ゲームキャスターさくら   作:てんつゆ

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格闘ゲーム編4 私は怖いです

 私は更に道を進むと、道沿いに何とか医院とか会議室とか書かれたプレートが目に入ってきました。

 

 ここにある会議室はそう滅多に使われないので人の気配は無く、病院はプライバシー保護の為か中が見えなくなっているので、この場所にいる孤独感が紛れる事はありません。

 

 ――――しばらくすると曲がり角に差し掛かったので、私は壁に背中を押し当ててゆっくりと向こう側を覗き見る事にしました。

 

「…………なにそれ? スパイごっこ?」

「い、一応安全確保の為です! それより後ろをちゃんと見ててください」

「は~い」

 

 私はそ~っと通路の安全を確認すると、どうやら曲がり角の先にも何も怪しいモノは無く、私が「ふぅ」と気を抜いた瞬間―――――。

 

「なにしてんの、桜?」

「ひゃわっ!?!?!?!?」

 

 後方からの突然の声に驚いた私は飛び上がりながら後ろを振り向くと、そこには良く見知ったクラスメイトの姿がありました。

 

「し、忍さん!? どうしてここに?」

「どうしてって。買い物に来て桜を見かけたから声をかけたんだけど…………」

 

 忍さんは胸の前で腕を組みながら呆れ顔で私を見返してきました。

 忍さんの隣には忍さんのサポートナビの「アルティフェクス」通称アルティを搭載した猫型デザインの球体型デバイスがふわふわと浮遊しています。

 

 

「まったく。変な物を見かけたら言って欲しいとお願いしたのに………」

「……忍達は別によくない?」

「てか、誰が変な物なのよ!」

「忍、落ち着いて」

 

 いつの間にやら私がからかって、ブチ切れた忍さんをアルティなだめるいつもの光景になっています。

 

「アルティも大変ですね」

「まあ慣れてるから大丈夫だよ」

「ちょっと。まるで私が悪いみたいじゃない!」

 

 突然の登場でちょっぴりビックリしちゃいましたけど、知ってる人に会えた事で少し心に余裕が出来たので忍さんに感謝です。

 

「そう言えば買い物に来たと言ってましたが、何を買ったんですか?」

「ふふん。知りたい? それじゃあ教えて――――」 

「やっぱりいいです」

「なんでよ! 聞きなさいよ!」

「よく考えたらそんなに興味ありませんでした」

 

 と言うか、手に持ってる袋にスポーツ用品店のマークが付いているので大体の察しはつきます。

 たぶん新しい靴を買ってゴキゲンなんだと思いますが、ここまで聞いて欲しいオーラを出されては逆に聞きたく無くなるもの。

 

 ――――さてどうしましょう。

 

「アルティ。忍さんは何を買ったんですか?」

「新しいランニングシューズだよ~」

「ちょっと! アルティじゃなくて私に聞きなさいよ!!」

「おっと、すみません忍さん。一体何を買ったんですか?」

「ランニングシューズよ…………って、もう知ってるでしょうが!!」

「ええっ!? 忍さんが聞けって言ったんじゃないですか」

 

 そんな感じで忍さんと何てこと無いやり取りを続けたのですが、いくら他に人がいないとはいってもあんまり長い間立ち話してるのもなんですし、ひとまずこの場所から移動しないと。

 

「あの、実は用がある場所があるのですが……」

「いつものゲームセンターいくの?」

「さすが忍さん。よく解りましたね」

「桜がこの階で興味あるお店って他にあんまり無いでしょ」

「そんな事ないですよ。たまに良くわからないお店を覗いてみるのも面白いですし」

 

 このフロアには怪しい人形や闇のゲームを売っているお店があるので、怖いものみたさで寄るのも気分転換になります。

 

「それより忍さんはこれからどうしますか?」

「私の用はもう終わったし、少しくらいなら付き合ってあげてもいいけど」

「本当ですか? では、一緒に行きましょう」

「桜1人だと心細かったからね~」

「むぅ。うるさいです、シャンティ」

 

 忍さんも一緒にゲームセンターに行ってくれる事になった事で気持ちが軽くなったのか、道を進む足取りも軽くなったような感覚になりました。

 もう怖くはありません。何故なら私の前には忍さんがいるのですから――――。

 

「ちょ、ちょっと桜。押さないでってば」

 

 私は忍さんを盾にぐいぐいと道を進み――――。

 

 すすみ…………あ、あれ? 何故だかなかなか進まなくなってしまいました。

 

「あの。忍さん、早く進んで欲しいのですが……」

「……なんで後ろに隠れてるわけ?」

「お化けが出てきたら忍さんに気を取られてる隙に逃げる為です!」

「はぁ……じゃあ後ろから来たらどうするのよ?」

「その時はシャンティを投げつけて前にダッシュです!」

「ボクを投げてもお化けには当たらないと思うんだけど……」

「だったら前と後ろ両方から来たら?」

「両方から? …………りょ、両方からは来ないので大丈夫です!」

「なによその謎の自信は……」

 

 忍さんはやれやれと呆れながらも私を庇いながら道を進んでくれました。

 

「あ。ゲーセンの音が聞こえてきた」

 

 忍さんの声に反応して耳を澄ませると、遠くから微かにゲームの音が聞こえて来ました。

 

「ふぅ。やっとつきました」

 

 足を進める度に少しづつ音は大きくなっていき、ある扉の前に辿り着くと中で遊ばれてるゲームの音がほとんど聞こえるくらいの大きさになりました。

 

 このフロアのお店は防音対策がそれなりにされているのですが、ここだけは扉越しでも中の音が漏れ聞こえているのでかなりの騒がしさが感じられます。

 

 扉の上の方には長山MOWと書かれているプラカードがかけられていて、扉の下の方にはメイド姿のお姉さんのイラストが描かれていました。

 

「では、忍さん。入りましょう」

 

 私は扉を開けてお店に入ると、大音量のゲームの音とゲームを遊んでいる人達の悲鳴が私の体を包み込みました。

 

「くふふ。やっぱりこのお店で永久コンボを食らってる人の悲鳴を聞くのは居心地がいいです」

「……さっきまで桜の悲鳴を聞いてた私は居心地が悪かったんだけど」

 

 私の前のこじんまりとした空間には、所狭しと色んな種類のゲーム筐体が並べられていました。

 

 

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