ゲームキャスターさくら   作:てんつゆ

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人形列車 月の色8

「こ、これは!?」

 

 人工衛星。

 いえ、先端に何かの発射口があるので軍事衛星と言ったほうが正しいかもしれません。

 テーマパークでマリアさんがリニスの事を人形兵器って呼んでいたので、多分これと関係性がある確率はかなり高いと思います。

 

「リニス。これに見覚えは?」

「無い…………けど、なんだろ。見てると何かが私の中に入ってくるような変な感覚がする」

「これが見た情報がリニスに来てるって事は無いですか?」

「ちょっと待って、1回確認してみる」

 

 リニスは目を閉じて集中し、直立状態で動かなくなりました。

 

「…………あの。大丈夫ですか?」

 

 心配になった私が話しかけると。

 

「見えた!」

「えっ!?」

「空からこの列車が見えたわ」

 

 リニスは目を閉じたまま今の状況を話してくれました。

 

「だったら空からこの状況を何とか出来そうな場所とかを探せませんか?」

「えっと…………。近くに何とか出来そうな場所は無いかも」

「そ、そんな」

「けど、空から何とかする事は出来そう!」

「それは一体どうやって」

「衛星についてる銃口からレーザーが撃てるみたい」

「ええっ!?」

 

 ま、まさか人形少女なだけじゃなくて、サテライト系人形少女だったなんて…………。

 なんか属性盛りすぎな気がします!?

 

「けどそんなの撃ったら大変な事になりませんか?」

「出力を最小にすればそんなに被害は出ない…………はず」

「はずって…………」

 

 その時コツコツと靴音が聞こえて来たので見てみると、マリアさんが私達の真横の車両の扉を開けて入ってきました。

 

「わ、分かりました。だったら出力最小で列車の連結部分だけ焼き切ってください! 出来ますか?」

「うん。やってみる」

 

 リニスは集中を初め、マリアさんが車両の真ん中くらいまで歩いて来た時。

 

「いっけー!」

 

 空が煌めき、雲を突き抜ける一筋の光りが私達とマリアさんの真ん中の場所に直撃。

 そして、凄い音を周囲に響かせながら列車が2つに分担されていきました。

 

「や、やりました!」

 

 進む力を無くしたマリアさんの乗っている車掌は少しづつ私達の車両との距離が開き始めていき、これでもう一安心。

 と思ったのに、マリアさんは何故か楽しそうな笑顔を浮かべています。

 

「あらら。列車を壊しちゃうなんて、桜ってば悪い子ね。けど、こんな事でマリアをどうにか出来るなんて考えてるなら、ちょ~っと甘いんじゃないかしら」

 

 マリアさんは両手に付けていた糸を外すと、一緒に歩いてきた人形はその場に一斉に崩れ落ちました。

 そして、その場所から走りだし、焼き切れた連結部分の場所まで辿り着くとその場所からジャンプ!

 

「ええっ!?」

 

 その勢いのまま、私達のいる運転車両の屋根に着地を決めちゃいました。

 

「あはっ。あんまり騎士を舐めない方がいいわよ」

 

 もう何処にも逃げ場所は無い。

 こうなったら私に出来る事はただ1つ。

 

「シャンティ。こうなったら迎え撃ちます。リニスは下にいてください」

「え、桜。大丈夫なの?」

「任せてください! シャンティ、コンバージョン!」

「気合いれていくよ~」

 

 私はマテリアルデバイスを装着してから、上に付いている窓を開けて車両の屋根の上へと登ります。

 

 屋根に登ると、マリアさんが仁王立ちをしながら待ち構えていました。

 

「ふ~ん。ここで決着をつけるってわけ」

「にゃ~ん」

 

 マリアさんが笑うと、足元から黒猫型デバイスが顔を覗かせました。

 

「来なさい、キティ・ノワール。コンバージョン」

 

 マリアさんの音声認識に反応したデバイスは分離変形を初め、体に装着されていきます。

 

「うにゃ~ん。闇夜で輝く翠玉(エメラルド)。悪戯子猫、マリア・ローランド」

 

 テーマパークで見た神々しさを感じたデバイスとは真逆の真っ黒なデバイス。

 多分こっちがマリアさんの全力本気の専用デバイス。

 

「どうかしら? マリアのデバイス、凄く可愛いでしょう?」

 

 頭には猫型デバイスの頭部の猫耳をつけ、更にお尻の付近にあるワイヤーが尻尾みたいな感じでゆらゆらと揺れていて、子猫みたいなマリアさんの性格を連想させるようなデザインをしています。

 

「こ、こっちだってスペックだけなら、無駄に高いです!」

「知ってる。だからマリアもとっておきを出したんだから」

 

 多分前よりも格段に強くなってるはず。

 覚悟を決めてからマリアさんと対峙して、バトルを始めようとした瞬間。

 

「待てぇ~い! その勝負、ワシが預かった!」

 

 と気迫のこもった声が聞こえ。

 線路のはるか彼方から汽笛の音と共に列車が近づいてきました。

 

「あ、あれはっ!?」

 

 列車の上には審判服を着た人物が腕組をしながら立っています。

 そして、私達の列車と反対側からやってきた列車が交差した瞬間。

 

「とうっ!」

 

 ジャンプして無理やりこっち側に飛び乗ってきました。

 私とマリアさんの丁度真ん中に着地したその人は、立ち上がってから軽く首元の蝶ネクタイの位置を調整した後で手を掲げて宣言します。

 

 ダンディな口ひげに公認ジャッジの身分を表すバッジが審判服の右胸で輝いている事から、この人の身分が本物のeスポーツジャッジである事を物語っていました。

 

「この試合。不正がおこなわれ無いようこのワシが審判を担当する! お前達、異論はあるまいな?」

「別にいいわよ」

 

 流石にマリアさんが不正をするとは思えませんが、ジャッジがいた方が安心して対戦だけに集中する事が出来ます。

 

 …………ただ、それより気になる事が1つだけありました。

 

「―――――あの。ちょっといいですか?」

「どうした? このワシの審判に不満でもあるのか?」

「いえ。それは大丈夫なんですが、1つだけ質問してもいいですか?」

「よかろう。試合前に疑問を残してゲームを始めても、満足なプレイが出来んだろうしな」

「ありがとうございます。では――――――なんで最初にマリアさんに襲われた時に助けてくれなかったんですか~! 和樹さんの時も忍さんと望さんの時も毎回ジャッジの人がいたのに何で誰も助けてくれないんですか~」

 

 ジャッジの人は目を閉じながら私の質問を聞き、聞き終わった瞬間に目を開いて私をみました。

 

「そんな事もわからんのか。この未熟者めがぁ〜!」

「ええっ!?」

 

 も、もしかして私が間違ってた?

 

「ワシ等はあくまでジャッジ。個人のいざこざなど知った事では無いわ!」

「な、何だって~!?」

「たとえ宇宙からの侵略者が来ても公平にジャッジを行う。それがワシ等の仕事であり、誇りなのだ! 解ったのなら、さっさとゲームを始めるがいい!」

 

 微妙に納得出来ませんが、どっちにしろマリアさんとは最初から戦うつもりだったから、今は対戦する事だけを考えないと。

 

「なに。試合中の安全はこのワシがeスポーツ協会の責任を持って保証するから安心するがいい」

 

 …………つまり、試合後の安全は保証してくれないんですね。

 

「――――ふぅ」

 

 私は軽く深呼吸して平常心を取り戻してから、マリアさんだけを見つめました。

 

「シャンティ、行きます!」

「桜。今度は勝てるよ!」

「ふふ。第二幕も楽しみね」

「にゃわ〜ん」

 

 ついにやって来た、この旅の締めくくりを飾るマリアさんとの最終決戦。

 

 時速300キロで走る暴走列車の上でのeスポーツが始まります!

 

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