……わたしは、わたしの子供達に拒絶されて、何も無い『虚無の世界』に追放された。
なんで? どうしてなの? わたしはただ子供達を愛していただけなのに。
いくら疑問に思えども、その答えを知ることはなかった。知ることなどできなかった。
────『あの人』が現れるまでは。
いつものように虚無の世界で一人何かをするわけでもなくボーッとしていると、突然目の前の空間が裂け、そこから『漆黒の剣士』が現れた。
ここは、この世界はわたししか存在せず、何者にも侵入することなんてできないはずなのに、一体どうやって………
驚いているわたしを余所に、その漆黒の剣士は周囲を見回してから『ここにはお前一人しかいないのか?』とわたしに聞いてきた。
わたしは答える、『この世界にはわたし一人しかいない』と。
それを疑問に思ったのか、漆黒の剣士は再び聞いてきた。『なぜこの世界にはお前一人しかいないのだ?』と。
わたしは漆黒の剣士に全て話した。
かつて『原初の母』として子供達を生み出したこと。
その生み出した子供達に裏切られて殺され、世界の礎にされたこと。
そして世界の生態系が確立したために、自分は不要なものとされてこの世界に追放されたこと。
その全てを話している間、漆黒の剣士は一言も話すことなく聞いてくれていた。それに釣られたのか、気づけばわたしは自分の気持ちも吐露していた。
わたしはただ『母』として子供達を愛していただけだった。
子供達と一緒にいられるだけでそれで良かった。
子供達はわたしのことを嫌ってしまったのか?
そんな悲しみや苦しみを吐露する中、漆黒の剣士は静かに口を開いた。
『お前の子供達はお前のことを嫌ってなどいない』
その言葉を聞いた時、思わず聞き返してしまった。
『なんでそんなことが言えるの……?』
『お前の子供達は未来を歩むために、あえてお前から離れることを決意した。これをいわゆる『親離れ』というらしい』
『わたしをこの世界に追放したのは………?』
『お前がいたらまたその力を頼ってしまうかもしれないと考え、自分達の力で進むためにこの世界にお前を追放したようだ』
意外な事実に自分の気持ちが揺らいでいるのがわかる。復活したら今ある全ての生命を無に還し、新たな生命を生み出した母の座に返り咲こうと思っていたのに、その事実を聞いて想いが揺らいでしまう。
わたしは確認するように聞いた。『子供達は今でもわたしのことを愛しているの……?』と。
『愛している。『全ての生命を生み出した母親』としてな』
その事実を聞いた瞬間、わたしは嬉しさのあまり涙を流してしまった。
子供達はわたしのことを嫌ってなどいなかった。
子供達はわたしのことを愛しているが故に離れていったのだ。
そのことを知り、わたしの中に渦巻く負の感情は自然と消え去っていく。そして『自分はまだ母親である』という幸福感で満たされていく。
『お前がやるべきことは子供達を見守ることだ。間違った道へと進もうとした時に諫めるのも、また母親の役目である』
『諫める………』
漆黒の剣士の言葉にわたしは不安になる。
わたしは子供達を愛している。そんな子供達を諫めることはできるのだろうか?
『真に愛しているのならできるはずだ』
わたしの不安を見抜いたのか、漆黒の剣士がそう告げる。すると不思議なことにできるような気がしてきた。
いや、やらなければならない気がしてきた。子供達が犯した間違いを正すのもまた母親の役目である。ならばたとえ世界を滅ぼすことになっても、それをやり遂げなければならない。
『………これ以上は何も言う必要はあるまい』
わたしが決意を新たにすると漆黒の剣士はそうつぶやき、踵を返そうとする。
わたしは慌てて漆黒の剣士に聞いた。
『あなたは一体何者なのですか?』
『……私の名は『スパーダ』。人類を守るために同胞を裏切った反逆者だ』
漆黒の剣士────スパーダはそれだけ言い残すと、空間を切り裂いて虚無の世界から消え去る。
その名を聞いたわたしの胸の中には温かいもので溢れかえっていた。
彼の姿が忘れられない。彼の声が忘れられない。彼のその在り方が忘れられない。
そしてわたしは知った。
わたしは彼に恋してしまったのだ、と。
その後幾星霜の年月が流れた。
その間もわたしはずっと独りだったが、彼の言葉により孤独感は全くといっていいほど感じず、子供達が日々進化し続けるのを嬉しく思っていた。
そんなある日、いつものように虚無の世界で過ごしていた時、突然懐かしい気配を感じた。
間違いない。彼の、スパーダの気配だ。
わたしは居てもたってもいられず、彼の元へ行くことを決意した。
そしてわたしは自身が持つ『権能』を虚無の世界へと置いて、彼の元へと姿を現した。
………しかし、そこにいたのはスパーダではなかった。
彼はわたしにこう名乗った。
『俺はスパーダの息子の『ダンテ』だ』、と。
………
……
…
お互いの自己紹介が終わった後、ダンテ達は今後の方針を話し合った。
ロマニの話によれば人理の焼却は『聖杯による過去の歴史の改竄』が原因らしく、特に人類歴史を決定づける『究極の選択点』である7つの特異点が直接の原因らしい。
それを解決するのにはダンテ達がつい先ほど巻き込まれた『レイシフト』が必要となってくる。
しかしそのレイシフトに適正があるのは立香とダンテの二人しかいない。そのため特異点を解決するのにかなりの時間を有する。
「マスター適性者48番、人類最後のマスター藤丸立香。君はこの人類最大の試練に向き合う覚悟はあるか? カルデアの手足となり、眼となり、刃となり盾となり、狂い果てたこの歴史に立ち向かう意志はあるか? 人類の未来を背負う覚悟はあるか?」
「…………」
真剣な表情で問うロマニに、立香は顔を青ざめさせながら黙り込む。心なしか身体も震えている。
そうなるのも無理もない。彼女は何の力も持たないただの少女だ。そんな少女がいきなり世界のために戦えと言われてもできるはずがない。泣き喚かないだけまだマシと言えるだろう。
すると立香がゆっくりと口を開いた。
「………ずっと、考えてました。ダンテさん達のように戦える力なんか無い私に何ができるのかな、と」
その言葉に誰も何も言わずに聞いている。
「……でも! こんな私でも世界を救えるのなら! 私は世界を救いたい! また皆が笑顔で過ごせる世界を取り戻したい!」
少しの間を空けてから立香はそう叫ぶ。本当なら今すぐにでも逃げ出したい彼女は、それを堪えて狂った世界に立ち向かうことを選んだ。
「へえ、なかなか見込みがありますね」
決意を口にした立香を見て、カーマが感心するようにそうつぶやく。
それに対しダンテは笑いながら返した。
「そうだな。あの嬢ちゃんは立ち向かうことを決めたんだ。なら俺達も依頼をこなさなきゃな」
「ええ、その通りね。依頼をこなせば報酬もたんまり入ってくるわけだし」
「おいおい、それは言わない約束だろ?」
意地悪く笑いながらそう言うアナスタシアにダンテは肩を竦めながらそう返す。
何にせよ、ダンテ達がやるべきこともカルデアと同じだ。ならここは力を貸すことにしよう。
「……ごめんなさい、立香。こんな重荷をあなたに背負わせてしまって………」
立香の決意を聞いたオルガマリーが申し訳なさそうに言う。すると立香が苦笑いしながら口を開いた。
「仕方ないですよ。誰かがやらなくちゃいけないけど、今は私ししかいない。なら私がやらなくちゃですから」
「……ありがとう、立香」
立香の言葉に弱々しいものであるが、オルガマリーが笑みを浮かべてそう返す。
それを見たロマニが真剣な表情で口を開いた。
「今の言葉で僕達の運命は決まった! 現時刻を持って『ロマニ・アーキマン』がオルガマリー元所長に代わり正式に司令官の任に就く! これより我等はオルガマリー元所長の決定の元、原初にして最終のオーダーを実行する!」
この言葉にカルデアが沸き立つ。
頼りなく破滅に浮いていた木の板は、今確かに漕ぎ出す船へと変わる。
そしてロマニからオルガマリーに変わり、力強く宣言した。
「ファースト・オーダー改め、人理修復を行う果てない旅、『グランドオーダー』! カルデアの名の下に決行を裁定します! 総員、自らの使命を全うしなさい! 皆、進み続けるわよ! 私達の明日に!」
こうして残された人類による未来を取り戻す戦いが幕を開けた。
………
……
…
さて、未来を取り戻すために人理修復の旅を行うことになったわけだが、まず今のカルデアに必要なのは『戦力』であった。
現状カルデアで戦える人物はダンテ、アナスタシア、カーマ、マシュの四人のみだが、ダンテ、アナスタシア、カーマの三人は何者かからの依頼でここにいるのでカルデアの戦力として数えるわけにはいかず、またマシュはまだ自身に宿ったサーヴァントの力を十分に操ることができないので、カルデアの戦力は正直厳しいと言っても差し支えなかった。
そこでまずは戦力を増強させるために、カルデアの召喚儀式を使って新たなサーヴァントと契約することから始まった。
「基本的に任務ではマシュともう一人がレイシフトし、残りはカルデアに待機してもらいます。場合によっては戦闘時に必要に応じて呼び出してもらいます」
「まあ妥当な判断だな。だが立香はともかく、俺まで召喚する必要があるのか?」
ダンテは首を傾げながらそう聞く。
ダンテにもマスター適性があるとはいえ、ダンテは後ろで命令するよりも自ら前に出て戦うタイプである。それに合わせられるのはアナスタシアとカーマの二人のみであり、新たにサーヴァントを召喚したところでダンテ達に合わせられるかどうかはわからない。
「今のカルデアはたった一度の襲撃で陥落してしまうほど脆いからね。元所長も魔術は使えるけど、それでも戦闘には向かないんだ。だから戦力は多い方がいい」
「なるほどな」
ロマニの説明にダンテは納得する。
確かに今カルデアが襲撃されればまず間違いなく落とされるし、あの野郎が攻めてこないとも限らない。かと言って立香一人で召喚するにしても限度があるので、それをダンテの分で補うという形なのだろう。
「OK、ならちゃっちゃと始めようぜ。それで、召喚に使う触媒はどうするんだ?」
「それは私が用意するわ」
そう言ってオルガマリーが瞳を閉じ、両手を前に差し出す。するとそこに黄金に輝くグラスが現れた。どうやらゴールドオーブの形をしていた聖杯はオルガマリーと一体化したことにより、彼女の形に合わせてグラスへと変化したらしい。
「聖杯は『万能の願望機』。持ち主の『願い』に応じてその力を発揮するわけなのさ」
聖杯を出現させたオルガマリーを見ながらダヴィンチがそう言う。どうやらオルガマリーは聖杯の力を利用して触媒を生み出すらしい。
するとオルガマリーの聖杯から黄金の札のようなものが計画七枚現れる。どうやらこの札のようなものが触媒のようだ。
「こ…これが形を為す、縁の符……『呼符』といったところかしら……」
「疲労困憊じゃねえか。大丈夫か?」
「あ…あなた達を戦場に送り出すもの……これくらいのことはしなきゃ……」
苦笑いするダンテにオルガマリーは息を切らせながらそう返してくる。まあまだ聖杯の扱いに慣れていないので仕方のないことだろう。
何にせよ、後はこれを使ってサーヴァントを呼び出すだけである。
まずは立香が自分のサーヴァントを呼び出すところから始まる。
「じ、じゃあ始めるね」
そう言って立香は恐る恐るマシュの宝具である盾の上に呼符を置く。
『サモンプログラム、スタート。英雄召喚、開始します』
機械音声と共に盾の上に術式が展開される。そして光を放ち、現れたのは────
「サーヴァント・アーチャー。召喚に応じ参上した」
────赤い外套を纏った白い髪の男だった。
アーチャーと名乗った男は立香を見つけるなり、彼女に言う。
「……ふむ、君が私のマスターか。まだ未熟者だがよろしく頼む」
「あ、はい。こちらこそよろしくお願いします。えっと、なんてお呼びしたらいいでしょうか?」
「そうだな、気軽に『エミヤ』とでも呼んでくれたまえ」
立香の言葉にアーチャー改めエミヤがフッと笑いながらそう返す。どうやら友好的なサーヴァントのようだ。
そして再び術式が展開され、光が放たれる。そして現れたのは────
「■■■■■ーーーーーッ!!!」
────筋骨隆々の大男だった。
それを見たオルガマリーが興奮したように言う。
「サーヴァント・バーサーカー、ギリシャの大英雄『ヘラクレス』よ!」
「これがあの大英雄ですか……!」
オルガマリーの言葉にその場にいた皆が驚いたようにヘラクレスを見る。一方のヘラクレスはというとバーサーカーゆえに理性が無いのか、ただただそこに突っ立っているだけだった。
「えっと、その…よろしくお願いします……」
おっかなびっくりに立香がヘラクレスを見上げてそう言う。ヘラクレスは立香に気がつき、その獰猛な目で見る。
そして────
────グッ!────
ニッと笑いながら親指を上に突き出す。どうやら立香のことをマスターと認めたらしい。
そのことに立香もホッと安心したように息を吐く。
そして三度目の術式が展開、光を放って現れたのは────
「サーヴァント・ランサー、真名を『カルナ』という。よろしく頼む」
────黄金の鎧に身を包んだ白っぽい髪の青年だった。
その青年を見たロマニが驚いた声を上げる。
「『カルナ』! インド叙事詩『マハーバーラタ』に出てくる大英雄だ! かの『英雄王』や『太陽の騎士』と同格のサーヴァントだ! これはもう戦力としても百人力だぞぅ!」
一人勝手にはしゃぐロマニを余所に、立香はカルナの前に立つ。
「藤丸立香です。よろしくお願いします」
「君が俺のマスターか。気を遣わなくていい。気軽に接してくれ」
「は、はい!」
少し強面だが意外と物腰が柔らかいようだ。立香もそのことに安心したらしく、ホッと一息吐いている。
するとカルナがダンテのそばにいるカーマ に気がついた。
「……カーマか?」
「ええ、そうですよ」
「お前がサーヴァントとして使役されているとは珍しいな」
「勘違いしないでください。私はあくまでダンテと共に戦っているので、カルデアには力を貸しているだけです」
「そうか。何はともあれよろしく頼む」
どうやらカーマと知り合いらしいが、それはおそらく出典が要因だろう。まあ現在カーマはダンテ以外には興味無いので、あまり気にしなくてもいいだろう。
「次で最後の召喚ですね、先輩!」
「う、うん。じゃあ召喚するね」
マシュの言葉に立香が緊張した面持ちで召喚サークルを起動する。
そして光を放って現れたのは────
「サーヴァント・ルーラー、『ジャンヌ・ダルク』! お会いできて本当に良かった!」
────白い鎧に身を包んだ金髪の少女だった。
「ジャンヌ・ダルク! フランスの百年戦争で活躍した聖女ですよ、先輩!」
「私も授業で見たことある!」
ジャンヌの姿を見てマシュと立香がはしゃぐ。まあ見た目的には同年代かお姉さんといった感じなので、緊張が和らいだのだろう。
「藤丸立香です! よろしくお願いします!」
「はいマスター! 共に世界を救いましょう!」
立香の言葉にジャンヌも笑顔でそう返す。
何はともあれこれで立香の召喚は全て無事に終わった。見た感じ戦力としては十分だと思うが、それでも多いに越したことはない。
「さて、今度は俺の番か。一体何が出るのやら?」
「君が召喚するわけだから、あのスパーダが来てくれるかもしれないね」
ダンテのつぶやきにダヴィンチがそう返してくるが、ダンテは首を横に振った。
「それは天地がひっくり返っても無いな。親父は誰かに従うようなタマじゃねえからな」
「むう……それは残念ね。もし召喚されたら
ダンテの言葉を聞いてアナスタシアが残念そうにつぶやく。何やら不穏な言葉が聞こえたような気がしたが、ダンテは聞こえなかったことにして早速召喚サークルを起動する。
光を放ってまず最初に現れたのは────
「………召喚に応じ参上した。貴様が私のマスターというやつか?」
────漆黒の鎧に身を包み、漆黒の剣を手にし、漆黒のバイザーで顔を隠した、全身真っ黒けな少女だった。
しかし少女からはその可憐な見た目に似つかわしくない、膨大な悍しい魔力が溢れ出ている。
「あなたは………!」
するとマシュが警戒するような声を上げる。
「知ってるのか?」
「………彼女は『アルトリア・ペンドラゴン』。かの有名な『アーサー王』その人であり、先の冬木で私達の前に立ちはだかった人です」
「へえ、あのアーサー王か。まさか嬢ちゃんだったとは知らなかった」
警戒するマシュの言葉にダンテは笑いながらつぶやく。
するとアルトリアがマシュ達の方を向く。それに対して立香はビクッと身体を震わせ、立香のサーヴァント達が立香を守るように立ちはだかる。
しかしアルトリアは何もしようとせずに口を開いた。
「………ほう、貴様らは私のことを知っているようだな。だが私は貴様らのことを知らない。過去の私は会っていても、この私は初対面なのだからな。つまり貴様らにとって私は『同姓同名の赤の他人』というやつだ」
アルトリアはそう言うと興味なさそうに立香から視線を外し、ダンテ達の方を向く。
そしてそばらくすると徐にバイザーを外し、素顔を晒してくる。そして金色の瞳でダンテを見ながら口を開いた。
「……なるほど、貴様がかの伝説の魔剣士スパーダの息子か。私の聖剣を預けるに相応しい」
そう言って聖剣と呼んだ漆黒の剣を構えた。
「これからは貴様の剣となり、魔竜の息吹の如く貴様の敵を蹴散らすことを誓おう」
「おう。これからよろしく頼むぜ」
アルトリアの言葉にダンテは笑いながらそう返す。
そして再び召喚サークルを起動する。するとここで予想外の反応が起きた。
「これは……クラス『アルターエゴ』です!」
観測していた職員の一人がそう報告する。そのクラス名を聞いた皆は困惑の表情を浮かべる。
それもそうだ。ダンテ自身初めて聞くクラス名なのだから。
そして光を放って現れたのは────
「……愛憎のアルターエゴ、『パッションリップ』です……。あの……傷つけてしまったら、ごめんなさい………」
────とても英雄とは思えない、弱気な少女だった。
顔立ちはカーマとよく似ているのだが、胸はダンテが今まで見てきた女性の中でもダントツに大きく、そして何より両腕が少女の身体よりも圧倒的に大きい鉤爪状のものとなっていた。
そんなサーヴァントの少女を見て皆言葉を失う中、ダンテはサーヴァントの少女に近づいて聞いた。
「あー、お嬢ちゃんが『アルターエゴ』っていうクラスのサーヴァントでいいんだな?」
「は…はい……あの、マスターの召喚に応じちゃったのはご迷惑だったでしょうか………?」
「そんなことはないぜ。初めて聞くクラスだったから、つい聞いちまったのさ」
泣きそうになりながらそう言ってくるサーヴァントの少女にダンテは安心させるようにそう返す。こうしてダンテの召喚に応じてくれるだけありがたいというものだ。
「ああ、それとその腕。最高にカッコイイと思うぜ?」
「ッ!!」
ダンテが笑いながらそう言うと、サーヴァントの少女が驚いたような表情をする。そして直後に顔を真っ赤にしながら俯いてしまう。
そしてバッと顔を上げて口を開いた。
「……精一杯頑張りますので、よろしくお願いします! マスター!」
「おう、よろしくな」
そう言ってくるサーヴァントの少女ことパッションリップに、ダンテは笑いながらそう返す。
するとカーマがジト目でダンテを見ながら口を開いた。
「………相変わらずの女たらしですね」
「そいつは違うな。俺はか弱いレディからヤバイ女まで大歓迎なだけさ」
「それを世間一般では女たらしと言うのですよ」
笑いながらそう言うダンテにカーマは呆れたように返してくるが、ダンテはこれっぽっちも口説いているつもりはない。分け隔てなく接するのがダンテの信条だ。
そんなわけで三度目の召喚サークルを起動する。
術式が展開され、光と共に現れたのは────
「我が名は巴。余人には『巴御前』とも呼ばれることもありましたか。何はともあれ、戦働きのため参りました。よろしくお願い致します」
────銀髪を赤い紐でポニーテールに纏めた、和服の女性だった。しかし見た目は人間ではあるものの、その気配には人間ではないものが混じっている。
「ダンテ、日本のおサムライさんよ。本物は初めて見るわ」
巴御前と名乗った女性を見て、アナスタシアがはしゃぐ。たしか生前の彼女の父親であるニコライ2世は大の日本通であったらしく、アナスタシアの日本好きも父親の影響なのかもしれない。
「まあ。私のようなものを見て喜んでくれるとは。こちらも嬉しく思います」
はしゃぐアナスタシアを見て巴御前が微笑みながらそう返してくる。
ダンテは巴御前に言った。
「トモエか。よろしく頼むぜ」
「はい。この身は『義仲様』に捧げたものですが、今この時はマスターの刃となりて悪しきものを斬り伏せましょう」
「おっと、人妻だったのか。そりゃあ召喚しちまって悪かったな。旦那さんと水入らずで過ごしていただろうに」
巴御前の言葉を聞いてダンテは苦笑いしながら謝る。すると巴御前が慌てたように言ってきた。
「い、いえ! マスターが謝ることではありません! 私がマスターのその誇り高き魂に惹かれて召喚に応じましたので、マスターが謝る必要はございません!!」
巴御前がダンテの召喚に応じたのは、ダンテのその誇り高き魂とやらに応じたかららしい。しかしダンテとしては別にそこまで誇りを持っているわけではない。
ただ父親であるスパーダの誇りを受け継いだだけである。
「まあ何はともあれ、これからよろしく頼むぜ」
「はい、こちらこそ! ………あ、でも、その……夜伽とかの相手は………」
「そんなもんやらんくていい。むしろやるな。ヤバイやつが二人いるんだからな」
恥じらうような巴御前にダンテは額を押さえながらそう返す。なぜならそれを許してしまったら
するとオルガマリーが咳払いしてから口を開いた。
「………これでサーヴァントの召喚は無事に終わったわね。では次の指令があるまで────」
その時停止させたはずの召喚サークルが突然起動する。
そのことに驚いていると、召喚サークルの光が激しさを増していき、さらには赤黒い魔力まで放ち始める。
「ッ!! 皆衝撃に備えるんだ!!」
異変を感じ取ったダヴィンチが叫ぶ。
その場にいた全員が衝撃に備えて構えた時────
────ドォォォォォォンッ!!────
────爆発音と共に赤黒い光が弾け飛ぶ。そして光が収まると、そこには胸と腰を最低限隠した、青白い長髪に巨大な双角を生やした女性が立っていた。
女性はゆっくりと目を開けると、星海のような瞳で周囲を見回す。そしてダンテと目が合うと、その表情を綻ばせた。
「────ああ、ああ! ようやくあなたに再び会うことができました、スパーダ!」
女性はそう言いながらダンテの顔に優しく触れる。どうやらこの女性はスパーダのことを知っているどころか、実際に会ったことがあるらしい。
そのことに周囲が驚く中、ダンテは女性に聞いた。
「……親父を知っているのか?」
「……親父? あなたはスパーダではないのですか?」
ダンテの言葉に女性が不思議そうに首を傾げる。
「俺はスパーダの息子のダンテだ」
「ダンテ………道理であの人と似ているわけですね」
ダンテの言葉に女性は納得したようにそう返してくる。
そしてダンテの顔から手を離すと、微笑みながら名乗った。
「わたしの名は『ティアマト』。ただのティアマトです。どうぞよろしくお願いしますね」
・ティアマト
突如としてダンテの前に現れた女性。本人曰く『何の力も持たないただのティアマト』とのこと。果たして彼女の正体とは.......
なお、カルデアにおいて唯一スパーダと実際に会っており、ダンテの前に現れたのもスパーダの気配を感じ取ったから。
タグの???はティアマトでした。
なお、セイバーオルタとパッションリップはそれぞれチュートリアルガチャとピックアップガチャで初めて入手した金鯖なので、サブヒロインとして出させていただきました。
それ以外のサーヴァントは作者の独断と偏見で決めさせていただきましたので、ご了承ください。