ゲームキャスターさくら   作:てんつゆ

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人形列車 人形使い 10

 もしかして壁の向こう側から違うプレイヤーに攻撃された?

 

 …………たぶん違う。

 

 流石に他のプレイヤーが乱入してきたらアラートで気付くから、遠隔操作系のビットとかでの攻撃かも。

 

 それより気になるのは壁に空いた穴の大きさ。

 直径30センチくらいの穴が開く攻撃ならそれなりのダメージを受けるはずなのに、私が受けたダメージの大半はエリアダメージによる物。

 

 つまり、マリアさんの攻撃では致命的なダメージは受けていない。

 

 とりあえず今は壁の後ろに隠れて様子を見たほうがいいかも。

 リニスだったらあれくらいの穴をくぐってショートカットが出来ますが、私の大きさでは……………。

 

 あれ? これはもしかして。

 

 私は耳を澄ますと、私のでもマリアさんの物でも無い小さな足音が聞こえていました。

 その足音は私の近くにある壁の後ろで止まり、少ししてから――――。

 

「そこっ!」

 

 私は壁から出てきた物の攻撃を剣で弾いてそのまま壁に投げ当てると、壁にあたった瞬間カランと木の音が鳴りました。

 

「くすっ。思ったより早く気づかれちゃった」

「やっぱり人形使い!?」

 

 

 ドール・アクター

 

 攻撃 D

 防御 C

 速度 E

 

 

 能力

 

 小さな手助け 人形を自由に操る事が出来る

 

 

 

 本人の能力値はそんなに高くはありませんが、このクラスの特徴はなんと言っても擬似的な2対1で戦える事。

 何もない平原ならともかく、遮蔽物があるマップだと常に隠れている人形にも気を付けておかないと、さっきみたいに見えない場所からの不意打ちされ放題になっちゃいます。

 

 

 冷静に対処していってもいいのですが、もう体力も残り少ないしこうなったら!

 

「行きます!」

 

 私は人形が復活する前に剣を構えて突撃し、マリアさんはさっきみたいにカバンで剣を弾こうとしてきました。

 

 ――――けど。

 今回はそうはいかないっ!

 

 私はあえて剣を弾き飛ばされ、そのまま勢いを付けたまま大振りをしたマリアさんに体当たりをして、両手で捕まえました。

 

「ふ~ん。そういう事」

「今はこれしかっ!」

 

 目標は後ろにあるダメージオブジェクト!

 私はそのままマリアさんと一緒にダメージオブジェクトへと突進し、マリアさんの体が爆弾に触れた瞬間に爆発が起き、そのまま他の爆弾も連鎖するように爆発。

 

 直後。

 私とマリアさんのライフは同時に0になり。

 

「この試合。ドローゲーム!」

 

 いつの間にか現れていた、eスポーツジャッジの人の判定が終わる前に―――――。

 

「リニス。逃げます!!!!」

「え? ええっ!?」

 

 私は困惑するリニスの手を無理やり取って、逃げるように駆け出しました。

 

 

 ――――――そして。

 私達が去った後に1人だけ残ったマリアさんは。

 

「あ~あ。逃げられちゃった」

 

 まるで逃げられたのが予想通りといった表情で、何処かと通信を始めたのでした。

 

「キティ・ノワール。陽子に連絡してくれる?」

 

 数回のコール音の後。

 マリアさんの前にバーチャルモニターが現れました。

 

 モニターに映っているのは20歳くらいの女性で、画面に出た瞬間マリアさんが口を開く前に話だしました。

 

「全く、急にどうしたのです? こっちは貴方が受け取れなかった物の捜索で大変なのに」

「あらら、それは大変ね。けど、もう安心していいわよ」

「…………どういう事ですか?」

「だって、もう見つけちゃったんだから」

「なんですって!?」

 

 モニターの女性はアップでマリアさんに迫りました。

 

「けど、聞いてたのと違うからちょっと驚いちゃった。陽子は動かないって言ってたのに」

「つまり、あれが動いていたと言うんですか?」

「そうよ」

 

 女性は少し考え込んでから、「ふぅ」とため息を吐いて状況の整理を始めます。

 

「解りました。詳細は不明ですが、何かのきっかけてまた動き出したのかもしれません。――――それで、その人形は今どこに?」

「逃げられちゃった」

 

 「てへっ」とまるで悪気が無いようにマリアさんは現状を報告すると。

 

「マ、マリア! あなたは一体なにをしてるんですか!?」

「だって仕方ないじゃない。マリアは1人なのにあっちは沢山いたんだし」

「た、沢山!? 数が多いとは言えマリアが苦戦する相手だなんて…………。分りました。捜索隊をすぐにそちらに派遣するので、後は貴方が指揮してください」

「了解。みんなにはなるべく早く来るようにお願いしておいて」

「それとマリア。貴方には言いたい事が――――」

 

 プツッ。

 

 マリアさんは一方的に通話を終了しました。

 

「ふふ。これから楽しい事が始まるのに、陽子のお小言なんて聞いてたら楽しめなくなっちゃう」

「うにゃ~ん」

 

 マリアさんの足元で黒猫の形をしたデバイスが鳴き声をあげました。

 

「さ、行くわよ。キティ・ノワール。もうすぐ舞踏会が始まるから、急がないと遅刻しちゃう」

 

 マリアさんは私と戦った時に使ったマテリアルデバイスを解除してから、ゆっくりと歩き出しました。

 

 

 

 

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