ゲームキャスターさくら   作:てんつゆ

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人形列車 出発進行6

「荷物もらいに来たで~」

「わかりました。ちょっと待ってて下さい」

 

 私はトランクケースを置いた場所までいって、運送屋のお兄さんに引き渡す為にトランクケースを持ち上げたのですが、なんか前より中身が軽い気が…………。

 

「あれ? なんか軽いような?」

 

 不審に思った私は一度床に下ろしてから、トランクケースを開けて中を確認してみると。

 

「ああっ!? 中身がありません!?」

 

 トランクケースの中のどこをみても人形の姿は影も形も残っていませんでした。

 

「シャンティ。どこに行ったかわかりませんか?」

「ボクに聞かれてもわからないって」

 

 この部屋はセキュリティが万全なので泥棒が入ったとは考えられませんし、ましてや少し目を離した一瞬で消えるなんてあるわけ…………。

 

「どないしたんや?」

「すみません。落とし物がどこかにいってしまいました。見つかったら連絡するので、また後で来てもらってもいいですか?」

「それは、しゃーないな。よっしゃ、じゃあ後でまた来るから見つかったら連絡してや~」

「はい。すみません」

 

 そういって運送屋のお兄さんは再び仕事に戻っていきました。

 本当にどこにいったんだろ? と改めて部屋の中を見渡してもどこにもありません。

 

「シャンティ。人形を探すので手伝って貰えますか?」

「しょうがないな~。まあ忘れ物を預かって失くしちゃっても大変だしね」

 

 絶対に部屋の中にあるはずなので、絶対に見つけないと!

 

 ――――と、その前に。

 

「とりあえず人形を探す前に、まずはご飯です」

「お弁当が冷めちゃうからね~」

「…………紅茶はもう冷めちゃってますけどね」

 

 私は仕方なくぬるくなった紅茶を作り直す為に飲もうと思ってテーブルにいくと。

 

「…………え? 紅茶も無くなってます!?」

 

 なんで紅茶も消えちゃったんだろう?

 

「シャンティ。私の紅茶飲みましたか?」

「ボクが飲める訳無いでしょ…………」

「じゃ。じゃあどうなって――――」

 

 私があたふたしていると、後ろからズズズ~と何かをすする音が聞こえてきました。

 宅配のお兄さんはもう出ていってシャンティは紅茶を飲めません。

 …………と、いう事はいったい誰が?

 

 私は恐る恐る後ろを向くとそこには――――。

 

「ちょっと、この紅茶ぬるいじゃない!」

 

 さっきまでトランクケースの中に入っていたはずの人形が、優雅に紅茶を飲んでいたのでした。

 

「茶葉はそこそこの使ってるみたいだけど、温度が全然優雅じゃないわ! すぐにいれ直してくれる?」

「すみせん。すぐにいれ直します」

 

 私はカップを受け取り、袋から新しいティーバッグを取り出した所で我に返り。

 

「って。なんなんですか、この状況はーーーー!?」

 

 勢い任せにバンと机を叩きながら状況の整理をする事にしました。

 人形はそんな事お構いなしに、新しい紅茶はまだかといった表情を私に向けてきます。

 

「…………えっと。にん……ぎょう……ですよね?」

「そうよ! 私は格式高いローランド製のドールなんだから!」

「そんな事言われても、私は人形の事はあまり詳しくないんですが…………」

「ええ~~っ。なんで知らないわけ!?」

「はいは~い。そんな事もあろうかとちゃんと検索してま~す」

 

 シャンティはそう言って検索して出てきたデータを空中に出力してから、私の方へと投げてきました。

 私はそれを指で止め、一通り目を通す事にします。

 

「ええ~っと、ふむふむ」

 

 ローランド人形。

 巨匠ウヴェ・ローランドによって作られたファッションドール。

 主に観賞用として愛されている物で、世界中にファンも多く存在している。

 

 ただし可動性の高さや細部にわたる精巧さから価格も決して安いものでは無く、高い物では数万ドルで取引されている物も存在する。

 

「すっ、数万ドル!? 」

 

 改めて人形をよく見ると、確かにぱっと見だと人間と間違ってしまってもおかしくないくらいの精巧さで作られていて、高額で取引されているのも納得してしまいます。

 

「どう? 私の高貴さが理解ったかしら?」

「シャンティ。落とし物は無くしちゃった事にして、この子を貰う事にするのは駄目でしょうか?」

「いや、誘拐は駄目でしょ…………」

「いえ。この場合はどちらかと言えば、捨て猫を保護する感じだと思います!」

「ちょっと! 勝手に私を捨て猫扱いしないでくれる?」

「おや? もしかしてワンちゃん派ですか? 私はネコちゃん派なんですが、これは困った事になってしまいました…………」

「いや。そういう事じゃないと思うんだけど…………」

 

 とりあえず紅茶を入れ直して差し出すと、人形は「まあ、これなら及第点をあげてもいいわね」と、そこそこご満悦な様子で紅茶を飲み始めました。

 

「うぅ。まだ一口も飲んでないのに、2パックも無くなってしまいました…………」

「別にあなたは駅前でペットボトルの紅茶を飲んでたんだからいいじゃない」

 

 …………え?

 

「な、なんでそれを知ってるんですか!?」

「なんでって? 見てたからよ?」

「…………見てた? さっき目を覚ましたばかりのはずでは!? いったいどこから見てたんですか?」

「どこからって言われても…………あれ? 私どこから見てたんだろ?」

 

 人形は頭を抱えながら記憶をたどり始めましたが。

 

「ちょっと寝起きだから覚えてないだけかも。――――ま、そのうち思い出すでしょ」

 

 と、あっさり思い出すのを止めて、再び紅茶のカップに手を伸ばして残りを飲み始めました。

 

 

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