Fate/Grand Devil   作:ユリゼン

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#4 邂逅

 異空間からカルデアに帰還し、職員達による後処理がひと段落着いた後、ダンテ達は対面するように立っていた。

 もちろんお互いの素性を明かすためである。

 

 「もう知ってると思うが、ダンテだ。Devil May Cryをやってる」

 

 ダンテは簡潔にそう述べる。それを聞いた白い長髪の少女が口を開いた。

 

 「……あなたの噂は私も聞いています。表向きは便利屋でありながら裏ではこの世に蔓延る悪魔達を狩るデビルハンター………そしてかの魔帝を封印した伝説の魔剣士スパーダの息子である、と」

 「所長、それは本当なのですか………?」

 

 白い長髪の少女の言葉に薄紫色のショートカットの少女が信じられないといった表情でそう聞いてくる。

 

 「ああ、ムンドゥスのクソ野郎を封印したスパーダは俺の親父だ」

 「………信じられません。悪魔はこの世界において神秘そのものなのに、それが実在するなんて………」

 「それが実在するんだよな。現に俺はその悪魔と人間の間に生まれた半人半魔だ」

 

 薄紫色の少女の言葉にダンテは肩をすくめながらそう返す。信じられないかもしれないが、こうしているのだから信じてもらうしかない。

 

 「じゃあ次は僕達の方だね。僕は『ロマニ・アーキマン』。カルデアの医療スタッフだ」

 「『マシュ・キリエライト』です。今は先輩の『デミ・サーヴァント』として契約しています」

 「えっと、『藤丸 立香』です。マスター候補としてここに来たんですが………」

 「あの野郎のせいで人類最後のマスターになっちまった、と。とんだ災難だな」

 「あはは………」

 

 ダンテの言葉に立香が苦笑いする。

 そして最後に白い長髪の少女が口を開いた。

 

 「私は『オルガマリー・アニムスフィア』。人理継続保障機関フィニス・カルデアの所長………いえ、元所長です。先程は助けていただきありがとうございました」

 

 そう言ってオルガマリーは頭を下げてくる。

 

 「気にすんな。それよりも身体の方は大丈夫か?」

 「え、ええ。検査を受けましたけど、何処も問題はありません。むしろ前よりも調子が良くなっているというか……」

 「そうか。そいつはよかった」

 

 オルガマリーの言葉にダンテはそう返す。何かあったらどうしようかと思っていたとことだ。

 

 すると今まで黙っていたカーマが口を開く。

 

 「じゃあ今度は私達ですね。サーヴァント・アサシン、真名をカーマといいます。どうぞよろしく」

 「カーマって……インド神話における愛の神じゃないか! 君そんなものを召喚したのかい!?」

 「そんなものって失礼ですね。そもそも私はダンテに召喚されていません」

 「ん? じゃあどうして君はここにいるんだい?」

 

 

 ロマニにそう聞かれたカーマの表情がピシリと固まる。言葉を探しているのか、目も泳いでいた。

 そんなことをつゆ知らず、ダンテが笑いながら答える。

 

 「ああ、それはこいつが()()を働いてな、俺がぶちのめして以来なんかついてきたんだよ」

 「ちょっとダンテ!? それは言わない約束でしょ!?」

 

 笑いながらそう言うダンテにカーマがポカポカと叩くが、子供の姿であるため側から見ると微笑ましい光景となっている。

 そんな生暖かい視線に耐えきれなくなったのか、カーマが顔を真っ赤にしながら叫んだ。

 

 「あーもう! そうですよ!街の人を()()()あげようとしたらダンテにボコボコにされたんですよ!! しかも()()()()()言われたらもうついていくしかないじゃないですか!!」

 

 ヤケクソ気味に叫ぶカーマ。一応神様であるはずなのに威厳も何もあったもんじゃない。

 そのため生暖かい視線から可哀想なものを見るような視線へと変わっていた。

 

 するとその空気を変えるようにアナスタシアが口を開く。

 

 「では今度は私ですね。私の名はアナスタシア・ニコラエヴナ・ロマノヴァ。()サーヴァントです」

 「元? それはどういうことなの?」

 

 アナスタシアの言葉にオルガマリーが疑問を口にする。

 それに対しアナスタシアが答える。

 

 「言葉通りよ。元々はサーヴァントだったけど、今は()()()()()()()()()()()()()ということ」

 「「「ッ!?」」」」

 

 その言葉に全員が驚愕する。

 しかしアナスタシアは気にすることなく続けた。

 

 「元々は私はとある魔術師に召喚されたの。でも私が召喚された理由は聖杯戦争に参加するためではなく、『ある実験』を行うためだった」

 「『ある実験』……?」

 「それは一体………?」

 

 アナスタシアの言葉に立香とマシュが聞く。

 アナスタシアは少し間を空けてから口を開いた。

 

 「『サーヴァントに悪魔の力を植え付ける』という魔導実験よ」

 「「「「!?」」」」

 

 アナスタシアの口から出た言葉にダンテとカーマ以外のその場にいた全員が驚愕の表情を浮かべる。

 

 「その魔術師は聖杯戦争を確実に勝ち抜くために、サーヴァントを無理矢理強化する実験を繰り返していた。そして行き着いたのがサーヴァントと悪魔を融合させるというものだった」

 「そ、そんなことが可能なのかい!?」

 「本来なら不可能でしょうね。………でも、私の場合は二つの要因が重なって可能となってしまった」

 「二つの要因………?」

 「ええ。まず一つは、私が()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ということ。そしてもう一つは私の中に()()()()()()()()()()()ということ」

 

 

 

 アナスタシアは生前はロシア皇帝の皇女であったが、最終的には兵士によって家族もろとも惨殺されたという悲劇の人生を送った。そのためさしたる逸話を持っておらず、サーヴァントとして現界してもこれといった力を持っていなかった。

 しかし召喚主である魔術師にとっては幸運だった。アナスタシアが力を持っていないということは、外部から力を植え付けても拒絶反応が起きることなく定着しやすいからだ。

 

 召喚されたアナスタシアは毎日魔導実験の実験体にされ、日々その身体を、その霊基を弄られ続けた。例え反抗しても契約の証である『令呪』がある以上、アナスタシアは反抗することもできなかった。

 

 

 

 二度に渡る陵辱にアナスタシアの中にあった負の感情が爆発、その負の感情に呼び寄せられたのが魔帝ムンドゥスが造り出した最凶最悪の悪魔『ナイトメア』であり、アナスタシアは自らの霊基を失う代わりにナイトメアと同化、サーヴァントから悪魔に生まれ変わったのだ。

 

 

 

 「その後の私はただ怒りや憎しみのままに暴れ回り、目に入るもの全てを破壊し続けた。そんな時にダンテと出会い、彼に敗北し、そして彼についていって今に至るわけよ」

 

 アナスタシアの口から語られた言葉に、その場にいた全員が呆然としていた。立香とマシュ、オルガマリーに至っては顔を青ざめさせている。

 

 それもそうだ。サーヴァントといえど、元は人間である。そんな彼女をまるで道具のように扱い、彼女を無理矢理人ならざるものへと造り変えたのだ。魔術に関わる彼らにとっては到底許せるものではない。

 

 「ああ、でも哀れみとかそういうものはいらないわ。私は自分が悪魔であることを受け入れているし、こうしてダンテと出会うことができたのだから、ある意味では感謝しているくらいよ」

 

 アナスタシアは毅然とした感じでそう告げる。実際彼女は自分のことを『不幸』だと思ったことはない。生前の出来事は『そういう運命だった』と割り切っているし、悪魔となったことも『ダンテのために戦う力を得た』と前向きに考えている。そのため自分を悪魔へと変えた魔術師にそのことは評価しなくもない。まあダンテと比べたら雲泥の差どころか比べる価値すらないのだが。

 

 

 アナスタシアの話が終わったところでダンテは口を開く。

 

 「まあそんなわけだ。よろしく頼むぜ」

 「え、ええ、よろしく………」

 

 いろいろと衝撃的なことが多かったのか、半ば呆然としたような感じでオルガマリーがそう返してくる。

 するとおずおずといった感じで手を挙げてきた。

 

 「あの、ダンテさん。聞きたいことがあるんですけど、いいですか……?」

 「なんだリツカ?」

 「どうやって所長……じゃなくて、マリーさんを生き返らせたんですか?」

 

 立香が聞いてくるのも尤もだ。

 魔術師じゃない彼女でも人を生き返らせることなんてできないことはわかっている。

 それにも関わらず、あの特異点で死んでいたはずのオルガマリーはこうして蘇った。一体どうやって蘇らせたのか、立香やマシュだけでなくオルガマリー本人も気になっていた。

 

 「ああ、それは『コレ』のおかげだな」

 

 ダンテがそう言って手をかざすと光が集まり、集まった光が消えると人の顔の形をした黄金の物体が浮いていた。

 

 「それは……?」

 「こいつは『ゴールドオーブ』。秘法によって生み出された死者を蘇らせる魔石だ」

 「なっ!? 死者を蘇らせるって、それはもう魔術どころか奇跡の域じゃないか!!」

 

 ダンテの言葉を聞いたロマニが驚愕の声を上げる。まあ魔術に関わるものならそうなるのも無理はないだろうが、ダンテ達からしたらそういったものは当たり前なものになっている。

 だってそういったものが街の至るところに落ちているし、最近に至っては気がついたらゴールドオーブが一個ずつ増えていたりもしているのだから。

 

 「でもおかしいのよね、さっきのゴールドオーブ」

 「おかしい、ですか?」

 

 アナスタシアのつぶやきにマシュが反応する。

 それに対してカーマが説明した。

 

 「本来ゴールドオーブは持ち主が死んだ時に初めて秘められた効果を発揮するんです。でもさっきのゴールドオーブはすでに死んでいた持ち主でもない人物に効果を発揮した。こんなことは初めてなんですよねぇ」

 

 

 「それについては私が説明しよう!」

 

 

 カーマの言葉に突然女性の声が返ってくる。

 声のした方を向くと、そこには右腕に巨大なガントレットを身につけ、身の丈以上もある杖のようなものを持った美女が立っていた。

 

 その女性を見てダンテは無意識に口にする。

 

 「………サーヴァントか」

 「おや、よく私がサーヴァントだってわかったね」

 「気配がカーマと同じだったからな。いやでもわかるさ」

 「ほう、気配だけでわかるとは。さすがはスパーダの息子だ」

 

 ダンテの言葉に女性が笑いながらそう返してくる。そのことにダンテは肩を竦めるだけだった。

 

 「では自己紹介しよう。私の名は『レオナルド・ダ・ヴィンチ』! 人類史に燦然と輝くダヴィンチその人さ!」

 「レオナルド・ダ・ヴィンチ? 何処かで聞いたことがある名前だな」

 

 自慢気に名乗る女性だが、ダンテはイマイチピンとこず首を傾げるのみ。

 すると見かねたアナスタシアが呆れ気味に口を開いた。

 

 「ダンテ、レオナルド・ダ・ヴィンチは『モナ・リザ』を描いた中世の芸術家よ」

 「ああ、それは聞いたことあるな」

 「ええ。まあ、まさか女性だったとは私も思ってもいなかったけど」

 

 ダンテとアナスタシアがそう会話していると、ロマニが苦笑いしながら口を開いた。

 

 「………あー、それなんだけどね。見た目は女性かもしれないけど、中身はれっきとした()なんだ」

 「あ? どういうことだ?」

 「カレは自分が描いたモナ・リザが好きすぎて()()()姿()()()()()()()()()()()()()()、生粋の変態なんだよ」

 

 ロマニから放たれる衝撃的な真実。見た目は女性だが中身は完全に男らしい。

 なるほど、これがジャパニーズHENTAIというやつか。

 

 「おおぅ、まさかこの万能人である私を知らない人がいるとは。今までの人生でも無かった衝撃だ」

 「むしろダンテにそれを求める方が無謀ですよ。何せダンテは興味の無いことにはとことん興味を示しませんから」

 

 衝撃を受けるダヴィンチにカーマが呆れながらそう返す。実際その通りなので何も言い返せないのだが。

 

 「ダヴィンチちゃん、それでそのゴールドオーブ?がおかしかったのはどういうことですか?」

 「おおっとそうだったそうだった」

 

 マシュの言葉に衝撃を受けていたダヴィンチの意識が戻る。そして説明を始めた。

 

 「さて、君が持っていたゴールドオーブというやつだが、アレは持ち主が死んだ時に『生き返らせる』効果を発揮するものでいいんだよね?」

 「ああ、そうだ。それがどうしたんだ?」

 「実はね、生き返ったマリーの身体を調べてみたところ、なんとマリーの身体は()()()()()()していたんだ」

 「………なに?」

 

 ダヴィンチの口から出た言葉にダンテは耳を疑う。

 生き返ったオルガマリーは聖杯と一体化していた? いつ、どうやって一体化したというのだ?

 

 その時、ダンテの脳裏に一つの可能性が浮かび上がる。

 それは本来ありえないことだが、それ以外だと説明がつかない。

 

 「………おい。まさかとは思うが、()()()()()()()()()()()()()とか言わねえよな?」

 「そのまさかさ。むしろそれ以外の可能性は無いと言っても過言ではないよ。おそらくそのゴールドオーブは聖杯を加工して作られたものだ」

 

 ダンテの言葉をダヴィンチは肯定する。

 浮かび上がった可能性は見事に当たっていた。確かにあのゴールドオーブは他とは少し変わっていたと思っていたが、まさか本当に聖杯でできていたとは。

 

 「これは仮説だが、ゴールドオーブの『死者を生き返らせる効果』と聖杯の『願いを叶える効果』の二つが組み合わさった結果、死者であるマリーの『生きたい』という願いに反応して生き返らせたんだと思うよ」

 「………なるほどな」

 

 ダヴィンチの仮説は突拍子もないものだが、ダンテは納得せざるを得ない。それ以外ではオルガマリーが生き返る要因が無いからだ。

 

 「聖杯と一体化したマリーの身体はもう生物としての枠組みから外れてる。簡単に言っちゃえば食事も睡眠も人間が生きるために必要なもの全てが不要となったということさ」

 

 果たして、それは『生きている』というのだろうか?

 人間として生きることが必要なことが全ていらない、それは『意思を持った人形』と同じなのではないだろうか?

 

 「ダンテさん、あなたが何を考えているのかわかります。ですがあなたが気に病む必要はありません」

 

 不意にオルガマリーが口を開き、ダンテの意識はオルガマリーの方に向く。

 

 「どういう形であれ、私はあの時『生きたい』と願い、あなたが持っていた聖杯はそれを叶えてくれた。それが人としての身体を失ったことでも、私はそれを受け入れています。………むしろあなたが持っていた聖杯をどういう形であれ、勝手に使ってしまったことには変わりありません。そのことを私は深くお詫び申し上げます」

 「………気にすんなよ。万能の願望機だかなんだか知らんが、俺からしたら『願い』は自分で叶えるからこそ価値がある。俺が持ってたところでビールの容器になるだけさ」

 

 申し訳なく言ってくるオルガマリーにダンテは笑いながらそう返す。どうやらオルガマリーはその身体を受け入れてみたいなので、要らぬ心配だったようだ。

 

 「ま、何にせよ世界はこうなっちまった。俺は依頼で、お前達はお前達の使命のために人理を救う。目的は一緒だ。これからよろしく頼むぜ」

 「ええ、こちらこそよろしくお願いします」

 

 ダンテとカルデアを代表して元所長のオルガマリーがお互いに握手する。

 

 

 こうして焼却された人理を救うため、魔剣士の息子と魔術師達は立ち上がったのだった。




・カーマ
 基本的には原作と変わらないが、ダンテからの魔力を受けているため、その力は上級悪魔に匹敵する。
 こちらの世界戦ではカルデアではなく街一つを『大奥』に作り替えようとしたが、たまたまそこにいたダンテにボコボコにされて敗北する。
 またダンテに(無意識とはいえ)諭され、以降は『愛の神』としてではなく、『カーマという少女』としてダンテの元で生活するようになる。また、少なからずダンテに好意を抱いている。

 クラスはアサシンだが、ダンテから貰った魔力を解放することでビーストⅢ/Lへと変化することができる。
 ただしこの力はあくまでダンテとその仲間のためだけにしか使わない。



・アナスタシア
 原作と違い異聞体とは違う、純汎人類史のサーヴァント。
 クラスはエクストラの『復讐者(アヴェンジャー)』だったが、これといった逸話が無いためさしたる力も無かった。
 そのことに目をつけた魔術師によって無理矢理悪魔と融合させられ、ナイトメアと同化する。
 しかしそれによってサーヴァントから悪魔へと変わり、魔術師による令呪も通用せずに魔術師を惨殺、怒りや憎しみのままに暴れ回る。
 その時にダンテと出会い戦闘になるが敗北する。そしてダンテの優しさに触れて人としての心を取り戻す。

 以降はダンテの元で生活するようになる。また、少なからずダンテに好意を抱いている。


 暫定的なクラスはアヴェンジャーだが、現在はサーヴァントとしての力をほぼ失っている代わりに、悪魔としての力を得ているため、何の制限も受けずに行動できる。
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