちはクズ、あっちは褒め殺しが上手な人たらしなんだけどね」
「ひどいわアマデウス! 人たらしなんて言い方、私は皆が大好きなだけなのに!」
自己紹介してきたはいいが、勝手に盛り上がる二人組。敵意等は感じられないので、とりあえず黒いジャンヌの仲間ではなさそうだ。
「リツカ、この二人組はどうする?」
「敵ではなさそうですし、霊脈を設置したところに連れていっても問題はないかと」
「よし、ならさっさとキャンプ地に戻るか」
立香の言葉にダンテはそう返す。そして奇妙な二人組を連れて霊脈を設置した場所へと戻った。
………
……
…
「では改めまして────私はサーヴァント、真名は『マリー・アントワネット』。マスターのいないふらふらサーヴァントです。どんな人間かは、あなた方の目と耳でしっかり吟味していただければ幸いです」
「『ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト』。僕も右に同じ。召喚された自覚も、自分が英雄である自覚も薄い。そりゃあ学校の音楽室に肖像画があるのが当たり前くらいな偉大な人だとは思うが、それでも数多いる芸術家の一人にすぎないというのに」
改めて自己紹介してくるマリーとアマデウス。歴史上の人物に詳しくなく、興味もないダンテでも知っている人物であった。
「なら今度はこちらですね。私はマシュ・キリエライト。デミ・サーヴァントで、残念ながら真名はわかっていません」
「藤丸立香です。まだど素人のマスターです。で、こちらが────」
「ダンテだ」
「サーヴァント・アサシン、真名はカーマ」
「アナスタシア・ニコラエヴナ・ロマノヴァ。元サーヴァントの現悪魔です」
「セイバー、アルトリア・ペンドラゴンだ」
「私はティアマト、ただのティアマトです」
「よろしく、素敵な皆様方! 人数がすごく多いけれど、頑張って名前を覚えるわ!」
ダンテ達の自己紹介を聞いたマリーが笑顔でそう言ってくる。
見た目通りの天真爛漫でお転婆娘だが、不思議と悪くない。自分よりもおしゃべりな奴が大嫌いなダンテがそう感じるのだから、マリーのこの明るさは生来のものだろう。
「そういや気になってたんだが、なんで俺がスパーダの息子だってわかったんだ?」
ダンテはかねてより気になっていたことを聞く。サーヴァントと初めて会った時も向こうはダンテがスパーダの息子であることを知っていた。なのでダンテはずっと気になっていたのだ。
その疑問に対して答えたのはアマデウスだった。
「ああ、それは聖杯から与えられる知識だね」
「聖杯から与えられる知識か?」
「そうだ。サーヴァントが現界する際、それと同時に聖杯から世界に関する情報が与えられる。無論僕達にもね。その中で必ず与えられるのが『魔剣士スパーダの伝説』だ。何せ彼は人理焼却に匹敵する世界の危機をたった一人で救った、まさに英雄の中の英雄だからね」
なるほど、それで様々な英雄を召喚する聖杯がサーヴァントにスパーダの情報を与えているために、初めて会うにも関わらずダンテがスパーダの息子であることを知っているのか。
「まあいい。それでこれからどうするつもりだ?」
『それなんだけど、そこの二人が現界しているということは他にも現界しているサーヴァントがいるはず。黒いジャンヌ達よりも早く見つけ出しましょう』
ダンテの言葉にオルガマリーがそう返してくる。立香の戦力を補充するためにも他のサーヴァントを見つけ出すのが最善だろう。
そんなわけで、ダンテ達は新たな二人を加えて再びサーヴァントを探すこととなった。
………
……
…
日も沈んだ夜、霊脈を設置した場所ではちょっとした賑やかな話し声が聞こえてきていた。
それはレイシフトしてきた立香達にマリーを加えた女性陣のものである。夕食がてら「仲良くなるためにもお話をしましょう!」とのことで、こうして賑やかにお話をしているのだ。ちなみにダンテ、アルトリア、ティアマト、アマデウスの四人は周辺の見張りのためにこの場にはいない。
「女の子達の集まりだもの! やっぱり恋バナがいいと思うわ!」
ニコニコと笑顔を浮かべるマリーの言葉に誰も反論しない。というよりこの場で今後の戦いの話をするのは野暮というものである。
「えっと、その……恋バナというものは初めてでして……」
「あはは、そんなに心配しなくても大丈夫だよ。ただ楽しくお話するだけだから」
少し緊張気味のマシュに立香が苦笑いしながらそう言う。とはいえ立香もまた恋バナをするのは何気に初めてだ。しかもその相手は歴史上の偉人に加え愛の神を名乗る少女。果たして上手く話せるだろうか?
「うふふ、マスターも緊張してるのね」
そんな立香にマリーがニコニコと笑顔を浮かべながら声をかけてくる。どうやら緊張していることは見抜かれていたらしい。
「ええ、まあ。学校の教科書に載っているような人達と恋バナなんて、今でも信じられないというかなんというか……」
「大丈夫よ。今ここにいる私達はただの女の子だもの。そんなに緊張しなくてもいいわ」
微笑みを浮かべながらそう言うマリー。相手の緊張を和らげるのは彼女特有のスキルか何かだろうか?
「ねえマスター? マスターはここに来る前に恋愛とかしたことはないの?」
「私ですか? うーん……なんとなく『好きだな』って思った男子は何人かいましたけど、告白したことはないですね」
マリーの質問に立香が答える。
立香は今は人類最後のマスターとはいえ、本来はまだ女子高生だ。なのでまだ青春を謳歌する年齢である。
カルデアに来る前もクラスメイトと恋バナで盛り上がっていたものの、実際に恋愛はしたことはない。というのも
「そうなの……では良い人と出逢えるといいわね!」
「そうですね」
マリーの言葉に苦笑いする立香。果たして良い人と巡り合うことはできるのだろうか?
「アナスタシアやカーマはどうかしら? 好きな人とかはいたの?」
「「ダンテね(ですね)」」
マリーの言葉に即答するアナスタシアとカーマ。
「ダンテはこんな醜い怪物となった私を当たり前のように受け入れてたの。だからダンテ以外の人間に目移りすることは天地がひっくり返ってもありえないわ」
「私は皆から『愛の神』だのなんだのと身勝手に持て囃されて利用されてきました。ですがダンテだけは愛の神ではなく、
「まあ! ダンテさんはそんなに素敵な人なのね! 私ももっとお話してみたいわ!」
アナスタシアとカーマの言葉を聞いてはしゃぐマリー。どうやらさらにダンテのことをお気に召したらしい。
「でも気をつけなさいね? ダンテったら息を吐くように口説き文句を言ってくるから」
「しかもたちの悪いことに、本人は無自覚なんですよね」
「そうなの。私も惚れてしまったらどうしましょう?」
「「「あはは………」」」
女性六人による恋バナはその後も盛り上がっていく。
今は人理が焼却されたかつてない危機であるが、それでも一時の安らぎは許されるだろう。